F1種をつくるにはどうしたらいいのでしょうか?

F1種に限らず、一般に交配種をつくる方法には、人工受粉、自家不和合性、雌雄異株(いしゅ)、雄性不稔性を利用する4つの方法があります。ヒット品種は何十年も利益を約束してくれますから、種苗企業はあらゆる作物を交配種にするための努力を重ねています。

人工受粉
人工受粉は1927年にナスビで行われました。ナスビの実からは1000個以上の種が得られます。1935年に福寿1号というトマトの交配種が得られました。ナス科の果菜類は一つの花に雌蕊と雄蕊がある両性花なので、開花前に雄蕊を取り除く除雄作業が必要になります。交配には、除雄、袋掛け、花粉集め、受粉などの作業が必要です。ウリ科の場合は、雄花と雌花が別なので、一方の品種の雌花の開花前に袋掛けをして、開花日にもうひとつの品種の雄花の花粉を受粉して人工受粉します。

自家不和合性(じかふわごうせい)
 自家不和合性とは、自分の花粉(あるいは自分と同じ品種の花粉)で雌蕊が受精しない性質のことです。そのメカニズムには様々のものがあります。例えば雌蕊の柱頭に付着した花粉が花粉管を伸ばしても、柱頭の1/3程度で停止してしまいます。花粉の雌性決定要素であるリボヌクレアーゼ(S-RNase)が、雌蕊が同種であることを認識して、花粉管内のリボソームRNAを分解し、花粉管の伸長を阻害します。
例えば、自家受精しなくなったカブと小松菜を一緒に栽培すれば、ミツバチによってカブの雌蕊に小松菜の花粉がかかれば、根がカブで葉が小松菜の新しい交配種「小松菜カブ」が得られます。もちろん根が小松菜で葉がカブのものは破棄します。
カブも小松菜もアブラナ科です。偶然の交雑でできた「小松菜カブ」から採れた種をまき、みやま小カブと、純系の小松菜の株を選び、隔離して育てます。それぞれの菜の花が開花する前に人為的に蕾を開き、自家受粉をくり返します。何年か自家受粉をくり返されたカブと小松菜には、自家不和合性が生まれます。自家不和合性をもつ純系の親を増やすには、温室の空気に3~6%の二酸化炭素を含ませることで、自家不和合性を解除することができます(中西、日向1975年)。1949年にはキャベツ、1950年には白菜に関して、自家不和合性を利用したF1種が完成しました。一般に両親を特定することは経費がかかります。交配ミスを確認するために試作すると種の寿命が1年縮小します。
 
雌雄異株(しゆういしゅ)
この方法はもっぱらホウレンソウで実用化しています。ホウレンソウにはメス株とオス株の区別があります。葉を見てもわかりませんが、春先になると、オス株のほうが早くとう立ちします。まず掛け合わせたい二つの品種を並べて栽培します。一方の品種のオス株を花の咲く前に全部抜き取り、メス株だけにします。その品種のメス株は、隣の他品種のオス株からの花粉を受粉して、交配種の種ができます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。