菜園日記

2022.4.30投稿

GW2日目は晴天で涼しい農業日和。昼から息子と一緒に川越の市民菜園に行って、トマト棚の設置と葉野菜の間引きとピーマンの行灯がけをしました。トマトは、芽かきをして、透明シートで囲い温室にしました。

2022.5.20投稿

一週間ぶりにmy菜園に行ったら、葉野菜が大きく育っていた。小雨の中、サラダ菜、小松菜、水菜、菊菜をレジ袋に満杯収穫し、半分は義母にあげました。
今の季節、苗が100円で買えます。メロン、スイカ、唐辛子の苗を定植しました。人参の間引き、通年人参の種まきをしました。トマトが大きくなってきたので芽かきと誘引をしました。イチゴが2粒実っていました。パセリを収穫しました。やっと大豆の芽が出ました。ブロッコリーは花が咲いてしまいました。ジャガイモ、ナス、ピーマン、パプリカは順調に育っています。

菜園の立ち上げ

2022.4.16投稿
今日は一人で15時から畝作りの作業開始。
風が強かったのでトマト苗をトンネルネットで覆った。畝の下には2列の穴を掘って、ミネラルと肥料と米ぬかを散布した。1列5m長さなので合計20m長さの穴を掘ったことになる。
時々灰色の沼の土塊が見られたが、土質は良い。昨日の雨で土壌が湿っていたので畝が作り易い。小石を除去して、スコップで平らに均して、幅135cmの黒マルチを張って、黒丸君でピン止めして、マルチの端を土寄せしてでき上がり。丁寧にやると一畝3時間かかる。畝の幅は90cmでトンネルの半円の骨組みで決まる。トンネルネットを張った。後日アブラナ系の苗を移植する。何処でも菜園の夕日は美しい。
 
2022.4.17投稿
今日は鶴ヶ島のカインズでキャベツ、ブロッコリー、ピーマン、パプリカ、ナスの苗を買って定植しました。定植は息子にやってもらいました。パプリカは250円、それ以外の苗は70円です。ナス用とピーマン用の2m畝を2つ作りました。風が強い時があるので、ナスには支柱をつけ、トンネルで囲いました。ピーマンとパプリカにも支柱をつけ行灯支柱で囲いました。ピーマンとナスとトマトは沢山実るのでお得な夏野菜です。定植と畝作りは15時40から開始して3時間かかりました。終わった頃には辺りはすっかり暗くなりました。
 
 
2022.4.19投稿
今日は午後1時から、ネギ50本400円、落花生4本300円、枝豆2種類の畝作りと播種をしました。大豆の間隔は28cm、穴径8cm、18穴です。落花生は生態観察のためです。畝の端にマリーゴールドや忘れな草など150円で買える草花を植えました。これくらいではミツバチは来ないけど、色がつくと励みになります。まず1個だけパプリカの円形支柱に透明マルチを巻いて防風対策をしました。午前中の日照だけでナスの地温はかなり上がっていました。後はトマト棚を立ててネットを張って、葉野菜の畝を作って播種すれば完了です。
お隣のおじいさんと話しをしました。もう歳で覚えられないので、地面に私の名前を漢字で書いて記録していました。漢字は合っていました。国分寺に住んでいたけど家が高くて買えなかったので20年前に川越にきたそうです。川越のど真ん中も地価は高いけどね。
 
2022.4.21投稿
昨日はほうれん草、小松菜、菊菜、水菜の葉野菜の種まき、今日はニンニクとニンジンとジャガイモとニラの種まきをしました。一応これでmy菜園は完成です。1週間で4.5mの畝が3本、2mの畝が6本、合わせて9個の畝ができました。葉野菜と人参と韮のマルチは長方形の開口を施し、条播きをしました。温度を上げるため、人参のマルチには透明シートを被せました。畝間を広くとり、短い畝を設け、移動と作業を容易にしました。畝端に花を飾ると楽しい気持ちになります。

川越で菜園を始めました

2022.3.19投稿

鴨田ふれあい農園の25番で野菜作りをすることになりました。酸度計のPHは6.5〜6.8でした。苦土石灰の散布は見合わせました。牛フン堆肥80Lを気持ちだけ入れて浅く耕しました。市の担当者からもらった農園規程によると雑草の草丈が30cm以上になると退会処分になるようです。区画境界から20cm以内に種を撒いてもいけません。向こうの区画のおじさんは石灰を撒きまくっていました。そんなに撒いたらほうれん草しか育たなくなる。

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宗教が始まったのは貨幣経済のせい?

NHK「心の時代」番組の再放送で、安泰寺という曹洞宗の禅寺が紹介されました。安泰寺は兵庫県の日本海側の山中にあります。ドイツ生まれのネルケ無方さん(53歳)は9代目の堂頭です。ネルケ氏は京大を卒業後、23歳で安泰寺で修行を始め、10年後に堂頭となり、20年間で20人の弟子を育てました。弟子の半分は外国人です。去年、中村氏に堂頭を譲り、大阪で座禅会をすることにしたそうです。
安泰寺は自給自足の生活をしています。野球場程の広さの畑で野菜を栽培し、時々地元の方に鹿をもらいます。
ネルケ師匠は弟子たちを野菜に例えています。日本人はトマト型が多いのだそうです。素直で学習意欲はあるが、問題意識が希薄で、誘引してやらないと上に登っていかないからです。
外国人はカボチャ型で、問題意識はあるが、自己中心的で素直でないのが問題だそうです。
理想の弟子は、仏の教えに自分から弦を絡ませて登っていくキュウリ型だと仰っていました。
 
ネルケさんは宗教が始まったのは、貨幣経済が始まって、人が頭を使って自分の努力で金稼ぎゲームをすることになったのが原因だと考えています。それ以前は農耕社会で、人は大自然の恩恵を受けて生きていることを自覚していたので、余裕があったということです。座禅をすると、この世はゲームではないと分かるそうです。
 
 
 
 
 
 

最後のMy菜園

先週末にmy菜園の最後の収穫をしました。最後の茄子は焼き茄子ポン酢で頂きました。
昨日と今日はマルチ剥がしや農業資材の撤収、整地作業をしました。5m☓8mの小さな菜園でしたが、根の除去が結構大変です。しかしこれが中高年のいい運動になります。涼しくなってきましたが、大汗をかきました。作業後はシャツを着替えて帰ります。
夕方、元気な多年草の韮を廃棄するのは可哀想だと思い悩んでいたら、こんな遅い時間に隣の楊さんがやってきて、「この韮捨てるのなら、全部引き取るよ」といってくれたので助かりました。「捨てる神あれば、拾う神あり」とはこのことでしょうか。
本日をもって甲府市小曲市民農園での活動は終了です。皆様、閲覧ありがとうございました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

循環式養液栽培ではアレロパシ-が問題

養液栽培(水耕栽培)とは
近年、安価で高効率なLED光源が利用できるようになり、植物工場では、天候や病虫害の被害に遭いやすい葉野菜(レタス)や果物(イチゴ)などが養液栽培で育てられています。養液栽培は無農薬で栽培できる利点があります。しかし養液栽培では、作物の成長が滞り、収量が低下する問題がありました。これは、成長阻害物質が養液に蓄積し、作物の成長を阻害するからです。従来は定期的に養液を廃棄して、新しいものに交換していました。しかしこれは環境負荷や経済的損失を与えます。活性炭を投入し、成長阻害物質を吸着する方法が提案されましたが、活性炭のコストや使用後の回収・処理について実用的に問題がありました。

鉄のキレート剤とは
作物の成長には、微量の鉄分が必要です。FeSO4などを投入しても、水中の鉄分は酸化・沈殿してしまい植物は利用できません。養液栽培用の鉄養分には、鉄エチレンジアミン四酢酸(=Fe-EDTA)という鉄のキレート剤が用いられています。EDTAはエチレンの両端にある窒素にそれぞれ2つの酢酸(CH3COOH)が付加した構造を有しています。COOH基を多く含む有機物は、金属イオンを捕獲することができます。鉄FeはEDTAの2つの窒素と4つの酸素(=COOH基中のOH基の酸素)に取り囲まれた構造をしています。自然界では、Feをキレ-トしたフルボ酸の形で鉄分が供給されています。EDTAが用いられるのは、それはフルボ酸よりずっと単純な構造をしているので合成が容易だからです。

直流電気分解法(特許第5177739号)とは
2007年に島根大学の浅尾俊樹教授は、養液に直流電流を流し、成長阻害物質を電気分解して、養液栽培作物の収量低下を防止する手法を提案しました。正極にはフェライト(酸化鉄)の棒、負極にはチタン板が用いられています。電圧は10V、電流は0.6A程度です。養液中の微生物が分解する安息香酸は20%未満であるのに対し、一日の通電で80%以上の安息香酸が分解します。
しかしその栽培方法では、電気分解で鉄のキレート剤が分解してしまうので、電気分解を行った後に養液を補充しなければなりませんでした。また通電により培養液の温度が10℃程度上昇し、根が腐敗し易くなるとともに、電気分解を続けることで負極に、リン、鉄やカルシウム等が析出という課題がありました。

交流電気分解法(JP2016-208862)とは
2016年に浅尾教授は、交流電気分解法を提案し、培養液中の成長阻害物質(特に安息香酸)を電気分解することによって、培養液の温度上昇を抑えつつ、培養液中の養分の分解を防止することに成功しました。

交流電気分解法の実験結果
イチゴの養液栽培実験に用いた交流は電流値2A、電圧14V、周波数500〜1000Hzです。家庭用交流の10倍~20倍の周波数にするのがポイントです。2〜3週間に一度、24時間以上電気分解することにより、培養液に蓄積される成長阻害物質の濃度上昇を防止できます。500Hzでは温度上昇はありませんが、1000Hzでは4℃上昇します。安息香酸の濃度は24時間の直流通電で33%減、交流通電で100%減少しました。通電による電気伝導率やpHの変化はありませんでした。直流通電では鉄とカルシウムなどミネラルの減少が見られましたが、交流通電ではミネラルの減少がなく、直流通電法より20%の増収が得られました。

アレロパシ-と連作障害

アレロパシ-とは
アレロパシ-(Allelopathy)は植物が分泌する化学物質によって近隣植物の発芽、成長、結実などの生理現象を抑制する他感作用のことです。これは1937年にオーストリアの植物学者ハンス・モーリッシュにより提唱された用語です。多くの植物は、自種群落を拡大させるために、根から成長阻害物質を分泌して、他の植物の侵入を妨げています。成長阻害物質に対する感受性は植物種によって違います。

連作障害とは
連作障害は同一作物を連続して栽培すると収穫量が低下する現象です。その原因は、栄養供給の不足、ウィルスや微生物や土壌線虫の感染、化学物質、土壌の物理的変化などの影響など多岐にわたり、作物毎に違っています。化学物質は植物自身が分泌する成長阻害物質と他生物残渣の分解産物によるものがあります。アレロパシ-は連作障害の大きな一因になっています。

様々の成長阻害物質
作物の成長阻害物質としては、パセリではアジピン酸、セロリでは乳酸、イネではモミラクトン、ミツバではコハク酸や安息香酸、レタスではパニリン酸や安息香酸、葉ゴボウではコハク酸、春菊やチンゲン菜やケ-ルでは安息香酸やパラヒドロキシ安息香酸やコハク酸があります。被覆植物のヘアリーベッチは根からシアナミド、クルミは葉や根からユグロン、サクラは葉からクマリンを出します。桜餅はクマリンの抗菌作用が用いられています。アレロパシ-は、除草剤や病害抑制剤への利用の観点から、注目されています。またコンパニオン植物は、アレロケミカルを用いて、相互に成長を促進したり、他植物の侵入を防ぐと言われています。

安息香酸(Benzonic acid)とは
安息香酸はベンゼン環にCOOH基が付加した構造をしており、マーガリンや清涼飲料水や醤油に保存料として用いられています。安息香酸は、植物の成長ホルモンであるオ-キシンの作用を阻害するため、イチゴ、レタス、トマト、ナス、キュウリ、ピーマン、ホウレンソウ、コマツナなど幅広い作物でアレロパシ-効果が確認されてます。

アレロパシ-物質や活性の測定方法
プラントボックス法は寒天中で植物を混植し、根から出る物質を検定する方法です。サンドイッチ法は葉から出るアレロパシ-の程度を評価する方法です。これは寒天の培地で、乾燥粉砕した植物の葉などの試料を挟み、培地の上に検査する植物の種を播き、種子根の伸長抑制程度から判定する方法です。

ブナ科13種の葉の水抽出物がレタスの根の伸長をどれだけ阻害するかをサンドイッチ法で調べた結果があります(藤井義晴:農業環境技術研究所)。阻害の程度は、アベマキ(85%), クリ(56%), コナラ(50%)、アカカシワ(40%)、クヌギ(37%)、トチュウ(34%)、ウバメガシ(32%)、アラカシ(28%)、イヌブナ(24%)、アカガシ(19%)、スダジイ(-4%)、ブナ(-7%)、マテバシイ(-9%)。これらを見るとアベマキにはやや強い阻害作用がありますが、ブナやシイの葉は殆どレタスの根の伸張を抑制する作用をもっていません。しかし、ブナ自身の芽生えの成長に対するブナ葉の水抽出物の効果はまだ調べられていないようです。


自家中毒現象
アレロパシ-で面白いのは自家中毒現象(Autotoxication)です。自家中毒現象は、植物の密度が高くなると、他の植物の成長を抑制する物質が自植物の成長をも抑制してしまう現象です。植物は、自種を繁殖させるために、種を遠くに拡散させる様々な手法を発展させてきました。しかし多くの種は親植物の生育地点に留まります。もしそれらの種が発芽して成長すると、親植物の生存を脅かしてしまいます。植物が根から成長阻害物質を出す理由は、自分の種が傍で発芽しないように、自分の身を守るためと考えられます。つまり本来アレロパシ-は攻撃策ではなく防御策ではないか、という考え方です。 種を遠くに飛ばせない植物は、成長阻害物質を分泌し、種を遠くに飛ばせる植物は、成長阻害物質を分泌しないと考える専門家もいます。

富山の中山間地域の今年度予算

コンパクトシティ構想で有名な富山県の平成31年度予算は5,548億円です。富山県は、基本的に人口減少を食い止め、経済を活性化させ、全ての人が健康で活躍できる環境づくりを促進しようとしています。新幹線ができて4年、豊富な移住支援金、高い教育レベルによって首都圏からの移住も増えてきているようです。知事はIT技術で農村にいながら仕事ができる働き方改革に期待をしています。


26個の施策テーマ別の事業のなかで、12番目の事業タイトルは、「豊かで魅力ある中山間地域の実現 ~中山間地域の活性化に向けて~」です。中山間地域の魅力化の課題は、中山間地域の体制整備と人材の育成確保、活力ある農山村づくりと地域経済の活性化、地域生活の維持向上の3つでした。参考までに各項目の予算を書き記しました。農魚山村基盤づくりには225億円もの資金が使われているのですね。


果樹産地継承支援300万円は少なすぎますよね。果樹産地継承支援事業はせっかく味もおいしくて全国的にも評価されている果樹の園地が、経営者、生産者がご高齢になって承継されない、後継者が見つからないといった場合に、虫がつくので全部伐採するなんていうことが起こっています。これを農地中間管理機構に管理してもらって、その間に後継者を見つけるといったような取り組みだそうです。
 がんばる女性農業者支援事業1000万円といったものもあります。中山間産地等人材育成支援事業、就農希望者に対して、産地等が行う研修に必要な施設・機械の整備を支援しようとしています。
定住できなければ、人口減少の激しい中山間地域の活性化はできません。空き家対策1000万円は少なすぎます。多面的機能支払支援事業20億円、農地集約5億円や移住支援金1.2億円を削ってでも、空き家対策に資金を投じるべきではないでしょうか。

http://www.pref.toyama.jp/cms_pfile/00019696/01220809.pdf

1. 持続可能な中山間地域の体制整備と人材の育成確保
(1) 地域づくり人材の育成   集落支援推進事業1.5億円
(2) コミュニティ活性化のための話し合いの促進 350万円
(3) 移住定住の促進 移住支援金1.2億円
(4) 農山漁村地域の活性化 多面的機能支払い支援事業20億円

2.活力ある農山村づくりと地域経済の活性化
(1)地域資源の利活用 1000万円
(2)生産性の高い農業の確立 400万円
(3)農業経営基盤の強化 農地集約5億円
(4)若い担い手の育成確保 果樹産地継承支援300万円 就農研修500万円
(5)農魚山村基盤づくり 土地改良175億円、治山造林50億円
(6)鳥獣被害の防止 2億円
(7)林業成長産業化 6億円

3.地域生活の維持向上
(1)空き家対策 1000万円
(2)生活交通の確保 3億円 
(3)買い物支援  100万円
(4)除雪対策  1.2億円
(5)地域包括ケアシステムの構築 1.1億円
(6)6次産業化の推進 1.2億円 がんばる女性農業者支援事業1000万円

冬にトマトが採れるのはどうしてでしょうか?

トマトの開花は、昼夜の長さではなく、苗の長さに依存するので、トマトは冬でも採れるのです。基本的にトマトは花粉を運ぶハチやチョウによって実を付けるので、トマトの旬は夏です。しかし冬場、トマトの花にオーキシンをかけると、花粉がつかなくても、実が肥大します。だから冬トマトには種がありません。また種なしトマトの品種もあります。種なしトマトはハチやオ-キシン処理がなくても、花が咲けば実がなります。

トマトの皮は薄いので、根から急激な水の吸収があると裂果してしまいます。裂果を避けるために、トマトは温室あるいは透明シ-トで覆って栽培されます。
市販のトマトの75%は「桃太郎」という品種です。桃太郎シリ-ズは25種あります。桃太郎は熟した状態の実が収穫でき、実が赤く熟してから完熟するまでの時間が長い特徴があります。桃太郎は味や栄養価でも優れているために、トマト市場を席捲しました。


トマトはコラ-ゲン合成に必要なビタミンC、老化を抑制するビタミンE、塩分の排出を助けるカリウム、腸内環境を整える食物繊維などをバランス良く含んでいます。トマトにはリコピンやβ-カロテンなどの抗酸化物質が豊富に含まれています。トマトの赤はリコピンによるものです。トマトはうま味が強いので、鍋料理にもよく用いられます。生食より加熱食の方が、リコピンの吸収が2~3倍増加すると言われています。

固定種にはどんな利点があるでしょうか?

全国各地で栽培されている在来品種・地方品種のほとんどは固定品種です。例えば京都の京野菜、大坂のなにわ野菜などがあります。不揃いで生産性は低くても、味の濃い固定品種は値段が高くても根強い人気があります。F1種は生育期間が短くなった結果、ミネラルが少なくなり、味が薄く、光合成の期間も短いので、ビタミンCなどの栄養素が少なくなった可能性もあります。家庭菜園の場合、固定種の方が生育期間にばらつきがあるので、長期間に少量の収穫が持続できる利点があります。自家採種が可能なので、種を買わずに済みます。自家採種して固定種を鍛えることで無肥料栽培が可能になり、循環型の持続可能な農業ができます。

交配種の作れない野菜はあるでしょうか?

交配種が作れない野菜もあります。その代表はレタスとマメ類です。レタスには自家不和合性がなく、雄性不稔系統は見つかっていますが、利用しにくいようです。しかし、永年にわたる品種改良と品種選抜の結果、固定品種でもレタスは全国的に流通する良品ができています。大豆は遺伝子組み換え品種が完成しています。マメ類のエンドウ・インゲンマメ・ソラマメ・エダマメなども重要な野菜ですが、固定品種での生産が続いています。ゲノム編集で雄性不稔系統が作り出されるようになるかもしれません。ニンジンでも雄性不稔性利用による交配種ができていますが、本紅金時人参などの固定品種も広く栽培されています。

雄性不稔性はどのようにして生じるのでしょうか?

雄性不稔の遺伝子はミトコンドリアの環状DNAの中にあります。野生植物の場合、細胞の核内にある直鎖型DNAには花粉形成の回復遺伝子があり、ミトコンドリアの雄性不稔の遺伝子が働かないように抑制しています。

栽培植物では、突然変異によりミトコンドリアの雄性不稔遺伝子が無くなったために、核内の花粉形成回復遺伝子も不要になり喪失しました。そのため栽培植物は雄性可稔です。しかし野生植物と栽培植物の交配種の中には、野生植物に由来するミトコンドリアの雄性不稔遺伝子と、栽培植物に由来する花粉形成回復遺伝子のないDNAを有するものがあり、雄性不稔種が誕生しました。以下にこのことを詳しく説明しましょう。

Sを不稔(Sterility)遺伝子があるミトコンドリア遺伝子、F(Fertility)を不稔遺伝子がない可稔のミトコンドリアの遺伝子、RRを花粉形成回復遺伝子を有する核の優性遺伝子、rrを花粉形成回復遺伝子を有しない核の劣性遺伝子としましょう。そうすると野生種の遺伝型はS-RR、栽培種の遺伝型はF-rrと書けます。野生種と栽培種が偶然交配し、
・ S-RR(野生種)× F-rr(栽培種の花粉)→ S-Rr(可稔株)
S-Rrなる可稔株が誕生したと考えられます。さらにS-Rr同士の受精により
・ S-Rr(可稔株)×S-Rr(可稔株の花粉)→S-RR(野生)、 S-Rr(可稔)、S-rr(不稔)
の3種類の種が生まれました。このうち、S-rrは、核がミトコンドリアの不稔遺伝子の発現を抑制できないので、不稔になります。すなわち雄性不稔種の遺伝型はS-rrと書けます。

結局、歴史的に見ると、雄性不稔種にはミトコンドリアの異常があるという言い方は正しくありません。なぜなら元の野生種にはすでに雄性不稔遺伝子が含まれていたからです。むしろ野生種が突然変異して栽培種が出現したことが異常なことだったのです。栽培種と野生種から生まれた可稔株同士の交配によって、必然的に雄性不稔株が生じます。

雄性不稔種と同じ遺伝型をもつ栽培種の花粉を用いることで、
・ S-rr(雄性不稔種)× F-rr(栽培種の花粉)→ S-rr(雄性不稔種)
により雄性不稔種を増殖できます。種苗企業はこのようにしてF1種を生産していると思われます。稔性回復種F-RRを用いれば、
・ S-rr(雄性不稔種)× F-RR(稔性回復種の花粉)→ S-Rr(可稔種)
により、F1種子の可稔性を回復することもできます。つまり優性な花粉形成回復遺伝子Rが雄性不稔遺伝子Sを抑制するので、S-Rrは可稔種になります。

 

ミトコンドリアに雄性不稔の遺伝子が存在するのは何故でしょうか? 

自分の花粉であろうと他の花粉であろうと、種さえできればミトコンドリアの遺伝子は確実に種に受け継がれていきます。雄蕊(おしべ)がなくても他の植物の花粉が雌蕊(めしべ)に付着すれば種はできます。ATPを生産するミトコンドリアには雄蕊をつくることは大きな負荷なのです。それより種子を多くつくる方がミトコンドリアの遺伝子を多く残せます。ミトコンドリアは元来別の生物であり、増殖する意思が強いため、ミトコンドリアは雄性不稔の遺伝子を作り上げたと考えられます。雄性不稔の遺伝子は、ATP合成の遺伝子に隣接しており、雄蕊をつくるときに、ATP合成を阻害するので、雄蕊が正常にできなくなります。
ところが他から花粉が得られない場合には、雄性不稔種は絶滅してしまいます。植物は核内の花粉形成の回復遺伝子によって我儘なミトコンドリアの雄性不稔の遺伝子が働かないように抑制しているのです。

雄性不稔性とはどういう性質なのでしょうか?

雄性不稔性(ゆうせいふねんせい)とは、突然変異によって、本来ひとつの花の中に雄蕊(おしべ)も雌蕊(めしべ)もある種類の野菜なのに、雄蕊がなかったり、雄蕊があっても花粉ができなかったりする性質のことです。

1925年に米国で初めて雄性不稔性の赤タマネギが1個だけ発見されました。通常の黄色い玉ねぎの雄性不稔性品種を得るために、雄性不稔性の赤タマネギに通常の黄色玉ねぎの花粉をつけ続けると、雄性不稔性の黄色玉ねぎの割合が増えていき、6世代後には殆ど完全な雄性不稔性の黄色玉ねぎが得られます。これを戻し交配(バッククロス)と言います。1944年にはF1玉ねぎが販売されるようになりました。一度この雄性不稔株を見つけると、これに正常な株の花粉を受粉して、いくつもの品種の雄性不稔系統が育成できます。


 ある品種の雄性不稔系統の株と別の品種の正常な株とを並べて植えると、雄性不稔系統の株から交配種のタネが採れます。昆虫が花粉を運んでくれるので受粉に人手が要りません。種採りの能率を上げるために、花粉を提供する品種よりも雄性不稔の品種の株を多く植えます。雄性不稔系統の次の代を作るには、同じ品種の正常な系統の遺伝性を調べ、次世代の全部の株が雄性不稔となる花粉親を選んで受粉します。雄性不稔性利用によるF1種の作りは、タマネギから始まり、大根、ニンジンやトウモロコシでも実用化されています。


日本人は野生のハマダイコンから雄性不稔性をもつ舞鶴大根を作りだしていました。あるフランス人が欧州で舞鶴大根と菜種を交配させ、雄性不稔の菜種を開発し特許を取得しました。葉緑体は大根由来だったので、細胞融合で葉緑体を菜種由来に改良したそうです。同じアブラナ科のキャベツやブロッコリ-にも雄性不稔種が得られるようになりました。

F1種をつくるにはどうしたらいいのでしょうか?

F1種に限らず、一般に交配種をつくる方法には、人工受粉、自家不和合性、雌雄異株(いしゅ)、雄性不稔性を利用する4つの方法があります。ヒット品種は何十年も利益を約束してくれますから、種苗企業はあらゆる作物を交配種にするための努力を重ねています。

人工受粉
人工受粉は1927年にナスビで行われました。ナスビの実からは1000個以上の種が得られます。1935年に福寿1号というトマトの交配種が得られました。ナス科の果菜類は一つの花に雌蕊と雄蕊がある両性花なので、開花前に雄蕊を取り除く除雄作業が必要になります。交配には、除雄、袋掛け、花粉集め、受粉などの作業が必要です。ウリ科の場合は、雄花と雌花が別なので、一方の品種の雌花の開花前に袋掛けをして、開花日にもうひとつの品種の雄花の花粉を受粉して人工受粉します。

自家不和合性(じかふわごうせい)
 自家不和合性とは、自分の花粉(あるいは自分と同じ品種の花粉)で雌蕊が受精しない性質のことです。そのメカニズムには様々のものがあります。例えば雌蕊の柱頭に付着した花粉が花粉管を伸ばしても、柱頭の1/3程度で停止してしまいます。花粉の雌性決定要素であるリボヌクレアーゼ(S-RNase)が、雌蕊が同種であることを認識して、花粉管内のリボソームRNAを分解し、花粉管の伸長を阻害します。
例えば、自家受精しなくなったカブと小松菜を一緒に栽培すれば、ミツバチによってカブの雌蕊に小松菜の花粉がかかれば、根がカブで葉が小松菜の新しい交配種「小松菜カブ」が得られます。もちろん根が小松菜で葉がカブのものは破棄します。
カブも小松菜もアブラナ科です。偶然の交雑でできた「小松菜カブ」から採れた種をまき、みやま小カブと、純系の小松菜の株を選び、隔離して育てます。それぞれの菜の花が開花する前に人為的に蕾を開き、自家受粉をくり返します。何年か自家受粉をくり返されたカブと小松菜には、自家不和合性が生まれます。自家不和合性をもつ純系の親を増やすには、温室の空気に3~6%の二酸化炭素を含ませることで、自家不和合性を解除することができます(中西、日向1975年)。1949年にはキャベツ、1950年には白菜に関して、自家不和合性を利用したF1種が完成しました。一般に両親を特定することは経費がかかります。交配ミスを確認するために試作すると種の寿命が1年縮小します。
 
雌雄異株(しゆういしゅ)
この方法はもっぱらホウレンソウで実用化しています。ホウレンソウにはメス株とオス株の区別があります。葉を見てもわかりませんが、春先になると、オス株のほうが早くとう立ちします。まず掛け合わせたい二つの品種を並べて栽培します。一方の品種のオス株を花の咲く前に全部抜き取り、メス株だけにします。その品種のメス株は、隣の他品種のオス株からの花粉を受粉して、交配種の種ができます。

F1種にはどのような問題があるでしょうか?

F1種には3つの大きな問題があります。

第一の問題は、F1種は、気候変動や病害虫の発生により、全滅する危険性が高いことです。年々強くなる病害虫に対応するために、農薬の使用量が増える傾向があります。これに引替え在来種は多様性があり、気候変動や病害虫に強い種が必ずあります。在来種の多様性が失われると、全滅の危険性はさらに高まります。


第二の問題は、交配二代目以降は形も大きさも不揃いになるので、農家は毎年F1種の種を買わなくてはならず、その結果、作物の種子の多様性が失われることです。これまで農家は栽培した一部の作物から自家採種してきました。しかし自家採種には専用の畑が必要で、種の採取や管理に手間がかかります。農家がF1種の種を購入するようになって、自家採種する農家は激減しました。つまりF1種の出現により、農家がこれまで栽培してきた在来種の種類が激減することが危惧されています。種は保管期間が長くなると発芽率が低下します。種を維持するには3年以内に更新しなければなりません。農家が自家採種しないと、気候変動や病害虫に強い在来種は消滅してしまうのです。


第三の問題は、安全な野菜が食べられなくなる可能性があることです。日本にはサカタとタキイの2大種苗会社がありますが、世界全体の2%程度の市場占有率しかありません。モンサントなど上位3社の巨大多国籍企業は60%以上のシェアを持っています。交配種時代になって、採種事業が大手企業の独壇場になったのは、品種集めと試験交配という初期投資に、大金が必要だからです。種を制する者は世界を制するため、巨大多国籍企業は小さな種苗会社を次々に買収しています。そうした巨大多国籍企業は、F1作物だけでなく、遺伝子組替えやゲノム編集技術を用いた安全性が不確かな作物を開発しています。除草剤グリホサ-トのように有害物質の濃度基準値が100倍以上に改正されることもあります。あるいは植物自体に組み込まれた殺虫剤成分などの有毒物質は外来性の農薬ではないので、規制基準値すら存在しません。日本の種苗企業が買収された場合には、日本の安全な野菜が食べられなくなる可能性があります。

F1種とはどんな種でしょうか?

子の形質が両親と同じ形質をもつ品種は、固定品種あるいは固定種と呼ばれています。F1種とは、第一雑種世代(First Filial generation)の略語、すなわち異なる固定品種の両親から得られた第一代目の交配品種のことです。交配はメス親の雌蕊(めしべ)にオス親の雄蕊の花粉を付着・受精させて行います。


雑種強勢の遺伝法則により、F1種は、親品種に比べて、早く大きく育ち、両親の優れた形質を受け継ぎます。雑種強勢の原因はまだよく分かっていません。例えば甘いトマトと日持ちのするトマトを交配させると、そのF1種は甘くて日持ちのするトマトになります。またF1種は、形や大きさ、収穫時期が揃うため、効率的な生産、流通、販売が実現できます。そのため現在小売店で販売されている野菜の殆どが外国産のF1種です。日本の種子自給率は数%と言われています。外国産の種子は、日持ちするように赤や青に着色された殺菌剤が種子に塗布されているので、あまり素手で触らない方がいいです。


現在流通している小松菜は、在来種の小松菜と中国産のタアサイやチンゲンサイと交配したもので、茎が太くて固くて袋に詰めやすく、病気に強くて収穫量も多くなりました。こうした特徴は生産者と流通には都合がよいのです。


近年、自分で料理する人は減っています。多くの会社員は外食で済ませています。現在、流通している野菜のうち、家庭で調理されている野菜は30%弱です。今や種苗企業は、個々の消費者よりも、外食産業、食品加工企業、大手流通業者向けの種を生産しています。つまり、外食産業や食品加工会社では、味付けや加工のしやすい、均質かつ味の薄い野菜を求めています。安くス-パ-に卸されている野菜の多くは、外食・加工産業で余った野菜だと言われています。

自然の摂理と循環とはどういうことでしょうか?

自然の摂理と循環とは、「自然が、動物(捕食者)、植物(生産者)、菌類(分解者)が相互にバランスを保ち共存する摂理の元で、物質が循環再生産され、生物の持続的な生存と環境を実現している」ということです。菌類は種類が多く眼に見えないので理解が難しいものです。菌類を含めて、自然の循環を理解し、自然の循環に調和した暮らしを目指すことが、私たちの持続的生存を可能にします。

 進化の過程で一年性の被子植物が多く出現しました。一年草は、個体の生存期間を短くすることで、遺伝子の多様性を増やしながら、速く増殖することに成功しました。これらの植物は、種を放出した後には、枯れて、土に還ります。大量の植物遺体が地表を覆えば、種には光が照射されないので発芽できなくなります。

しかし土壌菌は光を使わずに大量の植物遺体を分解します。そのおかげで植物は発芽できるのです。細胞質の糖や核酸は細菌によって比較的容易に行われますが、細胞壁は高分子の多糖類でできているので、分解は容易ではありません。前回は、細胞壁の分解は糸状菌(カビ)、放線菌(抗生物質を分泌する細菌)、担子菌(キノコ)などの多様な菌類の協力によって行なわれることを示しました。根の周囲のムシゲルなどの粘着性多糖類や分解されて残った有機物の一部はアルミニウムと結合し腐植になります。腐植は土壌の団粒化を促進します。腐植もまた徐々に分解されていきます。

増殖した菌類の遺体も菌類によって糖やアミノ酸に分解されます。有機物や菌遺体はさらに細菌によって、植物が吸収しやすい無機態の栄養素に変換されます。植物は、細胞の骨格となる炭素を光合成で得ています。しかしタンパク質や核酸や浸透圧調整に必要な窒素・リン酸・カリ(NPK)の殆どを主に無機物質の形で根から吸収しなければなりません。結局、植物や菌類の遺体の分解によって、遺体に含まれるNPKの栄養素やMg、Ca、Feなどのミネラルが土壌に供給され、それらは植物によって再び吸収され、再利用されます。

植物は、微生物の多様性を高めることで、病原菌から身を守っています。様々な菌がバランスよく生息している土壌は、活性の高い土と呼ばれ、病原菌のみが繁殖し難い状態になっています。植物は根から糖を分泌させることで、根の周りの菌叢のバランスを整えているのです。単一菌叢になると病気や連作障害が生じると考えられます。

植物は、根から糖やペプチドを出して、細菌を集め、グロマリンを放出し、土壌を団粒化し、菌類が棲息しやすい環境つくりをします。多くの植物は、菌根菌と共生し、根より細い菌糸を使って、細部の水分やリンやミネラルをより広範囲の土壌から得ることができます。また土壌の団粒化により、植物は自分自身に必要な水と空気が得られます。

団粒構造を著しく失った土は、降雨時には余剰水の涵水機能が働かなくなるので、畑の表面が川のようになってしまいます。そのような土地は雨があがったらすぐに乾いて、ひび割れを起こし、土埃を巻き上げます。適切な空気と水分がないので、微生物が住めなくなると、有機物は十分に分解できずに蓄積し、地下水を汚染するなどの問題を引き起こしてしまいます。

つまり土壌の団粒化は環境を保全します。団粒化により、降水が素早く深部に浸透するので、栄養素やミネラルが表面流出し難くなります。雑草や雑菌も栄養素やミネラルを土壌に保持する役割を果たしているのです。土壌の安易な耕起は、雑草や雑菌を殺し、土地の乾燥と荒廃をもたらします。団粒化は土壌生物によるものです。土壌の化学性と物理性を向上させには、まず土壌の生物性を向上させなければならないことに私たちは気づき始めたのです。

これからの農業はどのようにあるべきでしょうか?

農に関する考え方

農に関する考え方を改めることは、環境を保全する唯一の道です。従来の農法のように土地を耕起して化学肥料を施肥し、優れた作物だけを収穫しようとすると、様々な問題を引き起こします。これからは自然の摂理と循環をよく理解し、菌相バランスの取れた健全な土壌を育成し、健全な土壌に作物を育成させなければなりません。山、海、川の自然環境と農とのつながりを見直さなくてはなりません。

持続的収穫

慣行農法では、畑の外部から種や肥料や農薬や農業機械など、大量の農業資材を投入しています。こうした農法は長期的には農地を疲弊させ、石油資源の枯渇後にも持続的に収穫していくことができません。

従来のように短期的な増収だけを目標にせず、これからは持続的な収穫を目標にします。そのためには、いきなり作物を栽培するのではなくて、食用にならないイネ科やマメ科の植物を栽培するなどして、時間をかけて健全な土壌を育成することも必要になります。健全な土壌や循環を取り戻した農地は、外から大量の肥料を与えなくても、持続的な収穫が期待できます。堆肥は増収のための手段ではなく、健全な土壌の育成のための過渡的な手段と考えます。堆肥の施肥の仕方も土壌環境を壊さない仕方に変えていきます。作物も単一ではなく多様な作物を栽培し、自然な環境を実現します。農業だけでなく林業や漁業も持続的収穫を目標にしなければなりません。

開かれた農

持続的収穫が実現できれば、農業はすべての人の生業になります。自分が食べる分を自分が作るのが基本になります。農作物を遠隔地に運ぶなどの様々な無駄がなくなります。家族や隣人との関わりも多くなるでしょう。自然から学び、自然と調和した生活は健康的です。土地に適した品種を選び、種採りして育てていくことで、災害に強く、安定した収穫が得られます。人々が広がって住めば、これまでの様々な問題が解決するでしょう。

堆肥の分解はどのように進むでしょうか?

堆肥の分解は、植物の細胞壁の成分を分解できる菌類が分解しやすい順番に分解します。堆肥は、落葉樹の枯葉、イネ科の枯草、米ぬかなどと水を混ぜて、保温して発酵させてつくります。米ぬかのリンPや窒素N分は菌体を作るのに使われます。N源として牛糞や鶏糞を使う人もいます。ときどき水をやり、切り返して均一に混ぜます。水をやらないと乾燥して、糸状菌が増殖せず、ヘミセルロ-スやペクチンの分解が進まないからです。ペクチンが分解すると、セルロ-スとリグニンが残ります。セルロ-スは放線菌が分解します。放線菌は60℃~70℃の高温に耐えられます。最後に残るリグニンは担子菌などが分解します。

分解の過程を調べるために、3種の菌類による植物の分解モデルを考えました。植物がペクチン、セルロ-ス、リグニンからなるとして、3つの分解菌(糸状菌、放線菌、担子菌)が分解する過程を表す数理モデルを立てました。

10元連立非線形方程式を市販のソルバで解いて、植物の分解過程を解釈しました。

植物を構成する成分は、ペクチン、セルロ-ス、リグニンの順番に分解され、十分時間が経つと菌類量は減少し、無害な堆肥が生成します。その様子を簡易モデルで実現することができました。

より複雑なモデルも考えられますが、結果は単純化したモデルと定性的に似ていました。

初期の菌数が少ないと増殖ピ-クを迎える時間が送れますが、定性的な形状は変わりません。分解が不十分な堆肥を施肥すると、残留糸状菌が作物に害を与えます。林の匂いがなくなるまで、堆肥を完熟させてから施肥します。

窒素固定菌は窒素固定を妨げる酸素をどのように遮断しているのでしょうか?

ニトロゲナーゼは窒素に水素を付加する強力な還元剤ですから、酸素と容易に反応してしまいます。ニトロゲナーゼの金属クラスタは酸素に曝されると秒単位で速やかに分解されます。ニトロゲナーゼが失活しない酸素濃度は5~30 nM(モル濃度:M=mol/L)と非常に低いです。したがって、ニトロゲナーゼを駆動するにはO2を含まない嫌気環境が必要です。しかし生物が利用するATP生産の酸化的リン酸化のためには250 μMの酸素濃度が必要です。そのため窒素固定生物は様々な方法で嫌気環境を実現しています。嫌気性の窒素固定細菌は窒素固定に必要なATPを発酵など,酸素呼吸以外の系路によって生産しています。

根粒菌の場合

根粒菌はダイズの根など、レグヘモグロビンを含む根粒細胞に共生しています。レグヘモグロビンは酸素を強く捉え、酸素濃度に対する緩衝作用を有します。根粒の酸素拡散障壁を介した酸素濃度調節により酸素濃度は60nMとなり、レグヘモグロビンの酸素吸着作用、低酸素濃度での呼吸鎖の電子伝達を可能にする酸素高親和性のバクテロイド・ターミナルオキシダーゼによる酸素消費により、遊離酸素濃度は10nM程度になります。ちなみにヒトの血液の場合、遊離酸素の濃度は1μM程度です。

根粒菌の原形質膜の呼吸系はこの低濃度の遊離酸素を消費してATPを生産しています。そしてアゾトバクタと同様、このATPを利用して遊離酸素のない細胞内部に局在するニトロゲナーゼによって窒素固定を進行させています。この様に小さな細菌ではATP生産と窒素固定を、離れたところで進行させて、両立させています。

アゾトバクタの場合

アゾトバクタは、呼吸保護と呼ばれる細胞内酸素濃度を低く維持するための酸素消費速度の調節機構をもっています。呼吸保護には細胞表層に局在する5つのターミナルオキシダーゼによる酸素消費が大きく寄与します。それとともにアルギン酸が生合成され、細胞が覆われるアルギン酸の殻は細胞内の酸素を低くします。セルロース繊維のネットワ-クに水溶性のアルギン酸が裏打ちされると柔軟で酸素ガスを通さない膜が得られます。

細菌の表面膜の呼吸系で酸素を消費してATPを生産しています。アゾトバクタの細胞膜は酸素バリア膜であるアルギン酸膜で覆われています。外部から拡散してくる酸素は、細胞表面で全部消費されるため、細菌の内部には侵入しません。ニトロゲナーゼは酸素のない細胞の内部に局在し、ここで細胞の表面で生産されたATPを用いて窒素固定を行っています。

図1 アゾトバクタ属ビネランディの細胞の模式図

細胞はアルギン酸のバリア膜(黒)で覆われている。紺色のCydABⅠ、Cco、CydABⅡ、Cox、Cdtは5つのタ-ミナル酸化酵素、水色の4つの膜タンパク質Nuo、Sha、Nqr、NdhはNADHユビキノン酸素還元酵素、灰色のCydR、MucR、AlgUなどは制御タンパク質、赤色はATP合成酵素1とATP合成酵素2、紫色のFeSllとRnf1は呼吸保護に関わるタンパク質、黄緑の四角で囲われたものは、酸素暴露に敏感なタンパク質である。

参考文献:Joao C. Setubal, Virginia Bioinformatics Institute, JOURNAL OF BACTERIOLOGY, July 2009, p. 4534–4545,’Genome Sequence of Azotobacter vinelandii, an Obligate Aerobe Specialized To Support Diverse Anaerobic Metabolic Processes’

窒素固定シアノバクテリアの場合

光合成をするシアノバクテリアにも窒素固定をする種があります。光合成によりO2を発生しながら、酸素に弱いニトロゲナーゼを駆動するのは驚きです。ヘテロシストの膜成分は糖脂質です。細胞隔壁が外部からの気体拡散速度を調節することで細胞内酸素分圧を低減化しています。同時にヒドロゲナーゼ活性を高めることで環境中H2を酸化させて酸素を消費して細胞内酸素分圧を低下させています。糸状性シアノバクテリアは、環境中のC/Nが増加し窒素固定の必要性が高まった場合に、窒素固定専用の細胞(ヘテロシスト)にニトロゲナーゼを局在させ、光合成を行っている細胞からATPと 還元力をもらって、窒素固定を行っています。好気性の窒素固定菌は以上の様にして、酸素が窒素固定を阻害しないようにしています。窒素固定により生成したアンモニアは栄養細胞から供給されるグルタミン酸と反応しグルタミンへと変換され窒素源として栄養細胞に移送されます。

名古屋大学の藤田祐一教授は2018年6月にプレクトネマという窒素固定シアノバクテリアの20.8kbの窒素固定遺伝子のクラスタとCnfRという転写制御タンパク質を見つけ、その発現制御機構を解明しました。これらの遺伝子を、シネコシスティスという窒素固定の能力をもたないシアノバクテリアに導入して、窒素固定能を付与し、脱酸素試薬(ジチオナイト)の添加で、低いが有意なニトロゲナーゼ活性が検出しました。

フランキアの場合

フランキアは球状細胞ベシクルを形成することにより酸素の混入を防ぎ窒素固定を行います。ベシクルはホパノイド脂質の結晶からなる多重膜で覆われています。ベシクルの直径は4~5 μmで、ホパノイド脂質膜の厚さは50nm程度です。ベシクルは植物のミトコンドリアに取り囲まれており、これは酸素分圧を低下させる効果があると考えられています。

ニトロゲナ-ゼの反応中心はどのようなものでしょうか?

ニトロゲナ-ゼの反応中心は、[4Fe-4S]クラスタ、PクラスタとFeMo-coから成ります。Mo型ニトロゲナーゼは、容易に分離する2つのコンポーネントFe タンパク質(NifH二量体)とMoFe タンパク質(NifD-NifKヘテロ4量体)から構成されています。Nifは窒素固定Nitrogen fixationの省略記号です。NifHというのは窒素固定に関わるFeタンパク質をコ-ドしている遺伝子Hの名前です。Fe タンパク質は、ATPを加水分解してエネルギを得て、窒素の還元に必要とされる電子を送り出します。MoFe タンパク質は、Fe タンパク質から送られてきた電子を使って実際に窒素分子の還元を行います。

Fe タンパク質にある[4Fe-4S]クラスタは4つの鉄と4つの硫黄がキュバン(cubane)状(=立方体状)に集合したFe-Sクラスタです。MoFe タンパク質は、[8Fe-7S]構造のPクラスタとFeMo-coと呼ばれる[Mo-7Fe-9S-C-ホモクエン酸]の有機金属クラスタを含み、NifDとNifKの2つのサブユニットによるα2β2というヘテロ4量体構造をしています。[4Fe-4S]クラスタから送られてきた電子は、Pクラスタを経由してFeMo-co(フェモコ)に伝達され、FeMo-co上に結合した窒素分子を還元します。PクラスタからFeMo-coに電子を伝達すると、

  • P cluster(還元型)+FeMo-co(酸化型)→ P cluster(酸化型)+FeMo-co(還元型)

となり、還元型のFeMo-coが得られます。さらに

  • FeMo-co(還元型)+ N2 → FeMo-co(酸化型)+ N2H2

となり、改めて生成されたFeMo-co(還元型)とN2H2が反応し

  • FeMo-co(還元型)+ N2H2 → FeMo-co(酸化型)+ N2H4

さらに改めて生成されたFeMo-co(還元型)とN2H4が反応し

  • FeMo-co(還元型)+ N2H4 → FeMo-co(酸化型)+ 2NH3

によってアンモニアが生成されます。つまり還元型FeMo-coの力を3回使って、窒素からアンモニアが生成されます。

但しこれらの金属クラスタはすべて酸素によって速やかに破壊されてしまいます。また、ニトロゲナーゼの3つの構造遺伝子(NifH、NifD、NifK)に加え、FeMo-coの生合成には8つもの遺伝子が必要です。

窒素固定菌はどうやって窒素をアンモニアに変えるのでしょうか?

窒素固定菌はニトロゲナーゼ(Nitrogenase)という酵素を使って、窒素分子をアンモニアへと変換します。炭化水素のC-H間の結合エネルギは約100 kcal/mol程度であるのに対して、N≡Nの三重結合のエネルギは225 kcal/molと高いので、これを還元的に開裂して2分子のアンモニアに変換することは大変なことです。Hoffman教授はニトロゲナーゼを“Everest of enzyme”と呼んだそうです(2009年)。ニトロゲナーゼは、モリブデンMoを含むMo型、バナジウムVを含むV型それに鉄Feのみを含むFe型の三種類あります。特に、土壌細菌のアゾトバクタ・ヴィネランディ(vinelandii)のMo型ニトロゲナーゼがモデル細菌となっています。ニトロゲナーゼは以下のような反応を触媒します。ここでPiはリン酸を表します。

  • N2 + 8H + 8e +16Mg2+≡ATP + 16H2O ——> 2NH3 + H2 + 16Mg2+≡ADP + 16Pi

電子はフェレドキシンなどの電子供与体から提供されます。ギブスエネルギの変化は

  • ΔG’ = -136 kcal/mol N2

です。標準状態(PH7)にも関わらず大きな発熱を生じます。細胞での酵素反応中にATPは、Mg2+≡ATPの状態を取っています。つまりMg2+はATPの2つのリン酸の酸素イオンOにキレ-ト結合しています。ATPの負電荷を覆うことで、Mg2+≡ATPが酵素反応の活性部位の疎水性の裂け目に結合できます。上記反応ではアンモニアに伴い水素が発生しています。ニトロゲナーゼは、ATPの加水分解と共役したプロトン還元の副反応

  • 2H + 2e + 4ATP + 4H2O ——> H2 + 4ADP + 4Pi

が含まれているからです。実際の生理状態においては16ATPではなく、20~30ATPが必要だとされています。ニトロゲナーゼは、反応特異性が低く、様々な窒素化合物や有機化合物を触媒できます。

窒素固定菌はどれくらいの窒素を固定するのでしょうか?

生物による窒素固定量は年間5300万トンと言われています(植村誠次1977年)。その内、マメ科の根粒菌による窒素固定量は年間1400万トン、ハンノキ型根粒などの非マメ科によるものが500万トンで、全体の36%を占めています。それ以外の66%はアゾトバクタ-やシアノバクテリアなどの単独細菌によるものと考えられます。ちなみに人間が工業的に固定している窒素量は年間3000万トンです。

 化学肥料は1ha当たり60kgの窒素分を投入します。マメ科の植物は68kg/haの窒素を固定し、アゾトバクタ-は50~280kg/haの窒素を固定するようです。アゾトバクタ-を有効利用できれば、窒素肥料は要らなくなりますね。

 高橋英一(1982年)によると、窒素固定量は、ダイズ栽培土壌50~100kg/ha、クローバ栽培土壌100~200kg/ha、サトウキビ根圏土壌~60kg/ha、水田30kg/ha、アカウキクサ栽培池60~120kg/haです。

サトウキビが作物体に貯えた窒素の50%近く、サツマイモでは葉中窒素の40%近くが植物細胞に内生するエンドファイト細菌から供給されていると考えられています(涌井2003年)。すなわち、作物は肥料だけで成長するのではなく、窒素固定菌の働きが想像以上に大きいことが分かります。

窒素固定菌にはどのようなものがあるでしょうか?

窒素固定菌というとマメ科の根粒菌(Rhizobium)が有名ですが、他にも単体で窒素を固定するアゾトバクタ(Azotobacter)、クロストリジウム(Clostridium)、藍藻(diazotrophic cyanobacteria)がいます。またフランキア(Frankia)などの放線菌(Actinomycetales)は多くの樹木と共生し、空気中の窒素をアンモニアに変えて摂取しています。土壌の中のアゾトバクタが十分いれば、作物の幼苗は、窒素肥料を殆ど与えなくても、成長します。窒素肥料を与えてしまうと、アゾトバクタと作物との緩い共生関係は無くなってしまいます。牛糞堆肥などを使う有機農法から無肥料栽培に転換するには、土壌中の窒素成分を減らして、微生物の転換を図らなければなりません。

マメ科の根粒菌

 マメ科植物の多くは根に粒状の根粒を形成し、そのなかに根粒菌が共生しています。根粒菌は植物から糖をもらい、植物に空気中の窒素を分解して得た窒素化合物やホルモンを供給しています。マメ科植物は世界各地に分布しており、現在450属、13,000種ほどが知られています。調査された2,000種のうち、根粒を形成しない種類が約10%ありました。

アルファルファ、クロ-バ、エンドウ豆、インゲン豆、ル-ビン、大豆、カウピ-(落花生)、ミヤコグサ、ダレヤ、イガマメ、ニセアカシア、イタチハギ、タチレンゲソウ、ムレスズメなど約20種類のマメ科の植物は、交互に根粒菌を交換しても根粒が形成されます。根粒菌は、土壌中では鞭毛のある小型の球菌ですが、共生する時は桿状大型化し、不規則な形態のバクテロイドになります。根粒組織中にはレグヘモグロビンという赤色の色素がみられます。根粒の寿命は多くは1年以内であって、結実するころから根粒の内容物は寄主植物に吸収され、根粒内の根粒菌は土中に放出されます。

根粒の形成には、好気的条件が必要です。また窒素肥料が多いと根粒が形成されません。リン酸は根粒形成に不可欠で、根粒形成を促進させます。微量元素の硼素(B)は根粒とバクテロイドの形成に、モリブデン(Mo)は窒素固定に必須の元素です。マメ科作物の種子に根粒菌を接種して根粒を形成させる人工接種の手法が開発されています。人工接種すると、無効菌が先に根に侵入する前に根粒が形成されるので、作物の収穫量と品質が向上するようです。

アゾトバクタ

アゾトとはイタリア語で窒素の意味です。クロオコッカムやビネランジは、シュ-ドモナス科アゾトバクタ属のグラム陰性の好気性細菌です。アゾトバクタ属の細菌は単体で自分のために窒素を空気中から取り入れ固定します。アゾトバクタは1gの炭水化物を消費して5~20mgの窒素を生産します。これは根粒菌の10%程度です。

アゾトバクタは、土壌中に広く分布し、中性付近で窒素固定を行うため、酸性土壌にはあまりいません。植物は根から糖を出し、アゾトバクタはアンモニウムを出して、お互いに緩い共生関係を保っています。特にアゾトバクタは光合成細菌と共生します。アゾトバクタは脂肪酸を提供し、光合成細菌は糖を提供します。そのため光合成細菌を施肥すると窒素固定量が増えます。アゾトバクタは大量の酸素を消費するので、環境が嫌気的になりがちですが、光合成細菌は酸素がなくてもATPを生産できるので、アゾトバクタと共生できるのです。

窒素固定細菌に関しては、アゾトバクター属以外に4属が知られています。

  • アグロモナス属Agromonas 酸素分圧の低いところで窒素固定する。
  • アゾモナス属Azomonas 低いpH(4.6~4.8)域で窒素固定する。
  • ベイゼリンキア属Beijerinckia 37℃で生育、熱帯地方で窒素固定する。
  • デルキシア属Derxia メタンを同化でき、熱帯地方に分布し窒素固定する。

クロストリジウム

クロストリジウムは3~4μmサイズのグラム陽性の嫌気性細菌です。繊毛があり運動します。耐酸性があり、あらゆる土壌に分布しています。但し窒素固定力はアゾトバクタより弱いです。クロストリジウム属細菌は、SODやカタラーゼなどの活性酸素を無毒化する酵素を持たないため、酸素がある通常の環境下では不活化します。酸素存在下では、耐久性の高い芽胞を作って休眠することで、死滅を免れます。ボツリヌス菌や破傷風菌やウエルシュ菌はクロストリジウム属の細菌です。サ-モセラム菌は好熱性で酸素なしにセルロ-スを分解できるため、エタノール生産に利用されています。クロストリジウム属菌はガン細胞を選択的に攻撃することが知られており、その応用が研究されています。

窒素固定シアノバクテリア 

単細胞・糸状体種のシアノバクテリアの半数は窒素固定の能力を持ちます。大部分は単生ですが、真核藻類・地衣類・シダ植物・裸子植物などと共生する種もあります。シアノバクテリアは好気生物でしかも光合成は酸素発生型なので、多くの窒素固定シアノバクテリアでは一部の細胞を、光化学系Ⅱを欠いた窒素固定細胞=ヘテロシスト(heterocysts 異型細胞))に分化させることで光合成系と窒素固定系を空間的に分離し、窒素固定と光合成の起こる時間を分離することで酸素感受性の高いニトロゲナーゼを酸素から保護しています。アナベナ(Anabaena)がその代表例です。しかし、嫌気・微嫌気条件でのみ窒素固定活性を発現するレプトリンビア・ボリアナなどの種も存在します。

ソテツ科の植物は9属90種が知られ、これまでにその約1/3に藍藻類が侵入した根粒の着生が報告されています。ソテツの根粒は地表の近くに形成され、多年生で叉状分岐をしており、10cmもの大きさになるものもあります。最近では、ソテツの根粒は、イヌマキの根粒と同様、微生物と関係のない本来の性質であって、藍藻類などの内生菌は2次的に侵入したものと推定されています。

窒素固定メタン菌

深海熱水環境には窒素固定能をもつ好熱性メタン菌が棲息しています。35億年前の深海熱水性の石英脈に保存された窒素分子と(最古のメタン菌由来と考えられている)有機物の窒素同位体組成の関係を調べたところ、当時の深海熱水環境に生息したメタン菌が窒素固定して増殖していた可能性が高いと考えられています。窒素固定遺伝子の大規模な伝播は地球初期の深海熱水環境で起き、生命の共通祖先もしくはメタン菌(当時の深海熱水環境に生息していた)から光合成細菌の祖先に伝播したと考えられています(2014西澤学)。

フランキア菌

フランキアは放線菌門に属するグラム陽性細菌です。フランキアは1886年Brunchorstにより非マメ科植物の根粒中に見出され、その名は彼の師であるスイスの微生物学者A. B. Frankに由来します。フランキアは、多細胞性の菌糸、ベシクル、胞子の3つのタイプの細胞に分化します。通常は、一般的な放線菌と同様に菌糸として生育します。培地中の窒素源が欠乏すると、ベシクルと呼ばれる球状の細胞を分化させ、そこで窒素固定反応を行います。フランキアはベシクルを形成することにより自分自身で酸素防御を行うため、このような好気状態でも窒素固定を行えます。

フランキアが共生する植物は世界で8科14属、総計158種あります。日本ではハンノキ属16、グミ属13、ヤマモモ属3、ドクウツギ属1の計33種について根粒の形成が報告されています。オランダのグルチノザハンノキを主体とした森林では、毎年60~130kg/haの窒素の蓄積が見られます。アメリカのカリホルニア湖では、湖畔に面してハンノキ林が密生していて、湖畔周囲の土壌及び湖水の水が富栄養化し、プランクトンが旺盛に発育しています。ヤマモモは、瀬戸内の石英粗面岩地帯における粘土質土壌の改良に用いられています。マツと混植後12年間に、毎年80kg/haの窒素増加がみられています。

窒素固定エンドファイト(Diazotrophic endophytes)

サトウキビやサツマイモの内部にはエンドファイト細菌が共生しています。エンド(endo)は体内、ファイト(phyte)は植物の意味です。野生イネから分離されたHerbaspirillumはイネの細胞間隙に生息して、窒素固定をします。サツマイモ体内には、窒素固定活性を持つBradyrhizobium属、Pseudomonas属、Paenibacillus属のエンドファイトが生息しています。これらの菌は、土壌にアミノ酸などの有機体窒素があるときに植物体内に入り込みます。化学肥料では入りません。これらの窒素固定エンドファイトは宿主特異性が低く、広範な作物の窒素栄養の改善に利用できます。窒素固定エンドファイトはススキにもあります。

細菌の増殖能力はどれくらいあるのでしょうか?

大腸菌は20分以内に一回分裂すると言われています。ヒトの皮膚や肝臓の細胞が入れ替わるのには1ヶ月かかります。大腸菌の方が圧倒的に活動的なのです。

20分に一回分裂すると24時間で72回分裂します。10^X倍に増殖するときの指数Xは

  • X=72・log2=72・0.30=21.6 

すなわち理論上10^21個以上に増殖します。実際は栄養がなくなって増殖は止まります。仮に栄養が供給され続けると、大腸菌の重量は700fg(=7×10^-13g/個)ですから、1個の細菌は24時間後には、

  • 7×10^-13g/個×10^21個/日×10^-6(ton/g)=700(ton/日)

700トンという途方もない重量になります。細菌には環境を変える力が備わっています。

土壌中の菌体の栄養分はどれくらいでしょうか?

菌体には、カビと細菌を平均して炭素100gに対し、窒素15g、リン11.6g、カリウム9.8g、カルシウム1.4gが含まれています。つまり菌体にはN:P:K=3:2:2の割合で栄養素が含まれています。菌体のC/N比は6.7です。

糸状菌は炭素100gに対して、窒素5g(4.5g~7.5g)程度含んでいます。糸状菌の場合、

  • C/N比=100g/5g=20

となります。堆肥作製時のC/N比を20とするのはそのためです。堆肥はC/N比10程度まで分解すると、林の匂いがなくなって施用可能になります。ちなみに好気性菌では0.75g~1.5gの窒素を含んでいます。細菌の場合

  • C/N比=100g/1.5g=66

となります。細菌に必要なのは炭素であることが分かります。

畑10a当たり、700kgの菌体がいると考えられています。乾燥菌体量は、約100kg(=700kg×14.3%)になります。内訳は炭素70kg、窒素11kg、リン8kg、カリ7kg、カルシウム1kgとなります。10aの施肥量は、窒素10kg、P2O5が10kg、K2Oが10kgですから、リンは4.4kg、カリウムが8.3kgとなります。つまり、乾燥菌体のミネラルと施肥量はほぼ等しいといいうことになります。土壌中の菌体が死んで肥料として供給されれば、無肥料でも植物は育つことになります。

細菌は摂取エネルギの何%を菌体合成に使っているでしょうか?

好気性細菌は摂取エネルギの5~10%、嫌気性細菌は摂取エネルギの2~5%しか菌体合成に使いません。つまり細菌は摂取エネルギの95%以上を生命維持活動に使ってしまいます(西尾道徳1989年)。細菌を増やすには土壌に大量の炭素が必要なのです。施肥した有機体窒素は、細菌に取り込まれずに余り、硝酸態窒素に変化し、植物に吸収されます。

一方、真核生物であるカビは摂取エネルギの30~50%を菌体合成に使っています。糸状菌などは摂取エネルギの半分を菌糸の伸長に費やしています。糸状菌は細菌よりN、P、Kなどのミネラルが1桁多く必要になります。雑草堆肥などを作るためには、米ぬかなどの窒素分を入れます。糸状菌は湿った土壌を好むので、堆肥が乾かないように時々水を追加して、均一になるように切り返します。

Alは植物にどんな問題を引き起こしているのでしょうか?

Alは土壌中の希少なリン酸とキレ-ト結合して[Al≡PO3]の非可給態にします。つまりAlはリン酸基O=P(OH)2の2つのOH基の酸素に挟まれて結合します。あるいは種子に含まれるフィチン酸は、6つのリン酸を含みますが、そのうち4つのリン酸がAlとキレ-ト結合し、難分解性の不溶態[4Al≡フィチン酸]を形成します。糸状菌は、フィタ-ゼという酵素でフィチン酸を分解し、植物にPを供給する手助けをします。しかし糸状菌は[Al≡フィチン酸]を分解することはできません。つまりAlはキレ-ト結合してAl≡PO3を形成し、植物がPを吸収するのを妨げているのです。植物は根からクエン酸などを放出して、リン酸を得ます。

  • [Al≡H2PO4] + クエン酸 → [Al≡クエン酸] + H2PO4

リン酸の拡散係数は小さく、同じ土壌において硝酸イオンが1日に3mm拡散するのに対して、リン酸は0.13mmしか拡散しません。従って植物の根の周りはPが欠乏しています。菌体は植物よりP濃度が25倍高いです。植物は根から糖を分泌し、根の周囲に菌体を引き付け、菌遺体のPを吸収します。

植物はどのようにして難分解性の腐植を分解するのでしょうか?

植物の根の細胞壁はAlと結合することができます。例えば

  • [Al≡有機物] + 根細胞壁 → Al≡根細胞壁 + 有機物

といった反応により、有機物が遊離します。細菌やカビには有機物を摂取する口がありません。細菌は外部に酵素を分泌して、有機物を分解して、吸収します。Alと結合した根細胞は脱落し、根の先端のムシゲルに堆積します。これはやがて細菌のエサになります。

根の細胞壁がAlと結合する理由

植物の細胞壁にはヘミセルロ-スが含まれており、多糖類鎖にはフェノ-ル基を有するフェルラ酸などがあり、フェルラ酸同士の結合により多糖類鎖同士が結合しています。隣接するフェルラ酸の2つのフェノ-ル基はAlをキレ-ト結合します。植物の細胞壁に含まれるポリ・ペクチン酸にはカルボキシル基があり、これもAlとキレ-ト結合します。

難溶性の腐植から有機物を遊離させるもう一つの方法は有機酸を使う方法です。植物の根からは有機酸が分泌されています。例えば

  • [Al≡有機物] + クエン酸 → [Al≡クエン酸] + 有機物

といった反応により、有機物が遊離します。遊離した有機物は細菌によって分解されて、植物の養分になります。植物の根から分泌されるクエン酸やシュウ酸やリンゴ酸もAlとキレ-ト結合をします。

植物はどうやって[Fe3+≡リン酸]からFeやリン酸を吸収しているのでしょうか?

野菜は被子植物です。被子植物には双子葉植物と単子葉植物があります。進化的には単子葉植物の方が新しいです。単子葉植物は、草食動物に対抗するために、成長点が低く、種子に養分を集中させています。単子葉は、養分が少なく、ガラス質で消化され難い特徴があります。

双子葉植物には、細胞壁の内側の細胞膜にFe3+をFe2+に還元する膜タンパク質酵素があります。

[Fe3+≡リン酸] + 膜タンパク質酵素 → Fe2+膜タンパク質酵素+ リン酸

となり、還元されたFe2+は根の表皮細胞の膜輸送タンパク質で細胞内部に輸送されます。

Feの還元力は、リン酸があり、鉄欠乏の条件で発揮されます。

単子葉植物の場合は、根からネムギ酸などの有機酸を放出して、水溶性の[Fe3+≡ムギネ酸]の形にして細胞内に吸収します。

但しマメ科のル-ピンは、クエン酸を使って、Feを吸収します(1983年ガ-トナ-)。双子葉のキマメ(樹豆)は[Fe3+≡リン酸]を利用し、イネ科のソルガム(雑穀)は[Ca2+≡リン酸]からリン酸を得ます。

土壌中でAlはどんな働きをしているのでしょうか?

アルミニウムイオン(Al3+)は価数が3価と大きいので、植物には有害です。Alは植物を構成するのに必要な元素ではありません。しかしAlは土壌中で重要な働きをしています。

1.Alは粘土に不可欠な元素

岩石の50%~70%は石英(SiO2)、15%はアルミナ(Al2O3)、残りはFe2O3やK2Oです。だから物理風化で細かくなった一次鉱物はSiAlFeKを含みます。さらに植物にKを奪われ、化学風化を受けて結晶化した二次鉱物はSiとAl(あるいはFe)を含んでいます。つまり粘土はAl2O3とSiO2から出来ており、Alは粘土に不可欠な元素なのです。

2.Alは土壌のミネラルを保持する

Alは正8面体のシート、Siは正4面体のシート構造を形成しています。例えば代表的な粘土鉱物であるカオリナイトは、Alシ-トとSiシ-トが1:1、スメクタイトは2:1に積み重なった構造をしています。粘土鉱物のAl3+がMg2+やCa2+に置き換わることで、結晶表面はマイナスに帯電(但し側面はプラスに帯電)します。これによって粘土はK+やMg2+やCa2+などの陽イオンを引き付け、CEC(陽電荷交換容量)を得ます。ちなみにカオリナイトのCECは3~15meq/100gであるのに対し、スメクタイトのCECは80~150meq/100gもあります。ここでmeqはミリ・エクイバレント(当量)と読みます。つまりAlのおかげで土壌は養分を保持できるのです。

3.Alは腐植を作り、土壌の有機物を保持する

私たちがよく目にする黒ぼく土は、火山灰なので、粒子が細かいために、多くのSiとAl(Fe)が溶出しています。ところでイネやススキなどのイネ科の植物の葉の縁はSiO2のガラス質で鋭くなっています。イネ科植物は大量のSiとKを吸収するので、土壌中に多くのAlが遊離します。一方有機物には大量のカルボキシル基が含まれています。2つのカルボキシル基の酸素はAlを挟み込みキレ-ト結合をします。つまり遊離したAlは有機物と強固に結合し、 [Al≡有機物]を形成します。これは難分解性の不溶態で、有機物を分解され難く、隙間が多い三次元構造にします。これが腐植と呼ばれる黒褐色の有機物です。つまりAlは土壌の有機物(腐植)を長期間保持する働きがあるのです。

菌遺体に含まれるたんぱく質には粘着性があり、土壌を団粒化します。一方、糸状菌は菌糸の耐水性を高めるグロマリンという不溶性タンパク質を分泌しています。団粒構造が安定に保持されるのは、糸状菌の遺体が団粒構造に耐水性を与えるためです。

ちなみに腐植のCECは30~280meq/100gと幅が広く大きいです。腐植にはカルボキシル基が多く含まれているため、負に帯電しています。カオリナイト土質の場合は、腐食を含む堆肥を入れると、CECが増大するので、作物の収量増加が期待できそうですね。

持続的な農業を実現するにはどうしたらいいのでしょうか?

持続的な農業

自然界の生物は、捕食者(動物)、生産者(植物)、分解者(菌類)の三者から成ります。菌類は主に土壌に生息し、全ての生物の遺体を食べるために分解し、土壌に養分を与えています。植物は、光合成で糖を作り、根から菌類が生成した養分(NPKなど)を吸い上げて、タンパク質を作ります。植物には筋肉はありませんが、様々な化学物質を細胞内で合成するための酵素(タンパク質)が必要なのです。自然界の持続的活動は、三者の生物がバランスし、物質が循環することで成り立っています。農業を持続的に実施するためには、自然界のバランスや循環を維持しなければなりません。

慣行農法

植物を土に植えて、化学肥料と水をやれば、植物は成長します。しかし化学肥料は石油や鉱物資源により生産されるので持続的ではありません。また土壌には養分が残留しているので、化学肥料を施肥してよい栄養バランスの土壌を実現することは容易ではありません。過剰に施肥すると害虫が発生します。化学肥料だけでは、連作障害が発生しやすいため、様々な除草剤や農薬を使用することになります。化学肥料を用いた慣行農法では健康な土壌ができず、長期的には土壌の劣化や流出を引き起こします。

農業は土作りだと言われます。なぜなら健康な土壌に、健康な作物が育つからです。土壌は、鉱物(粘土と微砂と砂の混合物)と有機物(生物の遺体の分解物)と土壌生物(細菌、カビ、土壌動物)から成ります。健康な土壌には3つの条件が必要だと言われています。

<健康な土壌の3条件>

1.物理的に団粒構造があり、通気性(水はけ)と保湿性が保たれている。

2.化学的に豊富なNPKやミネラルのバランスが取れ、弱酸性である。

3.生物的に細菌やカビや土壌生物の多様性が保たれ、病害が抑制されている。

土壌の団粒構造を実現するには腐植、すなわち糸状菌が放出するグロマリンが必要です。化学肥料では土壌微生物は育たないので、土壌の団粒構造ができません。そうすると乾燥に弱く、流出し易い土壌になってしまいます。土壌が固くなれば、作物の根はりが悪くなり、養分を吸収できる範囲や吸収率が低下して、作物の品質や収量が低下してしまいます。

有機農業

畑から作物を収穫すると、その分養分が減ってしまいます。持続的に収穫するためには、堆肥を施肥して、養分を補給する必要があります。これがいわゆる有機農業です。堆肥には、多くの炭素と少量の窒素やリンや硫黄などの成分が含まれています。堆肥は土壌生物のエサになります。堆肥を用いた方が土壌生物の多様性が保たれるので、病害を抑制しやすいのです。堆肥は有機態窒素を含むので、日照の少ない冬作物用の肥料として優れています。通常、堆肥を施肥するときには、土壌と混ぜて耕起します。耕起を避けて、最小限に施肥する人もいます。

「土・牛・微生物」(原題Growing a Revolution)

本書は地形学者のデビット・モンゴメリ—が、世界各地を飛び回り、不耕起農法で肥沃な土壌を作った農民たちと出会う旅の物語である。本書は324ページで13章からなる。取材時の様子が文学的に描かれている一方で、巻末には約300編の引用論文が記載されており、内容は極めて科学的である。博士は、米国で起こった不耕起栽培農家を取材し、不耕起栽培こそが環境保全型農業を実現することを示し、この農業革命が成功するための三原則を提案した。日本も不耕起栽培を深く学び、慣行農業を大きく転換することが望ましい。

 Dr. David R. Montgomery

農耕の歴史

これまでの農耕の歴史を振り返ると、革命的技術として、第一は犂(すき)と畜力の農耕、第二は輪作と堆肥の利用、第三は機械化と工業化、第四は化学肥料と遺伝子技術の導入が挙げられる。モンゴメリ-博士が提案するのは、第五の農耕革命である「土壌生物と共生する農業」だ。

耕起の弊害

私たちは、農業とは田畑を耕すことだという固定観念を持っている。耕起の主な目的は雑草を除去することである。雑草は作物から光と栄養を奪うからである。しかし耕起は、短期的には作物の養分を増やすが、長期的には土壌を乾燥させ、養分と微生物を失わせてしまう。これまでの文明社会が滅亡した原因は、耕起による土壌流出である。

耕起の発明は土壌の生産と浸食の均衡を根本的に変化させた

土壌流出

私たちは土壌流出や劣化にあまり馴染みがない。日本は雨が多く、本州の土壌は比較的安定しているからである。しかし世界の土壌劣化は著しい。中国は全部、アメリカではフロリダ半島付近以外の土壌は、全て劣化している。慣行農法では1年に1mmの厚さの土壌が失われるので、300年で殆どの斜面から表土は失われる。しかもトラクタ-の発達によって、牛や飼葉や牧草地が要らなくなり、畜糞による肥沃化もなくなった。

不耕起栽培の発端

アメリカで不耕起農法に関心が集まったのは、皮肉なことに1965年にパラコート(paraquat)という除草剤が販売されたからである。除草剤があれば耕起しなくても除草できる。不耕起だと、雨水がよく地面に浸透し、作物が干ばつを乗り切れる耕運機の燃料代が少なくて済む。作物の切り株を残すと、肥料の出費も少なくなることに気づいた。毎年7万台以上売れていた犂は1991年には1500台になった。1970年にモンサント社がラウンドアップ除草剤とグリホサ-ト耐性をもつ作物を開発したことで、不耕起栽培の採用に拍車がかかった。すると農家は残りの二つの原則も受け入れ始めた。そのうち除草剤や農薬がなくても十分な収量が得られることが分かり、不耕起栽培が環境保全型農業として確立した。

不耕起栽培農地の面積

不耕起栽培が実施されていた面積は、1970年には300万haに満たなかったが、2013年には15700万haを超えた。これは世界の耕地の11%である。その42%が南アメリカで34%が北米とカナダである。2013年現在アメリカ国内の耕地面積の21%(3560万ha)が環境保全型農地になっている。他の地域ではまだ数%程度である。

不耕起栽培の三原則

モンゴメリ—博士は、数々の不耕起栽培農場の視察と膨大な科学技術文献から、土壌生物と共生する農業が成功するための三原則、すなわち

1)不耕起、2)被覆作物、3)多様性輪作

を導き出した。被覆作物と輪作を利用する農法は古くから知られていたが、犂で耕起していたために持続可能な農業ではなかった。この三原則すべてに従えば、慣行農業より少ない投資で同程度以上の収量が得られるという。この不耕起栽培は、化学肥料、農薬、燃料の使用を大幅に抑制できるからである。この三原則のどれか一つでも満たさなければ、有機農業といえども、土壌は疲弊し、収量は低下してしまう。

被覆作物

被覆作物には複数のマメ科の植物とそれ以外の植物を用いる。例えばトウモロコシ畑に大豆を混作する。被覆作物は、土壌を守り保湿するマルチング効果だけでなく、菌根菌を通じて土壌に養分を与える効果があるという。土壌の炭素量を高めるためには、上から下への土づくりが欠かせない。菌根菌は植物の根とつながることで、植物は広い範囲から養分を吸収することができる。

多様性輪作

多様性のある輪作は、連作障害や病害虫から作物を守る効果がある。多様な植物で覆われていると安定した自然状態に近づく。トウモロコシと大豆の輪作は、トウモロコシに窒素肥料を大豆に炭素肥料を与える。化学肥料は微生物の餌にはならないが、炭素肥料は植物と共生する微生物の餌になる。輪作作物の残渣は、空気中のCO2の炭素を土に戻すことになる。イネ科植物は、菌根菌の作用によって、大豆にリンを与えている。ソバのような被覆作物の根は、枯れた時に酸を出し、リンの可溶化を助ける。ソバは種を付ける前に刈り取る。

有機物0.5%の灰土と有機物8%の黒土

牛と菌根菌

牛には収穫後のトウモロコシの株や被覆作物を食べさせる。牛の放牧は土地を痩せさせると言われているが、牛を適度に移動させれば、土地を肥やすことができる。植物は、牛などに葉を食べられると、糖を含む根滲出液を菌根菌に与えるからである。その代わりに菌根菌は植物に防虫剤を与えている。被覆作物の根滲出液は土壌の有機物含有量を増やし、他の微生物の栄養となる。菌根菌は植物に無機の微量元素も与えている。土中のリンはアルミと結合し不水溶性塩になっているが、菌根菌やある種の細菌は、糖液と引き換えに、酸でリンを可溶化して、植物に供給する。耕起は菌糸を切り刻むので、植物の根とのつながりを壊してしまう。

グロマリンによる土壌の団粒化

菌根菌は、菌糸の水漏れを防ぐためにグロマリンという物質を放出する。グロマリンは1996年に米国のサラ・ライト博士(女史)によって発見されたタンパク質である。グロマリンは防水性接着剤の性質をもち、土壌の団粒状態を固定する働きがある。菌類は成長するのに団粒構造を必要とする。グロマリンで固定された団粒は水に浸されても崩壊しないため、菌類の生活環境を守る。健康な土壌の物理的構造は生きた生物によって作られることが証明されたため、グロマリンの発見は日本の不耕起栽培家たちにも大きな希望を与えた。

グロマリンの発見者のサラ・ライト博士

化学肥料の問題点

農地を耕起したため、この100年間でアメリカの土壌の有機物量は6%から3%未満に低下した。耕起すると有機物が酸素に触れてCO2に分解するからである。有機物が減ると乾燥と浸食が増え、災害に弱くなる。痩せた土地で作物を作るために、化学肥料を投入した。化学肥料メ-カは独占企業である。コ-ク社(窒素肥料)やモザイク社(リン酸塩)は望み通りの値段を付けて販売している。農民の稼ぎの殆どは、肥料や農業機器メーカの利益になってしまうため、肥料の販売人は麻薬の売人に例えられている。施肥した窒素とリンの半分は湖沼に流れ込み環境破壊をもたらす。化学肥料は土壌を酸性化させ土壌生物が棲めない環境にしてしまう。

熱帯地方の取り組み

熱帯地方は動植物の種類が多く、環境保全が必要である。しかし熱帯地方は、地温が高くなり、有機物の分解速度が速いため、土壌に有機物が蓄積しにくい。バイオ燃料用の穀皮などの農業廃棄物を低酸素条件下で加熱することで作られるバイオ炭は、多孔質なので、土壌に入れることで、pHや土質を改善し、微生物の生息地となる。土壌中の重金属を吸着し、重金属が植物や水源に入らないようにするのに役立つ。

不耕起栽培が普及しない理由

慣行農法で訓練されてきた人は、やり方を変えたくない思いがある。商品作物中心の補助金と価格維持は単一栽培や単純な輪作に有利である。作物保険制度があると、農家は被覆作物を栽培したがらない。一番の問題は慣行農法に対する政府の補助金である。政府は三年間の土づくりの期間、農家を支える政策をとるなどして、作物保険制度と補助金を土壌の健康を増進するように変えることが望ましい。

街を活性化させる不耕起栽培

ブラント氏は1万エ-カ(4000ha)の農地を取得したら、それを小さく分割し、若い農家に経営させたいと述べている。不耕起栽培は、初期投資や維持費用がかからないので、小規模でも利益が出る。小規模農家が復活すれば、アメリカの小さな街が再活性化すると考えている。環境保全型農業の普及には、若者をよく教育し、農場後継者を探している年配農家とつなげるプログラムが必要であるという。日本でも慣行農業は労働時間が長く若者には人気がない。不耕起栽培は労働時間が大幅に削減できるので、若者に人気がでると思う。不耕起栽培が普及すると、慣行農業に資材を売る人が得ていた利益は、農民に還元されるだろう。

6-3.理想の土壌とはどのようなものでしょうか?

・塩基バランスがとれた土壌のミネラル含有量
pH6.5でCEC=15meq/100gの土壌でCaO:MgO:K2O=5:2:1(当量比)の理想的な土壌のミネラル含有量を求めてみましょう。pH6.5の塩基飽和度は80%ですから、ミネラル電荷の総量は、土壌100g当たり12meq(=15meq×0.8)となります。
CaO:MgO:K2O=12meq×5/8:12meq×2/8:12meq×1/8=7.5meq:3.0meq:1.5meq
です。合計12meq(=7.5+3.0+1.5)。これを重量比に換算すると
CaO:MgO:K2O=7.5meq×28mg/meq:3.0meq×20mg/meq:1.5meq×47mg/meqより、
CEC=15meq/100gの土壌では、
・ CaO:MgO:K2O=210mg:60mg:70mg=61.8%:17.6%:20.6%(重量比)
となります。当量比(62.5%:25%:12.5%)に比べると、重量比はMgが少し減った分だけKが増えたようにみえます。
もしCEC=30meq/100gの土壌であれば、それぞれ2倍になり
・ CaO:MgO:K2O=420mg:120mg:140mg (合計680mg)
となります。理想的なCaO重量はMgOの3.5倍、K2Oの3.0倍です。
pH6.0の場合は、塩基飽和度は70%ですから、上記の比率を0.875倍(=70%/80%)すれば求まります。CEC=30meq/100gの土壌の場合
・ CaO:MgO:K2O=368mg:105mg:122mg (合計595mg)
となります。pHを6.5から6.0に下げると、85mg(680mg-595mg)のミネラルが減少します。この土質の場合pH1だけ変化させるには、170mg/100gのミネラルが必要です。これは1反当たり170kgの施肥量に相当します。30kg/袋で6袋分のミネラルが必要です。

・不足肥料の計算
 土壌分析の結果に基づいて不足肥料の計算をしてみましょう。例えば土壌分析の結果、CEC=28meq/100gかつ
・ CaO:MgO:K2O=280mg:100mg:94mg (合計480mg)
であったとしましょう。この当量比は
・CaO:MgO:K2O=280mg/28:100mg/20:94mg/47=10meq:5meq:2meq(合計17meq)
となります。飽和塩基度は
・ 17meq/28meq×100=60%
です。土壌pH5.5と酸性になっています。pH6.5にするには、
・ CEC=17meq×80%/60%=23meq
を狙って、23meqを5:2:1に分配します。
CaO:MgO:K2O=23meq×5/8:23meq×2/8:23meq×1/8=14.4:5.8:2.8(合計23)
ですから、電荷比を重量比に換算すると
CaO:MgO:K2O=14.4meq×28(mg/meq):5.8meq×20:2.8meq×47 より
・ CaO:MgO:K2O==403mg:116mg:132mg
となります。不足分は、100g土壌あたり
・ ⊿CaO:⊿MgO:⊿K2O=403mg-280mg:116mg-100mg:132mg-94mg
=123mg:16mg:38mg
となります。これを1反当たりの施肥量に換算します。

・施肥量の計算
まず耕深10cm(ロ-タリ-)、土壌比重1g/cm3を仮定し、1反当たりの施肥重量(kg)を求めます。その後で耕深と土壌比重の計測値から施肥量を補正します。1反は10a(アール)で1000m^2です。肥料を入れる体積は100m^3となります。土壌比重は1g/cm3=1ton/m^3なので、100m^2の土壌重量は100tonになります。CaOを100g当たり123mg投入する場合、100万倍して、1反(100ton)当たり123kg施肥することになります。つまりmgをkgに変更するだけで、1反当たりの施肥量に換算できます。従って施肥量は
・ ⊿CaO:⊿MgO:⊿K2O=123kg:16kg:38kg (10m×100mの面積)
となります。20cm深さの場合は、施肥量を2倍にします。比重1.2の場合は1.2倍します。肥料の種類が異なる場合は換算します。CaCO3ならば、分子量100gなので、CaOの分子量56gに対して、1.78倍(=100/56)の重さの施肥量になります。堆肥のときは、堆肥に含まれる3つのミネラルを分析で求めて、不足分を補うように計算しなければなりません。施肥するときは、もちろん肥料をよく混ぜて、畑に均一に撒いて、深さを一定にして均一に耕さなければなりません。CECの低い土壌は追肥をして収量を上げます。

・収穫量の予想
 収穫量はCECから予想できます。CEC=10meq/100gとします。窒素含有量は20%程度、窒素の原子量は14gなので、土壌100g当たり
・ N量=10meq×0.2×14=28mg/100g
1反の土壌重量は100トンだったので、1反当たり28kgになります。作物は施肥量の70%程度を吸収すると言われているので、
・作物が利用できるN量=20kg/反(=28kg/反×0.7)
です。。肥料の値段は5万円以内でしょう。トウモロコシ1tを作るのに窒素は20kg必要(実に10kg、茎葉に10kg)です。
・ トウモロコシの収穫量=20(kg/反)/20(kg/t)=1.0ton/反
となります。1本400gが200円くらいです。
・ 売上=1000(kg/反)/0.4kg×200円=50万円/反
CEC=30 meq/100gであったとしても、トウモロコシの反収は150万円程度です
一方トマトの場合は、1tを作るのに窒素は5kg必要です。
・ トマトの収穫量=20(kg/反)/5(kg/t)=4.0ton/反
となります。1個200gが200円くらいなので
・ 売上=4000(kg/反)/0.2kg×200円=400万円/反
となります。但しトマトは脇芽の除去など手間がかかります。CEC=15meq/100gで反収600万円なので、生活がなりたちそうです。
それでも息子はトウモロコシ農家になりたいなどと申しております。トウモロコシは6月など早い時期に出荷できれば、9月の3倍の値段で売れます。特別に高価な品種であるとか、お祭りとか娯楽施設など高値で卸せるのであればいいですけど、そうでなければ難しい作物ではないでしょうか。


・塩基バランス
 塩基飽和度とはCECに占めるCa、Mg、Kの合計の割合です。塩基飽和度が80%だとPH=6.5になり、作物の成長に望ましいです。電荷量Eqに換算した比率で「Ca:Mg:K=5:2:1」の割合が理想的な塩基バランスだとされています。この塩基バランスで、作物にあった塩基飽和度のとき、経験的に作物の品質は安定します。
塩基バランスが崩れて苦土が少ないとリン酸が土壌にたくさんあっても吸収できないなどの障害がおこります。塩基バランスを整えると、リン酸の吸収がよくなって病害虫も少なくなり、農薬散布がいらなくなります。また、土壌微生物の環境が改善され有機物の分解と腐植の生成が進み土壌の養分保持力も向上します。塩基バランスや飽和度が崩れた土壌に微生物資材を使っても効果はでません。
 こどもの頃フル-チェというおやつが好きでした。これは果物の糖に牛乳を混ぜてゲル状に固めたものです。ペクチンとCaが反応して固まります。細胞壁はセルロ-ス繊維にペクチンから成っています。Caを摂ると細胞壁が固くなり、病虫害に強くなり日持ちがする野菜ができます。Kは浸透圧を調整しています。Kが多くなると水分が多くなるので果物が膨らんで柔らかくなるイメ-ジです。例えば柔らかいバナナはKが多いです。つまり直観的にはCaは作物を締める働き、Kは作物を緩める働きをします。だからそのバランスをとることが必要です。

6-2土壌分析とはどのようなものでしょうか?

土壌分析や堆肥分析では、100gの土壌に残留している各種ミネラルの質量、土壌や堆肥のpHやCECを得ることができます。収穫したい作物量に必要なミネラル量に対する不足分を求め、適正なミネラルの施肥量を知ることができます。土壌分析は3000円~1万円程度で外注することができます。施肥量の計算ソフトも開発されています。以下に土壌分析に必要な知識について述べます。

・陽イオン交換容量CEC(=Cation Exchange Capacity)
土壌粒子は負に帯電しているので、その周囲にCa2+、Mg2*、K+、NH4+、H+、Na+などの正イオンをよく吸着します。CECは土壌の持つ陰イオン電荷の総数です。つまりCECは土壌が含有できる陽イオン電荷の総数でもあります。CECが高ければ、ミネラルが豊富な土壌ですので、高い収穫量が期待できます。良い土壌は、土壌100g 当たりのCECが15mEq以上と言われています。

mEqはミリ当量(Equivarennt)と読みます。meと表記されることもあります。Eq=原子量/原子価です。つまりEqは素電荷1モル当たりの原子の質量を表しています。農学では陽イオンを酸化物で考えます。
Caの場合、石灰CaOの分子量は56g(=40+16)で、2価なので、1Eq=56g/2=28g
Mgの場合、苦土MgOの分子量は40g(=24+16)で、2価なので、1Eq=40g/2=20g
Kの場合、K2Oの分子量は94g(=39×2+16)で、1価が2つで、1Eq=94g/2=47g
となります。言い換えれば28gのCaOは、電子1モル(=6×10^23個)の電気量、つまり1Fd(ファラディ)の電気量をもちます。1[Fd]=NA・e=96485[C]です。
ここでは、
・ 石灰1mEqは28mg、苦土1mEqは20mg、加里1mEqは47mg
であることを覚えておきましょう。

・CECのイメ-ジ
土壌粒子は、中華料理店の円卓に例えられます。円卓の座席が交換基で座席数がCECです。Ca、Mg、Kのミネラルが座席を占め、残りの席はH+で占められていると考えます。H+の席数が多ければ、土壌酸性度が高い(pH<7)ことになります。酸性化が進行すれば、Ca、Mg、Kのミネラルが減少し、Mn、Fe、Znの可溶化による過剰症を引き起こします。
土壌酸性度が中性(pH=7)とは、すべての席がミネラルで占められていて、H+イオンが殆どない状態です。アルカリ性は座席が満席で、円卓の外にミネラルが溢れている状態です。土壌がアルカリ化するとMn、Fe、Znの欠乏症を引き起こします。酸性土壌がよくないのはミネラルが少ないからです。

塩基飽和度とは円卓の座席を占有するCa、Mg、Kの合計座席数の割合です。pH=6.5で塩基飽和度が80%、pH=6.0で塩基飽和度が70%、pH=5.5で塩基飽和度が60%となります。pHにはpH(H2O)とpH(KCl)の2種類があります。pH(H2O)はH2Oで溶出して測定したpHで土壌水溶液の水素イオン濃度です。pH(KCl)はKClで溶出して測定したpHで、土壌粒子に吸着した水素イオンも含めた濃度です。そのためpH(KCl)の値はpH(H2O)より1程度低くなるのが普通です。その差が土壌粒子に吸着した水素イオン数に対応しています。

・CECの測定方法
CECの測定は、pH7の酢酸アンモニウム溶液(CH3OO-NH4+)1mol/Lを用います。土壌の交換基に付着している様々な陽イオンを全てNH4+イオンに交換し、過剰のNH4+をアルコールで洗浄します。その後、KCl(塩化カリウム)溶液を注いで、NH4+イオンを全てK+イオンに交換し、浸出させて得られたNH4+イオンを定量して、陽イオン交換容量を求めます。NH4+イオンの定量は、KOH、フェノールおよびニトロプルシッドナトリウムの混合溶液と次亜塩素酸ナトリウム溶液を加え、インドフェノールの青色を発色させて比色します。

・交換性塩基(石灰CaO、苦土MgO、カリK2O)の測定方法
pH7の酢酸アンモニウム1mol/L(塩基抽出試薬)を用いて置換溶出して、交換性塩基を抽出します。具体的には土壌1gを計って100mlのポリ瓶に入れ、塩基抽出試薬20mlを加え、30分間振り混ぜた液をろ過します。抽出ろ液、標準液(CaO:150mg/L)、ブランク(塩基抽出試薬)にそれぞれ発色試薬を混ぜて静置した後、分光光度計(波長530nm)で3つの試料の吸光度を測定します。MgOの標準試薬は30mg/L、分光波長470nmで行います。Ca価数は2より、標準液(CaO:150mg/L)は、土壌含量CaO 300mg/100gに相当します。
・試料のCaO含有量(mg/100g)=300/[標準液CaOの吸光度]×[試料の吸光度]×補正値
で算出します。

6-1植物の生育に適した理想の土とはどのようなものでしょうか?

植物の成長には日照条件、防風条件、排水条件などの土地条件と土壌条件が必要です。野菜作りは土づくりと言われるように、作物の栽培には、作物に適した土づくりが必要です。作物栽培に適した土壌には以下の6つの条件があります。

1) 土質がいいこと
砂は保水性がなく、養分が吸着しないので、作物が殆ど育ちません。粘土では排水が悪く、根を張れないので、作物が育ちません。土壌粒子がある程度細かく、通気性や排水性がよく、栄養分をよく吸着する保肥力が高い土壌が栽培に適しています。もちろん有害な化学物質で汚染されていないことも必要です。

2)土が団粒構造である
 団粒構造の土は排水性、保水性、通気性、保肥性、有用菌特性が良い特徴があります。根は養分を吸収するために水が必要です。一方根は呼吸するために酸素が必要です。土の団粒構造は一見矛盾した特性を兼ね備えることができます。嫌気性生物が形成する腐食が土の団粒構造を作り出します。バームキュライト、黒ぼく土、堆肥、腐葉土は保肥性を高め、作物の増収を実現します。

3)土に有益な微生物が存在している
 有益な好気性微生物は有害菌の繁殖を抑制し、植物の生育に必要なミネラルや養分を生成します。微生物は有機質を食するので、微生物を育成するには有機肥料が適しています。同一作物を栽培し続けると、有害な菌類が蓄積され、連作障害が生じ易くなります。連作障害を防止するためには、土中に有益な微生物を育成することが必要になります。有益な微生物を培養した土壌改良剤が開発されています。

4)水素イオン濃度pH(酸度)が適正である
 一般的な植物はpH6.0~6.5の弱酸性の土を好みます。大きく酸性に傾けば、土中の粘土分に含まれるアルミニウム化合物がAl3+イオンになり、根を痛めます。基本的に電荷の大きいイオンは生体に有害なのです。またAlはリン酸と反応してAlPO4になるので、植物がPを吸収できなくなります。これを土壌のリン酸固定といい、黒ボク土はFeやAlが多いことからリン酸の効きにくい土壌とされています。作物根の有機酸によって溶ける肥料を用いればリン酸固定を回避できます。
逆にアルカリ性に傾けば植物はMgやFeなどを吸収できなくなります。植物が栄養を無駄なく摂取するには、適度なpHを保つ事が必要です。pHを調整するにはCaなどのミネラル成分を調整します。pHはミネラルの塩基飽和度に関連しています。塩基飽和度70~80%位が弱酸性です。

5)塩基バランスが取れていること
 自然界では、風で運ばれる砂や海水、動物の死骸が土地にミネラルを供給します。動物にはCaとMgとKが適正な割合で含まれているので、植物に必要な塩基バランスが取れています。人工的な栽培の場合は、作物を収穫し続けると、畑のミネラルが減少し、塩基バランスも崩れるので、耕作者が調整しなくてはなりません。
健康な作物を栽培できる土壌にはCaとMgとKが適正な割合で含まれていることが必要です。作物によりますが、通常、理想的な割合は、Ca:Mg:K=5:2:1とされています。但しこの比率は、質量の比ではなく、後に説明するモル当量の比率です。葉物野菜の場合は、Caを多くして、Ca:Mg:K=7:2:1を採用する場合もあります。作物に適したpHと塩基バランスを実現するためには、土壌分析や堆肥分析を行い、収穫によって生じたミネラルの不足分を土壌に還元することが必要です。

6)適正な窒素とリン酸濃度があること
 NやPはNO2-、NO3-、PO4-という負イオン形態で植物に吸収されます。土壌粒子は負に帯電しているので、負電荷をもつNとPは土壌に吸着されにくく、洗い流されやすいのです。NやPは主に土の中にいる微生物や昆虫や環形動物などの土壌動物に含まれています。自然界では土壌動物の死体が酸化分解されて腐食となり、徐々にNやPが供給されます。あるいはマメ科の植物と共生している根粒バクテリアが窒素分子を分解固定し、植物本体にNを供給しています。

窒素は微生物や昆虫や環形動物などの土壌動物に含まれています。自然界では土壌動物の死体が酸化分解されて腐食となり、徐々にNやPが供給されます。あるいはマメ科の植物と共生している根粒バクテリアが窒素分子を分解固定し、植物本体にNを供給しています。

土壌が乾燥しやすい場所では、微生物の量が減少し、土壌のpHが中性あるいはアルカリ性になるので、NやPが減少・流出し、作物の成長が阻害されます。あるいは畑でとれた作物を収穫し続けると、畑のミネラルが減少し、酸性化し、栽培に適さなくなります。そのため農業ではNとPを補うために、植物性あるいは動物性の肥料を施します。しかしながらより多く収穫するために、土壌が吸収できる窒素量より多く施肥しがちです。
過剰な施肥は植物を病気に感染しやすくするだけでなく、作物を食する様々な昆虫を異常発生させます。その結果、多種類の農薬を大量に使用することになり、環境汚染が進みます。過剰なNやPは地下に浸透して、地下水や河川を汚染(富栄養化)し、その汚染は湖沼や海洋に及びます。大規模な農業は環境破壊の大きな一因となってきました。

NやPは海洋に輸送され、海洋生物に取り込まれますが、結局は海底に沈みます。深層海流が浮き上がる場所では、栄養塩が再びプランクトンや魚などの海洋生物に利用されます。しかし気候変動により、淡水の流入量が増えて、海洋表層の塩分濃度が下がれば、深層水の浮上もなくなる可能性があります。

2. 植物と動物でどんな違いがあるのでしょうか?

・多量必須元素について
ヒトの多量元素はC、O、H、N、Ca、Pの6種類、植物の多量元素はC、O、H、N、P、Sの6種類でした。両者に共通する多量元素はC、O、H、N、Pの5種類です。植物は水とCO2から光合成でH、C、Oを含むデンプンを作ります。ヒトはデンプンを食べてH、C、Oを摂取します。多量のNとPが必要なヒトにとって、タンパク質を多く含む植物の種は重要です。通常の作物のNとPは少ないので、ヒトは大豆あるいは他の動物からタンパク質を摂取しなければなりません。

ヒトではCaが豊富であるのに対し、植物ではSが豊富である違いがあります。ヒトは植物から豊富なSを摂取できます。ヒトはCaを多く必要とするのに、植物にCaが少ないことは問題です。大豆にはCaが含まれていますが、動物の乳製品や小魚の骨などからCaを摂る必要があります。日本人のCa不足について、後で述べましょう。

植物におけるSの生理作用は多岐にわたります。Sは硫黄を含むアミノ酸や有機化合物の構成元素であり、タンパク質、ビタミンB1、ビタミンB7、 脂質等の生体物質の合成に欠かせません。また、相当量のSが植物体内にイオンの状態で存在し、酵素 活性調節、電子伝達、酸化還元調節などに重要な役割を果たしています。

・少量必須元素について
植物の少量元素はK、Ca、Mg の3種類、ヒトの少量元素はS、K、Na、Cl 、Mgの5種類でした。両者に共通する少量元素はKとMgです。Mgは、葉緑体のクロロフィルの活性中心に用いられています。Mgは茎や葉に豊富に含まれているので、ヒトは緑黄色野菜からMgを摂取できます。Mgの奨励摂取量は1日350mgで、摂取量は244mgとやや不足気味です。

Mgは生体内で60%がリン酸塩や炭酸塩として骨に沈着しています。残りの40%は筋肉や脳、神経に存在します。Kに次いで細胞内液に多く存在しますが、細胞外液には1%未満しか存在しません。生体内では、多くの酵素を活性化して生命維持に必要なさまざまな代謝に関与しています。エネルギ産生機構に深く関わっており、栄養素の合成・分解過程のほか、遺伝情報の発現や神経伝達などにも関与しています。また、MgにはCaと拮抗して筋収縮を制御したり、血管を拡張させて血圧を下げたり、血小板の凝集を抑え血栓を作りにくくしたりする作用もあります。

便秘予防薬としてよく処方されるのが「カマグ」と呼ばれるMgO緩下剤、つまり排便を促す薬です。MgOは胃酸で中和され、腸内でMgCl2になります。
・ MgO+HCl → MgCl2+H2O
その後Mg(HCO3)2になります。この重炭酸塩の影響で腸内の浸透圧が上昇します。腸内に水分が引き寄せられた結果、便が水を含み柔らかくなり、その便が腸管に刺激を与えることで排便が促されます。

Kは腎臓での再吸収が弱く、排出されやすい元素です。幸いサルやヒトはKが豊富な果実を食べていたのでK不足になりませんでした。果物の他にKが多いのはワカメや昆布やヒジキといった海産物と大豆です。みそ汁を飲んでいればKが取れます。過剰なKは大部分が尿中に排泄されますが、腎機能が低下するとKがうまく排泄されなくなり、高カリウム血症になります。高カリウム血症になると、筋収縮が調節できなくなり、四肢のしびれや不整脈の症状が現れ、重篤な場合は心停止を引き起こします。

ヒトにはNa、Clが少量元素になっています。植物にとってClは微量元素ですが、マングロ-ブの塩性植物を除くと、通常の植物にはNaは殆ど含まれていません。ヒトは作物からNa、Clを摂取するのが難しいのです。肉食動物は草食動物の血液から塩分を得られますが、草食動物は塩分のある土を食べにきます。ちなみに海水の塩分は3.5%です。ヒトの血中塩分濃度は0.85%です。植物は陸に上がった時点で淡水に適応したので、体内の塩分濃度が極めて低くなったと考えられます。但しNAD-ME型のC4植物ではNaの必須性が証明されています。

・微量必須元素について
ヒトの微量元素はFe、Zn、Cu、Mn、Se、Mo、I、Cr、Coの9種類、
植物の微量元素はFe、Zn、Cu、Mn、Se、Mo、B、Cl、Niの9種類でした。
共通しているのは、Fe、Zn、Cu、Mn、Se、Moの6種類です。野菜を食べていればこれらの微量元素を摂取できる可能性はあります。一方ヒトにのみ必須の微量元素はI、Cr、Coの3種類です。この3種類の必須元素は植物から摂取できません。植物にのみ必須の微量元素はB、Cl、Niの3種類でした。

N、P、Kについて

肥料の三要素の機能について簡単に述べましょう。家庭菜園用の肥料の袋には必ずN:P:Kの比率が記載されています。N(窒素)は光合成に必要な葉緑素や核酸の構成元素です。Nは葉肥とも言われ、葉や茎の成長に欠かせません。Nが多すぎると多汁柔軟となり、病気に弱くなります。Nが少ないと葉の色が淡黄色になり、背丈が小さくなり、分けつが減ります。

P(リン)は核酸や酵素の構成元素です。Pはエネルギ代謝に関わるATPにも含まれています。Pは実肥(みごえ)ともいわれ、開花・結実を促進します。土壌中のリン酸が過剰になると、Zn、Fe、Mgの欠乏を誘発します。少ないと着花数が減り、開花結実が遅延します。

K(カリウム)は植物の構成材料ではありませんが、細胞の浸透圧調整、膨圧維持、膜電位形成、タンパク質合成、光合成、デンプン合成、ビタミン類、抗酸化物質の合成にも関与しています。Kが植物内の様々な化学反応を進める進行役(補酵素)となっていることが分かったのは1980年代のことです。NH3やNO3は植物には毒なので早くアミノ酸にしなければなりません。Kはそうした反応も助けています。植物は糖の濃度を高めることで、浸透圧を高め、乾燥や寒さから身を守ります。カリウムが足りないと、糖濃度が高まらず、乾燥や寒さなどのストレスに弱くなります。あるいは細胞壁の材料であるセルロ-スや接着剤のペクチンが減少し、軟弱になります。Kは根肥とも言われ、根の育成を促進します。土壌中のK過剰はMgとCaの欠乏を誘発します。少ないと側根の成長が制限されます。

ヒトにおいてKは細胞の内液に蓄えられています。細胞膜にあるNa/Kポンプの働きで、Kは細胞の中に、Naは細胞外に輸送されています。インスリンは血糖と一緒にKも細胞内に取り込ませるので、インスリンが欠乏すると、高カリウム血症になります。そうなると不整脈や心停止を引き起こさないように、血液を透析しなければなりませんね。

1.どんな元素が生物に必須の元素なのでしょうか?

ヒトに必須な元素はある程度解明されていますが、完全ではありません。なぜなら人体で元素欠乏の実験をすることは許されないからです。また生物の中には特殊な元素に依存するものがいます。例えばあるツバキ科の植物はF(フッ素)を含む防虫剤をつくります。微量な必須元素については、新しい報告があります。例えば2014年にはBr(臭素)がショウジョウバエに必須の元素であることが報告されました。大雑把に言えば、必須ミネラルの種類は動物種間で顕著な差はありません。しかし植物と動物の必須ミネラルは異なっています。

ヒトにおける必須元素は20元素あり、それらは生命の維持、生体の発育・成長、正常な生理機能には不可欠の元素です。アミノ酸、脂肪、糖に含まれるH、O、C、N、核酸や骨に含まれるCaとPの6種類の元素は多量必須元素と呼ばれ、人体の98.5%を占めています。次に多いS、K、Na、Cl、Mgは少量必須元素と呼ばれ、人体の0.05~0.25%を占めています。S(硫黄)はタンパク質に多く含まれています。KやNaやCl(塩素)は細胞の浸透圧の調整や神経伝達に用いられています。ClはHClとして消化液にも含まれていますね。

多量元素と少量元素を合わせた11元素は常量必須元素と呼ばれ、人体の99.3%を占めています。残りの0.7%は微量必須元素(Essential Trace Elements)と呼ばれ、Fe、Zn、Cu、Mn、Se、Mo、I、Cr、Coの9種類が確認されています。薬学生はこれらの9元素を

「私はどうしても黒柳徹子に会えません」

=「 私(I)はどう(Cu)しても(Mo)くろ(Cr)柳てつ(Fe)こ(Co)に   あえ(Zn)ま(Mn)せん(Se)」

といって覚えるそうです。微量元素は重要な代謝反応を進行させる酵素タンパク質の必須成分として直接関与しています。

一方、植物における必須元素は18元素あります。C、H、Oは細胞壁や糖質の原料であり、葉から吸収されるCO2と根から吸収されるH2Oにより得られています。多量必須元素はC、O、H、N、P、Sの6種類があります。少量必須元素はK、Ca、Mgの3種類です。肥料の三要素はN、P、Kでした。微量必須元素はFe、Zn、Cu、Mn、Se、Mo、B、Cl、Niの9種類です。それらの栄養素を1つでも欠くと、植物は異常生育するか、生活環を完結できません。

Siは必須元素ではありませんが、病害抵抗性を増すために有用元素になっています。SiO2は不溶性ですが、SiO4-は水溶性なので、植物はSiも利用できるのでしょう。水稲は細胞壁が薄いのでSiO2で保護するために、特異的にSiを多く吸収します。

石灰肥料について

Caには作物の葉の茂りや根張りを良くする効果があります。畑の土質を作物が成長しやすい弱アルカリ性にするために石灰肥料が混ぜられます。石灰肥料にも色々あります。生石灰(きせっかい)はCaOで、石灰岩CaCO3を加熱して、CO2を飛ばしたものです。
・ CaCO3 → CaO + CO2
生石灰はアルカリ性が最も強いです。消石灰はCa(OH)2で、CaOに水を加えて作ります。
・ CaO+H2O → Ca(OH)2
白い水蒸気を上げて発熱反応する様は、まるで生きているみたいだから生石灰というのでしょう。消石灰は水に溶けやすく即効性があります。

苦土石灰はMgを含む石灰でドロマイトを加熱して粉末化したものです。有機石灰はカキやホタテなどの貝殻を焼いて砕いたものです。炭酸カルシウムや苦土石灰や有機石灰は遅効性の肥料なので、施肥後すぐに定植可能です。
遅効性の石灰肥料は重要です。Caは水に溶けたCa2+イオンとして根から吸い上げられ葉に届きます。一度細胞壁に取り込まれたCaはもう移動しません。だからCa供給が成長途中で途切れると、下葉にはCaがあるが、上葉や実にはCaがなくなり病気になります。苺の実はCa量が減ると柔らかくなり過ぎて日持ちが悪くなります。ミカンは果皮と果肉の間に隙間を生じてしまいます。遅効性の石灰はCa供給を途切れさせない効果があるのです。Ca欠乏症が生じてしまったら、塩化Caや炭酸Ca水溶液を葉面散布する方法があります。

即効性のある石灰肥料は、窒素肥料と同時に土に混ぜ込むと化学反応を起こして有害なアンモニアガス(NH3)を発生させます。
・ (NH2)2CO(尿素)+Ca(OH)2 → CaCO3+2NH3
・ (NH2)2SO4(硫安)+Ca(OH)2 → CaSO4+2H2O+2NH3
・ 2NH4Cl(塩化アンモニウム)+Ca(OH)2 → CaCl2+2H2O+2NH3
NH3ガスを含んだ土壌に作物を植え付けると枯れてしまいます。そのため、先に石灰肥料を土に混ぜ込んでおき、1週間程度時間をおいて土にならしてから元肥を混ぜ込む必要があります。水に溶けたCaイオンが粘土に吸着され、余分なNが土壌からNH3として抜けるまで待つのです。

地殻の構成元素はO(47%)、Si(28%)、Al(8%)、Fe(6%)、Ca(4%)、Na(3%)、K(3%)です。土にはSiとAlが多く、粘土はSiの4面体とAlの8面体とで構成されています。SiがAlと置換する、あるいはAlがMgに置換するので、通常粘土はマイナスに帯電しています。あるいは水和鉱物はOH端からH+が取れて、O-端になることでマイナスに帯電します。石灰肥料が土になれるというのは、石灰肥料が水に溶けて放出したCa2+イオンが負に帯電した粘土に吸着されるからです。

土壌に石灰を投入しても、土の状態が悪ければ、植物はCaを吸収できません。微生物を増やす、土を団粒構造にする、水はけをよくする、肥料の入れ過ぎや入れる時期に注意する、といったことを守るのは、植物にCaを効率よく多量に吸収させるためなのです。過剰な窒素肥料はCaを消費するし、NH3ガスも出るので、入れ過ぎないようにしましょう。

はじめての収穫

三週間目の小曲りの家庭菜園。今日は水やりのついでに、大根と水菜と小松菜の間引きをしました。これは間引き前の様子です。

間引いた水菜と小松菜は柔らかくて、このままサラダにしても食べられそうです。持ち帰って、根を落として洗い、袋に入れて冷蔵庫に入れました。

収穫の1/3を使って、ベ-コンと若菜の卵とじをつくりました。おいしかったです。種から育てた野菜をはじめて収穫して食べました。

家庭菜園を始めました

市民農園を借りて、家庭菜園を始めました。農園は駅から車で20分程離れた閑静な場所にあります。1区画は5m×8mの広さで、全部で50区画あります。いくつかの水道と駐車場所があります。2年契約で料金は1万円です。

多くの野菜は弱アルカリ性の土壌を好みます。PHメータで1時間ほどで土壌の酸性度を測ることができます。ホームセンタD2で、1000円のPHメ-タが売られていましたが、購入しませんでした。

まず最初は、土を耕して、有機石灰と牛糞堆肥を混ぜて、1週間置きます。石灰は150g/m2、表面が少し白くなる程度に施します。牛糞堆肥は1袋30L(1袋400円)を6袋分入れました。

次にまたスコップで耕して、畝をつくります。畝のサイズは、幅70cm×長さ5m×高さ20cmです。130cm間隔で6列の畝をつくりました。土は粘土質なので、粉砕が大変です。また雨で濡れると重くなるので、晴天の日に耕しました。大根などの根菜類の場合、50cm程度深く耕すので、かなり重労働です。1畝耕すのが半日仕事になります。

次に95cm幅の穴あき黒マルチシートで畝を覆いました。大根やカリフラワ-などの大きい野菜には、30cm間隔の2列穴のシートを使いました。ほうれん草、小松菜、菊菜、ニラなどの葉物や、玉ねぎ、ニンニク、にんじん、ジャガイモなどには、15cm間隔の5列穴のシートを使いました。マルチをすると、雑草の防止、湿度保持、地温増加ができます。広い畝幅に対しては135cm幅のマルチシ-トがあります。巻き取り式なので自分で切って使います。穴あけマルチは、予めミシン目が付いており、自分で穴を開けなければなりません。カップ型カッタで開けるタイプの穴なしマルチもあります。

マルチシートの隅はU字ピンと円板で留め、できるだけ土で覆いました。ブロッコリや大根やキャベツなどのアブラナ科の野菜は虫が付きやすいので、長さ5mの防虫網シ-トを掛けました。直径91cmの半円の支柱(88円)を1列当たり5本使いました。白い防虫網の目1mm×1mmです。埋め込み後の高さは57cmです。11mm直径の支柱用のパッカ-(留め具)はオレンジ色です。10個200円です。農具はカインズで購入しました。支柱のサイズはコメリ、D2、くろがね屋などのホ-ムセンタによって異なります。支柱の半径で畝幅が決定するので、店舗の品揃えを事前に調査しておくといいでしょう。

ニンニク苗の移植をしました。まずマルチの穴を少し掘っておき、ポットから取り出した苗を移植し、十分に水をやりました。ほうれん草や大根の播種の場合は、マルチ穴を指で広げた所に培養土を詰めて、水を撒いて湿らせてから、種を置いて薄く5mm程度覆土しました。