原油先物価格マイナスの衝撃

時事公論でNHK解説委員の石川一洋氏が、4/21に起きた米国での5月限の原油の先物取引き価格が暴落したニュ-スを解説していました。

https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/428436.html

 2020年4月21日に米国WTI(West Texas Intermediate)において5月限の原油価格が1バレル(=159リットル)-37.6ドルのマイナス決算となりました。つまり1バレル当たり37.6ドル支払って石油を引き取ってもらうという前代未聞の事態が生じたのです。これは、
(1)新型コロナ感染拡大で世界の石油の消費量が急減したこと
(2)OPEC+産油国の石油の減産合意が不十分だったこと
によって、世界の石油の貯蔵施設やパイプラインが満杯になって、取引最終日に石油を引き取るコストが上昇したからです。石油を積んだ数十隻のタンカ-がカルフォルニア沖で待機している状況です。どうして産油国は減産合意が十分にできなかったのでしょうか?時事公論で触れなかった減産合意の実情について調べてみました。

1. 世界の原油産出量と可採年数
世界の原油生産量は一日約1億バレル、2018年は9350万b/d(=バレル/日)、2019年1億600万b/dでした。1バレルは159リットルです。OPEC加盟国の原油生産量が41%、いまや米国、ロシア、カナダなどの非OPEC国の原油生産量が59%を占めています。2018年の平均原油生産量はサウジアラビアが1200万b/d、イランが470万 b/d、イラクが450万 b/d、米国が1500万 b/d、ロシアが1150万b/d、カナダが510万b/d、中国が380万b/dです。中期的には世界の石油需要は、中国やアジアを中心とする非OECD諸国の経済成長に伴って増加すると想定されています。


2000年以降、米国のシェ-ル油の発掘によって、米国の原油生産量が増加し、今では非OPEC国の石油産出量の方が多くなっています。しかし確認埋蔵量の73%はOPEC加盟国にあり、OPEC加盟国の可採年数86年に対して、非OPEC国の可採年数は23年しかありません。とくに米国のシェ-ル油田の可採年数は1油井当たり3年程度であり、新規油田開発がなければ枯渇してしまいます。

2. 原油価格の変動
原油価格(ドバイスポット価格)は、1990年代は1バレル当たり20ドルで安定していましたが、2000年からバブル的に上昇し、2008年には130ドルに達しました。しかしリ-マンショックによりから原油価格は40ドルまで下落し、その後3年で回復し2011年~2015年にかけて100~110ドルで安定しました。しかし米国のシェ-ル油の増産により2016年には30ドルまで下落し、その後OPECの減産努力により60~70ドルに回復しました。2018年度のWTI原油価格は63ドル/バレルでスタートし、OPECの減産政策の継続に加え、シリア情勢悪化等から上昇基調で推移していました。米国が11月からのイラン制裁への参加を各国に要請したことから65~70ドルで安定推移しました。しかし米中貿易摩擦の激化による世界経済の減速見通しから、油価は下落傾向が続き、2018年末にはリーマンショック以来の最安値42.5ドルを記録しました。2019年以降は、OPECの減産強化に加えベネズエラの政情不安や リビアの国内紛争の高まりから再び上昇基調に転じ、年度末にかけて60ドルの水準まで回復しました。
2020年2月から3月にかけてコロナウイルス感染の拡大が生じ、原油需要が減速しました。石油価格を維持するための減産合意は、サウジとロシアの対立のため、進展せず米国WTI原油価格は50ドルから20ドルに下がりました。米国の仲介で1500万b/dの減産合意がなされましたが、4月21日に5月限のWTI原油価格は暴落し、-37ドル/バレルを記録しました。


WTI原油市場は、東京市場やロンドン市場とは異なり、取引期日が来たら原油を引き取らなければなりません。しかし世界の原油貯蔵施設は満杯になっていたので引き取れなくなっていたのです。原油は広大な貯蔵場所を占有するし、有害物なので海洋に投棄することもできません。

3. 減産合意の対立
 サウジアラビアとロシアの生産量は同程度であり、両国は追加減産に関して対立しました。サウジは減産したいのですが、ロシアは減産に反対でした。ロシア経済に詳しい杉浦敏広氏によると、その理由は、ロシアの西シベリアの油層は圧力が低く、バルブを締めて減産すると、後でバルブを開けても原油採取ができなくなるからだということです。一方、サウジアラビアの油田は油層圧が高く、自噴原油が多いので、減産後にバルブを開ければ原油再び採取できます。またロシア産の原油はワックス分が多く、原油を原油処理施設に輸送するパイプラインは細いので、原油が常に流れていないと、ワックス分がパイプ内部に付着して、詰まってしまうのです。また原油の中に含まれる水分が多いので、流れが滞ると冬場は氷結してしまいます。ロシアは技術的に減産が難しいので、追加減産に反対せざるを得なかったのです。
3月6日のOPECプラスの総会では、各国23%の減産し、全体で1000万バレル減産することを決めました。アメリカとカナダの500万バレルの追加減産によって、全体の15%の減産になりましたが、それでも原油先物価格の暴落は防げませんでした。

4. 今後の心配
現在、6月限の原油価格は15ドル以上に回復していますが、これでは産油国の赤字は膨らむばかりです。ロシアの原油価格の採算ラインは42.5ドル、米国のシェ-ル油の採算ラインも40~50ドルと言われています。サウジアラビアは収入の70%を石油に依存しており、採算ラインは30ドル程度と思われます。原油価格の低迷が続けば、米国、ロシア、中東産油国の経済と失業率を悪化させます。中東産油国は政情が不安定なので、紛争が勃発する危険性があります。但し皮肉なことに紛争が生じれば、石油価格が上がるので、失業率は低下します。米国のシェ-ル油関連企業が倒産すれば、シェ-ル油企業の社債であるハイイ-ルド債権などが暴落し、金融恐慌の引き金になります。大手の石油会社が倒産すれば、11月に大統領選挙を控えるトランプ大統領の再選が危うくなります。新型コロナウイルス感染が継続的に拡大し、産油国の体力が持たず、経済の国際協調ができなければ、石油の大暴落が生じ、深刻な経済金融恐慌を引き起こす可能性があります。

5.コロナ感染時代の日本の政策
2020年2月現在、日本は9カ所の石油備蓄基地に4500万kL(138日分)の国家備蓄、2900万kL(88日分)の民間備蓄を行っています。しかし石油備蓄基地は日本海側にのみあり、石油を消費する太平洋側にはありません。日本はエネルギの40%を石油に依存し、輸入石油の88%を中東地域の石油に依存しています。石油の備蓄量を高めておけば、有時の際にも安心です。工場にとって安い石油はものづくりで利益をあげ易くなります。購入力をあげれば、石油価格の安定化に貢献できます。
コロナ感染時代になり、石油の貯蔵施設が石油より価値がある事態が起こりました。日本は、官民挙げて石油貯蔵施設を太平洋側に建設し、安値の石油を大量に備蓄・供給できる体制を整える必要があるのではないかと思います。その場合、石油基地に輸送する内航タンカーの船員やタンクローリー乗務員の人手不足が深刻化しており、担い手の確保が課題になります。

和食の旨さはマグマのおかげ?

4月22日午後10時にNHKのEテレで又吉直樹のヘウレーカ「和食の旨さはマグマのおかげ?」が放映されました。神戸大学の地質学者の巽(たつみ)好幸教授が、大引伸昭調理師の和食を食べながら、和食の恵みは日本が火山列島であることに起因していることを説明しました。巽教授は、海底の地質調査により巨大噴火を予測する研究をされていますが、美食地質学を提唱しています。
日本は軟水でフランスは硬水です。水質の違いは食文化に大きな影響を与えます。フランスはチキンスープ、日本は昆布だしを愛好しています。その理由を実験で説明しました。
硬水で加熱すると、肉のタンパク質とカルシウムが結合して灰汁(あく)となり、肉の臭みを除去することができます。しかし硬水は昆布の表面にアルギン酸カルシウムの膜ができて昆布の旨みが十分抽出できません。お米は軟水で炊いた方がふっくらします。
日本の河川は100km程度、フランスの河川は1000km程度あります。日本の河川は急勾配なので、岩石中のカルシウムが水に溶け込む時間が少ないので軟水になります。硬水は1リットル中に1.4gものミネラルを含みますが、軟水は0.4gしか含まれていません。
日本列島は3000万年前に大陸から分離を始め、300万年前から山脈が形成されました。年間数mm程度の隆起速度で1万mもの高さになりますが、風化で3000m級の山脈になったようです。これが日本の水質を決めました。
ホタルイカが採れるのは富山湾が1000mもの深海だからですが、日本列島の形成に起因しています。日本近海で寒流と暖流がぶつかるために魚種の多い漁場が形成されました。
蕎麦の名産地と火山帯は重なります。蕎麦は寒冷で痩せた火山灰土でよく育つからです。縄文人は津波を避けるために、丘陵の端に住んでいました。弥生人は稲作をするために海辺の平野に住んでいました。弥生遺跡には津波の跡が見られます。
日本人は自然の試練と恩恵を受けてきました。自然災害に直面してきたから、日本人は無常観を基調とする仏教を受け入れてきたのかもしれませんね。

死体粒子が人間を死体に変える

最近、コロナ感染拡大ニュースの影響で手洗いをする事が多くなりました。手洗いと消毒が感染防止に効果的であることを初めて示したのはハンガリー人のゼンメルワイス産科医師(1818ー1865)です。
ゼンメルワイス医師はウィーン総合病院の隣接する第一産科と第二産科の産婦の産褥熱の死亡率が10%と3%と異なる原因に悩んでいました。彼は第一産科は検視解剖を行う医学生、第二産科は解剖をしない助産婦が出産に携わっていることに注目し、死体に付いている微粒子が医師の手によって産婦に付着する事が原因ではないかと考えました。1947年に同僚のコレチュカ医師が検体解剖時にメスで腕を傷つけたことが原因で高熱を出して死亡したことを知り、自説を確信します。
彼は、産科医たちに石鹸とブラシでの手洗いの後に解剖台の臭い消しに使われていたさらし粉(次亜塩素酸カルシウム)で消毒することを義務付けました。これによって、第一産科の死亡率は2%以下に低減し、消毒の効果は実証され、1861年にゼンメルワイスは消毒法の論文を発表しました。
しかしウィーン医師会の重鎮たちは、産婦死亡の原因が自分たちにあった事を受け入れられず、ゼンメルワイスを病院から追い出しました。彼は病理学者ウィルヒョウにも批判されてしまいます。「死体粒子が人間を死体に変える」という考えは、余りに非科学的だと思われたからです。
故郷に帰ったゼンメルワイスは病院の衛生状態を改善し多くの産婦を救い実績を残します。1864年にパスツールが病原菌による感染説を提唱するまで、多くの医師はゼンメルワイスの考えを受け入れられませんでした。
ゼンメルワイスは多くの産婦を死なせてきた罪悪感があり、彼の批判者たちと10年間以上言い争いをして疲れ果ててしまいます。最後は精神病院に入れられて、そこでの怪我が原因で47歳の若さで死亡します。原因がはっきり分からなくても、効果的な予防策を提唱した者には高い評価を与えるべきだという教訓が残りました。

アイアンロード2~知られざる文明の道~

日本に鉄製品が入ってきたのは弥生時代でした。弥生時代中期の終わり頃に東アジアは寒冷化して朝鮮半島は不作でした。温暖だった北九州には広大な水田が開発されました。倭人は、鉄斧で作った丸木舟で朝鮮半島に渡り、稲籾と交換に鉄器を得ていました。朝鮮半島付近の島には、赤い弥生土器が出土していることから、日本人街があったと推定されています。
長崎県壱岐市のカラカミ遺跡から数多くの鉄器が出土しています。その80%は工具でした。日本の弥生人は、大陸人のように鉄を武器や農耕具に使わずに、木や石を加工する工具として使用していたのです。弥生時代から日本はものづくり大国だったようです。
鳥取市の青谷上寺地遺跡は「地下の弥生博物館」と呼ばれています。湿った土が遺跡を酸素から遮断していたために400点以上の鉄器が錆びずに出土しているからです。弥生人は鉄を研磨して様々の工具に加工し、高さ10mもの柱に木組み用の角穴を開け、物見櫓を建造しました。あるいは花弁高坏(たかつき)などの繊細な木製品を作っていました。
鉄斧で板材を加工し、長さ15mの丸木舟の波除け板に用いました。造船技術の進歩により、朝鮮半島や日本沿岸都市間の交易ネットワークが形成されました。
九州の唐津に輸入された鉄は鳥取や石川県の小松に持ち込まれました。小松では鉄器で緑色の碧玉石を採掘して、鳥取で碧玉石を管玉(くだたま)に加工して、ネックレスを作製し、唐津に販売されていました。当時鳥取は「弥生の王国」であり、日本の文明の原動力はアクセサリー作りだったのです。これも日本は、民族争いとは無縁で、稲作栽培ができる恵まれた環境にあったからなのでしょう。

アイアンロード1~知られざる文明の道~

4月26日14時30分にNHK・Eテレでアイアンロード~知られざる文明の道~後編「激闘の東アジアそして鉄は日本へ」が放映されました。愛媛大学の村上恭通(やすみち)教授と笹田朋孝准教授らが中央アジアやモンゴルの遺跡調査で製鉄炉と鉄器を発見し、匈奴と漢の争いに鉄製武器が与えた影響を解説しました。
製鉄法は、紀元前12世紀にヒッタイト王国が滅亡した後、紀元前8世紀頃に中央アジアの遊牧民スキタイに受け継がれていきます。遊牧民にとって鉄ナイフは肉を割き毛皮を剥ぐのに有用です。
紀元前200年に匈奴(モンゴル)の冒頓(ぼくとつ)が白登山の戦いで漢の劉邦に勝利します。劉邦は匈奴の策略にかかり周囲を包囲され、軍師陳平が冒頓の妻に賄賂を送り、何とか脱出しますが、戦いに負け貢ぎ物を送ることになります。紀元前133年には漢の武帝が反撃して、屈辱を晴らします。
文字を持たない匈奴が強かったのは、匈奴の馬術と製鉄技術にありました。匈奴は地下式製鉄炉をつかって高度な鉄製武器を生産していました。匈奴の矢尻を再現すると、それは8mの距離から、鎧に見立てた厚さ3mmの銅板と羊のあばら肉を貫通する威力があることがわかりました。2段式矢尻の三枚の突起は対称に加工され、高い貫通力と与傷範囲を有していました。
武帝の時代の遺跡から、高さ4mの高炉と小型の炒鋼炉が見つかっています。1.4トンもの鉄製橋脚が発掘されています。高炉の鉄は炭素成分がおおいので、武器にするには脆弱でした。炒鋼炉で1200℃で内部の炭素を酸化させて排出し、強靭な鉄を作る技術が開発されました。再現実験では鉄鉱石80kgと木炭200kgから30kgの鉄が得られました。上側から空気を供給し温度を保つために少しづつ鉄鉱石を炉に加えます。
鉄は牛耕用の鍬に用いられ、漢の堅い大地を10倍速く耕起できました。鉄官という役所の木簡記録には、鉄製鍬を普及させるように書かれています。漢は食糧の増産に成功し、大型の鉄剣や鉄戟を大量につくり、軍事力を強化してゆきました。
匈奴の遺跡からは銅鏡などの漢製品が出土しています。戦争もありましたが、殆どの時間は匈奴と漢は交易をして、お互いに必要なものを得ていたのです。

哲学対話でいじめ解消

https://www.gentosha.jp/article/11403/
東大の梶谷真司先輩が考える力を育てるために輪になって座り哲学対話をすることを提案しています。その対話において8個のルールを提案しています。
 梶谷先生の話で、あるクラスでいじめの問題について対話したときに、「なぜ人がいじめられているところを見ると笑うのか?」という疑問がでてきたことがあるそうです。結局、他の人に合わせているだけで誰も本気で面白いと思ってはいないことが分かりました。その後、人がいじめられているのを見てもだれも笑わなくなり、それを止める人も出てきて、次第にいじめが無くなったそうです。自由に考え結論を急がなかったからこそ、極めて難しいいじめの問題を解決できたと考えています。
 考える力は個人の修練や競争で身につくものではなく、自由に問いなんでも話せる場をつくること、それによって信頼関係をつくることこそが、考える力を育てることになると梶谷先生は主張されています。

マイ菜園の立ち上げ完了

本日、マイ菜園の立ち上げを完了しました。トンネル5本とトマト畝など、15日かかりました。前の菜園から、ニラ、アスパラガス、ほうれん草、イチゴ、玉葱、ニンニクなどを移植しました。葉野菜の種は一番奥のトンネルに直播きしました。昨年うまくいったフルティカトマトは成長不良でした。日照不足と低温が原因です。今年は大豆の育苗と定植はうまくいきました。トマトは味比べをするために10種類購入しました。去年種取したナス、ピーマンはうまく発芽しませんでした。買ってきた苗をそれぞれ4つづつ定植しました。アスパラガスは種から育てました。最初は糸の様に細かったのですが、一年経つと根がしっかりして、茎も太くなりました。
1畳水田を追加しました。カエルやヤゴの寝床になるといいな。昨日の雨で菜園が浸水しましたが、ミニ水田に水が入りました。ヒヨクモチの種籾を浸水中です。トマト棚に透明マルチを張って防風しました。トマト畝には相性の良いバジルを定植しました。マルガリータを連想させます。

COVID-19の抗体検査キットが販売

https://www.yamato-net.co.jp/topics/detail/786/

ヤマト科学からCOVID-19の抗体検査キットが販売されました。一箱20個入りで5万円です。尖針で微小血液を細管で採取して2つの検査面に塗布し、緩衝液を3滴ほど滴下して反応を待ちます。検査時間は10分です。IgM抗体とIgG抗体の2つの検査ができます。IgM抗体反応が陽性であれば、感染初期の段階であると判定します。両方反応があれば中期、IgG抗体反応だけだと感染済みであることがわかります。

「イヌノフグリはどこへ行った?」繁殖干渉とは

水曜日午後10時からNHKの又吉直樹のヘウレーカ!「イヌノフグリはどこへ行った?」が放映されました。今日のお相手は東大の塚谷裕一教授です。オオイヌノフグリは春一番に咲く小さい青い花です。これは明治時代にヨーロッパからきた外来種です。
元々日本にはイヌノフグリという小さい白い花を咲かせる在来種がありました。イヌノフグリは今では離島にしか生えておらず、オオイヌノフグリによる繁殖干渉のせいで絶滅の危機に瀕しています。
繁殖干渉とは、近縁種の花粉が相手の繁殖を妨げて絶滅させる現象です。昆虫によりオオイヌノフグリの花粉がイヌノフグリの雌しべに付着し、花粉管が伸びて胚珠まで到達すると、胚珠が死んでしまいます。一方オオイヌノフグリはイヌノフグリの花粉管を半分以上ブロックするので繁殖を妨げられないのです。花粉の量で勝負が決まるので、負け始めると絶滅してしまうのです。
外来種は強い印象がありますが、多くの場合は長年土地に適応してきた在来種の方が強いことが多いのです。パンジーやチューリップは外来種ですが、野山に適応繁殖することはありません。
例外もあります。日本の在来種のクズは、1876年のフィラデルフィア万博で日本庭園の展示で米国に持ち込まれて、想定外の繁殖力で野山に拡散し、今ではジャパニーズ・モンスターと呼ばれて嫌われています。
お二人は小石川植物園の下園文雄氏と対談しました。下園さんは長年、絶滅危惧種の保護繁殖をしてきた方です。彼は2002年に東京で小笠原諸島のムニンツツジの最後の一株の増殖に成功しました。小笠原のラテライトという赤土を使ったために、共生する菌類が活動したためでした。
実は下園さんは塚谷さんが中学生の時からの知り合いです。塚谷少年は毎月植物のことを手紙で質問してきたので下園さんが答えていました。塚谷氏が研究者として植物学教室に入ってからは、下園さんが逆に質問するようになったそうです。
下園さんは人間が自然を破壊して植物を絶滅に追いやっているのだから、人間が絶滅危惧種を救うしかないと感じています。塚谷教授は、多様性は生態系の生き残りの知恵だから、多様性を減らす方向に働くものには本能的に危ないものを感じると述べていました。僕たちは多様性が重要だと知りながら、人間中心の自然観を捨てられない。

「聞こえない音の最新技術」

4月12日のNHKのサイエンスゼロ「聞こえない音の最新技術」で長岡工業高校専門学校の矢野昌平准教授がイヤホン型の耳認証装置の研究を紹介しました。外耳道の形状は双子でも異なっているので、イヤホンから発生した音波が鼓膜で反射して外耳道で干渉しながらイヤホンに戻る音の周波数特性は個人に特有の波形になります。矢野准教授はスマホの持ち主の認証などに使うことを考えています。
この耳認証システムは、イヤホンをつけるだけで連続常時認証が可能なので、ロックを外した後のなりすましを防ぐことができる特徴があります。耳認証は指紋のより情報が盗まれにくい特長もあります。
成人の可聴周波数は20~20,000Hzと言われています。動物の多くは20,000Hz以上の超音波を聴くことができます。広島のラボテック社はNIGE TECという超音波害獣忌避装置を開発しました。焦電型赤外線センサーで5m以内の害獣を検知し20,000Hz、80dBの大音量の超音波で害獣を撃退します。発信タイミングをずらすことで音源などを学習されない工夫がされています。乾電池12Vで半年間、夜間動作します。番組では、鹿や猪や狸などが超音波に驚いて逃げていく様子が紹介されました。

インフラサウンドで災害検知

オクラホマ州立大学のエルビング准教授は低周波音で竜巻の発生を検知する研究を進めています。従来の警報の的中率は20~30%程度と低いのが問題でした。
竜巻は発生する数分前に上空で20Hz以下の低周波音(インフラサウンド)を発生させます。エルビング博士が開発したマイクは、8の字型チューブで広範囲の風音を中心部に集めます。4方向の音を重ね合わせると雑音成分が打ち消しあい低周波音を取り出すことができます。博士は竜巻の発生前に20Hz以下の音量が増大することを確かめました。日本でもインフラサウンドで津波、雪崩、噴火、地震などの災害発生を検知することが期待されています。

韓流ドラマ「たった一人の私の味方」

毎朝8時15分からテレビ東京で放映されていた韓流ドラマ「たった一人の私の味方」が昨日65回目で終了しました。ずっとご覧になっていた人もいたかもしれません。複雑な家族関係の中で親子と男女の愛情が織りなすドラマが視聴者の心を惹きつけます。認知症の大奥様が引き起こすドタバタ騒ぎもユーモラスでした。
 有名企業の創始者一族に嫁いだキム・ドランは、そこで働いているカン運転手が自分の産みの父親であることを知ります。カン運転手はドランの妹の嫁ぎ先の一家の父親を殺した疑いで28年間服役してきた過去があり、娘にその秘密を知られていまいます。ドランはそれが原因で離婚してしまいます。しかし父親の罪は冤罪であったことが判明し、ドランは父親に対して酷い扱いをしてきた人々を糾弾しようとします。それに対してカン運転手は「何事も誰も恨んだりしない。過ぎたことは全部受け入れる。今この瞬間をありがたく思う」と言って、娘のドランの悔しさを宥めます。
 このドラマには、理不尽な苦しみを与える人を恨まず、どんな事にも感謝して生きる勇気が語られています。韓国という国が厳しい社会で多くの人々が苦しんでいることがドラマの背景にあるような気がします。

生き物の集う工場の森

3月11日にNHKの「日本の里山」のテレビ番組で「生き物の集う工場の森」が放映されました。30年以上前に群馬県前橋市にある電気メーカーが新工場を作る際に、自然を残して欲しいという住民の声を受けて、赤城山の樹木種と近自然工法を用いて、更地からオオムラサキが舞い、アナグマが生息する里山の自然環境を実現させました。
多様な環境を得るために溜池をつくり、赤城山に似せて背丈の異なる広葉樹を植樹しました。様々の大きさの石を配置し自然に近い水路を実現しました。社員や近隣住民が森林の手入れや観察会を行っています。企業の宣伝ではなく、環境保全に必要なことだから取り組んでいるそうです。どこの企業だか分かりませんが、カーエヤコンで高いシェアを有する企業だそうです。オオムラサキの幼虫が可愛いでです。

*この企業はサンデンだそうです。

知られざるガリバー酉島製作所

2019年9月14日にテレビ東京の「知られざるガリバー」で大型ポンプの製造会社として知られている酉島(とりしま)製作所が紹介されました。ポンプは、ビルの空調用冷却水の循環や浄水場から各家庭への配水に用いられています。ポンプは私たちの生活に不可欠なものです。
日本に5,000万台のポンプがあり、電力の1/3を消費しています。2014年に京王プラザホテルは酉島のエコポンプに交換し電気代を60%削減しました。従来のポンプの流量を半減して適性化しました。酉島は鋳造工場を持っているので、顧客の仕様に合わせて小型のポンプを作ることができます。「ポンプで省エネ」は酉島の新事業の柱になっています。
琵琶湖の周囲の広大な水田は冠水し易いのですが、酉島の排水ポンプが活躍しています。
アラブ首長国連邦の海水淡水化プラントには酉島の高圧ポンプが用いられています。淡水化のフィルター孔の直径は1nmと小さく、700mの高さまで水を汲み上げられる3枚の羽根車を有する小型高圧ポンプが用いられています。
また得られた真水を140km以上先の街に送る大型ポンプも手がけています。ポンプの振動変化を検知して故障予兆を含めた保守サービスも行っています。酉島の淡水化ポンプは高い性能と信頼性のために世界10ヶ国で使われています。
創業100年の酉島製作所は世界の心臓を作り続けています。アラブの国々から石油を輸入している日本が彼らに貢献することは重要です。こうした企業が日本人の高い評価を支えています。

NHK高校講座地理が面白い

水曜14時20分から放映されているNHK高校講座の地理「世界の様々な地域を見てみよう」が面白いです。今日は石原良純と籠谷(こもりや)さくらのトークで中国の経済発展と地域格差などの問題点を学習しました。さくらさんの鋭い質問に答える形で地理の学習が進行します。


 中国は2001年にWTOに加盟し関税障壁が下がり、外資企業の中国進出が更に盛んになりました。中国で活動する日系企業は3万社、駐在する日本人は13万人を越え、日中の年間貿易額は33兆円を達しました。日本への中国人観光客は740万人、訪日旅行消費額は1.7兆円にもなります。最近は買い物だけでなく、日本人の自然や文化を楽しむ中国人も増えています。
日中が仲良くやっている成功例に埼玉県の川口芝園団地があります。2006年から中国人が増え始め、5000人の住人の半数が中国系住民になりました。話し合いや学び合いを通じて相互理解を深め、騒音や落書きやゴミだしなどの問題を解決してきました。さくらさんが実地レポートをしています。
さくらさんは女優志望で可愛い容姿ですが、4才から空手を習っており、趣味はヌンチャクの練習だそうです。籠谷さくらさんの実家は姫路の佃煮屋の籠谷本店です。

コロナ回復はいつごろになるのでしょうか? ~自宅待機率と感染率との関係

コロナウイルスの感染が大きな社会問題になっています。感染抑制と経済損失の最小化を両立させるためには、感染率に応じた自宅待機率を実現しなければなりません。自宅待機率と感染率の間にはどのような関係があるのでしょうか?また回復にはどれくらいの時間がかかるのでしょうか?簡単な感染モデルで回復時間を見積もってみました。

 感染者数をN[人] 、平均感染期間をT[時間]とすると、時間⊿tの間に増加する感染者数⊿Nは
・ ⊿N=-⊿t/T・N
となります。これを解くと
・ N=No・exp{-t/T}
となります。これは病院などでは感染者数が平均感染期間Tの間に治癒して減少することを意味しています。
 次に感染者が自分は感染していると知らずに外出し、感染を拡大させる場合を考えます。自宅待機率をp、一人の感染者が単位時間に感染させる平均人数をK[人/人/時間]とすると、感染者数⊿Nは
・ ⊿N=K⊿t(1-p)N-⊿t/T・N
と表すことができます。(1-p)Nは外出している感染者の数で、第一項目は外出感染者が増加させる感染者数、第二項目は平均感染期間Tの間に治癒して減少する感染者数を表しています。これを整理すると
・ ⊿N/⊿t={K T(1-p)-1}・N/T
と書けます。これを解くと
・ N=No・exp[{K T(1-p)-1}t/T]
となります。つまり感染者数を抑制させる条件は、係数が負となる条件すなわち
・ K T(1-p)-1<0 
となります。従って自宅待機率pが満たすべき条件は
・ p>1-1/KT
となります。KTは感染率すなわち一人の感染者が平均感染期間中に感染させる平均人数を表しています。例えば
・ KT=2.5 → p>60%
・ KT=5.0 → p>80%
となります。これまで政府は感染率2.5を想定し60%以上の自宅待機率を目指していましたが、感染率が2倍高ければ、感染抑制のためには80%以上の自宅待機率が必要になります。
 ところで回復にはどれくらいの時間がかかるのでしょうか?感染者数が1/eになる回復時間(=37%に減る時間)は
・ Te=T/{1-K T(1-p)}
となります。平均感染時間Tは2週間程度だと仮定しましょう。下図に感染率KTが2.5(赤丸)、3.5(青ダイヤ)、5.0(緑四角)の場合の回復時間Teの自宅待機率p依存性のグラフを表示します。


例えば感染率KT=2.5の場合(赤丸)はどうでしょうか?
自宅待機率p=61%であれば、
・ Te=T/{1-2.5・(1-0.61)}=T/0.025=40・T=20カ月
となります。自宅待機率が61%であれば、回復に1年8カ月かかることになり、来年の夏にオリンピックを開催することはできません。
自宅待機率p=65%であれば、平均感染時間Tは4カ月になります。つまり2月の時点で緊急事態宣言を発令していれば、6月には収束しているので、オリンピックは開催できたかもしれません。
自宅待機率p=80%であれば、
・ Te=T/{1-2.5・(1-0.80)}=2・T=1カ月
で回復します。政府が十分な休業補償をして、自宅待機率を80%に高めれば、回復時間が1カ月で済むということです。アメリカ政府はこのことをよく知っていたので、早期に莫大な休業補償に踏み切ったと考えられます。日本政府は十分な休業補償をしなかったので、回復時間が長引くことになります。全体の補償金額が増大し、このままでは国民は膨大な赤字国債を抱えることになるでしょう。

『千と千尋の神隠し』の主題歌「いつでも何度でも」について

堺正章さんが司会を務めているテレビ番組「カラオケバトル」で歌手の木村弓さんが『千と千尋の神隠し』の主題歌「いつでも何度でも」を歌いました。木村弓さんはこの歌の作曲者でもあります。この歌を聞くと心が浄化されるような思いがします。子ども向けの映画ソングにしては、歌詞がとても難解だと思いました。

この歌は木村弓さんが覚和歌子さんに自分が作曲した曲に歌詞をつけてもらって完成したそうです。ところが木村弓さんは歌い出し部分の
「呼んでいる 胸のどこか奥で いつも心踊る 夢を見たい」
「呼んでいる 胸のどこか奥で いつも何度でも 夢を描こう」
だけ自分で作詞して、後の歌詞の作成を覚和歌子さんに依頼したようです。最初の歌詞は、「失敗を乗り越え、いつも何度でも自分の夢に挑戦しようという自分の心の声に気づこう」というメッセ-ジです。後の歌詞は、最初の歌詞のメッセ-ジを引き継ぎながら、内容を深めさせています。

 覚さんは、自分の心の声に気づくには、「ゼロになるからだ」が必要だと考えています。「ゼロになるからだ」とは、おそらく「思考がゼロになり、ありのままの感覚を受け入れたいわば瞑想状態の身体」だと考えられます。大きな過ちや悲しみ出会った時には、考え疲れて、あるいは呆然として思考が止まり、ありのままの感覚が受け入れられるようになることがあります。「ゼロになるからだ」によって、人は大きな過ちや悲しみを乗り越えてきたのかもしれません。世界の光がゼロになった自分に差し込むことを体験することで、輝くものは私自身の中にあったと気づいて、外に探し求める過ちをしなくなったと歌詞には書かれています。

「いつでも何度でも」の歌は、元来「煙突描きのリン」の主題歌になるはずだったのですが、宮崎駿監督の裁量で「千と千尋の神隠し」のエンディングの歌になったようです。

「煙突描きのリン」の原案は「霧の向こうの不思議な町」という童話だそうです。リンというのはその童話の20歳の女性主人公です。大阪からやってきたリンが東京の風呂屋に住み込み、煙突に絵を描くという話です。リンは「千と千尋の神隠し」の「油屋」で働く千尋の先輩として登場します。おそらく主人公を低年齢化することで、映画の客層を拡大したかったのでしょう。ちなみに覚さんは山梨県のご出身で、甲府市にある近所の甲斐清和高校の校歌「太陽の旅路」を作詞されています。

「いつでも何度でも」~『千と千尋の神隠し』の主題歌
作曲:木村弓 作詞:覚和歌子

呼んでいる 胸のどこか奥で
いつも心踊る 夢を見たい

私の胸のどこか奥で誰かが私に「いつも心踊る夢を見たい」と呼びかけている。

悲しみは 数えきれないけれど
その向こうできっと あなたに会える

悲しみは数えきれないほどあるけれど、悲しみの向こうできっと新しいあなたに会える。

繰り返すあやまちの そのたびひとは
ただ青い空の 青さを知る

過ちを繰り返す度に人はただ青空の青さの様なありのままの姿に気づかされる。

果てしなく 道は続いて見えるけれど
この両手は 光を抱ける

過ちから立ち上がる道は果てしなく続いているように見えるけれど、そんな時でもこの両手はいつでも平安の光を抱ける。

さよならのときの 静かな胸
ゼロになるからだが 耳をすませる

過ちの人生に別れを告げた静かな心で、思考から自由になった身体が聴覚に目覚めている。

生きている不思議 死んでいく不思議
花も風も街も みんなおなじ

花も風も街もみんな生きている不思議と死んでいく不思議を感じている。

ラララララララララ・・・・・・・・・
ホホホホルルルル・・・・・・・・

呼んでいる 胸のどこか奥で
いつも何度でも 夢を描こう

私の胸のどこか奥で、誰かが私に「いつも何度でも夢を描こう」と呼びかける。

悲しみの数を 言い尽くすより
同じくちびるで そっとうたおう

悲しみの数を言い尽くすより、同じ唇で自分のためにそっと歌おう。

閉じていく思い出の そのなかにいつも
忘れたくない ささやきを聞く

悲しい思い出を忘れようとする時に、いつも忘れたくない大事な囁きを聞くことができる。

こなごなに砕かれた 鏡の上にも
新しい景色が 映される

それは、粉々に砕かれた鏡の上にも新しい景色が映されるように、どんなに悲しみに打ち砕かれたとしても必ず新しい人生が始まる、という囁きだ。

はじまりの朝の 静かな窓
ゼロになるからだ 充たされてゆけ

新しい景色の始まりの朝に光が差し込む静かな窓のように、思考がゼロになりありのまま感覚を受け入れた身体は平安の光に満たされてゆく。

海の彼方には もう探さない
輝くものは いつもここに
わたしのなかに 見つけられたから

輝くものはいつもわたしのなかに見つけられたから、海の彼方に理想の自分を探しにいく必要はもうない。

パレ-トの法則をご存じでしょうか?

質問です。やる気のある人とない人が世の中にはいます。これが互いに迷惑を掛け合っている原因ですか?何故、同じ人間なのに分かれてるのでしょうか?(ayaさんより2020/4/5)

 大変よい質問です。やる気のある人とない人がどういう割合で世の中にいるのか分かっています。パレ-トの法則をご存じでしょうか?パレートの法則とは、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート氏が発見した冪乗則のことです。

 例えば全世界の富の80%は20%の金持ちが所有している、会社の売上の8割は従業員の2割が生み出している、あるいは仕事の成果の8割は、費やした時間の2割の時間が生み出している、といった法則です。聞いたことはありませんか?

 横軸に所有財産、縦軸に人数をとり、所有財産の分布図を書くことができます。金持ちになるほど人数は減っていきます。xを所有財産とすると、金持ちの人数は1/x^αに比例して減少します。べき指数αは問題によって変わりますが一定の値です。α=log45 ≈ 1.16とすると、80%-20%の法則が得られます。

つまり大部分の人は貧乏で、金持ちは一部の人なのです。金持ちだけ取り出しても、その中の20%の人はすごくお金持ちなのです。やる気は会社の売り上げだと考えればいいのです。横軸にやる気、縦軸に人数をとり、やる気の分布図を書くと同様のパレ-ト分布が得られます。やる気のある人は20%しかいないのです。

 何故パレ-ト分布になるかは、今でも研究されています。一説には、全員がやる気をだすと、環境が激変したときに、社会が崩壊するかもしれないからです。例えばコロナウイルスが流行した環境下では、全員がやる気を出してお客さんに接触すると、全員が感染して、会社は崩壊します。実際は20%のやる気のある人が感染して退去しても、80%のやる気のない人が自宅で仕事を継続するので、会社は生き残れるのです。

 一見やる気のない人がやる気のある人に迷惑をかけているように見えるのですが、緊急事態では、体力を温存していたやる気のない人たちが活躍するのです。といっても活躍するのはその中の20%の人だけです。迷惑をかけあっているのではなく、長期的に見て、助け合っているのです。やる気のない人が発生するのは、今の環境条件が決めているのです。人間に限らず、やる気のある働きアリも20%しかいません。つまり80%の人がやる気のない社会が、進化論的に生き残りやすいのです。だからやる気が出なくても自分や他人を無理に責める必要はないのです。

 実は割れた窓ガラスの破片の大きさの分布や地震の頻度分布はきれいなパレ-ト分布になることが知られています。大きな地震は発生頻度が少ないのです。ガラスの破片を顕微鏡で拡大してみても、その分布は変わらないのです。そういう現象はスケ-ルフリ-現象と言われます。つまり現象の分布が拡大スケ-ルに依存しないということです。地震も岩盤という窓ガラスの崩壊現象だから、窓ガラスと同じ法則に従うのでしょう。所得や崩壊の分布がパレ-ト分布になるのは、両者が保存する富やエネルギの分配に関わるからなのかもしれません。

 学校の入学試験の点数の分布は左右対称のガウス分布をしています。そうなるようにテストを作っているのです。しかし世の中の重要な分布は、ガウス分布ではなく、パレ-ト分布なのです。中央値は順位が中央の人の点数値です。ガウス分布では中央値は平均値と一致しますが、パレ-ト分布では中央値は平均値のずっと下です。順位が真ん中だからといって喜んではいられないということです。

 将来の地震の規模や貧富の差は、ガウス分布で考えるより、ずっと大きいのです。貧乏人はそれに気づかないので、大災害に備えず、金持ちは妬まれずに安心しているのです。80%の人たちがどんな現象もガウス分布だと甘く見ているのは、パレ-トの法則なのかもしれません。