41歳の年の差対決はオリンピック史上初

倪夏蓮(Ni XiaLian)と申裕斌(Shin YuBin)の卓球女子個人の試合は3対4で申裕斌が勝利しました。夏蓮58歳、申斌17歳。41歳の年の差対決はオリンピック史上初でしょう。
夏蓮選手は上海生まれ、1986年にルクセンブルクに移住し、2000年のシドニー五輪大会以来、連続出場を果たしています。2019年の欧州卓球大会でベスト4に入る実力者です。
 
夏蓮選手の戦型は「左ペン表裏前陣攻守型」で「最強のペン粒選手」と言われています。これは、左利きのペンホルダーラケットの表面に粒高ラバー、裏面に平坦なソフトラバーを使用する前陣で構える攻守両面タイプの選手という意味です。粒高ラバーによる返球は回転量の予測がつかず受け難いです。下回転の打球が無回転で返球されると、ネットに引っ掛けてしまいます。ペン型選手が珍しい上、相手の空きをつくコース取りが上手なので、歳を取っても殆ど動かずに相手に勝つことができます。
 
申裕斌選手は韓国の天才卓球少女と呼ばれる新星です。戦型は「右シェーク裏裏ドライブ型」です。つまり右利きシェークハンドラケットの両面に平坦なソフトラバーを使用するドライブ上回転の攻撃タイプの選手ということです。彼女は動きが素早くレシーブの打点が早く、広角で打ち分けられる速攻型の選手です。
前半は2対1で夏蓮選手が優勢でしたが、後半は申裕斌選手が3対3に追いつき、若さで逆転しました。極端に年齢やタイプの違う天才選手の激突は一見の価値ありですが、見ているだけで、疲れます。。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2021年7月25日
 

赤ちゃんの熱中症

寒い季節になって来ました。産科の久保田医師からのお知らせをシェアします。冬場の赤ちゃんの着せ過ぎは赤ちゃんの突然死を招きます。
帽子、靴下、毛布で赤ちゃんを包んで寝かせると全身の体温が37℃になって筋弛緩が生じ、赤ちゃんは動けなくなります。うつ伏せの場合は窒息死します。アドレナリンの分泌が低下して心臓の動きを低下させ、熱中症になるとのことです。
乳幼児突然死症候群(SIDS)は着せすぎによるうつ熱(衣服内熱中症)が原因
 
 
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乳幼児突然死症候群(SIDS)は着せすぎによるうつ熱(衣服内熱中症)が原因
久保田史郎
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社会で生きていける気がしません

社会で生きていける気がしません。 ブスで頭も悪く、なんの才能もないうえに発達障害まで持っています。 こんな自分が1人で生きていけるのでしょうか?  スペックは

*Deeplooksというサイトで平均2点代のブス、155cm50kg(見た目はもっと太い)

*産近甲龍志望で滑り止めもFラン。英検二級と漢検準二級持ち(僅かなプライド)

*発達障害(遂行機能障害)持ち、鬱病発症歴あり

*言われたことはギリ出来るが、それ以上のことはできない上に忘れっぽい

*高校がバイト禁止で社会経験もなし

*努力が嫌いで甘えてばかりのクソみたいな性格

こんな有様です。 結婚できる可能性はゼロなので1人で生きていかなくてはなりません。 風俗業も無理でしょう。 大学もお金の仕送りなしで一人暮らしするように言われています。 ですがコロナの影響で就活が難しくなったみたいですし、自分なんか雇ってくれるところなんてせいぜいバイト、いやバイトにすら雇ってもらえないのではと思います。 こんなのでも生きていく方法ってあるのでしょうか。フリーターしか無理でしょうか? 人生詰みでしょうか? 生活保護や障害者年金に頼りたくはないですし刑務所暮らしも嫌です。 ご回答よろしくお願いいたします。

[回答] 見栄を張らなければ生きていけます。 最低時給850円で8時間/日で200日/年働けば、136万円の年収になります。これは一月当たり11.5万円の収入です。家賃4万円、食費4.5万円、光熱費1万円、生活費2万円になります。大変かもしれませんが、暮らしていけます。

健康第一ですから、働き過ぎて身体を壊さないようにしてください。毎月、実家に戻って、料理、掃除などのお手伝いをして1万円をもらって貯金してください。買物上手になりましょう。実家から送られた野菜を調理して、保存パックに入れて、冷凍保存する技術を学びましょう。安い卵や肉を上手に調理して、食費を抑えましょう。無駄なものを買わないで済ます努力をしてください。

速く家事をする必要はありません。低コストで栄養のある美味しい食事が作れるようになりましょう。女性を見る目のある男性は、健康な生活ができる家事能力の高い女性を高く評価します。良家の男性は風俗業でバイトをする女性には関心がありません。155cm、50kgは全く問題ありません。人並みの容姿の方が安心できる男性も数多くいます。作業が遅い特性があるのなら、結婚をした方がいいでしょう。自分のペ-スで働けるからです。

あなたは物事の目的を簡単に忘れてしまう癖があります。困ったときは目的をよく考えて、何を最優先にすべきかを決めましょう。分からないことはご両親に相談してみましょう。あなたは結婚した方が、ご両親も嬉しいし、充実した人生を送れます。容姿だけで短絡的に結婚を諦めるのは、とても損な選択です。

[返信] 詳しいアドバイスをありがとうございます。 頑張って生きていこうと思います。 ご回答ありがとうございました。

勉強したら地獄を見ました

[相談] 高校を中退した16歳、高校に居れば高2です。周りに教師が居ないので今自分がどのような状況で、志望校である慶應文系に受かる見込みがあるのか、ないのかも全く分かりません。もしかすると目標と繋がらない事をして いる可能性もあるので、何かあれば是非教えて下さい。道を間違えていなくても教えて下さい。本当に右も左も分からないです。

私は元々中高一貫校に通っていたのですが、高校1年の時成績不振で留年の危機を感じ、高校2年になると同時に学校を辞めてしまいました。辞めた当時に受けた東進模試の英語偏差値は36で定期テストは毎回10点以下でした。辞めてから死ぬ気で勉強して今年第2回の英検2級に合格、同時に高卒認定試験にも全教科合格しました。手前味噌ですが、高2にしては結構スピード感があると思います。次の目標は1月下旬の河合塾記述模試です。その為にターゲット1900と頻出1000、やっておきたい500をほぼ完璧、世界史は詳説世界史ノートと一問一答をほぼ完璧と言えるぐらい勉強しました。今は過去問とやっておきたい500をもう一度解いています。

勉強も慶應志望にしては駄目なのですが、それ以上に私の精神状態が奈落の底にあると言っても良いぐらい悪いんです。コロナもあって女友達とも3ヶ月に1回会うか会わないか、外にも一週間に1回出る程度です。朝起きて勉強して、勉強して、勉強して、寝るという自堕落な生活をずっと続けているせいだと思います。食事も1日に1回しか摂っていません。

学校にいた頃は勉強は出来なかったけど友達は沢山居て、毎日遅くまで外で遊んでいました。このせいで勉強が出来なくなりました。コミュニケーション能力も他の人より何倍も高いという自信がありましたし、友達にもそう言われていました。

それに比べて今は最悪です、人に話しかけられると頭が真っ白になるし、外に出るだけで心臓がバクバクします。少し否定されただけでムキになってしまうし、大変じゃない?と親に言われてもキレてしまいます。本当は本当に助けて欲しいんです。両親共働きなので人と全く話さない日もあります。そのせいか、文章を組み立てる能力も減りました。自信がなくなったからかもしれません。とにかく全てにおいてナーバスになってしまうんです。ちょっとした事で深く悩んでしまうようになりました。

学校にいた頃は勉強すれば未来が明るくなる、勉強すれば完璧と言われていたのに勉強したら地獄を見ました。私自身もう全てを投げ出してしまいそうなぐらい辛いです。 暗い話で気分を害された方、すみません。 私のような経験をされた方はいらっしゃいますか?このような経験をされていない方でも、1つでも何かアドバイスがあればお願いします。

[回答]

あなたは高校1年の時の成績不振で留年するのが嫌で、高校2年になると同時に学校を辞めてしまいました。学校にいた頃は勉強は出来なかったけど友達は沢山居て、毎日遅くまで外で遊んでいて、そのせいで勉強が出来なくなったのですよね。あなたには発達障害はないと思います。 あなたの問題は失敗に対する責任の取り方が良くなかったことです。あなたは留年したことを元の級友からからかわれたり、新しい学級に馴染めないことを恐れて、退学してしまいました。しかしながら成績不振という失敗をしたときに、あなたは恥を忍んで留年すべきだったのです。失敗は誰にもあることなのです。大人は堂々と失敗の責任を取る人をバカにしたりしません。

あなたは留年する勇気がありませんでした。あなたは自宅で勉強をすることで失敗の責任を取ろうとしました。これは立派なことだと思います。しかし高校の2年間を一人で閉じこもって勉強することは明らかに不健康なことです。不健康にならないために、高校に来て一緒に勉強しているのです。勉強の遅れを取り返せばそれでいい、というわけではないのです。あなたは友達と4年間の高校生活を楽しむべきだったのです。留年して友達が増えて良かったなあと思えばよかったのです。半分の人が受験浪人して大学に入学するのだから、高校を1年留年してもあなたの職業キャリアには何の影響もありません。

あなたは一人で閉じこもって勉強することは不健康で精神的に苦しいことを学んだのです。だからこれからは家族や友達と話をしたり、外に出て散歩や買物をしたり、大学や学園祭を見学したりして健康的に過ごしてください。あなたは勉強をしたから地獄を見たのではなく、バランスのよい生活の仕方を知らなかったから地獄を見たのです。ご両親はあなたのことを暖かく見守ってくれていると思いますよ。大学生になり社会人になってもワ-ク・ライフバランスのよい人生を心がけて下さい。

[返信]

あなたは留年したことを元の級友からからかわれたり、新しい学級に馴染めないことを恐れて、退学してしまいました。

➝本当にそうなんです。バレてしまいました。ですが、それ以外にも理由があります。私は訳あって元々慶應大学に行きたかったんです。この大学は2教科で入れるので、他の教科を態々頑張るのが私にとっては無駄だと思ったんです。他の教科にバラバラにエネルギーをたやすなら少ない教科に絞った方が合理的だと考えました。

退学理由以外は本当にそうです。回答者様の言っている通りです。心が泣きそうになりました。私は英語と世界史を学んでいるつもりでしたが、実際はもっと多くの事を学んでいました。回答者様の冷静な分析で前向きに考えようと思えることができました。 ご回答ありがとうありがとうございました。

発達障害の見分け方

初めまして。20代の既婚女性です。私には何か知的障害はあるのでしょうか?

私ができないことをリストにすると、

・左右が全く分からない

・計算ができない

・買い物するときなど、値段がよく分からない。

・買いすぎか、買いすぎじゃないか、自分では判断ができない。

・電卓などの使い方も分からない (電卓で何をするのかが分からない)

・人の名前が殆ど覚えられない (自分の家族の本名があやふや。いつもは父→パパ、母→ママ、妹や夫→あだ名です)

・集中できない。

・片付けの仕方が分からない。

・お風呂に入る前に、何をするか明確にしておかないと、お風呂に入ったときに何をしていいのか分からない。

・記憶力がない。家族に何度も同じ話をしているようだが、私自身は話した記憶がない。

・他人には通じないと、家族から言われた。自分だけの言葉が複数ある。

・西暦や元号などが理解できない。

・自分の年齢があやふや。(おおよそ何歳というのは分かる)

・決めたことにはとても拘ってしまう。

・極論でしか物事を考えられない。減薬は耐えられない。やるなら断薬。

    黒髪は嫌だ。茶髪は半端で嫌だ。やるなら奇抜な色か一番明るい金髪etc…

ちなみに、空気は読めます。人の気持ちにはとても共感できる方だと思います。逆に人の顔色を伺ってしまって辛いことの方が多い気がします。でも、家族以外の人間の気持ちなどには興味はありません。いつもではありませんが、よく不謹慎なところで爆笑してしまうこともあります。人の目などを、良くも悪くも気にしないところがあります。でも、抽象的な表現はちゃんと理解できますし、ストーリーの考察なども好きです。文学的なところでは、あまり不自由は感じません。漢字が分からない時はありますが、それは自分自身の学の無さだと思います。

小さいときのことはあまり記憶になく…。でも、小学生の頃は学級委員長をしたり、人前に出るような役割を任されていましたが、壊滅的に算数や理科(生物系を除く)は、できないという感じでした。学級はずっと普通学級でした。高校も偏差値50程度の並み程度の高校に通いましたが、それは推薦入試であり、英語以外の授業はついていけず、本当にギリギリ卒業といった感じでした。

親は昔から、私のことは変わっているとは思っていたようですが、障害などについては全く考えなかったようです。ただ、出来の悪い子、頭の悪い子、と思われていたようです。

しかし最近、前よりも軽度知的障害、隠れ発達障害などの認知が世間的に広がり、特に母は、『変わり者』というだけでなく、私にも何かしらあるのだろう、という感じになりました。他にも挙げればあると思いますが、ざっとこれくらいはあります。又、精神疾患が複数あり、減らしてはいますが、薬を飲んでいます。精神疾患は

・境界性人格障害

・双極性障害

・躁鬱

・パニック障害

・PTSD

があります。特に障害が分かったからと言って、何かが変わるわけではありませんが、少し気になり、質問させて頂きました。よろしくお願いします。

<回答1>

あなたには学習障害、注意欠如障害、自閉障害の発達障害が見受けられます。学校や友達や家族との付き合いが、かなり大変だったのではないかと思います。色々な問題で自尊心が低くなりがちですが、あなたはこれまで本当によく頑張ってきましたね。

文章を見る限り、あなたには言語的な知的障害は全くないように感じます。しかし数量の把握や計算ができない学習障害があります。買物にいくと清算の時お困りでしょう。おつりが計算できないので、財布の中の硬貨がどんどん増えてしまいます。

注意欠如障害は、注意不足でしっかり記憶できず、すぐに忘れてしまう障害です。集中が続かない、片づけができない、左右が分からない、同じ話をしてしまうなどの兆候は注意欠如障害によるものです。落ち着いてよく注意するようにして、メモを取るようにします。大事なものを無くさないように工夫して下さい。

自閉障害も見受けられます。自閉障害は社会性、想像性、コミュニケ-ション能力の欠如の3つの特徴があります。

自分だけの言葉がある、自分の年齢が分からない、家族の名前を覚えられない、家族以外の人の気持ちに関心がない、人目を気にしない、不謹慎なところで爆笑するのは社会性の欠如です。家族に暖かく見守ってもらいましょう。

別の方法を想像できず決めたことを変更できない、中間を想像できず極端な選択しかできない、自分が困っていることが分からない、お風呂の入り方を想像できないのは想像性の欠如です。想像性がないと計画が立てられないので、例えば定期試験に対する勉強の段取りができません。誰かに勉強の段取りをしてもらえば、成績はもっとよくなったでしょう。

主治医と全く話ができない、自分の障害を人に相談できないのであれば、コミュニケ-ション能力が低いことになります。あなたはコミュニケ-ション能力はある方なので、結婚できたのだと思います。

発達障害のある人はストレスを抱えやすく、相談して問題解決できないので、精神疾患を発症しやすいです。精神科や診療内科で精神薬を処方されると、精神疾患が常態化してしまいます。

あなたの一番の問題は、数量の把握能力が極端に低いために、減薬のコントロ-ルができないことです。減薬は夫さんと薬剤師さんに支えてもらいましょう。夫さんと一緒に薬局に行って、薬剤師さんと相談して、1回の服薬量を減少できるように、医師の処方したカプセル薬などを細かく分けなおしてもらうといいでしょう。

減薬の速さは、徐々に遅らせて、最後はゆっくりゆっくり断薬して下さい。急に断薬すると離脱症状(禁断症状)がでて、苦しいし、薬の量を増やされてしまいます。あなたの精神疾患名は薬の種類を表しているのに過ぎません。日本は多剤処方が当たり前になっていますが、アメリカでは精神疾患に対して3種類以上の薬は処方しません。医師は積極的に減薬をしませんが、患者が薬剤師と相談して減薬することに反対はしません。

<返信1>

ご回答ありがとうございます。仰られているとおり、学生時代は、学業は勿論、人間関係に苦労しました。家族との付き合い方も一時わからず、勝手な孤独感孤立感を抱いたりもしていました。『今までよく頑張りましたね』という労いのお言葉まで頂き、恐縮です。ありがとうございます。

そうですね。お買い物はとても大変なので、夫に殆ど任せています。何が必要か、不要か、それが分からないのと、やはりお金が数えられないので、お札で払うのですが、仰る通り、お財布に収まらないほど、鞄の中にたくさん小銭が入っています。見よう見まねで小銭を使うと、大抵足りなかったり、多かったりして、お店の方などのご迷惑になってしまうので、控えています。

他のことに関しても、なるほど、と思わされることばかりでした。想像力の欠如というのは、まさしくそうなんだと思います。物事の順序が立てられなかったり、人からどう見られているか考えられなかったり、諸々のことは、想像力の欠如によるものなんですね。

そして、社会性の欠如、自閉的な傾向というところにも思い当たる節がたくさんあるので、このご回答はとてもためになりました。何より、私につけられた精神病というのは、特になんの意味もないものだと思っていたので、『薬の種類を示しているだけのもの』というお言葉に納得しました。

自分の障害を人に相談できないというより、精神疾患を人に言うことで、人に気を遣わせてしまったり、何かあったときに弁明する際、自分が精神疾患を少しでも言い訳にしてしまわないか、ということが不安なので、誰かに相談することはしたくないなと思っていました。自分のなかでも、自分は出来が悪い以上の問題が、何かあるのではないか…と悩んできましたが、同様の理由で、夫以外には打ち明けたことがありませんでした。

主治医の件ですが、こちらについては、私側の問題というより、主治医の問題かなと思っています。主治医は、不機嫌なときは一言も話さず、こちらが何か言っても『薬出しておくから』だけで済ますような感じで、夫も私と一緒に診察室に入って話を聞いてくれたり、逆に私のことで相談がある際には相談事を持ちかけたりするのですが、『どこかへ気分転換に遊びに行けば?』というような適当な返事しか返ってこず、だんだんと私も夫も主治医を頼らなくなっていき、薬をもらうだけの関係になりました。

減薬については、難しいところがあり、私が『徐々に』ということに耐えられないのです。つまり減薬という考えがハッキリしなくて気持ち悪く感じてしまい、断薬としか考えられず、しかしそんなことが上手くいくはずもなく、色々な自己嫌悪に襲われてしまうという悪循環に陥ってしまいます。

薬局に協力してもらえたらいいのですが、今の薬局には協力してもらえそうにありません。ずっといつも私語ばかりで、薬の入れ忘れや数の間違いが頻繁にあり、表面上はお互いニコニコして付き合っていますが、信頼はできません。

なので、夫が手伝ってくれるのですが、やはり『徐々に』というところで躓いてしまい、結局飲んだフリをして飲まない等してしまい、症状が悪化してしまったり、薬が切れてしまったときの具合の悪さが出てしまいます。ここは本当に課題だと思います。

夫は、『無理して薬を減らす必要ないよ』と言ってくれますが、薬ばかり飲んでいて、せっかく元気で働いてくれている私の体内の各臓器、もちろん血管も、すべてに申し訳ないと思って、やめたいと思っています。まとまらない文章となってしまい、また、長々と長文でのお返事すみません。

<回答2>

貴女はこれだけの発達障害を抱えながら、良い夫婦関係を保ち、明るく希望を持って生きているのは奇跡的です。薬を飲みながらも、明晰な回答ができるのも驚きです。睡眠や体調の不調は精神薬によるものですから、1年程かけてゆっくり減薬すれば、必ず良くなると思います。発達障害に関しては、夫さんに相談しながら生活の工夫をしていって下さい。

アスペルガー障害がある人は行動を変えることが苦手ですが、薬局は星の数ほどあるのですから、色々廻ってみるといいでしょう。裏事情を知っており、減薬に協力してくれる薬剤師さんもいます。精神薬が精神病を作り出していることに気づいている精神科医はうつ病になります。主治医が不機嫌なのは、そういう理由なのかもしれません。主治医を変えることは薬の数を減らす良い機会になります。

<返信2>

お返事ありがとうございます。また、とても私には相応しくない、優しいお言葉をたくさん頂き、本当に心から恐縮しております。発達障害というものを意識することはあまりありませんが、やはり回答者様のお話を伺って、全て当てはまり、全て合点のゆくことばかりだったので、知的、発達障害はあるのだと思います。しかしながら、それでも夫と夫婦として穏やかに暮らせているのは、すべて夫のお陰です。どんなときも諦めず、とことん向き合ってくれて、まるでサリバン先生のような人です。夫でなければ、こんな風に穏やかに暮らすことはできなかったと、感謝しています。

人生の全てに、自分という人間が許せず、命を投げ捨てようとしたことも、何度もありました。それでも今、明るく希望が持てたことは、これも私の力ではなく、そばにいてくれた家族のお陰です。回答者様の優しいお言葉に、改めて夫、家族の存在に感謝しました。

薬は、やはり飲むとぼんやりしてしまうことが多いです。でも、なるべくそういう薬は飲まないようにしています。薬を飲まないと、全く寝なくてもすごく元気なのですが、そうすると感情の高ぶりが止まらなくなってしまうので、夫との約束で睡眠導入剤と、安定剤は飲むようにしています。なので、あまりぼんやりすることも、現状はありません。

どうしても、『減薬』というところで躓いてしまいます。でも、何度躓いても、体の各臓器すべてのために、減薬、そしてひとつでも薬を減らせるように努力したいです。薬局も、今の薬局は病院のすぐ隣にあるので便利という理由でそこに行っているのですが、アドバイス頂いたように、通える範囲のところで探してみようかなと思います。精神科医の件は…そういう事情もあるのですね。もしかしたら、私の主治医は鬱状態なのかもしれません。

そのようなことが背景にあり、鬱状態になってしまったとしたら、同情しますが、やはり私や夫も、話ができないようでは困りますので、他の精神科医を探すのが良いのかもしれません。今のままでは、何も解決しなくなってしまい、私だけでなく、私を支えてくれている人たちも困ってしまうと思うので…。色々と探してみようと思います。自立支援制度についても教えて頂き、ありがとうございます。こちらも調べて、利用できたら利用させて頂きたいと思います。

明確で、的確なアドバイスをたくさん、ありがとうございました。今後の道筋が少し見えた気がいたします。そして、『精神病は単に薬の種類を示しているだけ』というお言葉が、とても嬉しかったです。病名がたくさんつけられても、ただのラベル貼りとしか思えず、なんだか『言い訳』の材料を渡されたようで、嫌な気持ちでした。

以上

血管が収縮するメカニズムについて(2)

さてもう少し詳しく見てみましょう。血管収縮の情報伝達物質が平滑筋細胞の受容体に結合すると、Gqタンパク質の活性化と脱分極が生じます。脱分極が生じると電位依存性のCaチャネルが開きます。細胞の内外には電位差があります。通常細胞内は-80mV程度の分極状態に保たれています。Ca2+イオンが細胞内に入ると、細胞内の電位がプラスになります。これを脱分極状態といいます。L型Caチャネルは細胞内の電位が高くなると開き、Ca2+が細胞内に入ります。

Gqタンパク質はGタンパク質(グアニンヌクレオチド結合タンパク質)の1つです。Gタンパク質は、Gs、Gi、Go、Gq、Gt、Golfの6種類があります。Gsはアデニル酸シクラーゼを促進、Giはアデニル酸シクラーゼを抑制します。Goは神経組織に多く発現しています。GqはホスホリパーゼCβを活性化し、GtとGolfはそれぞれ視細胞(網膜)と臭細胞のシグナル伝達系に重要な役割を果たしています。Gタンパク質はα、β、γの3つのサブユニットからなる三量体です。αサブユニットにはGDPが結合しています。受容体に伝達物質が結合すると、Gタンパク質は、GDPがリン酸化されてGTPとなり、αサブユニットーGTPがβγサブユニットから切り離されます。Gqタンパク質のαサブユニットーGTPはホスホリパーゼCを活性化します。αサブユニットに含まれるGTPア-ゼの働きにより、αサブユニットーGTPはαサブユニットーGDPとなり、βγサブユニットに結合して元のGqタンパク質に戻ります。

ホスホリパーゼC(PLC=PhosphoLipase C)は、リン酸エステル基の直前でリン脂質を切断する酵素です。細胞膜にはPIP2(ホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸)という脂質があります。先ほど述べたようにPLCはGqタンパク質を介して活性化します。活性化したPLCは、PIP2のホスホジエステル結合を加水分解し、DAG(ジアシルグリセロール)とIP3(イノシトール1,4,5-トリスリン酸)を発生させます。DAGは脂質なので細胞膜にとどまります。

IP3は細胞質ゾルを介して拡散し、筋小胞体 (ER) にあるイノシトール・トリスリン酸受容体チャネルに結合します。筋小胞体はCaの貯蔵庫になっており、筋小胞体からCa2+が細胞質ゾル内に放出されます。放出されたCa²⁺は、同じく筋小胞体上にあるリアノジン受容体(RyR)に結合し、さらにCa²⁺の放出を引き起こします。

DAGはCaと共にプロテインキナーゼC(PKC=Protein kinaseC)を活性化します。プロテインキナーゼCはその他のタンパク質分子をリン酸化し、細胞活性を変化させる酵素です。活性化PKCは

Rhoキナ-ゼ + Rho-GDP + Pi → Rhoキナ-ゼーRho-GTP(活性化状態)

によって、Rhoキナ-ゼを活性化します。

キナーゼはATPのリン酸基をアミノ酸残基にあるOH基に移動させ、共有結合させます。活性化Rhoキナ-ゼはミオシン軽鎖ホスファタ-ゼにATPのリン酸を付加して不活性化するので、血管の収縮状態が維持されます。キナーゼがリン酸化するアミノ酸の99%以上はセリンとスレオニンですが、チロシンのリン酸化は生物学的に重要です。

 酵素は他の酵素によって活性化されて生体反応を促進します。多くの場合リン酸を付けたり外したりすることで酵素の活性化を制御しています。私たちの知らないところで、私たちの身体は驚異的な生体反応のネットワ-クを保っています。精緻な生体反応のメカニズムを知れば知るほど、健康に対して感謝の念が湧いてきます。

血管が収縮するメカニズムについて(1)

風邪を引くと体温が上がります。多くの人は漠然と免疫細胞がウイルスを攻撃するから発熱すると考えています。正確には免疫系が体温を高く設定するためにウイルスが弱まり、免疫細胞の攻撃を受けて分解します。ウイルスは平熱の体温のとき自分の酵素反応が最も早く進行するので、体温が上がると活動が弱まるのだと考えられます。

私たちは体温を上げるのに毛細血管を細く収縮させます。毛細血管を収縮させると血流が低下して放熱が抑制されて体温が上がります。血管の内側は内皮細胞で覆われており、その外側に平滑筋細胞があります。平滑筋細胞が収縮すると血管が細くなります。血圧をあげるときにも血管を収縮させます。横紋筋は随意的に動かせますが、平滑筋は随意的に動かせません。横紋筋の収縮制御機構は解明されていますが、平滑筋の収縮制御機構は複雑でまだ解明されていない部分もあります。血管の収縮には1分以内、1時間以内、1日以内の3つの反応速度の異なる収縮があります。また血管には動脈と静脈、太いものや細いものや毛細血管によっても収縮の機構は異なります。ここでは数時間で収縮する静脈の毛細血管を想定し、その平滑筋の一般的な収縮機構について調べたことをお話したいと思います。

血管の内皮細胞から放出された情報伝達物質は平滑筋細胞の細胞膜にある受容体に結合すると、様々な反応が生じた結果、筋原線維のミオシン分子がリン酸化されて、アクチン分子上を滑って収縮します。血管を収縮させる情報伝達物質には、ノルアドレナリン(NA)、アセチルコリン(Ach)、アンジオテンシンⅡ(アミノ酸が8個のペプチド酵素)などがあります。NOやH2O2など血管を拡張させる物質もあります。

 ミオシンにリン酸を付加する酵素がミオシン軽鎖キナ-ゼです。キナ-ゼというのはリン酸を付加する酵素のことです。Caとカルモジュリンの複合体がミオシン軽鎖キナ-ゼを活性化します。カルモジュリンはCaを4原子吸着すると、直角の腕のような構造をしたタンパク質になります。

結局、血管を収縮させる情報伝達物質が平滑筋細胞の受容体に結合すると、細胞内のCa濃度が上昇することで、Ca-カルモジュリン複合体の濃度が増加して、血管が収縮します。

一方、ミオシン軽鎖ホスファタ-ゼというリン酸化ミオシンからリン酸を除去する酵素があります。ミオシン軽鎖ホスファタ-ゼを不活性化すれば、血管の収縮が保たれます。具体的には、活性化したRhoキナ-ゼがミオシン軽鎖ホスファタ-ゼにRhoとリン酸を付加するとミオシン軽鎖ホスファタ-ゼが不活性化します。血管収縮過程には、活性化したRhoキナ-ゼを増やす作用があり、それによってミオシン軽鎖ホスファタ-ゼが不活性化して、リン酸化ミオシンからリン酸を除去する力が弱まり、血管の収縮が保たれます。結構ややこしいですね。

Rhoタンパク質とはRas homolog(ラス相同性)タンパク質のことで、Rasはラットの肉腫(Rat sarcoma)から見つかった低分子(21kDa)のGTP結合タンパク質の一種です。Gタンパク質と同様に不活性状態ではGDPが結合しており、シグナルを受けて活性化するとGTPとなります。相同性とは遺伝子配列が共通の祖先をもつ類似性のことです。Rhoタンパク質は転写や細胞増殖、細胞の運動性の獲得のほか、細胞死の抑制など数多くの現象に関わっています。

新型コロナ肺炎はインフルエンザとどこが似ているのでしょうか?

これら2つのウイルスはエンベロ-プをもつRNA型ウイルスです。エンベロープは、ウイルスのRNAを覆うカプシドを覆う脂質膜です。ウイルスが細胞外に出る際に細胞膜を被ったまま出芽することで獲得したものです。エンベロープには、ウイルス遺伝子がつくるエンベロープ・タンパク質が発現しています。エンベロープタンパク質は細胞側が持つレセプターに結合して、ウイルスが宿主細胞に吸着・侵入する役割を果たします。エンベロープは脂質から成るため、これらのウイルスはエタノールや石けんなどで処理すると容易に破壊できます。コロナ、インフルエンザの他に、風疹、日本脳炎、C型肝炎はエンベロ-プを持つRNA型ウイルスです。

天然痘や帯状疱疹やB型肝炎のウイルスはエンベロ-プを持つDNA型ウイルスです。帯状疱疹ウイルスは、水痘(Varicella)と帯状疱疹(Zoster)を引き起こすウイルスです。初感染時に水痘を引き起こし、治癒後に神経細胞周囲の外套細胞に潜伏しており、免疫力が低下するとウイルスが再び活性化して、皮膚に特徴のある帯状疱疹を引き起こします。ヘルペス用の抗ウイルス薬があります。

エンベロ-プを持たないDNAウイルスにアデノウイルスがあります。エンベロ-プを持たないRNAウイルスには、ノロウイルス、ロタウイルス、A型肝炎ウイルスがあります。エンベロ-プを持たないために、消毒が大変です。

アデノウイルスは直径80nmの正20面体のカプシドとそれに覆われた線状二本鎖DNAからなるウイルスです。アデノウイルスは感染性胃腸炎や風邪症候群を起こします。感染した場合、アデノウイルスは扁桃腺やリンパ節の中で増殖します。プール熱(咽頭結膜熱)とよばれ、高熱と微熱を繰り返す期間が4〜5日ほど続き、扁桃腺が腫れ、のどが痛みます。主要症状がなくなった後、2日間登校禁止となります。80%エタノールによる不活化時間は2分です。リネン類は、85℃10分間以上の洗濯、または水洗後に次亜塩素酸ナトリウム0.1%での消毒をします。

ノロウイルスによる集団感染は学校や養護施設などで散発的に発生しています。ノロウイルスは直径30-38nmの正二十面体のカプシドとそれに覆われたRNAからなるウイルスです。ノロウイルスは乾燥した状態でも、20℃で4週間以上感染力を保ちます。1968年、アメリカ合衆国オハイオ州ノーウォークの小学校において集団発生した急性胃腸炎患者の糞便から初めて検出されたので、ノーウォーク・ウイルスと命名され、ノロウイルスと呼ばれるようになりました。感染は経口感染で、腸から感染して増殖し、新しく複製されたウイルス粒子が腸管内に放出されます。10から100個程度の少数のウイルスが侵入しただけでも感染・発病が成立します。ノロウイルスはエタノールでは消毒できません。

新型コロナ肺炎はサイレント肺炎

新型コロナウイルスは肺胞に感染し、自覚症状がないままに、徐々に肺炎を進行させます。1週間の潜伏期間の後、急に発熱し呼吸困難になる特徴があります。糖尿病や腎臓病などの血管系の疾患がある人は、微熱が2日継続したら甘く見ないで、保健所などに連絡して検査を受けた方がいいでしょう。検査で陽性判定がでたら、公共交通機関を避けて入院するなど、適切に行動する責任があります。肺炎が重篤化したら、人工呼吸や人工心肺装置をつけて酸素呼吸を確保します。自分の免疫反応によりウイルスを抑制していくしかありません。
呼吸困難の目安としてパルスオキシメーターが用いられます。パルスオキシメーターは血中酸素飽和度(SpO2)を手軽に測定する装置です。5,000円~30,000円で入手できます。50gと軽量で携帯できます。血液を採取することなく、リアルタイムにモニタリングできるため肺炎による低酸素血症の早期発見や呼吸管理に役立ちます。
測定方法は、安静な状態で指先を暖めて血流を良くして、測定器に指先を差し込んで、動脈血中の酸化ヘモグロビン(HbO2)と還元ヘモグロビン(Hb)の密度比を測定します。正常値は97%から100%です。呼吸不全はSpO2= 90%に相当します。SはSaturation(飽和度)、pはpercutaneous(経皮的)を意味しています。

インフルエンザと新型コロナウイルスはどこが異なるのでしょうか?

インフルエンザは風邪より高熱が出て、関節痛などが生じる伝染病です。日本では毎年、新型インフルエンザが流行しており、ここ5年間は増加傾向にあります。日本のインフルエンザの感染者数は年間1000万人程度で、毎年3000人程度が死亡しています。つまり致死率は0.1%以下です。感染者の70%は未成年者であり、死亡者の殆どは免疫力の低い70歳以上の老人です。

日本の病院は1000万人のインフルエンザ患者に対応できるのだから、1.5万人の新型コロナ患者を受け入れるのはたやすいことだと考え、日本政府はコロナ感染拡大を誇張して報道させているのではないかと疑っている人がいます。しかし実際はそうではありません。

インフルエンザで入院する患者数は多い年で1万人近くになります。1週間経過後は徐々に回復して退院する人もでてくるので、ピーク時の在院者数は8000人(=9500人×0.85)程度だと推測できます。日本には感染者用の病床が12500床あるので、ピーク時の2月ごろは、毎年病床の40~65%がインフルエンザの患者さんで埋まることになります。これは決して余裕のある数字ではありません。実際は、病院数を削減しているので、高齢化社会になって増加するインフルエンザ患者を受け入れることは深刻な問題なのです。しかしインフルエンザの場合、学級閉鎖はあっても、サラリーマンに在宅勤務や主婦に外出制限をかけることはありませんでした。

社会がインフルエンザを許容しているのはいくつか理由があります。例えばインフルエンザの場合、
1) 重篤化率が1%、致死率が0.1%以下と低い。
2) 感染者の殆どが若者で、1週間程度で回復する。
3) 簡易検査薬や抗ウイルス薬があり、早期対応と症状軽減ができる。
4) 多くは季節性のもので、必ず収束する。
5) 感染後に獲得した免疫が持続するので、同じものには感染しなくなる。
6) 多くの人が免疫を獲得するので、感染が広がりにくくなる。
といった理由があるからです。インフルエンザは毎年流行するタイプが異なるので、完全に適合するワクチンが製造できません。完全に適合するワクチンを所有している人は、その新型インフルエンザウイルスを製造した人でしょう。そうなると流行は自然現象でなくなります。

それでは新型コロナ肺炎(COVID-19)はどうして社会的に許容されないのでしょうか? それは
1) 重篤化率が20%、致死率が4%以下と高い。
2)感染者の多くが高齢者や疾患保持者であり、重症化しやすい。
3)簡易検査薬や抗ウイルス薬が利用できず、早期対応と症状軽減ができない。
4)季節性がなく、潜伏期間が長く、感染が収束する保証がない。
5)感染後に獲得した免疫が持続するか不明である。
6)多くの人に免疫を獲得させられないので、感染が広がりやすい。
といった理由です。免疫の持続性が保証できれば、集団免疫獲得戦略を採用し、医者と病床数を確保できれば、社会的に許容する方向に進むかもしれません。しかし日本は医者の収入を守るために、医師数を厳しく制限しています。

 現在の感染状況を見てみましょう。5月9日現在、東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイト(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)によると、東京都の陽性者は4846人で、死亡者180人、退院者2152人、入院中2514人です。入院中の内訳は、軽症・中等症者2431人、重症者83人です。東京都の病床数は2000床なので、400人余りはホテルに隔離滞在していると思われます。陽性者の致死率は3.7%です。
ダイヤモンドプリンセス号の場合、3711人の乗客乗員のうち、712人が感染し、13人が死亡しました。感染率は19.2%、陽性者の致死率は1.8%でした。これは中国起因の感染で、現在東京都で感染しているウイルスは欧州起因のものだと考えられています。欧州起因のウイルスの致死率の方が2倍高いのかもしれません。

日本人がコロナ自粛から学ぶべきもの

コロナ自粛の継続は、経済的な痛手ではありますが、日本企業にとって社員の健康管理や在宅勤務を取り入れた働き方を推進する良い機会になると思います。長距離通勤は、健康とエネルギと時間の浪費でした。行政を書面処理からオンライン処理に切り替えることで感染を避け、人員を削減できます。教育機関も遠隔教育を取り入れることで幅広い受講生を獲得できるでしょう。機械の身体を得て火星に移住する必要はありません。そんなことを学ぶために受験競争をするのはバカげています。勉強してマスクの一枚も満足に配れない総理大臣になっても仕方がないのです。教育内容は、専門バカを量産する教育から、豊かな生活と健康につながる教養教育に変化するでしょう。

豊かな生活は子どもに恵まれた生活です。産科医療を改革すれば、痛みなく障害のない健康な子どもを産んで育てられ、少子化問題が解決します。遠隔ワ-クにより自然環境のよい場所で子育てすることが可能になります。在宅ワ-クが中心になれば、地域社会に関わる機会が増え、高齢者になっても健康な生活が送れます。残業後にストレス解消にお酒を飲みすぎて体を悪くすることもなくなるでしょう。会社通勤や営業移動のストレスがなくなれば、健康に暮らせるのです。健康ならインフルエンザにかかっても、重篤化しません。早く治そうとして風邪薬を飲むこともなくなります。無駄な移動を無くせば、燃料の節約になり、交通渋滞や事故が減少し、大気汚染も防げるのです。コロナ自粛が日本の社会を改善するよい契機になることを願っています。

社会はウイルス感染症をどの程度許容するべきでしょうか?

これから早急に答えを出していかなければならない難しい問題です。毎年日本では季節性のインフルエンザが流行し、多くの人が感染し、亡くなっています。しかし政府はインフルエンザの感染拡大防止のために外出自粛を要請することはありませんでした。その理由は、多くのインフルエンザの流行は自然現象であり、流行期間は集団免疫の獲得により3カ月程度で終了し、死亡者は老人が多く、社会に対する影響が限られているからです。
 新型コロナ肺炎の場合、政府は7割~8割の接触削減を実現する外出自粛を要請しました。その理由は、国民の生命と生活を守るためです。具体的には
1) 新型コロナ肺炎の致死率が高く、放置すれば多くの死者が発生する。
2) 獲得免疫の持続期間が短ければ、流行が慢性化する。
3) 医療体制が崩壊すると、他疾患の患者が死亡する。
4) 長期の外出禁止政策により失業者が増大し、生活が困窮し治安が悪化する。
などの可能性があり、国民の生命と生活に与える影響が大きいからです。特に糖尿病や高血圧症や心疾患や腎疾患を有する人が新型ウイルスに感染すると重篤化します。

今後このような新型ウイルス感染症が発生するたびに国民の生命と生活が打撃を受けることになるでしょう。この問題が困難なのは、生命を守れば、生活が守れないというジレンマがあるからです。私たちはウイルス感染の拡大を早期に検出分析し、どの程度行動制限をかけるか、どの程度生活補償をするかを迅速に判断できる透明な体制を整えなければなりません。医療介護、小売り、清掃、配達員などの社会基盤維持に不可欠な労働者の生活健康保障も重要です。健康弱者の保護、健康格差の是正にも取り組むべきでしょう。
地震や津波などの自然災害とウイルス感染の流行が重なったら、避難や復興のために人が集まることで感染が拡大してしまします。こうした緊急事態に備え、対処していくことも課題になります。例えば隔離病床に使用できるホテル設計や遠隔医療は重要です。これからの日本の成功は、防災需要で経済を活性化させる仕組みづくりにかかっています。

新型コロナウイルスについて

日本政府は、4月7日に新型コロナウイルスの感染拡大を受け、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく初の「緊急事態宣言」を発令しました。期間は1か月、対象地域は東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡の7都府県でした。4月17日に対象地区は7都府県から全都道府県に拡大されました。政府は感染拡大抑制のために、マスクの着用だけでなく、教育機関の授業中止、飲食店の営業自粛、観光客の観光自粛、公共交通の利用自粛、スポ-ツや文化活動の自粛など、全国規模の外出自粛を要請してきました。しかし医療機関は感染患者の受け入れのため病床数を拡大していますが、保健所による感染検査施設の設置は進まず、いくつかの病院では院内感染が発生しています。医療崩壊や介護崩壊を防止するために、日本国民はこれまで政府の自粛要請によく協力してきました。幸い5月6日の時点で感染者数は減少傾向を見せており、一部の地域の外出制限は解除されました。しかし東京都、北海道、石川県での非常事態は継続されており、国民の不安はまだ続いています。集団免疫が獲得できていないため、第二、第三の流行の可能性があるからです。

日中自宅で過ごしていると、新型コロナ関連のネット情報やテレビ番組が数多く報道されています。しかしウイルス感染症に対する科学的な理解を深める番組は殆どありません。マスコミは連日感染者数を報道していますが、具体的な治療内容は報道されていません。自粛要請で仕事を解雇されて、食費を減らさなければならない人も多く発生しています。多くの人は連休中に帰省することさえできなくなっています。地方自治体はすべての公園の駐車場を閉鎖したために、公園を自動車で利用する人は、健康のために公園で散歩することもできなくなりました。
このような社会的・経済的な停滞が長期化すると、国民の生活、健康、教育が疲弊していきます。政府は、この緊急事態にマスコミや支援給付金を利用して権力を強化し、国民を一方的に監視・管理する法律を成立させることもできます。そうなればたとえ感染者が減少しても一度成立した法律は元に戻らず、民主的社会が崩壊する恐れもあります。国家が新型ウイルスを合成し、ウイルス兵器と解毒剤を開発している可能性もあります。
私たちは、
1) 感染症を科学的に理解し、感染症を回避する。
2) 発熱した場合には、適切に行動する。
3)適切な食事や会話や運動をして、心身の健康維持に努める。
4)政府や自治体に合理的な政策を求め、私たちの自由と生活を守る。
5)ウイルスと共存してゆける社会を構築する。
といった新たな課題を実行していかなければなりません。この5つの課題について考えていきたいと思います。

和食の旨さはマグマのおかげ?

4月22日午後10時にNHKのEテレで又吉直樹のヘウレーカ「和食の旨さはマグマのおかげ?」が放映されました。神戸大学の地質学者の巽(たつみ)好幸教授が、大引伸昭調理師の和食を食べながら、和食の恵みは日本が火山列島であることに起因していることを説明しました。巽教授は、海底の地質調査により巨大噴火を予測する研究をされていますが、美食地質学を提唱しています。
日本は軟水でフランスは硬水です。水質の違いは食文化に大きな影響を与えます。フランスはチキンスープ、日本は昆布だしを愛好しています。その理由を実験で説明しました。
硬水で加熱すると、肉のタンパク質とカルシウムが結合して灰汁(あく)となり、肉の臭みを除去することができます。しかし硬水は昆布の表面にアルギン酸カルシウムの膜ができて昆布の旨みが十分抽出できません。お米は軟水で炊いた方がふっくらします。
日本の河川は100km程度、フランスの河川は1000km程度あります。日本の河川は急勾配なので、岩石中のカルシウムが水に溶け込む時間が少ないので軟水になります。硬水は1リットル中に1.4gものミネラルを含みますが、軟水は0.4gしか含まれていません。
日本列島は3000万年前に大陸から分離を始め、300万年前から山脈が形成されました。年間数mm程度の隆起速度で1万mもの高さになりますが、風化で3000m級の山脈になったようです。これが日本の水質を決めました。
ホタルイカが採れるのは富山湾が1000mもの深海だからですが、日本列島の形成に起因しています。日本近海で寒流と暖流がぶつかるために魚種の多い漁場が形成されました。
蕎麦の名産地と火山帯は重なります。蕎麦は寒冷で痩せた火山灰土でよく育つからです。縄文人は津波を避けるために、丘陵の端に住んでいました。弥生人は稲作をするために海辺の平野に住んでいました。弥生遺跡には津波の跡が見られます。
日本人は自然の試練と恩恵を受けてきました。自然災害に直面してきたから、日本人は無常観を基調とする仏教を受け入れてきたのかもしれませんね。

死体粒子が人間を死体に変える

最近、コロナ感染拡大ニュースの影響で手洗いをする事が多くなりました。手洗いと消毒が感染防止に効果的であることを初めて示したのはハンガリー人のゼンメルワイス産科医師(1818ー1865)です。
ゼンメルワイス医師はウィーン総合病院の隣接する第一産科と第二産科の産婦の産褥熱の死亡率が10%と3%と異なる原因に悩んでいました。彼は第一産科は検視解剖を行う医学生、第二産科は解剖をしない助産婦が出産に携わっていることに注目し、死体に付いている微粒子が医師の手によって産婦に付着する事が原因ではないかと考えました。1947年に同僚のコレチュカ医師が検体解剖時にメスで腕を傷つけたことが原因で高熱を出して死亡したことを知り、自説を確信します。
彼は、産科医たちに石鹸とブラシでの手洗いの後に解剖台の臭い消しに使われていたさらし粉(次亜塩素酸カルシウム)で消毒することを義務付けました。これによって、第一産科の死亡率は2%以下に低減し、消毒の効果は実証され、1861年にゼンメルワイスは消毒法の論文を発表しました。
しかしウィーン医師会の重鎮たちは、産婦死亡の原因が自分たちにあった事を受け入れられず、ゼンメルワイスを病院から追い出しました。彼は病理学者ウィルヒョウにも批判されてしまいます。「死体粒子が人間を死体に変える」という考えは、余りに非科学的だと思われたからです。
故郷に帰ったゼンメルワイスは病院の衛生状態を改善し多くの産婦を救い実績を残します。1864年にパスツールが病原菌による感染説を提唱するまで、多くの医師はゼンメルワイスの考えを受け入れられませんでした。
ゼンメルワイスは多くの産婦を死なせてきた罪悪感があり、彼の批判者たちと10年間以上言い争いをして疲れ果ててしまいます。最後は精神病院に入れられて、そこでの怪我が原因で47歳の若さで死亡します。原因がはっきり分からなくても、効果的な予防策を提唱した者には高い評価を与えるべきだという教訓が残りました。

コロナ回復はいつごろになるのでしょうか? ~自宅待機率と感染率との関係

コロナウイルスの感染が大きな社会問題になっています。感染抑制と経済損失の最小化を両立させるためには、感染率に応じた自宅待機率を実現しなければなりません。自宅待機率と感染率の間にはどのような関係があるのでしょうか?また回復にはどれくらいの時間がかかるのでしょうか?簡単な感染モデルで回復時間を見積もってみました。

 感染者数をN[人] 、平均感染期間をT[時間]とすると、時間⊿tの間に増加する感染者数⊿Nは
・ ⊿N=-⊿t/T・N
となります。これを解くと
・ N=No・exp{-t/T}
となります。これは病院などでは感染者数が平均感染期間Tの間に治癒して減少することを意味しています。
 次に感染者が自分は感染していると知らずに外出し、感染を拡大させる場合を考えます。自宅待機率をp、一人の感染者が単位時間に感染させる平均人数をK[人/人/時間]とすると、感染者数⊿Nは
・ ⊿N=K⊿t(1-p)N-⊿t/T・N
と表すことができます。(1-p)Nは外出している感染者の数で、第一項目は外出感染者が増加させる感染者数、第二項目は平均感染期間Tの間に治癒して減少する感染者数を表しています。これを整理すると
・ ⊿N/⊿t={K T(1-p)-1}・N/T
と書けます。これを解くと
・ N=No・exp[{K T(1-p)-1}t/T]
となります。つまり感染者数を抑制させる条件は、係数が負となる条件すなわち
・ K T(1-p)-1<0 
となります。従って自宅待機率pが満たすべき条件は
・ p>1-1/KT
となります。KTは感染率すなわち一人の感染者が平均感染期間中に感染させる平均人数を表しています。例えば
・ KT=2.5 → p>60%
・ KT=5.0 → p>80%
となります。これまで政府は感染率2.5を想定し60%以上の自宅待機率を目指していましたが、感染率が2倍高ければ、感染抑制のためには80%以上の自宅待機率が必要になります。
 ところで回復にはどれくらいの時間がかかるのでしょうか?感染者数が1/eになる回復時間(=37%に減る時間)は
・ Te=T/{1-K T(1-p)}
となります。平均感染時間Tは2週間程度だと仮定しましょう。下図に感染率KTが2.5(赤丸)、3.5(青ダイヤ)、5.0(緑四角)の場合の回復時間Teの自宅待機率p依存性のグラフを表示します。


例えば感染率KT=2.5の場合(赤丸)はどうでしょうか?
自宅待機率p=61%であれば、
・ Te=T/{1-2.5・(1-0.61)}=T/0.025=40・T=20カ月
となります。自宅待機率が61%であれば、回復に1年8カ月かかることになり、来年の夏にオリンピックを開催することはできません。
自宅待機率p=65%であれば、平均感染時間Tは4カ月になります。つまり2月の時点で緊急事態宣言を発令していれば、6月には収束しているので、オリンピックは開催できたかもしれません。
自宅待機率p=80%であれば、
・ Te=T/{1-2.5・(1-0.80)}=2・T=1カ月
で回復します。政府が十分な休業補償をして、自宅待機率を80%に高めれば、回復時間が1カ月で済むということです。アメリカ政府はこのことをよく知っていたので、早期に莫大な休業補償に踏み切ったと考えられます。日本政府は十分な休業補償をしなかったので、回復時間が長引くことになります。全体の補償金額が増大し、このままでは国民は膨大な赤字国債を抱えることになるでしょう。

糖1分子で生産できるATP数はいくつでしょうか?

結局NADHを電子伝達系で用いる場合には、合計10H+がマトリクスから膜間腔へ輸送されます。FADH2の場合は合計6H+が膜間腔へ輸送されます。膜間腔のH+濃度と電位が高くなっているので、ミトコンドリア内膜を挟んだプロトン駆動力を利用してATP合成酵素がATPを合成します。

ATP合成酵素はF0サブユニットとF1サブユニットによる分子モ-タとして機能します。F0はミトコンドリア内膜に埋まっていて、F1はミトコンドリア・マトリクスに突き出た形で存在しています。F0モーターがH+の濃度勾配によるエネルギを使ってF1モーターを回すことによって、ATPを産生しています。3分子のH+がマトリクスへと輸送されるごとにATP1分子が合成されます。

しかし、実際にマトリクスにおいてATPを合成するためには、ATP合成の材料となるADPやリン酸Piをマトリクス内に取り込む必要があります。また、合成されたATPの大部分は細胞質で利用されるため、マトリクスから細胞質へと輸送される必要があります。

内膜を隔てたATP、ADP、Piの輸送
ミトコンドリア内膜を隔てたATP、ADP、 Piの輸送はアデニン・ヌクレオチド・トランスロカーゼとリン酸輸送体という2つの膜タンパク質によって行われています。アデニン・ヌクレオチド・トランスロカーゼは、ATP-ADP交換タンパク質のことで、細胞質のADP3-をミトコンドリア内へ、ミトコンドリア内のATP4-を細胞質へと対向輸送しています。この対向輸送では、プロトン勾配の電荷の差が用いられています。

リン酸輸送体は、細胞質のPiをミトコンドリア内へと輸送するときにH+も同時にミトコンドリア内へと共輸送します。この共輸送ではH+の濃度差が用いられています。ちなみに、対向輸送とは、膜の内外で異なる物質を相互に逆方向に移動させる輸送のことで、共輸送とは、膜の片側から異なる物質を同方向に移動させる輸送のことをいいます。

ミトコンドリアの外にATPを輸送し、マトリクスにADPを供給するためには、H+1個分のプロトン駆動力が用いられていました。ATP合成酵素は3H+で1個のATPを産出するので、細胞質内でATPを1分子増やすためには、4個分のH +が膜間腔からマトリクスに流入する必要があります。この数はNADHやFADH2が1分子あたりでどれくらいのATPを産生するかの指標となります。

細胞質内のATPを1分子増やすためには、4個分のH +が膜間腔からマトリクスに流入するということを踏まえると、NADH1分子あたり
・10[H+]/4[H+/ATP]=2.5ATP
FADH21分子あたり
・6[H+]/4[H+/ATP]=1.5ATP
が合成されることになります。

好気呼吸では、1分子のグルコースが「解糖系→ピルビン酸のアセチルCoAへの変換→クエン酸回路」という経路でATPやNADH、FADH2を生成していました。解糖の過程で2分子のATPと2分子のNADH、2ピルビン酸→2アセチルCoAの過程で2分子のNADH、クエン酸回路の過程で2分子のATP(GTP)と6分子のNADHと2分子のFADH2が生成されます。

・4ATP+10NADH・2.5[ATP/NADH]+2FADH2・1.5[ATP/FADH2]=4+25+3=32ATP
結局1分子のグルコ-スは、嫌気的代謝では2分子のATPしか生成できませんが、好気的代謝では32分子ものATPを細胞外に生成できることが分かります。

細胞は糖を取り込み、ミトコンドリアで大量のATPを合成できることが分かりました。青森出身の安保先生によると、若い時は解糖系の瞬発力を主に使い、老年期になるとミトコンドリア系の持久力を主に使って活動するので、年齢ともに少食にしていった方が適正体重を保ちやすいそうです。

 

TCA回路と電子伝達系

解糖系では1分子のグルコ-スは2分子のピルビン酸を生成するので2分子のNADHを生成します。さらに1分子のピルビン酸は、細胞内のミトコンドリアに送られ、ミトコンドリアのマトリックス内のTCA(tricarboxylic acid cycle)回路で3分子のNADHを発生させます。ミトコンドリアは外膜、膜間腔(まくかんこう)、内膜、マトリックスの2重膜構造を有しています。細胞によっては100~3000個ものミトコンドリアが含まれています。

運動してミトコンドリアが増えると同じ呼吸量でもATPの生産効率が高まるので、楽に走れるようになります。運動前は空腹にしておいて、最初に筋肉トレ-ニングをして汗をかいて有酸素運動状態に入ってから30分歩くだけでミトコンドリアは増加します。サウナの後に水風呂に入るとミトコンドリアは増加します。週末の2日間は摂取カロリを30%減らすのが有効です。日本医科大学の太田成男教授によると1日2時間の運動を1週間続けるだけでミトコンドリアは30%増加すると言われています。

TCA回路ではATP を直接作るのではなく、NADHやFADH2を作ります。さらにNADHやFADH2が呼吸鎖系でミトコンドリア内膜に水素イオンH+の濃度勾配を形成することにより、ATPを産生します。TCA回路は糖代謝だけでなく、アミノ酸代謝、尿素回路、糖新生など多くの代謝経路の仲立ちをしています。

TCA回路の全体反応は
・CH3-CO-S-CoA+3NAD ++FAD+2H2O+GDP+H3PO4
 → S-CoA+2CO2+3NADH+FADH2++2H++GTP
です。

NADHとFADH2はミトコンドリア内膜に埋め込まれた4つのたんぱく質複合体と反応してNAD +とFADに戻り、その際にミトコンドリアのマトリックスから膜間腔にH+を放出します。NADHは、解糖系で2分子、ピルビン酸脱水素酵素で2分子、TCA回路で6分子、合わせて10分子のATPを発生します。複合体ⅠでNADHはFMN(フラビン・モノヌクレオチド)と反応し、FMNに水素を渡します。FMNH2はFeSクラスタを介して、CoQ(ユビキノン)に水素を渡します。
・NADH+H+ +FMN→ NAD++FMNH2
・CoQ+FMNH2→CoQH2+FMN
複合体Ⅱでは、コハク酸がフマル酸(2重結合あり)に変化するときには自由エネルギ変化が小さいのでFADが使われます。
・HOOC-CH2-CH2-COOH+FAD →HOOC-CH=CH-COOH+FADH2
この反応で膜間腔に放出されるH+はありません。FAD (=Flavin Adenine Dinucleotide) はフラビン・アデニン・ジヌクレオチドの略語で、酸化還元反応における補酵素の一種です。FADの酸化還元電位は -219 mV で NAD 系より100mV程高く、開放エネルギが少なくNAD が使えないような反応で脱水素することができます。FADH2ではFADの左上の環が3つ並んだ部分の2つの酸素の二重結合がOH基になります。FADはADPにC5系炭素鎖と3環系のキノンが結合した構造をしています。

複合体Ⅲが行う電子伝達はQサイクルと呼ばれます。この反応では、まず、2分子のユビキノール(CoQH2)がユビキノン(CoQ)に変換される過程で4Hを膜間腔へと放出します。
・2CoQH2→ 2CoQ+4H++2e+2e
・CoQ+2H++2e→CoQ H2
・Cyt(Fe3+)+2e-→Cyt(Fe2+)
なる反応が生じ、シトクロムcが還元されます。シトクロムcは膜間腔側にありヘム鉄(=鉄+ポルフィリン環)が含まれています。
複合体Ⅳは、シトクロムcオキシダーゼと呼ばれ、シトクロムc(Fe2+)を酸化して酸素を還元します。複合体 Ⅳが行う電子伝達の第一段階では、シトクロムc の電子がCuAに渡されます。その後、電子はヘムa→ヘムa3→CuBを経て、最終的に酸素(1/2O2)へと渡され、水(H2O)に変換されます。酸素分子の酸化還元電位は約 +810 mVであり、FAD よりはるかに電子を受け取りやすくなっています。
・Cyt(Fe2+)+2H++1/2O2 → Cyt(Fe3+)+H2O
このシトクロムcから酸素に電子が2個渡される過程で、2分子のHがマトリクスから膜間腔へと輸送されます。複合体Ⅳにはヘム鉄(ヘムa)が多く含まれていますので、青酸カリがこのヘム鉄に配位すると、電子伝達系を阻害して、窒息してしまいます。

生物の活動メカニズムについて

私たちは炭水化物を食べてエネルギ、すなわちATP(=Adenosine TriPhosphate)を生成して活動しています。1939年にEngelhardtらによって、筋収縮のタンパク質であるミオシンがATPを加水分解することが発見され、1942年にセント=ジェルジによってATPが筋収縮に関わるエネルギ源であることが解明されました。ATPはリボ-スの両側にアデニンと3リン酸が結合した構造をしています。

生体内では、ATPにリン酸1分子が離れたり結合したりすることで、エネルギの放出・貯蔵、あるいは物質の代謝・合成が行われています。ATPは加水分解によりエネルギを発生させます。酵素反応がATPの加水分解反応と共役することで、物質の代謝・合成が行われるのです。すべての真核生物がATPを直接利用しているため、ATPは生体のエネルギ通貨とも呼ばれています。
・ATP+H2O → ADP(アデノシン二リン酸)+ H3PO4(リン酸)
・ΔG°’ = −30.5 kJ/mol (=−7.3 kcal/mol) 標準自由エネルギ変化
細胞内では、ATP濃度はADPの10倍程高く、リン酸濃度も標準状態の1%以下であるため、細胞内の環境ではATPの加水分解に伴って放出される自由エネルギは−10〜−11 kcal/mol にもなります。

糖からATPはどのように産出されるのでしょうか?

炭水化物は胃腸で消化されて糖となります。糖は腸で吸収され血液と共に各細胞に送られ、細胞質内の解糖系で分解されてピルビン酸(CH3-CO-COOH)になります。嫌気的条件下ではピルビン酸は乳酸になります。好気的条件下ではピルビン酸は、CO2(=ピルビン酸のカルボキシル基に相当)を排出し、アセチル基(CH3CO-)になり、脱水素酵素においてNAD+を還元して、補酵素(HS-CoA)と不可逆的に反応し、
・CH3-CO-COOH+NAD+ → CH3-CO-S-CoA+CO2+NADH+H+
アセチルCoA(CH3-CO-S-CoA)を生成します。反応にはビタミンB1が必要です。これは不可逆反応なので、動物は脂肪酸から糖を合成できません。脊椎動物の細胞では糖から乳酸になるのは 4% 程度で、殆どは好気的にアセチルCoAを生成します。脂肪やたんぱく質も分解されてアセチル CoAとなってTCA 回路に入り、最終的に二酸化炭素 にまで酸化されます。過剰のアセチルCoAは中性脂肪を生成するため、アセチルCoAの代謝を抑制することで動脈硬化、高脂血症を防ぐことができます。アセチルCoAはADPに2つのペプチド結合を有する側鎖がついた構造をしています。

NAD (=Nicotinamide Adenine Dinucleotide) は ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド) と呼ばれる電子運搬体です。NADは2つのHを同時に引き抜き、自分がNADHになりつつ水素イオンH+を放出します。NADの酸化還元電位は‐320 mV と低く、異化代謝系で比較的大きなエネルギが解放される場合に、酵素反応に共役して脱水素反応を担います。NADはアデノシン・モノリン酸にニコチンアミド・リボ-ス・リン酸が酸素を介して結合した構造をしています。

血清(serum)と血漿(plasma)の違いは何でしょうか?

血清と血漿の違いは,全血から細胞成分を取り除いたものの中に凝固因子(フィブリノゲン)が含まれるかどうかにあります。フィブリノゲンとは、血液凝固因子の第Ⅰ因子で、血液凝固の最終段階でフィブリンという水に溶けない網状の線維素となり、血球や血小板が集まってできた血栓の隙間を埋めて、血液成分がそこから漏れ出さないようにしています。
血漿とは抗凝固剤を加えて遠心分離した上清み液で、凝固因子を含みます。抗凝固剤とは血液を凝固させない化合物です。血清は抗凝固剤を加えずに放置した上清み液で、凝固因子を含みません。血漿は凝固反応を起こしていない成分ですから、体内を流れていた時の状態を維持しています。血漿の場合は抗凝固剤に何を用いるかによって更に分類されます。

フィブリノゲンは肝機能検査としても用いられます。これはフィブリノゲンが肝臓で合成されているためで、肝硬変や肝臓がんで肝臓の合成能力が低下すると低値を示します。さらに感染症や急性心筋梗塞などの疑いがあるときにも行ないます。フィブリノゲンは、体内に炎症や組織の変性が生じると血液中に増加して高値を示します。フィブリノゲンが何らかの原因で増加すると、体のいろいろな場所で血栓ができやすくなります。

多種類の抗体はどのように作られるのでしょうか?

抗体は白血球のB細胞で作られ、おもに血液など体液中に存在します。リンパ球のB細胞が抗体を作ると同じ異物が再び侵入したとき、簡単に撃退できるようになります。これが免疫作用です。B細胞が作る抗体の種類は100億を超えます。抗体はすべてY字型の構造をしており、左右に開いた腕の先で抗原に結合します。抗体のアミノ酸の並び方は2万数千個の遺伝子によって決められています。2万数千の遺伝子から、100億の抗体をどうしたら作れるのかを解明したのが、利根川進教授です。

 抗体の腕のたんぱく質をコ-ドする遺伝子領域には、可変なVDJ遺伝子領域と固定領域Cがあります。VにはV1V2V3・・があります。成熟したB細胞のDNAには例えばV2D3J3Cという遺伝子配列が決定しています。この配列をRNAが読み取り、抗体のたんぱく質が合成されます。VDJの組み合わせの仕方が沢山あるので100億種類もの抗体を作ることができるのです。当時DNAに書き込まれた遺伝子情報は一生変わらないと考えられてきました。しかし、1976年に利根川博士は「B細胞だけは自らの抗体遺伝子を自在に組み替えて、無数の異物に対応する無数の抗体を作ることができる」ことを証明したのです。

抗凝固剤の種類と作用について

採血をされているとき、看護師が採血管を何本も使い、採血管の長さやふたの色が異なっていることに気づきます。採血管には、検査目的によって異なる種類の抗凝固剤が入っています。抗凝固剤が入っていない採血管はプレ-ン管と呼ばれ、生化学・内分泌・感染症・自己抗体・腫瘍マーカー検査などに用いられます。抗凝固剤にはヘパリン、EDTA、クエン酸、NaF解糖系阻害剤などがあります。

ヘパリンはトロンビン(Ⅱa因子)やXa因子等の活性型凝固因子の作用を抑制する抗凝固剤です。ヘパリンリチウムは生化学検査、主にNa・K・Clなどの電解質、血液pH、染色体分析、リンパ球培養やコレステロールなどの脂質を測定する検査で用いられます。

EDTAはエチレンジアミン四酢酸(ethylene diamine tetraacetic acid)という二価のイオンのキレ-ト吸着剤です。EDTAは、生化学検査を阻害するので、血球観察や血液学的検査つまり赤血球・白血球・血小板の数やヘモグロビン濃度を測定する検査で用いられます。EDTAを使うと、血液の凝固因子のひとつであるCa2+と非可逆的に結合し、血液が凝固しなくなります。
クエン酸ナトリウムは血液の凝固作用を検査するのに用いられます。クエン酸ナトリウムはCa2+と可逆的に結合します。検査時には血液とクエン酸の混合比を9:1に固定します。採血保管時は凝固系を止めた上で、後で凝固系の測定を行います。
NaFは血糖値の正確な測定に用いられます。NaFはCaを除去し、解糖系の最後のステップを担うエノラーゼを阻害し、グルコースの消費を止める作用があります

真空管採血の場合、1本目の採血管には針を刺した時に流出する組織液が混入し、凝固しやすくなります。そのため1本目には凝固しても構わない生化学に分注します。2本目以降はシリンジ採血と同じ順番になり、凝固しては困るものから順に採血します。また4〜5回の転倒混和も忘れずに行います。激しく振ると溶血してしまうので緩やかに振ります。

生化学(1本目)→凝固(2本目クエン酸)→電解質(3本目ヘパリン)→血算(4本目EDTA)→血糖(5本目NaF)→その他の抗凝固薬なしのプレーン管(6本目)の順番になります。血算とは血球算定検査の略語です。

血液検査は病気の有無の診断だけでなく、疾病の予防や栄養状態の改善にも役立てることができます。血液検査の結果を理解できるようになることは重要になってくると思います。

血液型の違いは何に起因するのでしょうか?

血液型は、赤血球の表面にある糖鎖の違いに起因します。O型の人は、ガラクト-スとNアセチルグルコサミンとカラクト-スの3個の糖がつながった糖鎖を持っています。A型の人はO型の3個の糖に加えてA型になる糖(Nアセチルガラクトサミン)を1個持っていて、B型の人はO型の糖に加えB型になる糖(ガラクト-ス)を1個持っています。つまりA型、B型のもとになっているのはO型です。AB型はA型とB型の糖鎖をそれぞれ持っています。

なぜ血液型が存在するのでしょうか?

 血液型が存在する理由は、21世紀になってからウイルスの蔓延を防ぐためだと考えられています。ウイルスは細胞外に出るときに細胞表面の糖鎖構造をまといます。これには各血液型の特徴が刻まれています。それがまた別の身体に侵入すると、異なる血液型の糖鎖構造がウイルスと一緒に身体に入ってくることになり、抗体が集中攻撃するので、感染し難くなるというのです。血液型の存在は、種の絶滅を回避するためのリスクヘッジになっています。

 

ABO型血液型を発見した人は誰でしょうか?

ABO型血液型を発見した人はオーストリアの病理学者カール・ラントシュタイナー(Karl Landsteiner, 1868年~ 1943年)博士です。ラントシュタイナーは1900年に血液の凝集実験を行い、ABO型血液型を発見しました。1922年にユダヤ人迫害を逃れるために渡米し、1930年に血清学および免疫化学への貢献によりノーベル医学・生理学賞を受賞しました。1940年には弟子のウィーナーとともに新たな赤血球抗原である「Rh抗原」を発見します。ユーロ導入以前の1000シリング紙幣には1997年以降、彼の肖像画が描かれていました。

ABO型血液型発見の経緯

1889年に北里柴三郎(1853-1931)は破傷風菌の純粋培養に成功し、翌年、ベーリングと共に破傷風菌の毒素を無力化する「抗体」を発見し、血清療法を確立しました。ラントシュタイナーが凝集実験を行ったのは、その抗原抗体反応がほぼ解明された時期にあたります。
ラントシュタイナーは、イギリスの病理学者シャタックの「肺炎患者の血球と別人の血清を混ぜていた際に凝集があった」という報告を聞いて、これが正しければ肺炎の診断に利用できないかと考え、追試を行いました。そこで自分を含む22人の健康な同僚の血液を血球と血清に分けて互いに混ぜ合わせる実験を行ったのです。当時は細菌学が全盛で、新しい細菌がしばしば発見されていました。血液の凝集が肺炎菌などの微生物によるものである可能性もありました。そこでまず健康な人の血液で実験を行い、赤血球と凝集反応を起こす抗体が別人の血清に含まれている可能性を調べたのです。

実験の結果、血液の凝集反応は健康な人同士でも起こりうる生理的現象であり、肺炎診断には使えないことが分かりました。しかし凝結には規則性があり、そのパタ-ンはA型とB型とO型の3つに分類できることが分かりました。これは実験対象者にはAB型の人がいなかったからでした。AB型は1902年に同僚の研究者によって発見されました。ちなみにラントシュタイナー博士の血液型はA型でした。血漿中の抗体がグループ外の血球にある抗原を敵とみなして攻撃した結果、凝集が生じることが解明されたのです。これによって運を天にまかせるような輸血が科学に基づく安全な輸血に変わりました。科学の偉大な発見の多くは予期しない実験結果によるものなのです。

残念ながら、発表当初は基礎医学分野の地味な論文として受け止められ、大きな反響はありませんでした。しかし1910年ごろ、アメリカのモスらが、輸血の死亡事故の主な原因は、ラントシュタイナーが指摘している血液型不適合によるものであると宣伝したことにより、血液型を輸血に応用する動きが急速に高まり、輸血の死亡事故は激減しました。戦争では輸血は兵士の命を救う技術になりました。

血液型について

平日の8時15分からテレビ東京で韓国ドラマが放映されています。人を寄せ付けない天才女性外科医が病院船の人たちの優しさに触れて心を開いて行くというドラマです。先日は病院船の乗組員が、銃弾で撃たれたマフィアのボスを救うために献血をするシ-ンがありました。ボスの血液型はB型だったので、乗組員はB型とO型の人は輸血をして下さいと頼まれていました。


O型からB型の人に輸血ができるのはどうしてでしょうか?

血液を取り出して静置しておくと赤血球と薄黄色の血漿(けっしょう)に分離します。血漿には抗体が含まれています。免疫を担う抗体は異物と反応し、異物は除去されます。A型の血液をB型の人に輸血すると凝縮が生じてしまいます。これはB型の人の抗体がA型の赤血球(抗原)を異物と見なして抗原抗体反応を生じさせるからです。ABO血液型は、赤血球の表面に突き出ている糖鎖と血清中のY字型のIgM抗体(たんぱく質)で決まります。A型の人はAタイプの糖鎖とBタイプの抗体を持っています。B型の人はBタイプの糖鎖とAタイプの抗体を持っています。凝縮はA型の血液中の赤血球のAタイプの糖鎖が、B型の人の血清中のAタイプの抗体と結合するために生じます。


一方O型の人はAタイプやBタイプの糖鎖を持たず、AタイプとBタイプの抗体をもっています。O型の血液をそのままB型の人に輸血すると、O型の血漿中のBタイプ抗体がB型の人の赤血球のBタイプの糖鎖と結合するので、凝縮反応が起きてしまいます。O型の血液をB型の人に輸血する場合は、予め遠心分離機を用いてO型の血液から血漿を除去し、O型の赤血球だけB型の人に輸血します。O型の赤血球にはAタイプやBタイプの糖鎖がないので、B型の人のAタイプの抗体との反応は生じません。しかし血漿除去は完全ではないので、輸血は基本的には同じ血液型の人の間で行われます。

ちなみにAB型の人はAタイプとBタイプの糖鎖を持ち、AタイプやBタイプの抗体はありません。AB型の人はAB型の人にしか輸血してもらえません。

久保田産科麻酔医へのQ&A 

産科麻酔医 久保田史郎の過去のニュース!
ー赤ちゃんは震えているー
この朝日新聞の記事は1997年(平成9年)5月17日に掲載されたものです。なんと23年前に学会で発表していました。低体温症(低血糖症⇒発達障害)を誘発する出生直後のカンガルーケアと飢餓を招く完全母乳(低血糖症・重症黄疸⇒発達障害)を即刻廃止させなければなりません。日本周産期新生児学会、他7学会が推奨する寒い分娩室におけるカンガルーケアは「低体温症⇒低血糖症⇒発達障害」を、生後3日間の完全母乳は脳に障害を遺す低血糖症・重症黄疸・脱水を引き起こしています。高インスリン血症児(日本では6人に1人)を出生直後に低体温症に陥らせると確実に低血糖症に陥らせます。日本の赤ちゃんが障害なく元気に育つためには前記学会と現行の助産師教育を見直さなければなりません。
出生直後の赤ちゃんを34℃に温められた保育器に2時間だけ入れるとチアノーゼ(低酸素血症)・初期嘔吐・重症黄疸・低血糖症を予防する事が出来ます。

 Q1. 私は久保田先生の言っている事はまともだと思いますが、どうして他の医者たちは賛同してくれないのでしょうか?

久保田  産科学教科書が、カンガルーケアには体温上昇作用があると事実と異なる発表をしているからです。教科書の間違いを改訂しない限り、低体温症に陥る新生児が増え、その結果、赤ちゃんは低血糖症(発達障害)になります。もう一つの問題は、出産後の新生児管理(体温・栄養)は助産師任せになっている事です。未熟児など、異常の新生児管理は産科医・新生児科医が行いますが、正常に元気に生まれた赤ちゃんの管理は助産師任せになっています。正常に生まれた赤ちゃんが低体温と飢餓(低栄養+脱水)の犠牲になっているのです。発達障害がこれからも増えるかどうかの鍵は、助産師次第です。カンガルーケアと完全母乳を積極的に実践する国立病院機構・日赤病院などの「赤ちゃんに優しい病院」で教育を受けた助産師は間違いを刷り込まれているため危険です。助産師教育を徹底的に見直さなければなりません。

Q2    糖質制限をしていない通常食の妊婦の場合、出産直後の新生児の脳のATP源はグルコースのみで、ケトン体は殆ど利用できない、という理解でよろしいでしょうか?

久保田  ケトン体では体温調節が出来ません。つまり、ケトン体は殆ど利用できない、が正解です。


 ありがとうございます。だからグルコースだけで議論しているのですね。ユニセフのガイドラインにはケトン体や乳酸も利用できると書いてあったのでお伺いしました。

久保田  宮下助産師は厚労省の「授乳と離乳の支援ガイド」の策定委員会で-15%までを生理的体重減少としている。7%以上は飢餓と考えるべきです。Q3.   久保田先生、ご説明ありがとうございます。産科学教科書を書いたり、助産師教育をするのは医者ではないですか? これだけ筋の通った説明を何十年もしているのに、医者が賛同してくれない理由が理解できません。

久保田 助産師教育の殆どは助産師が行っています。そのため助産師は産科医の言うことを聞き入れません。医者(産科医)が賛同してくれない理由は、これまで生理的と考えられていた医学的常識が完全に崩れ、非常識(病気)になるからです。産科医はこれまでの過ちを認めたくないのです。久保田式新生児管理法をお産の常識にすると小児科やNICUに入院する赤ちゃんが激減します。空きベッドが増えると、病院は赤字になります。例えば、完全母乳を促進すると重症黄疸の赤ちゃんが増えます。重症黄疸は飢餓(低栄養+脱水)が原因だからです。大きい病院では重症黄疸の治療はNICUに入院して行っています。重症黄疸の入院治療費は最低でも1日 10万円です。小児科にとって入院患者は大事なお客様なのです。また重症黄疸は難聴の原因という事が分っています。難聴の赤ちゃんが増えると耳鼻科は忙しくなります。近年、精神科病院がきれいになったのは、発達障害の子供が増えたからです。

Q4.  助産師が産科医の言うことを聞き入れないとは、驚きです。早期新生児の15%もの体重減少は生理的ではなく、隠れ高インスリン血症などの病気やカンガルーケアによるものだということですね。全ての医者が患者ではなく病院の利益ために働いているということですか。残念ですが、あり得ることです。発達障害の相談室は半年待ちです。久保田先生が危惧しておられたように、近年の出生数の減少は危機的状況です。change.orgなどで改革の賛同者を募るのはどうでしょうか?

久保田 「発達障害の原因と予防」を2015年3月に自民党本部で講演しましたが、その時の委員長が現在の衛藤少子化相です。これで日本は終末期も同然です。私が開業を辞めたのは医系組織からの強烈なパワハラ(冤罪)があったからです。一度だけではありません。

久保田 これ以上やると私が消されます。

 う~ん、絶句です

久保田  まさに“事実は小説より奇なり”です。福岡市の久保田産婦人科麻酔科医院のHPをご覧になってください。私は40年前から発達障害の増加を予測していました。「久保田史郎」・「発達障害の原因と予防」で検索すると記事が出てきます。去年の夏までは、「発達障害」だけで私の記事がトップに紹介されていましたが、現在は削除されています。

http://www.s-kubota.net/

http://www.s-kubota.net/Stan/01.htm

Q5 .  全部読みました。素晴らしいです。発達障害の原因が気になっていました。溝口徹さんの「発達障害は食事でよくなる」を読んで久保田先生のことを知りました。

久保田  音楽療法・運動療法と溝口徹先生の「発達障害は食事でよくなる」の組み合わせに頼るしかありません。

久保田 「赤ちゃんに優しい病院」では-15%までの体重減少は当たり前の様です。この事例(赤線)、その後、発達障害と診断されました。

久保田  発達障害と診断された赤ちゃんの出生直後からの体重減少は著しく、生後5日間の体重曲線は、その殆どが-10 % ~ -15%だと考えられます。カンガルーケアで低体温症に陥った赤ちゃん・高インスリン血症の赤ちゃんは確実に低血糖症に陥っています。発達障害を防ぐためには、生理的体重減少を-5%以内にすべきです。

久保田  日本産婦人科医会は科学的根拠なく-10%までを生理的体重減少と決め付けています。怖いことに、出生体重に回復する時期は「3週間以内」つまり、1週間以上は間違いなく飢餓状態にあるのです。出生直後の赤ちゃんを1週間も飢餓にすれば確実に脳に障害を引き起こします。日本産婦人科医会は完全に崩壊しています。久保田式新生児管理法では4日で戻っています。久保田産婦人科では出生時の体重に回復しなければ退院許可が出ませんでした。黄疸による再入院は、1例もありませんでした。


久保田史郎 「赤ちゃんに優しい病院」で有名な久留米市の聖マリア病院でも-15%までを生理的体重減少としていました。

久保田史郎 その他のデータです。論文はGrowth Patterns of Neonates Treated with ThermalControl in Neutral Environment and NutritionRegulation to Meet Basal Metabolism 久保田産婦人科医院のHPに掲載しています。

少子化対策の前に! (久保田医院のHPより)
国は少子化対策に待機児童の解消・教育の無償化などの育児支援を唱えていますが、少子化の改善にどれだけの効果があるのか心配です。そう考える理由は少子化対策に於いて最も重要な妊婦支援(図46)が欠如しているからです。仮に、人口が増えたとしても発達障害(図21)・児童虐待(図27)・医療/社会福祉費は人口増加に比例して確実に増えます。何故ならば、新生児管理の基本である出生直後の体温と栄養に関するお産の設計図(産科学教科書)が根底から間違っているからです。
 
日本で発達障害が増える理由は、母乳が滲む程度しか出ない生後3日間、糖水・人工ミルクを全く飲ませない完全母乳で哺育された赤ちゃんが世界一の飢餓(低栄養+脱水)に陥っているからです(図32)。教科書の間違いとは、日本産婦人科医会が完全母乳(母乳分泌不足)による出生直後からの著しい体重減少(飢餓)を生理的体重減少と定義していることです(図31)。そのため赤ちゃんの飢餓が放置され脳の発達に悪影響を招いています。赤ちゃんを出生直後に低体温症や飢餓に陥らせる医療行為はまさに児童虐待(ネグレクト)そのものです。母乳が出ない生後3日間の完全母乳と寒い分娩室(平均25℃)でのカンガルーケア(早期母子接触)を中止しなければ日本で生まれる6人に1人(図22)の高インスリン血症の赤ちゃんは出生直後に低血糖症(図23)に陥り、脳に永久的な障害を引き起こします(図21・図44)。私は早期新生児の低血糖症と飢餓こそが発達障害の主原因と考えています

私は1983年の開業当初から、発達障害の原因と予防法についての研究を行ってきました。発達障害の予防に関する周産期側からの研究は世界でも例がありません。長年の研究で解明できたことは、発達障害は遺伝やワクチンなどではなく、早期新生児の冷え性と飢餓による低血糖症・重症黄疸・脱水が原因と確信し得たことです(図44)。厚労省や医学会などが推進する母乳育児推進運動が日本の赤ちゃんを低血糖症・重症黄疸・脱水に陥らせているのです(図23・図45)。この事は平成27年3月12日に自由民主党本部(障碍児者調査会:衛藤 晟一会長)において、発達障害の原因と予防策について講演させて頂きましたが、3年経っても何ら改善されません。発達障害の原因とされる新生児の低血糖症・重症黄疸・高Na血症性脱水は母乳が満足に出ない生後数日間の飢餓が原因です。幸い、それらの疾病はお産に予防医学を取り入れた久保田式新生児管理法(生後2時間の保温+超早期混合栄養法)でほぼ完全に防ぐ事が可能です(図26・図43)。出生直後の低体温症(図1)を防ぐための生後2時間の体温管理(図2:下段)と母乳の出が悪い生後数日間の栄養不足を人工ミルクで補足する事によって出生直後からの体重減少は著しく改善(図32・図33・図34)され、発達障害の危険因子である低血糖症・重症黄疸・脱水を防ぎ(第9章参照)、ひいては医療費/社会福祉費などの抑制効果は数兆円規模(図42)と予測します。

お産に予防医学を導入し病気を防ぎ無駄な医療費を削減することによって、少子化対策(妊婦支援+育児支援)に予算を充当することが出来ます。小池都知事が災害時用に「液体ミルク」の準備を進められている様に、出産直後の母乳が出ていない時期(とくに、生後3日間)には人工ミルクを積極的に飲ませ赤ちゃんを飢餓から守るのが新生児管理の基本です。出生直後の新生児冷え性を防ぐための保温と生後数日間の飢餓を防ぐために人工ミルクを飲ませるだけで発達障害は最低でも1/5~1/10に激減します。当院は開業当初(1983年)から閉院する2017年7月まで34年間 約15000人の赤ちゃんに対して、久保田式新生児管理法(図26)を行ってきました。事実、当院で生まれた赤ちゃんに発達障害児が極めて少ないとの情報が市関係者や福岡市立こども病院の小児科医からありました。情報公開が可能になれば発達障害の原因解明・予防策は簡単です。発達障害は遺伝病ではなく予防可能である事を知った妊婦さんは安心して自信をもって妊娠・出産に臨める様になります。個人情報保護法の厚い壁が医学の進歩を妨げ、発達障害児を増やし、少子化を加速させているのです。

私は平成29年7月に医療法人 久保田産婦人科麻酔科医院を閉院しましたが、この度、『妊婦と赤ちゃんに学んだ冷え性と熱中症の科学』の本を東京図書出版から11月7日に上梓しました。日本のお産の常識(自然主義)がいかに非科学的か、科学(予防医学)の知識が届かないところで発達障害児・医療的ケア児・脳性麻痺が増えているのです。この事実を周産期医療の関係者だけでなく、他科の医師・医学生・助産師・看護師・保育士・保健所・政治家・報道などに是非とも知って頂きたく、産科開業医の生の声(書籍)をお届けする次第です。厚労省が後援する『赤ちゃんに優しい病院(BFH)』の認定制度が日本に存続する限り発達障害は増え続けます。何故ならば、助産師の多くがカンガルーケアと完全母乳を積極的に行う赤ちゃんに優しい病院の助産師学校出身者だからです。とくにBFH出身の助産師は出生時から-15%までの体重減少を生理的体重減少と教育されています。助産師への誤った教育が赤ちゃんを飢餓に陥らせているのです。発達障害の増加に歯止めを掛けるためには、まず助産師教育の見直しを急がなければなりません。日本のお産の一番の間違いは病気(発達障害)を防ぐ為の予防医学が欠如している事です。この本は、当院で出生した約15000人の赤ちゃんからの皆様へのメッセージです。日本の明るい未来のために役に立てて頂ければ幸いです。

平成30年1月7日 

久保田史郎(医学博士)
日本産科婦人科学会専門医、麻酔科標榜医
株式会社 風(かぜ)
久保田生命科学研究所(代表)
佐賀市富士町下無津呂三本松1559

日本の崩壊を防ぐためには出産改革が必要です

日本の令和1年の出生数が86万人に落ち込んだニュ-スがありました。九州の産婦人科医の久保田先生が7年後の出生数が50万人まで減少すると予測しています。その理由が近年問題になっている発達障害児の急増によるものだということです。発達障害児を持った母親がその子の育児に手がかかり過ぎて、第2子を生むことが難しくなるからだと思います。これは大変なことです。


発達障害児の増加は指数関数的なので、16年以内に日本の出生数は消失する恐れがあります。このままでは日本の年金、福祉、医療、教育などの制度が崩壊するだけでなく、日本自体が崩壊することは確実だということです。


発達障害児の増加曲線と虐待相談件数の増加曲線は酷似しています。これは発達障害児を育てることは難しく、親が虐待してしまうことを示していると考えられます。ADHDの治療薬の増加は薬を飲まされている重度の発達障害児が急増加していることを示しています。
久保田医師によると、発達障害は遺伝によるものではなく、分娩時の赤ちゃんの低体温と低血糖による脳障害であることが分かっています。1993年に厚生省がユニセフが提唱する完全母乳を導入したために新生児の低血糖が発生し、同様に2007年のカンガル-ケア導入により新生児の低体温症が発生し、脳障害を受けた発達障害児が急増したと考えられます。赤ちゃんの体温は母親の体温より高いので、抱かれた赤ちゃんの体温は低下してしまうのです。カンガル-ケアによる脳性麻痺の発生もあり裁判も起こっていますが。厚生省は自分のミスを認めません。多発する出生事故を受けて60%の病院がカンガル-ケアをやめています。
久保田医師は、生後1時間の赤ちゃんに保温と糖水を与えることで脳障害を予防することを提唱しています。久保田医院ではこのような簡単な方法で15000人の赤ちゃんが成長したときに発達障害は殆ど見られないことを実証しています。皮肉なことに体重2500g以下の未熟児は体温管理と栄養管理を行うので、発達障害児の増加はみられていないようです。
一刻も早く少子化対策を講じなければ、日本は確実に植民地化するでしょう。 先ず、①安全なお産、②無痛分娩をお産の常識に、③徹底した妊婦支援、(労働時間の短縮・週休3日・母親教室の充実・残業なし)、④赤ちゃんに優しい病院の廃止、⑤産科麻酔科専門医制度の新設を久保田医師は提唱しています。

2人目のお子さんを考えている人は是非とも、正しい出産方法が相談できる産科医院を検討して下さい。発達障害児を養育している方も精神薬を飲ませるのでなく、正しい栄養やミネラルを与えるように指導するとよいと思います。
令和は大変な年になりそうです・・・

生理的黄疸と重症黄疸との違いは何ですか?

生まれたばかりの新生児の血液には赤血球(ヘモグロビン)がたくさん含まれており、生まれると同時にこれらの大量の赤血球が脾臓で徐々に分解されるため、ビリルビン(Bilirubin)が一時的に増加し皮膚が黄色くなります。特に新生児の血液は血糖値が低いので壊れ易いのです。新生児期は肝臓の働きが十分ではないため大量のビリルビンを処理しきれず、黄疸が現れてしまうのです。こうした生理的黄疸は生後1週間経つと肝臓の働きがよくなり自然に消失していきます。

ビリルビンはヘモグロビンの分解生成物です。ヘモグロビンはヘム鉄とグロビンからなり、グロビンはたんぱく質でアミノ酸に分解されます。ヘム鉄はポルフィリン環の4つの窒素にFeが結合した構造をしています。ヘムオキシゲナーゼ(HMOX)によりヘム鉄から鉄を抜いてポルフィリン環を開環するとビリベルジンに分解されます。さらにNADPHでビリベルジンを還元したのがビリルビンです。ビリルビンは4つのピロール環のチェーン構造をしています。光に晒すとビリルビンの二重結合が異性化する性質を利用して新生児の黄疸に光線療法が施されています。ビリルビンは水に溶けないのでアルブミンというたんぱく質と結合させて血中を移動し、肝臓で処理されます。

重症黄疸とは血中のビリルビン濃度が病的に高い状態です。ビリルビンには結合ビリルビンと遊離ビリルビンがあります。遊離ビリルビンは、脳細胞のガングリオンという脂質との親和性が高く、特異的に中枢神経細胞を侵し、重症黄疸では脳性麻痺を引き起こします。ビリルビンは解糖系の酵素反応を阻害するので、脳におけるエネルギ産生を減少させます。

結合ビリルビンはアルブミンと結合したビリルビンです。肝臓でグルクロン酸と抱合して、無毒な水溶性の抱合型ビリルビンとなり、肝臓から腸管に排出されます。グルクロン酸とはグルコ-ス(糖)にCOOHが結合した酸です。包摂型ビリルビンは腸内細菌によって水酸化され、より水溶性の高いウロビリノーゲンとなり一部はウロビリン(=尿の黄色色素)となり尿として排泄され、大部分はステルコビリン(=便の茶色色素)に変えられ便中に排泄されます。

しかし排出が遅れると、便中のビリルビンは腸管より再吸収、腸肝循環されるので、血中ビリルビン濃度が上昇します。新生児の腸内細菌は少ないので便の形成には2~3日かかります。低体温になると腸の血流が低下し消化時間がかかり便秘になり黄疸が重症化します。重症黄疸を防止するには、体温を37℃に維持し、早めに粉ミルクを与えて、12時間以内に便を排出させるのが望ましいのです。

 遊離ビリルビンはどうして増えるのですか?

栄養不足で脱水状態の赤ちゃんは、脂肪が分解されて血中の遊離脂肪酸(FFA)が増えています。遊離脂肪酸はビリルビンよりもタンパク質と強く結合するため、飢餓状態ではビリルビンがタンパク質と結合できなくなり、遊離ビリルビンが増加します。

脳内血管壁の細胞は密に接合されているために水溶性物質や高分子量の物質が血管外の脳細胞に拡散できないので、血液脳関門と呼ばれています。新生児は血液-脳関門が未発達なので、血中の遊離ビリルビンは血液-脳関門を通り、脳神経細胞に害を与えます。それが聴覚細胞であれば、難聴を引き起こします。

WHOやユニセフが推奨する完全母乳は、母乳が出ない3日間、新生児を飢餓状態にするので、血中の遊離脂肪酸が増加し、神経毒を持った遊離ビリルビンが脳神経細胞を侵すのを促進してしまいます。完全母乳栄養の場合、生後4日目の赤ちゃんの血中総ビリルビン値は12.8mg/dlと高値です。それに対して体温管理と栄養管理(超早期経口栄養)をしている産院では、血中総ビリルビン値は5.7mg/dlと低値で、この10年間の約5,000例で重症黄疸は発症していません。

高インスリン血症児はどうして生まれるのでしょう?

出生直後のカンガルーケアと完全母乳は低体温と低血糖を生じさせ、発達障害児を増加させる要因になっています。さらに日本には高インスリン血症児が6人に1人の割合で存在しているために、発達障害児の急激な増加がみられています。高インスリン血症児であるかの診断は出生前につかないので、低血糖を未然に防止するための予防策を取り入れるべきです。

高インスリン血症児はどうして生まれるのでしょう? 妊娠中は血糖値が大きく上下し、それに連動してインスリン濃度も大きく上下します。これは妊婦の胎盤からラクトーゲンというホルモンが分泌されてインスリン抵抗性を増大させるからです。妊娠でインスリンの効き目が低下するので、インスリンがあまり出ないと、血糖値が高くなり、妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus; GDM)になります。

妊娠時は冷え性を防止し、適度な運動と食事制限を行い、血糖値を管理する必要があります。母体の血糖値が高くなると、胎児の血糖値も高くなり、胎児のインスリンが高くなります。インスリンは成長ホルモンなので、胎児の生育が加速され巨大児になり難産となります。高いインスリン血症児は出産時に低血糖が加速され、脳障害を引き起こします。またインスリンは胎児の肺サーファクタントの合成を抑制するために、出生後に呼吸困難を発症するリスクが高まります。

妊婦の高血糖を防止する一つの方法として糖質制限食があります。糖質制限食は、脳・骨格筋・心臓などのATP源を糖からケトン体に切り替える体質改善法です。βヒドロキシ酢酸などのケトン体は脂肪酸から産生されます。糖質を制限し、タンパク質や脂肪を十分に摂取することで、血糖値を低く保つことができます。しかしながら現時点ではマウスの実験で赤ちゃんの脳の働きなどに影響する可能性があることが指摘されています。

胎盤にはモノカルボン酸トランスポータ (MCT)という胎児にケトン体を供給する輸送体があります。MCTは妊娠初期から中期には十分にありますが、妊娠後期になると減少します。出産期にはケトン体が胎児に供給しにくくなります。ケトン体はグルコースより25%多く酸素を消費すると言われています。

脳のなかでケトン体活用の違いによって細胞の大きさや形態が違ってくるようです。胎児の記憶形成に関与する歯状回の発育やドパミンの分泌やミトコンドリアの働きに異常を引き起こす可能性が指摘されています。ケトン体を脳内でより活用できるように脳血流関門の通過性が亢進することで、不飽和脂肪酸の脳細胞内の蓄積が過剰になる可能性があります。妊娠前からバランスの良い食事と葉酸やDHAを摂取することが推奨されています。

出産時の赤ちゃんの低体温と低血糖が発達障害児を生む

産科麻酔医である久保田史郎氏は、高インスリン血症児を寒い分娩室でカンガルーケアと完全母乳で管理すると、赤ちゃんは確実に低血糖症に陥り、脳に永久的な神経細胞障害を引き起こすと警告しています。重度の場合は心停止や脳障害が生じます。中度の低血糖の場合は、成長後に発達障害として現れると主張しています。低血糖によりグリア細胞が損傷を受け、ニュ-ロンにおいてグルタミン酸による情報伝達が過剰になるため、発達障害の症状が現れると考えられます。発達障害の原因が不明であった理由は、低血糖症の症状が表に出ないため、周産期側からの調査研究が十分行われてこなかったからだそうです。久保田医師は、2015年3月15日に自民党本部で開催された障害児問題調査会で、厚生省は新生児の低体温症、低血糖症、低栄養症、脱水症を防ぐための管理をすべきであると警鐘を鳴らしています。

福岡市における発達障害の発生件数は、50件/年で推移していましたが、完全母乳が導入された1993年から上昇し、2007年には280件/年に達しました。発達障害の発生件数はカンガル-ケアが導入された2007年から急増し、2018年には1000件/年に達しました。産院によって発達障害児の発生件数は大きく異なることも分かりました。2500g以下の未熟児は、出産直後に保育器で体温管理、酸素濃度管理、水分・栄養分管理が行われてきたために、発達障害の増加は見られていないことが分かりました。30年間、久保田産婦人科麻酔科医院では15000人の赤ちゃんが誕生しましたが、発達障害児の発生は極めて少ないということです。このことから周産期管理が発達障害の大きな要因になっていることが明らかになりました。周産期管理の向上により、NICUに入院する赤ちゃんは激減するでしょう。

米国では発達障害児の急激な増加原因の全国調査では、基準値の低下や被験者の増加による見かけの増加は4割程度であり、残りの6割は正味の増加であると報告されていました。米国カルフォルニアでは1975年に完全母乳運動が推進され、それ以来、自閉症児や発達障害児が増加しています。

日本においては1993年以前の発達障害は遺伝の影響や環境の化学物質の影響が考えられます。しかしここ27年間で増加している発達障害の原因は遺伝や添加物やワクチンの影響によるものではないと考えられます。
発達障害は遺伝病説が根強くありますが、福岡市立こども病院の小児神経医グループと日本自閉症協会長 山崎晃資先医師(精神科医)は、周産期側に問題があると指摘しています。発達障害児防止策は国の最重要課題ですが、周産期側から調査をしようとする動きは全くありません。

ユニセフのガイドラインとはどのようなものでしょうか?

ユニセフ・WHOは1989年に「母乳育児を成功させるための10ヵ条」を制定しました。ユニセフのガイドラインとはどのようなものでしょうか?

1.母乳育児の方針を全ての医療に関わっている人に、常に知らせること
2.全ての医療従事者に母乳育児をするために必要な知識と技術を教えること
3.全ての妊婦に母乳育児の良い点とその方法を良く知らせること
4.母親が分娩後30分以内に母乳を飲ませられるように援助をすること(カンガルーケア)
5.母親に授乳の指導を充分にし、もし、赤ちゃんから離れることがあっても母乳の分泌を維持する方法を教えてあげること
6.医学的な必要がないのに母乳以外のもの水分、糖水、人工乳を与えないこと(完全母乳)医学的な必要とは極度の体重減少や脱水、発熱等がある場合です
7.赤ちゃんと母親が1日中24時間、一緒にいられるように母子同室にすること。(母子同室)
8.赤ちゃんが欲しがるときは、欲しがるままの授乳をすすめること
9.母乳を飲んでいる赤ちゃんにゴムの乳首やおしゃぶりを与えないこと
10.母乳育児のための支援グル−プ作って援助し、退院する母親に、このようなグル−プを紹介すること

現在、134カ国15000の病院が「赤ちゃんにやさしい病院(BFH)」に認定されています。日本国内では、ユニセフから認定審査業務を委嘱された「日本母乳の会」が、その審査を行い、ユニセフへの認定申請を行っています。2015年8月現在、日本には72施設が認定されています。

2018年には、第1条に「母乳育児に関して継続的な監視およびデータ管理のシステムを確立する」ことが追加されました。第4条は「出生直後から、途切れることのない早期母子接触をすすめ、出生後できるだけ早く母乳が飲ませられるように支援する」と改定されました。母乳を与えるのは赤ちゃんに母親の免疫を与えるためです。第4条はカンガル-ケアと呼ばれていました。

ユニセフのガイドラインは一見問題がなさそうに見えます。しかし第4条(早期母子接触)と第6条(完全母乳)と第7条(母子同室)には問題があります。
第4条の途切れることのない早期母子接触は、赤ちゃんの低体温症を招きます。第6条の完全母乳の規定を守り、出産直後の赤ちゃんに水分、糖水、人工乳を与えないと、半数の赤ちゃんは低血糖を加速させて、回復できない脳障害を生じ、成長後に発達障害を発症します。第7条の24時間の母子同質は、母親を睡眠不足にして母乳の産出を低下させ、赤ちゃんを危険にさらします。つまりユニセフは低体温による潜在的な低血糖症を見逃しているのです。

殆どの場合、母乳はすぐには出ないので赤ちゃんには飢餓が生じています。なかには低血糖症や高インスリン血症の赤ちゃんもいます。しかしユニセフは、赤ちゃんの脳のATP源には肝臓から生じるグルコ-ス、脂肪分解から生じるケトン体や乳酸があると考えています。つまり赤ちゃんは栄養を蓄えた状態で産まれてくるため、母乳以外の栄養は必要ないというのです。しかし数日後の新生児はケトン体を生成する力がありますが、出産直後の新生児にはケトン体を生成する力はなく、グルコ-スだけが赤ちゃんのATP源なのです。

NICUでは周産期管理を行います。NICUというのは新生児集中治療管理室(Neonatal Intensive Care Unit)の略です。周産期とは妊娠22週から生後満7日未満までの期間を指し、周産期医療とはこの期間の母体、胎児、新生児を総合的に連続的に取り扱う医療です。NICUでは身体機能の未熟な低出生体重児や、仮死・先天性の病気などで集中治療を必要とする新生児を対象に、高度な専門医療を24時間体制で提供しています。正常体重の新生児でも周産期管理を行えば、発達障害なども防止できると考えられます。

どうして低体温は赤ちゃんにとって良くないのでしょうか?

生まれてきた赤ちゃんは、放熱を防ぐ為に手足の末梢血管を持続的に収縮させます。この時、カテコラミンという血管収縮ホルモンが分泌されます。ところがカテコラミンは肺血管も同時に収縮させてしまうのです。肺動脈が収縮すると肺に入る血流量が減少し血圧が上がり、酸素不足になります。寒さで足の血管が開かないと、心臓に帰ってくる血流量も減少し、新生児は呼吸困難になり、赤紫色になります。これはチアノ-ゼ(低酸素症)といいます。酸素不足はATP産生を抑制し、脳に致命的な損傷を与えます。

出産直後の赤ちゃんは血糖値が低くなっています。寒さで血流量が減少すると、脳に供給される血糖量が減少してしまいます。脳に供給される酸素と糖が減少すると、脳の神経細胞を保護するグリア細胞などに致命的な損傷を与えてしまいます。また低体温になると腸の栄養吸収が低くなり、体が温まらなくなります。低体温になると肝臓の糖新生が低下し、血糖値が低下します。低体温と低血糖の悪循環が生じやすいのです。

 分娩室の温度は25℃程度で赤ちゃんにとっては低温環境です。出生時から1時間で赤ちゃんの中枢体温は36℃まで下がります。手足の深部体温は30℃まで下がり、5時間後でも34℃以下にばらつきます。これは冷え性の状態です。

産科麻酔医師の久保田先生によると、赤ちゃんの本来の体温である37℃にするには、赤ちゃんを保育器に入れて、出産直後の最初の1時間は34℃、次の1時間は30℃で管理し、それ以降は新生児室で26℃に管理するのがよいそうです。出産後の赤ちゃんの中枢体温は37℃以下になりません。手足の深部体温は5時間後に34℃~36℃に保たれます。赤ちゃんが十分栄養を取れるようになれば、次第に自分で適正体温を維持できるようになります。ただし赤ちゃんに産着を着せ過ぎない注意が必要です。着せ過ぎは熱中症を引き起こすからです。

低血糖の問題点は何でしょうか?

出産直後の赤ちゃんは飢えと寒さを覚えています。飢えを感じているときは血中のグルコ-ス(血糖)濃度が低い低血糖状態になっています。グルコースは脳の活動だけでなく神経細胞の形成のATP源としても重要な物質ですから、出産時のグルコースの低下は脳に大きな障害を残します。

通常胎児は母親から糖を貰うので低血糖症になりません。胎児の血糖値は、胎盤の働きで、母親の血糖値より20mg/dl(デシリットル)程度低くなっています。胎児は全身が38℃の環境にいるので血流がよく、脳関門は完成していないので、血糖値は低めに設定されています。母親の典型的な血糖値は100mg/dlですから、胎児の血糖値は80mg/dlになっています。

生まれてくる赤ちゃんは寒い分娩室で震えて熱を出します。その熱は血糖を消費することで発生します。臍帯を切り離すと暖かい血液は流れてきません。赤ちゃんの血糖値は徐々に低下し、1時間目の血糖値は80mg/dlから40~50mg/dlまで低下します。低血糖になると痙攣や無呼吸発作をおこすこともありますが、まったく症状がないこともあります。しかし出産時に症状がなくても、低血糖は脳に後遺症を残すことがあります。35mg/dlより低くなると赤血球が糖不足で崩壊してしまいます。脳の保護のためには、少なくともこの最低値が40mg/dlより低くならないことが重要です。

久保田医師の新生児の周産期管理方式では、出産直後に34℃の保育器に入れているので、生後1時間の血糖値は50mg/dlに下がりますが、生後1時間に30℃に変更し、新生児に5%の糖水20ml~25mlを与えるので、血糖値は60mg/dlに回復します。生後2時間以後は26℃にして、生後4時間で人工乳20mlを与え、3時間ごとに人工乳20mlのペースで与えると、血糖値は出産直後の値60~70mg/dlで安定させられます。これを超早期経口栄養法といいます。赤ちゃんは糖水を与えられると泣き止み、よく飲みます。これだけで発達障害児の発生を予防できるとは驚きです。

肥満妊婦から生まれた赤ちゃんや未熟児(低体重児)には低血糖症が発症することがあります。しかし正常出産で生まれた赤ちゃんの血糖値が40mg/dlより下がることは殆どないと考えられていました。しかし出産直前のお母さんの血糖値が高いと、血中インスリン濃度が高くなります。生まれてくる赤ちゃんは血糖値を下げるために膵臓からインスリンを分泌させ、インスリン濃度が高まります。これを高インスリン血症児と言います。母親のインスリンは胎盤で防御され、胎児にはいきません。

インスリン2分子は肝臓の細胞のインスリン受容体に結合し、細胞内部にシグナルを伝達して、糖を取り込むたんぱく質GLUT1を細胞表面に移動させます。このようにしてインスリンによって血液中のグルコ-スが肝臓に取り込まれるので、血糖値が下がります。

飽食の日本では出生する赤ちゃんの10%~20%は高インスリン血症児となっています。高インスリン血症は赤ちゃんの低血糖症を加速してしまうのです。母乳は体内でグルコ-スとガラクト-スに分解され、ガラクト-スは肝臓でグルコ-スに変換されます。母乳を早く赤ちゃんに与えることが低血糖を防ぎます。

低体温の場合、赤ちゃんは筋肉を緊張させて体温を上げようとします。こうした産熱亢進は血糖を消費するために低血糖を引き起こします。低血糖が進むと筋肉を緊張させられなくなるので、産熱亢進が低下し、体温が下がります。低体温と低血糖の悪循環が生じます。低体温による肝血流の減少も、糖新生を低下させ、低血糖を引き起こします。

出産の科学 健康で賢い赤ちゃんを産むには

少子高齢化が加速している日本において、健康な赤ちゃんを産むことは最も重要なことです。私たち家族の最大の願いでもあります。健康な赤ちゃんを産むにはどうすればいいのでしょうか?まずは赤ちゃんのことを知ることが大切です。

赤ちゃんはお母さんの子宮の羊水の中で10カ月を過ごします。赤ちゃんの体温は38℃で、すべての栄養と酸素は胎盤に注ぎ込む血液によって母親から与えられます。胎盤は羊膜の母体側にある扁平な臓器です。胎盤で母体と胎児の血液は直接混合しません。酸素、栄養分、老廃物などの交換は血漿(けっしょう)を介して行われています。これをプラセンタルバリア (placental barrier) といいます。プラセンタは古代ロ-マの平たいパンケ-キに由来しているそうです。このため親子の血液型が異なっていても、凝血は起こりません。

赤ちゃんは、長い時間をかけて狭い産道を通り、分娩室に出てくると大きな声で泣きます。このとき赤ちゃんは肺胞を開き、酸素呼吸を開始します。医師がへその緒を切った後は、胎盤からくる栄養や水分や酸素はなくなるので。赤ちゃんは自分の口から水分や栄養分を取らなくてはなりません。

赤ちゃんの脳のシナプス密度は1歳半で最大になります。出生時はその40%ぐらいです。その後緩やかに減少し、5歳で一応完成します。脳細胞にはATP源となる糖を貯めることはできません。絶えず糖が血液によって脳に供給されている必要があります。つまり十分な血流と適切な血糖値が必要です。脳の毛細血管壁の内皮細胞は緊密に結合しており、血管内にある水溶性の物質や分子量の大きい物質は、基本的に血管外の脳細胞側に拡散できません。これを血液脳関門(Blood-brain barrier, BBB)といいます。糖は血液脳関門を通過します。EPAなどの脂肪酸は脂溶性なので血液脳関門を通過できます。脳に必要なアミノ酸は、独自のトランスポ-タがあれば、血液脳関門を通過します。ただし赤ちゃんの血液脳関門は未完成です。神経細胞であるニュ-ロンの周囲にはグリア細胞があります。グリア細胞は、有害な糖を無害な乳酸に変換してニュ-ロンに供給します。しかし赤ちゃんの脳はグリア細胞がまだ十分発達していないので、赤ちゃんの脳は高血糖にも弱いのです。

 分娩直後の赤ちゃんに襲い掛かるのは、飢えと寒さです。昔は乳母(めのと)と産湯(うぶゆ)が赤ちゃんを飢えと寒さから守ってきました。出産後3日間は母乳があまり出ないので、乳母が母乳を与えていたのです。現在は粉ミルクを代わりに与えています。産湯は血液や羊水や粘膜で汚れた赤ちゃんを洗い、温めるものです。同時に昔は大量のお湯を沸かすことで、部屋を暖めていたのです。現在は、分娩室の温度は25℃に保たれているので、赤ちゃんの体温を下げないように、濡れた身体を拭いてすぐに産着を着せています。

しかし赤ちゃんと外界の温度差は13℃(=38℃-25℃)もあります。分娩から2時間の間に、赤ちゃんの体温は2~3℃低下して35℃~36℃になります。実は赤ちゃんが健康でいられる体温は37℃なのです。体温が1℃~2℃低いことは赤ちゃんにとって有害です。母親の体温は36℃~36.5℃なので、母親が抱いて温めても赤ちゃんの体温は37℃にはならないのです。

2007年に厚労省はWHOやユニセフが勧めているカンガル-ケア(早期母子接触1989年)を日本に導入しましたが、これによって新生児の低体温症は悪化しました。深夜帯の母子同室も有害です。母親が赤ちゃんの世話で睡眠不足になると、母乳の出が悪くなるからです。お産の疲れが残る母親に、深夜帯も赤ちゃんの体温・栄養・呼吸などの全身管理を任せることは無理です。カンガルーケア中の心肺停止事故の殆どは、生後12時間以内の、最も体温と血糖値が低下する分娩室・母子同室中に発生し、しかも深夜に多いようです。また、カンガルーケア中の心肺停止事故は、母乳育児の3点セット(カンガルーケア・完全母乳・母子同室)を積極的に行う赤ちゃんに優しい病院(BFH)に集中して起きていることが分かっています。しかし、その事実は意外に知られていません。

母乳で育てた方がいい理由

生後3か月までの赤ちゃんの胃には胃酸がないので、牛乳などを与えると、胃の中で牛乳が腐敗してしまいます。母乳には、7%の乳糖の他に、白血球や免疫グロブリンが含まれているので、細菌が増殖しません。乳頭はグルコ-スとガラクト-スが結合した2糖類で、徐々に分解してグルコ-スを放出します。小腸の防衛システムが出来上がるのも6か月かかるので、生後6か月は母乳で育てた方が、アレルギー疾患にかかりにくい子どもになると言われています。アレルギー疾患の子どもが増えているのは、乳児期の育て方にも原因がありそうです。

 

ヒトの脳について

ヒトの脳の発達はサルとは大きく異なっています。チンパンジを含めサルの脳容積は誕生時に75%あり、生後6か月で大人の大きさになります。それに対してヒトの脳容積は誕生時に23%しかなく、3歳で60%、6歳で90%、9歳でやっと大人の大きさになります。ヒトは脳の成長に合わせて、多くのものを学習していけるようになっています。

ヒトのニュ-ロン(神経細胞)は胎児期の5か月間で産生されます。その後は、ニュ-ロンを取り囲むグリア細胞が増殖を続けます。グリア細胞は、脳細胞の90%を占めており、ニュ-ロンを絶縁し、ニュ-ロンに栄養を供給しています。グリア細胞と赤血球はブドウ糖(グルコ-ス)を乳酸に変えてニュ-ロンに栄養を供給しています。ニュ-ロンはブドウ糖を避けるために、グリア細胞を必要としているのです。

ヒトの大脳はいつ大きくなったのか?

700~100万年前の猿人は、森林やサバンナで昆虫、果物、植物の根、小動物の肉などを採取し食べていたと考えられています。猿人は、顎が大きく、ガニ股でぎこちなく歩く印象があります。肉食動物に狙われてもさほど早く走れなかったでしょう。お互いに助け合って生き延びてきたのだと思います。

200~20万年前になると、原人が出現し、体型も寸胴型からスリム型になり、さっそうと歩く印象があります。顎や歯が小さくなります。草食動物を追跡し、肉食動物に武器や火で対抗できたと思われます。200~150万年前の50万年間に脳容積は400ccから900ccに増大します。ヒトの大脳は、食生活が変わることで、大きくなったのではないかと考えられます。

NHKの番組では、原人は石器を使って動物の遺体の肉や骨の髄を食べたので、脳が大きくなったと放映されていました。それならば、肉食動物の脳はどうして大きくならないのかという疑問が残ります。また直立歩行をして手で道具を作るようになったから大脳が大きくなったと説明されています。しかし進化論的には、大脳が大きくなったから、ヒトは道具を作り、言語を話すようになったと考える方が自然です。大脳の肥大化の原因は未だによく分かっていません。しかし近年、農学博士の林俊郎氏(1949年生)は、糖がヒトの大脳の肥大化を促進したのではないかと考えています。

レーシック手術とは

レーシックLASIK (=LAser in SItu Keratomileusis)は角膜の視力矯正手術です。レーシックは1990年、ギリシャのパリカリス博士によって考案されました。ケラトームという小さな刃物を使って角膜を円形に切り取りはがして、フラップという蓋を作り、角膜の内部にエキシマレーザを照射して、角膜を削って、蓋を閉めて手術します。レーシックは、1995年にアメリカのFDA(食品医薬品局)から認可され、急速に広まるようになりました。今ではフェムト秒レ-ザを用い、非接触でフラップを形成します。費用は片眼で15~30万円かかります。スポーツ選手や著名人がレーシックを受けたことにより、一般人の間でも広く受け入れられるようになりました。アメリカのプロゴルファの間には 2000年以降に視力矯正のためのレーザ治療を受ける人が急増しました。そのため眼鏡をかけたトップ・プレーヤーは居なくなりました。

白内障発症率が高まる60歳以上でのレーシックは推奨されません。レーシックの年齢制限は40歳までといわれます。まだ老眼の症状が現れてない場合でも、レーシック手術により焦点を矯正した結果、老眼の症状を感じやすくなることもあるため、手術前には十分な検査が必須です。老眼や白内障に備えて、レーシックの手術前の眼のデータを入手しておくとよいそうです。レーシックを受けた角膜は変化が生じているため、眼内レンズ度数のズレが生じやすくなるからです。

先月タイガ-ウッズ選手(43歳)のZOZOチャンピオンシップの復帰試合を見に多くのギャラリ-が詰めかけていました。タイガー・ウッズ選手は 1999年に視力改善の為のレーザ治療を受け、その後 2000年には素晴らしい成績を残しています。

レ-シックでは、矯正限度量を-6Dまでとし、充分な同意がなされた場合に限り、-10Dまでの範囲で手術が許可されます。ここで「D」は(Diopter:ジオプター)という屈折度数を表す単位です。裸眼でピントが合う距離をN(cm)として、「100÷N」で計算すると度数が出ます。例えば-10Dの場合は、裸眼でピントが合う距離Nが10cmという強い近視状態です。Nが20cmで-5Dとなり、中程度近視(3~6D)です。
近視の場合は-(マイナス)、遠視の場合は+(プラス)で表され、ともに数値が大きいほど遠視や近視の度合いが高くなります。10D以上に近視が進んでいる人は、充分な視力を得るために角膜を削る量が多すぎるので、レーシック手術を受けられないのです。タイガーウッズ選手の視力は-11.5Dという超強度近視だったので、レーシック以外のレーザ矯正治療を使ったのかもしれません。

白内障の手術

先日、家族が白内障の手術を受けたので、帰省し、病院への送迎と付き添いをしました。白内障とは、眼の水晶体が白濁し、視力が低下する病気です。原因は水晶体を構成するクリスタリンというたんぱく質が会合(結晶化)して、システィン結合で固定されるからです。

白内障(cataract)には加齢の他に色々な原因があり、糖尿病もその一つです。糖尿病患者はインスリンの働きが悪いため、水晶体内に取り込まれたブドウ糖がソルビトールに変質し、水分量の部分的増加やクリスタリンの会合によって、白濁するために白内障になると言われています。濁ると光が散乱してまぶしく感じるので、サングラスをすることがあります。


糖尿病患者は、可能なうちに白内障の手術をしておかないと、眼底が見えないので、糖尿病網膜症の発見が遅れ、失明するリスクがあります。網膜は酸素やブドウ糖が必要なので、出血を放置すると失明します。糖尿病患者は血管が詰まりやすいので、網膜は新生血管を生み出して、酸素や栄養の不足を補おうとしますが、この新生血管は脆いので出血しやすいのです。傷口のかさぶたが網膜を引っ張り、網膜を剥離させる恐れもあります。インシュリンを投与しながら、糖質制限を行うと、血糖値が低い状態が持続し、網膜が低酸素障害を受けて、ある日突然失明することも起こります。

水晶体の中身は交換・補充が利かないので、手術では白濁した部分を除去し、人工レンズを挿入します。20分くらいで終わる簡単な手術です。手術後は、眼を汚さないように注意して、毎日4回ほど点眼をして回復を待ちます。

<白内障手術の手順>
1)細いメスで黒目(角膜)と白目(結膜)の境目に3mm弱の創口を作ります。
2)眼内をジェル状の物質で満たし、作業が安全に行えるようにします。
3)水晶体を覆っている水晶体嚢(袋)前面を剥がして作業用の窓を作ります。
4)水晶体嚢の窓から、超音波棒を入れて水晶体を細かく砕き、吸い取ります。
5)切開創から小さく折り畳んだ人工のレンズ(眼内レンズ)を挿入します。
6)眼内からジェル状物質を抜き、代わりに水を満たし切開創を閉鎖させます。

白内障手術は長い歴史があります。1949年にイギリスのリドレー医師が人工水晶体(=眼内レンズ)を発明しました。更に、アメリカのケルマン医師が超音波乳化吸引装置を発明しました。現在では水晶体も切開可能なフェムトセカンドレーザーが登場しています。レーザ白内障手術は2008年にヨーロッパで最初の手術が行われ、既に世界の最先端医療機関では50カ国以上で導入されています。

パトリシア・バス女史

11月4日はパトリシア・バス(Patricia Era Bath)女史の誕生日です。彼女は眼科医研修を修了した初のアフリカ系アメリカ人です。パトリシアは2019年5月30日に77歳で亡くなられました。

1942年、パトリシアはニュ-ヨ-ク市のハ-レムに生まれました。父親のRupertはNY の最初の黒人の地下鉄の電気技術者でした。母親のGladysはパトリシアに科学実験セットを与える教育熱心な専業主婦でした。パトリシアは4年制の中学校を2年半で卒業し、16歳の頃からがん治療の研究会の助手をしていました。彼女は自分のことを化学オタクだったと回想しています。彼女はハワ-ド大学で医学の学位を取得し、ハ-レム病院でインタ-ンとして働きました。

彼女はハ-レムの患者を無料で治療するように医師たちを説得し、アメリカ失明予防協会(AiPB)を共同設立しました。アフリカ系アメリカ人には緑内障が多く、貧しい区域に住む人々は失明することが多かったのです。彼女は何十年にも渡って、多くの人たちの視力を回復させてきました。パトリシアはUCLAの教授になりますが、黒人女性だということで、不公平な扱いを受け、ヨーロッパに渡り、そこで優れた仕事をしました。1988年に彼女は、46歳にして、白内障のレーザ手術法に関する特許(U.S. patent 4744360)を取得します。これは紫外光のエキシマレ-ザで発熱なく正確に白濁した水晶体を蒸散除去する装置に関する特許です。2000年には、超音波で白濁した水晶体を粉砕し吸い上げて除去する方法も発明しています(U.S. patent 6083192)。

科学者として、運動家として活躍したパトリシアは
「真実の力を信じましょう。あなたの心が多数派の考え方にとらわれないように」
という言葉を残しています。

冬にトマトが採れるのはどうしてでしょうか?

トマトの開花は、昼夜の長さではなく、苗の長さに依存するので、トマトは冬でも採れるのです。基本的にトマトは花粉を運ぶハチやチョウによって実を付けるので、トマトの旬は夏です。しかし冬場、トマトの花にオーキシンをかけると、花粉がつかなくても、実が肥大します。だから冬トマトには種がありません。また種なしトマトの品種もあります。種なしトマトはハチやオ-キシン処理がなくても、花が咲けば実がなります。

トマトの皮は薄いので、根から急激な水の吸収があると裂果してしまいます。裂果を避けるために、トマトは温室あるいは透明シ-トで覆って栽培されます。
市販のトマトの75%は「桃太郎」という品種です。桃太郎シリ-ズは25種あります。桃太郎は熟した状態の実が収穫でき、実が赤く熟してから完熟するまでの時間が長い特徴があります。桃太郎は味や栄養価でも優れているために、トマト市場を席捲しました。


トマトはコラ-ゲン合成に必要なビタミンC、老化を抑制するビタミンE、塩分の排出を助けるカリウム、腸内環境を整える食物繊維などをバランス良く含んでいます。トマトにはリコピンやβ-カロテンなどの抗酸化物質が豊富に含まれています。トマトの赤はリコピンによるものです。トマトはうま味が強いので、鍋料理にもよく用いられます。生食より加熱食の方が、リコピンの吸収が2~3倍増加すると言われています。

固定種にはどんな利点があるでしょうか?

全国各地で栽培されている在来品種・地方品種のほとんどは固定品種です。例えば京都の京野菜、大坂のなにわ野菜などがあります。不揃いで生産性は低くても、味の濃い固定品種は値段が高くても根強い人気があります。F1種は生育期間が短くなった結果、ミネラルが少なくなり、味が薄く、光合成の期間も短いので、ビタミンCなどの栄養素が少なくなった可能性もあります。家庭菜園の場合、固定種の方が生育期間にばらつきがあるので、長期間に少量の収穫が持続できる利点があります。自家採種が可能なので、種を買わずに済みます。自家採種して固定種を鍛えることで無肥料栽培が可能になり、循環型の持続可能な農業ができます。

雄性不稔性とはどういう性質なのでしょうか?

雄性不稔性(ゆうせいふねんせい)とは、突然変異によって、本来ひとつの花の中に雄蕊(おしべ)も雌蕊(めしべ)もある種類の野菜なのに、雄蕊がなかったり、雄蕊があっても花粉ができなかったりする性質のことです。

1925年に米国で初めて雄性不稔性の赤タマネギが1個だけ発見されました。通常の黄色い玉ねぎの雄性不稔性品種を得るために、雄性不稔性の赤タマネギに通常の黄色玉ねぎの花粉をつけ続けると、雄性不稔性の黄色玉ねぎの割合が増えていき、6世代後には殆ど完全な雄性不稔性の黄色玉ねぎが得られます。これを戻し交配(バッククロス)と言います。1944年にはF1玉ねぎが販売されるようになりました。一度この雄性不稔株を見つけると、これに正常な株の花粉を受粉して、いくつもの品種の雄性不稔系統が育成できます。


 ある品種の雄性不稔系統の株と別の品種の正常な株とを並べて植えると、雄性不稔系統の株から交配種のタネが採れます。昆虫が花粉を運んでくれるので受粉に人手が要りません。種採りの能率を上げるために、花粉を提供する品種よりも雄性不稔の品種の株を多く植えます。雄性不稔系統の次の代を作るには、同じ品種の正常な系統の遺伝性を調べ、次世代の全部の株が雄性不稔となる花粉親を選んで受粉します。雄性不稔性利用によるF1種の作りは、タマネギから始まり、大根、ニンジンやトウモロコシでも実用化されています。


日本人は野生のハマダイコンから雄性不稔性をもつ舞鶴大根を作りだしていました。あるフランス人が欧州で舞鶴大根と菜種を交配させ、雄性不稔の菜種を開発し特許を取得しました。葉緑体は大根由来だったので、細胞融合で葉緑体を菜種由来に改良したそうです。同じアブラナ科のキャベツやブロッコリ-にも雄性不稔種が得られるようになりました。

F1種をつくるにはどうしたらいいのでしょうか?

F1種に限らず、一般に交配種をつくる方法には、人工受粉、自家不和合性、雌雄異株(いしゅ)、雄性不稔性を利用する4つの方法があります。ヒット品種は何十年も利益を約束してくれますから、種苗企業はあらゆる作物を交配種にするための努力を重ねています。

人工受粉
人工受粉は1927年にナスビで行われました。ナスビの実からは1000個以上の種が得られます。1935年に福寿1号というトマトの交配種が得られました。ナス科の果菜類は一つの花に雌蕊と雄蕊がある両性花なので、開花前に雄蕊を取り除く除雄作業が必要になります。交配には、除雄、袋掛け、花粉集め、受粉などの作業が必要です。ウリ科の場合は、雄花と雌花が別なので、一方の品種の雌花の開花前に袋掛けをして、開花日にもうひとつの品種の雄花の花粉を受粉して人工受粉します。

自家不和合性(じかふわごうせい)
 自家不和合性とは、自分の花粉(あるいは自分と同じ品種の花粉)で雌蕊が受精しない性質のことです。そのメカニズムには様々のものがあります。例えば雌蕊の柱頭に付着した花粉が花粉管を伸ばしても、柱頭の1/3程度で停止してしまいます。花粉の雌性決定要素であるリボヌクレアーゼ(S-RNase)が、雌蕊が同種であることを認識して、花粉管内のリボソームRNAを分解し、花粉管の伸長を阻害します。
例えば、自家受精しなくなったカブと小松菜を一緒に栽培すれば、ミツバチによってカブの雌蕊に小松菜の花粉がかかれば、根がカブで葉が小松菜の新しい交配種「小松菜カブ」が得られます。もちろん根が小松菜で葉がカブのものは破棄します。
カブも小松菜もアブラナ科です。偶然の交雑でできた「小松菜カブ」から採れた種をまき、みやま小カブと、純系の小松菜の株を選び、隔離して育てます。それぞれの菜の花が開花する前に人為的に蕾を開き、自家受粉をくり返します。何年か自家受粉をくり返されたカブと小松菜には、自家不和合性が生まれます。自家不和合性をもつ純系の親を増やすには、温室の空気に3~6%の二酸化炭素を含ませることで、自家不和合性を解除することができます(中西、日向1975年)。1949年にはキャベツ、1950年には白菜に関して、自家不和合性を利用したF1種が完成しました。一般に両親を特定することは経費がかかります。交配ミスを確認するために試作すると種の寿命が1年縮小します。
 
雌雄異株(しゆういしゅ)
この方法はもっぱらホウレンソウで実用化しています。ホウレンソウにはメス株とオス株の区別があります。葉を見てもわかりませんが、春先になると、オス株のほうが早くとう立ちします。まず掛け合わせたい二つの品種を並べて栽培します。一方の品種のオス株を花の咲く前に全部抜き取り、メス株だけにします。その品種のメス株は、隣の他品種のオス株からの花粉を受粉して、交配種の種ができます。

F1種にはどのような問題があるでしょうか?

F1種には3つの大きな問題があります。

第一の問題は、F1種は、気候変動や病害虫の発生により、全滅する危険性が高いことです。年々強くなる病害虫に対応するために、農薬の使用量が増える傾向があります。これに引替え在来種は多様性があり、気候変動や病害虫に強い種が必ずあります。在来種の多様性が失われると、全滅の危険性はさらに高まります。


第二の問題は、交配二代目以降は形も大きさも不揃いになるので、農家は毎年F1種の種を買わなくてはならず、その結果、作物の種子の多様性が失われることです。これまで農家は栽培した一部の作物から自家採種してきました。しかし自家採種には専用の畑が必要で、種の採取や管理に手間がかかります。農家がF1種の種を購入するようになって、自家採種する農家は激減しました。つまりF1種の出現により、農家がこれまで栽培してきた在来種の種類が激減することが危惧されています。種は保管期間が長くなると発芽率が低下します。種を維持するには3年以内に更新しなければなりません。農家が自家採種しないと、気候変動や病害虫に強い在来種は消滅してしまうのです。


第三の問題は、安全な野菜が食べられなくなる可能性があることです。日本にはサカタとタキイの2大種苗会社がありますが、世界全体の2%程度の市場占有率しかありません。モンサントなど上位3社の巨大多国籍企業は60%以上のシェアを持っています。交配種時代になって、採種事業が大手企業の独壇場になったのは、品種集めと試験交配という初期投資に、大金が必要だからです。種を制する者は世界を制するため、巨大多国籍企業は小さな種苗会社を次々に買収しています。そうした巨大多国籍企業は、F1作物だけでなく、遺伝子組替えやゲノム編集技術を用いた安全性が不確かな作物を開発しています。除草剤グリホサ-トのように有害物質の濃度基準値が100倍以上に改正されることもあります。あるいは植物自体に組み込まれた殺虫剤成分などの有毒物質は外来性の農薬ではないので、規制基準値すら存在しません。日本の種苗企業が買収された場合には、日本の安全な野菜が食べられなくなる可能性があります。

F1種とはどんな種でしょうか?

子の形質が両親と同じ形質をもつ品種は、固定品種あるいは固定種と呼ばれています。F1種とは、第一雑種世代(First Filial generation)の略語、すなわち異なる固定品種の両親から得られた第一代目の交配品種のことです。交配はメス親の雌蕊(めしべ)にオス親の雄蕊の花粉を付着・受精させて行います。


雑種強勢の遺伝法則により、F1種は、親品種に比べて、早く大きく育ち、両親の優れた形質を受け継ぎます。雑種強勢の原因はまだよく分かっていません。例えば甘いトマトと日持ちのするトマトを交配させると、そのF1種は甘くて日持ちのするトマトになります。またF1種は、形や大きさ、収穫時期が揃うため、効率的な生産、流通、販売が実現できます。そのため現在小売店で販売されている野菜の殆どが外国産のF1種です。日本の種子自給率は数%と言われています。外国産の種子は、日持ちするように赤や青に着色された殺菌剤が種子に塗布されているので、あまり素手で触らない方がいいです。


現在流通している小松菜は、在来種の小松菜と中国産のタアサイやチンゲンサイと交配したもので、茎が太くて固くて袋に詰めやすく、病気に強くて収穫量も多くなりました。こうした特徴は生産者と流通には都合がよいのです。


近年、自分で料理する人は減っています。多くの会社員は外食で済ませています。現在、流通している野菜のうち、家庭で調理されている野菜は30%弱です。今や種苗企業は、個々の消費者よりも、外食産業、食品加工企業、大手流通業者向けの種を生産しています。つまり、外食産業や食品加工会社では、味付けや加工のしやすい、均質かつ味の薄い野菜を求めています。安くス-パ-に卸されている野菜の多くは、外食・加工産業で余った野菜だと言われています。

虫歯を予防する方法はありますか?

金属はアルカリ性水溶液中では腐食が進行しないことを利用します。食後、重曹水で口内を洗浄し、口内をアルカリ性にするだけで、虫歯は予防できるとのことです。重曹水は500mlに3g程度の重曹粉末を溶かして作ります。酷い歯石は除去した方がいいでしょう。口内がアルカリ性になると、歯の再石灰化が進み、穴が埋まります。Caのブルベイ図があればより明快な説明ができるでしょう。


もし虫歯が金属腐食に起因するのなら、今までの歯科医療の常識は覆されます。虫歯の原因も解らずに対症療法を繰り返してきた従来の歯科医療は何だったのか、ということになりますね。

歯周病にはどのようなリスクがありますか?

健康な歯肉溝では、バイオフィルムの75%が常在菌(グラム陽性好気性球桿菌)であり、歯周病菌はいません。歯周ポケットでは、歯周病菌と思われるグラム陰性嫌気性球桿菌が75%を占めています。歯周ポケットに歯周病菌が繁殖すると、歯周病菌の毒素により、歯茎がはれます。毛細血管から侵入した歯周病菌は血管内でアテロ-ム性プラ-クを形成し、血管を狭くするので、脳卒中、脳梗塞、心筋梗塞を引き起こします。歯茎の炎症により、免疫細胞からサイトカインTNF-αが分泌され、糖代謝を妨げ、糖尿病になるリスクもあります。またプラ-ク自体が気管支炎や誤嚥性肺炎の原因にもなります。妊婦や胎児にも悪影響があります。

歯科用合金にはどんな問題があるでしょうか?

電気化学説が正しいとすると、虫歯治療に歯科用合金を用いると、歯が溶けて虫歯になりやすくなります。北九州の歯科医さんの実験によると、歯と歯科用合金(12%金・銀パラジウム合金)をpH3の塩酸に漬けると、歯に対して、歯科用合金の電位は+0.57Vでした(図1)。歯の電位の方が低いので、歯が溶けだしてしまいます。

図1 歯と歯科用合金(12%金・銀パラジウム合金)の電位差測定の様子


他の歯科医は、歯科用合金には水銀が含まれており、咬合時に水銀が溶出する害を指摘しています。水銀は脳内に入れば、タンパク質の硫黄と結合し、数年間蓄積するようです。水銀の多くは腎臓に蓄積し、その半減期は2か月だそうです。できるだけ歯科用合金は取り外した方がよさそうです。そもそも現在でも歯科用合金を使っている国は、日本だけです。

図2 歯と亜鉛の電位差測定の様子


一方、歯と亜鉛では、歯(エナメル質)に対する亜鉛の電位は-0.33Vでした(図2)。亜鉛は歯に電子を供給するために、歯を守ります。亜鉛を含むアマルガムやリン酸亜鉛セメント、カルボキシレートセメントを使うと虫歯になりにくいというわけです。歯科用合金を亜鉛メッキするのもいい方法かもしれません。

象牙質の虫歯が急速に進行するのは、酸にたいする耐性ではなく、象牙質とエナメル質の自然電位(イオン化傾向)に僅かな違い(2mV)があるからだと考えています。実際に歯を強い酸で溶かすと象牙質よりエナメル質が先に溶けてしまうそうです。結局、歯周病に対しては象牙質が露出しないようにする予防が必要です。

http://mabo400dc.com/dental-treatment/electrochemistry/電気化学的虫歯予防法/

虫歯は歯の腐食現象なのでしょうか?

北九州のある歯科医は、虫歯は微生物によって引き起こされる電気化学的な腐食現象だと考えています。興味深い学説なので紹介したいと思います。従来、虫歯菌が出す酸が歯を溶かすと言われていました。しかし歯はpH2程度の酸でも腐食されません。虫歯菌が出すpH5程度の酸では、歯は溶けないのです。
彼によれば、虫歯は、虫歯菌の付着する面の酸素濃度が低下して、歯から電子が奪われ、歯のカルシウム(Ca)が溶けだす電気化学的な腐食現象だということです。

歯はヒドロキシアパタイト(水酸化リン酸カルシウム;Ca10(PO4)6(OH)2)でできています。歯は金属ではないですが、電気導電性があります。Caのイオン化傾向は高いので、Caはイオン化して水に溶出しやすいミネラル元素なのです。実際、pH4の水溶液中で、抜歯した歯に電流を流すと3時間で歯の大部分は腐食喪失します(図1)。

図1 pH4の水溶液中で抜歯した歯に通電した結果


歯の象牙質の表面を顕微鏡で観察すると、象牙細管が見られます(図2)。象牙細管は直径3μm位の歯髄(神経)まで続く細い管です。この穴の中の酸素濃度は低くなっています。表面積は非常に大きいので、Ca2+が溶出しやすい構造になっています。

     図2 歯の象牙細管の光学顕微鏡像


これに細菌が付着しバイオフィルムを形成すると、細菌の出す酸により歯の近傍がpH5~6程度になり、好気性細菌の呼吸によりさらに酸素濃度が低下し、それによって歯の腐食が加速すると考えられます。細菌により酸素の濃度の差が拡大するために、口内で酸素濃度差電池が形成され、歯が腐食すると考えています。


バイオフィルムとは
唾液成分の糖タンパクが歯の表面に薄い皮膜を作ります。その皮膜の上にくっついたミュータンス菌がショ糖を使ってグリコカリックスという粘性物質を分泌します。そこに他の細菌が侵入して、増殖します。この状態をプラークまたはバイオフィルムと呼んでいます。歯周病菌は、産生する毒素で歯ぐきを腫らし、血や膿を出し、歯の周りの骨を溶かすと言われています。このプラークが唾液や血液の無機質成分を吸って固まったものを、歯石と呼びます。ちなみに一般に細菌が好むpHは7~8程度であり、乳酸菌、あるいはカンジタ菌などのカビや酵母が好むpHは4~6だと言われています。