日本の最終処分場の残余年数は平均21.4年

テレビ朝日の「しくじり先生」の番組でマシンガンズの滝沢秀一先生がゴミ問題について解説してくれました。滝沢先生は2018年に「そのゴミは収集できません」という本を書いてベストセラーになりました。2020年には環境省のサステイナビリティ広報大使に選ばれています。
日本の最終処分場の残余年数は平均21.4年です。その後どうするか具体的な対策は何も決まっていません。ゴミ捨てが高額になる日が来るのでしょうね。
海洋には年間800万トンのゴミが捨てられ、30年後の海は魚よりゴミが多くなるそうです。従来から言われているように、ゴミの減量、再利用、分別リサイクルが重要です。例えば資源ゴミは可燃ゴミに入れないようにすべきです。
CO2排出削減が求められる中、日本は焼却炉大国です。世界の焼却炉の半分以上は日本にあり、日本のゴミ焼却量3300万トンはアメリカを抜いて世界2位です。不燃物が可燃物に混入することで、焼却炉が詰まり、23区内でも毎年15回停止し2億円の再稼働費がかかっています。
電子タバコやワイヤレスイヤホンにはリチウムイオン電池が使われています。スプレー缶やリチウムイオン電池が可燃ごみに混ざると、ゴミ収集車で圧縮されて、1時間後に遅れて発火するそうです。あまり知られていませんが、ゴミ収集車は1台1000万円以上する高級車です。日本では毎年500台のゴミ収集車が炎上し、50億円もの損害を出しているそうです。
買うときには捨てるときのことを考えなければなりません。例えば困るのは植木の土です。土は専門業者かホームセンターで有料で引き取ってもらいます。公園に土を安易な気持ちで不法投棄すると、1000万円以下の罰金、あるいは5年以下の懲役となります。
回収員が恐れているゴミには、竹串、ビーズクッション、防犯ブザー、ペットフードが残った缶などがあります。ビーズクッションは圧縮時にビーズが弾け飛んでしまいます。防犯ブザーは電池を抜かないと、鳴りっぱなしになります。ペットフードは虫が湧いて不衛生です。
回収員のことを考えてきちんとゴミの分別をしなければなりません。

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80種類のCO2排出削減対策が30年間で削減できる排出量を試算

11月10日に脱炭素社会に関するNHKスペシャルのテレビ番組が放映されました。22カ国70人の研究者が、80種類のCO2排出削減対策が30年間で削減できる排出量を試算した結果が公表されています。これはとても興味深いです。
冷媒の置換や浮上式風力発電に続いて、食品ロスやベジタリアン化が高い削減効果があるようです。電気自動車は多くの対策の一つにすぎません。CO2の排出量削減には包括的に取り組みが必要だということです。
ちなみに世界のCO2の年間排出量は400億トンだそうです。専門家が危惧する5000億トンの排出まであと12年です。彼らは世界の平均気温があと0.4℃上昇することが後戻りできない事態を引き起こすことを懸念しています。
日本を含む各国は10年で排出量を半減させると明言しています。国内の移動を飛行機から列車に変えると排出量を1/15に削減できるそうです。CO2の排出量が半分の天然ガスを中国が買うため、天然ガスの価格が上昇しています。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

環境科学 科学者の執念

去年のサイエンス誌の報告ですが、車のゴムタイヤに添加される酸化防止剤6PPDが、オゾンと反応してキノン化(ベンゼン環に酸素が2個つくこと)されて道路に散乱し、降雨で河口に流されて、銀鮭が大量死することが分かったそうです。科学者たちの執念の成果です。
科学者たちが「雨が降ると川のギンザケが大量死する」という謎を20年かけて解き明かす
 
 
GIGAZINE.NET
科学者たちが「雨が降ると川のギンザケが大量死する」という謎を20年かけて解き明かす
by Bureau of Land Management Oregon and Washington
 
 

しくじり先生 ごみ問題

テレビ朝日の「しくじり先生」の番組でマシンガンズの滝沢秀一先生がゴミ問題について解説してくれました。滝沢先生は2018年に「そのゴミは収集できません」という本を書いてベストセラーになりました。2020年には環境省のサステイナビリティ広報大使に選ばれています。
日本の最終処分場の残余年数は平均21.4年です。その後どうするか具体的な対策は何も決まっていません。ゴミ捨てが高額になる日が来るのでしょうね。
海洋には年間800万トンのゴミが捨てられ、30年後の海は魚よりゴミが多くなるそうです。従来から言われているように、ゴミの減量、再利用、分別リサイクルが重要です。例えば資源ゴミは可燃ゴミに入れないようにすべきです。
CO2排出削減が求められる中、日本は焼却炉大国です。世界の焼却炉の半分以上は日本にあり、日本のゴミ焼却量3300万トンはアメリカを抜いて世界2位です。不燃物が可燃物に混入することで、焼却炉が詰まり、23区内でも毎年15回停止し2億円の再稼働費がかかっています。
電子タバコやワイヤレスイヤホンにはリチウムイオン電池が使われています。スプレー缶やリチウムイオン電池が可燃ごみに混ざると、ゴミ収集車で圧縮されて、1時間後に遅れて発火するそうです。あまり知られていませんが、ゴミ収集車は1台1000万円以上する高級車です。日本では毎年500台のゴミ収集車が炎上し、50億円もの損害を出しているそうです。
買うときには捨てるときのことを考えなければなりません。例えば困るのは植木の土です。土は専門業者かホームセンターで有料で引き取ってもらいます。公園に土を安易な気持ちで不法投棄すると、1000万円以下の罰金、あるいは5年以下の懲役となります。
回収員が恐れているゴミには、竹串、ビーズクッション、防犯ブザー、ペットフードが残った缶などがあります。ビーズクッションは圧縮時にビーズが弾け飛んでしまいます。防犯ブザーは電池を抜かないと、鳴りっぱなしになります。ペットフードは虫が湧いて不衛生です。
回収員のことを考えてきちんとゴミの分別をしなければなりません。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

HANDYモデルによる文明崩壊の予測

NHKスペシャル・2030 未来への分岐点(1)「暴走する温暖化脱炭素への挑戦」に続いて、2021年2月7日(日)に2030 未来への分岐点 (2)「飽食の悪夢〜水・食料クライシス〜」が放送されました。先進国の飽食が、世界中に「飢餓のパンデミック」を拡大させるという話です。番組では俳優の森七菜さんが2050年の日本で食糧危機に直面する女性を演じました。日本で一年間に出される食品廃棄物を世界に分配すれば、飢餓問題の多くを解決すると言われています。現在の食料システムを2030年までに改善できなければ、暴動が発生し破滅を回避できなくなると研究者たちは指摘しています。

 米国メリ-ランド大学の理論環境学者のSafa Mote博士は、2014年に「人間と自然の動力学(=Human And Nature Dynamics)~社会の崩壊か持続における不平等と資源利用のモデル化~」と題して、論文を発表しました(Ecological Economics 101(2014)90-102)。このモデルをHANDYモデルと呼びます。

Safa Mote博士は、自然から収奪する富の蓄積と富の再分配をモデル化して、平等社会と不平等社会における人口変動を予測しました。Safa Mote博士はHANDYモデルにおいて

  • 平等社会では、最適な収奪率δ*で富を蓄積すると、収容人口は最大になり、持続可能な社会が実現する。
  • 自然からの収奪率が大きくても小さくても、自然環境が収容できる人口は減少する。
  • 不平等社会では、持続可能な文明社会が実現できない。

ことを示しました。ここでは、HANDYモデルの詳細について解説します。

  1. Handyモデルとは

 Safa Mote博士が2014年に提案した「人間と自然の動力学(Handyモデル」」は、一般の人口Xc、エリ-トの人口XE、自然資源量y、富の総量wの4つの量の時間発展を4つの連立微分方程式で表したモデルです。その名の通り、このモデルは文明存続を議論するための最もお手軽なモデルになっています。

(1)一般人の人口Xc

 人口増加は、出生率をβ、死亡率をαとすると

  • dXc/dt=(β-αc)Xc

と表されます。ここで

 αc=αc(Xc、XE、w)、β=出生率定数

です。α、βがともに定数の場合、一般人の人口変動は

  • Xc(t)=Xc (0)・exp{(β-α)t}

と書き表されます。出生率が死亡率より大きい場合(β-α>0)、一般の人口Xcは指数関数的に増加します。逆に出生率が死亡率より小さい場合(β-α<0)、一般の人口Xcは指数関数的に減少します。

(2)エリ-トの人口X

エリ-トの人口も同様に微分方程式

  • dXE/dt=(β-αE)XE

 αE=αE(Xc、XE、w)、β=出生率定数

と表されると仮定します。

一般に死亡率をαは、人口や富の量に依存します。富の量が人口を養うのに十分であれば、一定になりますが、富の量が閾値wthより小さくなると、死亡率は増大します。一般人とエリ-トでは死亡率αの富の総量wに対する依存性が異なります。

(3)富の閾値wthと不平等率kと死亡率αの富w依存性

ρ[$/人]を一般人一人当たりの最小消費量とすると、富の閾値は

・wth(Xc、XE、k)=ρ・Xc+k・ρ・XE

と表されると仮定します。ここで因子kは不平等率です。エリ-トの最小消費量は一般人のk倍と仮定されています。kの値によって社会を3つに分類できます。

1)平等社会  Egalitarian society     k=0、エリ-トなし

2)階級社会  Equitable society     k=1、不労所得階級あり

3)不平等社会  Unequal society   k>1、エリ-トあり

具体的に、このモデルでは通常の死亡率はαm=0.01、飢饉時の死亡率はαM=0.07としています。死亡率αは、富が閾値を下回ると0.01から0.07に富に比例して増大すると仮定します。一般人とエリ-トでは富の閾値が異なります。エリ-トの富の閾値は小さいので、エリ-トの死亡率は殆ど最小値0.01に固定されています。つまり富の総量wが閾値より減少すると、一般人の死亡率は減少し始めますが、エリ-トの死亡率は低いまま保たれます。

(4)資源量y

限られた食物環境にある生物の増殖を議論するのには、ロジスティック方程式が用いられます。資源量yは、ロジスティック方程式

 ・dy/dt=γy(λ-y)-δ・Xc・y

に従うと仮定します。ここでλは人間の収奪がないときの最大資源量です。λの単位は$(エコドル)です。γ[1/t$]は単位時間の自然の再生率です。γ=0.01のとき10年で再生します。δ[1/t人]は一人当たりの人間が1年間に自然から収奪する収奪率です。収奪率δがゼロだと富が蓄積されません。仮にy(0)=λ/1000とすると、δ=0のときは、資源量y(t)は、S字型の再生曲線を描いて増加し、最大資源量λで飽和します。なぜならλ≫yのときは、指数関数的に増大し、yが増大してλに接近するとyは一定値λになるからです。

δがゼロでないときは

・dy/dt=γy(λ-δXc/γ-y)=γy(λ’-y)

と書けます。資源量y(t)は、S字型の再生曲線を描いて増加しλ’で飽和します。

λ=100、γ=0.01、δ=0.0025、Xc=100のときは

・λ’=λ-δXc/γ=100-0.0025*100/0.01=100-25=75 <100=λ

となります。

y<<1の時は、yの2次の項を無視して

 ・dy/dt=(γλ-δXc)y

と近似できます。収奪率δがγλ/Xcより大きくなると、資源量yは減少し、人類は滅んでしまうことが分かります。収奪率δが

 ・δ[1/t人]=γ[1/t$]・λ[$]/Xc[人]=0.01・100/100=0.01

のとき、資源量yは一定になります。

(5)富の総量w

富の総量wは、

・dw/dt=δXc・y-Cc(Xc、XE、w、k)-CE(Xc、XE、w、k)

に従うと仮定します。1年間の富の増加量は、自然から得た収奪量から一般人による富の消費量Cc[$/t]とエリ-トによる富の消費量CE[$/t]を引いた値になります。自然からの収奪量と富の消費量が一致する循環社会では、富は一定の値に保たれ、人口も安定します。

最低給料をs[$/人]とすると、一般人とエリ-トの富の消費量は

・Cc(Xc、XE、w、k)=min(1,w/wth)・s・Xc

・CE(Xc、XE、w、k)=min(1,w/wth)・s・k・XE

と表されると仮定します。エリ-トの消費量の場合は不平等率kがかかります。

ここで富の閾値は

・wth(Xc、XE、k)=ρ・Xc+k・ρ・XE

でした。w>wthの平時では、Ccは最低消費量

・Cc(Xc、XE、w、k)=s・Xc

となり、Ccはwに依存しません。w<wthの飢饉の時は、

・Cc(Xc、XE、w、k)=w/wth・s・Xc

となり、Ccはwに比例します。富の総量wがwthより小さくなる飢餓状況では、人の消費量はwが減るにつれて減少することになります。不平等率kが大きいほどエリ-トの消費量は大きくなります。

(6)初期状態

 簡単のため、初期状態は

・一般人の人口:Xc(0)=100[人]、

・エリ-トの人口:XE(0)=1[人]

・資源量:y(0)=100[$]、

・富の総量:w(0)=0[$]

と仮定しています。

2.平衡状態の人口、資源、富の量 XE=0の場合

ここでは、簡単のためエリ-トがいない平等社会での

・dXc/dt=0,dy/dt=0、dw/dt=0

なる平衡状態(定常状態)の解Xce、ye、weを考えます。以下に平衡解の導出方法を示します。

パラメ-タηを

・η=(αM-βc)/(αM-αm)

と定義すると、結局、平衡時の資源量yeは

・ye=sη/δ (=λ/2)

と書けます。平衡時の人口Xce、富weは

 ・Xce=γ/δ・(λ-ye)

 ・we=ηρXce

と書けます。平衡時の資源量ye=λ/2のとき、再生項y(λ-y)が最大値λ2/4になるので、このときの収奪率を最適収奪率(Optimal Depletion Ratio)

 ・δ*=2sη/λ=6.7×10-6

と呼びます。δ=δ*のとき、最大収容量(Maximum Carrying Capacity)

 ・XM=γ/δ*・(λ-λ/2)=γ/ sη(λ/2)2=7.5×104

が得られます。

3.計算に用いたパラメ-タ

4.Equitable社会の持続可能性の収奪率依存性について

 少数の不労者はいるが、不労者の消費量は一般人と同じ(k=1)である階級社会をEquitable societyと言います。kは不平等率です。

(1)k=1の階級社会 δ=0.7・δの場合

(2)k=1の階級社会 δ=1.0・δの場合

(3)k=1の階級社会 δ=2.0・δの場合

(4)k=1の階級社会 δ=3.0・δの場合

(5)Equitable 社会のまとめ

 Equitable 社会では、0.55δ*~3δ*の広い収奪率で持続可能な文明が実現します。収奪率が最適収奪率の0.55倍の場合は、人口増加が遅く、収容人口は最大値の1/3になります。最適収奪率δ*のとき、最速400年で持続可能な社会が実現し、収容人口は最大になります。収奪率が最適収奪率の2倍になると、収容人口は最大値の3/4に減少します。収奪率が最適収奪率の2倍以上になると、振動現象が現れ、持続可能な文明に到達するのに1000年以上を要します。

5.不平等社会での文明の絶滅

 少数の不労者が一般人の5倍消費している不平等社会では、持続可能な社会が形成されず、文明は崩壊します。

(1)k=5の不平等社会でδ=1.0・δ*の場合

 k=5の不平等社会において、Equitable社会で最大人口が達成できる収奪率δ*で収奪すると、文明は崩壊します。

(2)k=5の不平等社会でδ=2.0・δ*の場合

(3)k=5の不平等社会でδ=3.0・δ*の場合

(4)k=5の不平等社会 δ=4~30・δ*の場合

(5)k=10の不平等社会 δ=1~8・δ*の場合

(6)k=100の超不平等社会 δ=10~100・δ*の場合

(7)k=100、δ=15・δ*の超不平等社会 初期人口依存性

(8)k=10の超不平等社会 δ=1.2・δ*の場合

(9)k=100の超不平等社会 δ=15・δ*の場合

 NHKスペシャルで紹介された上記条件の計算結果をほぼ再現した。

(10)NHKスペシャルで紹介された上記条件の計算結果

6.結果とまとめ

7.モデルの限界

 このモデルでは、人口が減少し絶滅しそうになっても、エリ-トの消費量は一般人のk倍を維持していると仮定しています。現実には、人類が絶滅しそうになったら、エリ-トの消費量は一般人と同等になっていくのではないかと思われます。完全に消費量が同等になれば、不平等社会からEquitable社会へ移行し、持続可能な状態が実現します。しかしEquitable社会から不平等社会に逆戻りしたり、不平等が少しでも残れば、文明は絶滅する可能性が高いと思われます。

また文明が継続し技術革新によって死亡率が減少する可能性は考慮されていません。今後の課題としては、そうした修正をいれたモデルの検討が考えられます。

なおこのモデルでは、文明の絶滅原因を資源や富の減少に限定しています。実際は火山の噴火で生き埋めになったり、干ばつで水源が枯渇したり、大規模な洪水や地震などの災害や疫病の蔓延で文明が崩壊する可能性もあります。

 

フルボ酸鉄でアサリ再生

「森は海の恋人」という本があります。筆者は気仙沼湾の牡蠣漁師の畠山重篤さんです。畠山さんは、海の生物に栄養を供給している森の重要性に気づき、気仙沼に注ぎ込む大川流域の森林形成に尽力してしました。彼は講演会で、広葉樹の葉から生じたフルボ酸が岩から鉄を溶かし込むこと、フルボ酸鉄は川で運ばれ、海藻や貝を育むことを説明していました。

沈没船の周囲に海藻や魚が多いのは鉄が供給されるからだと言われています。しかし通常鉄は海水で酸化され沈殿してしまうので、海藻は鉄を利用できません。フルボ酸鉄は水溶性の2価の鉄Fe2+を供給するので、珪藻は鉄を吸収できます。鉄は珪藻細胞の呼吸系に必要なシトクロムの原料になります。海藻には川からくるフルボ酸鉄が必要であり、海藻を食する貝類や、海藻を住処とする魚を育てます。

 ダムは、飲料水や産業水や電力確保のために建設されますが、森から供給される栄養を堰き止めてしまうため、下流の海は生き物の少ない海になってしまいます。不必要なダムは撤去しなければなりません。しかもダムの底には泥が溜まり、ダムの保水量は低下しています。日本の汚泥の蓄積量は15億m3、廃棄処理費用は14兆円以上と見積もられています。ダムの底泥を安易に山に引き上げると、大雨で流れて大規模な土砂崩れを引き起こしてしまいます。底泥の処理は頭の痛い問題です。

 ダム底泥には有機栄養物とフルボ酸が豊富に含まれています。佐賀大学の兒玉宏樹教授らは、底泥からフルボ酸を取り出し、フルボ酸鉄を用いて海藻の養殖に取り組んでいます。福岡大学の渡辺亮一教授は、木屑と下水汚泥(または食品廃棄物)の発酵処理品と水処理剤として使用されているシリカ・鉄水溶液を混合し、2次発酵させ、安価なフルボ酸鉄シリカのペレット資材を開発しました(特開2018-143907 )。シリカは珪藻にケイ素を供給するために含まれています。そのペレット資材を袋に詰めて海のヘドロの干潟に設置したところ、珪藻が増え、それを食するアサリが顕著に増加し、ヘドロが分解することが確かめられました。

アサリは、濾過摂食者であり、成貝の濾水量は1個体で10L/日と多く、水質浄化と漁獲回復の双方を狙った干潟再生が期待されています。アサリの収量はかつての20万トンから1.4万トンに減少しています。