「イヌノフグリはどこへ行った?」繁殖干渉とは

水曜日午後10時からNHKの又吉直樹のヘウレーカ!「イヌノフグリはどこへ行った?」が放映されました。今日のお相手は東大の塚谷裕一教授です。オオイヌノフグリは春一番に咲く小さい青い花です。これは明治時代にヨーロッパからきた外来種です。
元々日本にはイヌノフグリという小さい白い花を咲かせる在来種がありました。イヌノフグリは今では離島にしか生えておらず、オオイヌノフグリによる繁殖干渉のせいで絶滅の危機に瀕しています。
繁殖干渉とは、近縁種の花粉が相手の繁殖を妨げて絶滅させる現象です。昆虫によりオオイヌノフグリの花粉がイヌノフグリの雌しべに付着し、花粉管が伸びて胚珠まで到達すると、胚珠が死んでしまいます。一方オオイヌノフグリはイヌノフグリの花粉管を半分以上ブロックするので繁殖を妨げられないのです。花粉の量で勝負が決まるので、負け始めると絶滅してしまうのです。
外来種は強い印象がありますが、多くの場合は長年土地に適応してきた在来種の方が強いことが多いのです。パンジーやチューリップは外来種ですが、野山に適応繁殖することはありません。
例外もあります。日本の在来種のクズは、1876年のフィラデルフィア万博で日本庭園の展示で米国に持ち込まれて、想定外の繁殖力で野山に拡散し、今ではジャパニーズ・モンスターと呼ばれて嫌われています。
お二人は小石川植物園の下園文雄氏と対談しました。下園さんは長年、絶滅危惧種の保護繁殖をしてきた方です。彼は2002年に東京で小笠原諸島のムニンツツジの最後の一株の増殖に成功しました。小笠原のラテライトという赤土を使ったために、共生する菌類が活動したためでした。
実は下園さんは塚谷さんが中学生の時からの知り合いです。塚谷少年は毎月植物のことを手紙で質問してきたので下園さんが答えていました。塚谷氏が研究者として植物学教室に入ってからは、下園さんが逆に質問するようになったそうです。
下園さんは人間が自然を破壊して植物を絶滅に追いやっているのだから、人間が絶滅危惧種を救うしかないと感じています。塚谷教授は、多様性は生態系の生き残りの知恵だから、多様性を減らす方向に働くものには本能的に危ないものを感じると述べていました。僕たちは多様性が重要だと知りながら、人間中心の自然観を捨てられない。

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