雄性不稔性とはどういう性質なのでしょうか?

雄性不稔性(ゆうせいふねんせい)とは、突然変異によって、本来ひとつの花の中に雄蕊(おしべ)も雌蕊(めしべ)もある種類の野菜なのに、雄蕊がなかったり、雄蕊があっても花粉ができなかったりする性質のことです。

1925年に米国で初めて雄性不稔性の赤タマネギが1個だけ発見されました。通常の黄色い玉ねぎの雄性不稔性品種を得るために、雄性不稔性の赤タマネギに通常の黄色玉ねぎの花粉をつけ続けると、雄性不稔性の黄色玉ねぎの割合が増えていき、6世代後には殆ど完全な雄性不稔性の黄色玉ねぎが得られます。これを戻し交配(バッククロス)と言います。1944年にはF1玉ねぎが販売されるようになりました。一度この雄性不稔株を見つけると、これに正常な株の花粉を受粉して、いくつもの品種の雄性不稔系統が育成できます。


 ある品種の雄性不稔系統の株と別の品種の正常な株とを並べて植えると、雄性不稔系統の株から交配種のタネが採れます。昆虫が花粉を運んでくれるので受粉に人手が要りません。種採りの能率を上げるために、花粉を提供する品種よりも雄性不稔の品種の株を多く植えます。雄性不稔系統の次の代を作るには、同じ品種の正常な系統の遺伝性を調べ、次世代の全部の株が雄性不稔となる花粉親を選んで受粉します。雄性不稔性利用によるF1種の作りは、タマネギから始まり、大根、ニンジンやトウモロコシでも実用化されています。


日本人は野生のハマダイコンから雄性不稔性をもつ舞鶴大根を作りだしていました。あるフランス人が欧州で舞鶴大根と菜種を交配させ、雄性不稔の菜種を開発し特許を取得しました。葉緑体は大根由来だったので、細胞融合で葉緑体を菜種由来に改良したそうです。同じアブラナ科のキャベツやブロッコリ-にも雄性不稔種が得られるようになりました。

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