1.どんな元素が生物に必須の元素なのでしょうか?

ヒトに必須な元素はある程度解明されていますが、完全ではありません。なぜなら人体で元素欠乏の実験をすることは許されないからです。また生物の中には特殊な元素に依存するものがいます。例えばあるツバキ科の植物はF(フッ素)を含む防虫剤をつくります。微量な必須元素については、新しい報告があります。例えば2014年にはBr(臭素)がショウジョウバエに必須の元素であることが報告されました。大雑把に言えば、必須ミネラルの種類は動物種間で顕著な差はありません。しかし植物と動物の必須ミネラルは異なっています。

ヒトにおける必須元素は20元素あり、それらは生命の維持、生体の発育・成長、正常な生理機能には不可欠の元素です。アミノ酸、脂肪、糖に含まれるH、O、C、N、核酸や骨に含まれるCaとPの6種類の元素は多量必須元素と呼ばれ、人体の98.5%を占めています。次に多いS、K、Na、Cl、Mgは少量必須元素と呼ばれ、人体の0.05~0.25%を占めています。S(硫黄)はタンパク質に多く含まれています。KやNaやCl(塩素)は細胞の浸透圧の調整や神経伝達に用いられています。ClはHClとして消化液にも含まれていますね。

多量元素と少量元素を合わせた11元素は常量必須元素と呼ばれ、人体の99.3%を占めています。残りの0.7%は微量必須元素(Essential Trace Elements)と呼ばれ、Fe、Zn、Cu、Mn、Se、Mo、I、Cr、Coの9種類が確認されています。薬学生はこれらの9元素を

「私はどうしても黒柳徹子に会えません」

=「 私(I)はどう(Cu)しても(Mo)くろ(Cr)柳てつ(Fe)こ(Co)に   あえ(Zn)ま(Mn)せん(Se)」

といって覚えるそうです。微量元素は重要な代謝反応を進行させる酵素タンパク質の必須成分として直接関与しています。

一方、植物における必須元素は18元素あります。C、H、Oは細胞壁や糖質の原料であり、葉から吸収されるCO2と根から吸収されるH2Oにより得られています。多量必須元素はC、O、H、N、P、Sの6種類があります。少量必須元素はK、Ca、Mgの3種類です。肥料の三要素はN、P、Kでした。微量必須元素はFe、Zn、Cu、Mn、Se、Mo、B、Cl、Niの9種類です。それらの栄養素を1つでも欠くと、植物は異常生育するか、生活環を完結できません。

Siは必須元素ではありませんが、病害抵抗性を増すために有用元素になっています。SiO2は不溶性ですが、SiO4-は水溶性なので、植物はSiも利用できるのでしょう。水稲は細胞壁が薄いのでSiO2で保護するために、特異的にSiを多く吸収します。

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