富山の中山間地域の今年度予算

コンパクトシティ構想で有名な富山県の平成31年度予算は5,548億円です。富山県は、基本的に人口減少を食い止め、経済を活性化させ、全ての人が健康で活躍できる環境づくりを促進しようとしています。新幹線ができて4年、豊富な移住支援金、高い教育レベルによって首都圏からの移住も増えてきているようです。知事はIT技術で農村にいながら仕事ができる働き方改革に期待をしています。


26個の施策テーマ別の事業のなかで、12番目の事業タイトルは、「豊かで魅力ある中山間地域の実現 ~中山間地域の活性化に向けて~」です。中山間地域の魅力化の課題は、中山間地域の体制整備と人材の育成確保、活力ある農山村づくりと地域経済の活性化、地域生活の維持向上の3つでした。参考までに各項目の予算を書き記しました。農魚山村基盤づくりには225億円もの資金が使われているのですね。


果樹産地継承支援300万円は少なすぎますよね。果樹産地継承支援事業はせっかく味もおいしくて全国的にも評価されている果樹の園地が、経営者、生産者がご高齢になって承継されない、後継者が見つからないといった場合に、虫がつくので全部伐採するなんていうことが起こっています。これを農地中間管理機構に管理してもらって、その間に後継者を見つけるといったような取り組みだそうです。
 がんばる女性農業者支援事業1000万円といったものもあります。中山間産地等人材育成支援事業、就農希望者に対して、産地等が行う研修に必要な施設・機械の整備を支援しようとしています。
定住できなければ、人口減少の激しい中山間地域の活性化はできません。空き家対策1000万円は少なすぎます。多面的機能支払支援事業20億円、農地集約5億円や移住支援金1.2億円を削ってでも、空き家対策に資金を投じるべきではないでしょうか。

http://www.pref.toyama.jp/cms_pfile/00019696/01220809.pdf

1. 持続可能な中山間地域の体制整備と人材の育成確保
(1) 地域づくり人材の育成   集落支援推進事業1.5億円
(2) コミュニティ活性化のための話し合いの促進 350万円
(3) 移住定住の促進 移住支援金1.2億円
(4) 農山漁村地域の活性化 多面的機能支払い支援事業20億円

2.活力ある農山村づくりと地域経済の活性化
(1)地域資源の利活用 1000万円
(2)生産性の高い農業の確立 400万円
(3)農業経営基盤の強化 農地集約5億円
(4)若い担い手の育成確保 果樹産地継承支援300万円 就農研修500万円
(5)農魚山村基盤づくり 土地改良175億円、治山造林50億円
(6)鳥獣被害の防止 2億円
(7)林業成長産業化 6億円

3.地域生活の維持向上
(1)空き家対策 1000万円
(2)生活交通の確保 3億円 
(3)買い物支援  100万円
(4)除雪対策  1.2億円
(5)地域包括ケアシステムの構築 1.1億円
(6)6次産業化の推進 1.2億円 がんばる女性農業者支援事業1000万円

どうして水が1万度の火炎になるのでしょうか?

6月11日のテレビ朝日の羽鳥慎一のモ-ニングショ-で東工大の渡辺隆行准教授(58歳)らが開発した水プラズマ・ジェット火炎(トーチ)が紹介されました。水で1万度以上の火炎が得られるとは、驚きですね。しかし既に水プラズマ技術自体は10年前に開発されました。今回は、ヘアドライヤ感覚で使える水プラズマ・トーチが紹介されました。クリ-ンで低コストの携帯型フロンガス処理装置として注目されています。他にも有用な使い道があるかもしれません。

水プラズマト-チの外観

水プラズマ火炎の発生原理
水プラズマとは1万度以上の高温状態の水素原子と酸素原子と電子の集合体のことです。水プラズマ火炎の発生原理は、電極間に水蒸気を供給し、放電してプラズマにするだけです。従来の装置は、配管で水蒸気を供給していますが、水蒸気が配管の途中で冷えると凝結し詰まってしまうので、配管を100℃以上に保つ必要があり、装置が大きくなります。

発明のポイント
今回は、タングステン繊維の細長いフエルトに水を吸わせて給水する工夫をすることで、直接、水を高温の放電部に供給でき、効率よくプラズマを発生させることができました。放電部は銅製の加熱部で100℃以上に保たれています。陰極にはハフニウムが用いられており、強い酸化性の高温の水蒸気でも長時間、耐えることができます。はじめて液体の水から直接水プラズマを発生することが可能になりました。従来の水蒸気プラズマ装置は、高温の冷却水を捨てていたので、約30%の熱効率でしたが、水プラズマでは90%の熱効率が得られました。


水プラズマのフロンガス処理能力
フロンは電気炉などで2000℃に加熱するだけで分解できます。水プラズマ・トーチの電力は1kWで1時間当たり160gのフロンやハロンを分解することができます。代替フロンとして用いられるフロン134aの場合、1気圧で約20リットル、つまり500cc缶1本分を1時間で分解できます。フロンのフッ素は、アルカリ処理でCaF2(ホタル石)として沈殿します。ホタル石はCaCl2が混じるために純度は低く、高値では売れないようです。
実は、西日本のフロンを処理するために北九州の処理施設まで集めてきます。フロン処理費用の大半は輸送費になっているので、携帯可能なフロン処理装置は輸送費を節約できる利点があります。


水プラズマを利用した廃油処理車
昨年から車載型の廃油分解処理装置が開発されています。自動車のディーゼルエンジンから200kWの電力をまかなっています。水プラズマ火炎にPCBや硫酸ピッチなどの廃油を噴射することで、分解処理します。PCBは有毒な絶縁油です。硫酸ピッチは石油精製の硫酸洗浄工程で発生するタール状の物質です。硫酸ピッチは有害な重金属を含んでおり、水分と反応すると亜硫酸ガスを発生させます。水プラズマ処理で、炭素は二酸化炭素に、重金属は安定な金属酸化物になります。
PCBは処理施設に移動するには法的許可が必要です。硫酸ピッチはドラム缶に詰められ山中に不法投棄されるのが問題になっています。容器のドラム缶が溶けて運べない状態になっていることが多いので、車載型の分解処理装置が役に立ちます。

水プラズマ火炎の他の応用
 渡辺准教授は生ごみも含めて水プラズマ火炎で燃焼し、発生する水素ガスを回収したいと述べていました。有機物を燃やすと灰が残ります。灰はふわふわして扱いにくいし、重金属が含まれていると水に溶け出して危険です。そのため、プラズマを使って灰をガラス状に固めて捨てます。これを灰溶融(ash melting)といいます。

水プラズマ火炎で発生した高温の排ガスは、ガスタ-ビンやTPV、バイオマスなどの発電装置にも使えるかもしれません。

水プラズマ火炎の心配事
 携帯型の水プラズマト-チは、極めて安価で、20mm厚の鉄板を焼き切ることも可能です。金庫やATMや自動販売機の集金箱などは簡単に破られてしまうので、犯罪に用いられる可能性が高いです。水プラズマト-チは、いわば現代の斬鉄剣ですが、コンニャクはうまく切れないようです。

冬にトマトが採れるのはどうしてでしょうか?

トマトの開花は、昼夜の長さではなく、苗の長さに依存するので、トマトは冬でも採れるのです。基本的にトマトは花粉を運ぶハチやチョウによって実を付けるので、トマトの旬は夏です。しかし冬場、トマトの花にオーキシンをかけると、花粉がつかなくても、実が肥大します。だから冬トマトには種がありません。また種なしトマトの品種もあります。種なしトマトはハチやオ-キシン処理がなくても、花が咲けば実がなります。

トマトの皮は薄いので、根から急激な水の吸収があると裂果してしまいます。裂果を避けるために、トマトは温室あるいは透明シ-トで覆って栽培されます。
市販のトマトの75%は「桃太郎」という品種です。桃太郎シリ-ズは25種あります。桃太郎は熟した状態の実が収穫でき、実が赤く熟してから完熟するまでの時間が長い特徴があります。桃太郎は味や栄養価でも優れているために、トマト市場を席捲しました。


トマトはコラ-ゲン合成に必要なビタミンC、老化を抑制するビタミンE、塩分の排出を助けるカリウム、腸内環境を整える食物繊維などをバランス良く含んでいます。トマトにはリコピンやβ-カロテンなどの抗酸化物質が豊富に含まれています。トマトの赤はリコピンによるものです。トマトはうま味が強いので、鍋料理にもよく用いられます。生食より加熱食の方が、リコピンの吸収が2~3倍増加すると言われています。

固定種にはどんな利点があるでしょうか?

全国各地で栽培されている在来品種・地方品種のほとんどは固定品種です。例えば京都の京野菜、大坂のなにわ野菜などがあります。不揃いで生産性は低くても、味の濃い固定品種は値段が高くても根強い人気があります。F1種は生育期間が短くなった結果、ミネラルが少なくなり、味が薄く、光合成の期間も短いので、ビタミンCなどの栄養素が少なくなった可能性もあります。家庭菜園の場合、固定種の方が生育期間にばらつきがあるので、長期間に少量の収穫が持続できる利点があります。自家採種が可能なので、種を買わずに済みます。自家採種して固定種を鍛えることで無肥料栽培が可能になり、循環型の持続可能な農業ができます。

交配種の作れない野菜はあるでしょうか?

交配種が作れない野菜もあります。その代表はレタスとマメ類です。レタスには自家不和合性がなく、雄性不稔系統は見つかっていますが、利用しにくいようです。しかし、永年にわたる品種改良と品種選抜の結果、固定品種でもレタスは全国的に流通する良品ができています。大豆は遺伝子組み換え品種が完成しています。マメ類のエンドウ・インゲンマメ・ソラマメ・エダマメなども重要な野菜ですが、固定品種での生産が続いています。ゲノム編集で雄性不稔系統が作り出されるようになるかもしれません。ニンジンでも雄性不稔性利用による交配種ができていますが、本紅金時人参などの固定品種も広く栽培されています。

雄性不稔性はどのようにして生じるのでしょうか?

雄性不稔の遺伝子はミトコンドリアの環状DNAの中にあります。野生植物の場合、細胞の核内にある直鎖型DNAには花粉形成の回復遺伝子があり、ミトコンドリアの雄性不稔の遺伝子が働かないように抑制しています。

栽培植物では、突然変異によりミトコンドリアの雄性不稔遺伝子が無くなったために、核内の花粉形成回復遺伝子も不要になり喪失しました。そのため栽培植物は雄性可稔です。しかし野生植物と栽培植物の交配種の中には、野生植物に由来するミトコンドリアの雄性不稔遺伝子と、栽培植物に由来する花粉形成回復遺伝子のないDNAを有するものがあり、雄性不稔種が誕生しました。以下にこのことを詳しく説明しましょう。

Sを不稔(Sterility)遺伝子があるミトコンドリア遺伝子、F(Fertility)を不稔遺伝子がない可稔のミトコンドリアの遺伝子、RRを花粉形成回復遺伝子を有する核の優性遺伝子、rrを花粉形成回復遺伝子を有しない核の劣性遺伝子としましょう。そうすると野生種の遺伝型はS-RR、栽培種の遺伝型はF-rrと書けます。野生種と栽培種が偶然交配し、
・ S-RR(野生種)× F-rr(栽培種の花粉)→ S-Rr(可稔株)
S-Rrなる可稔株が誕生したと考えられます。さらにS-Rr同士の受精により
・ S-Rr(可稔株)×S-Rr(可稔株の花粉)→S-RR(野生)、 S-Rr(可稔)、S-rr(不稔)
の3種類の種が生まれました。このうち、S-rrは、核がミトコンドリアの不稔遺伝子の発現を抑制できないので、不稔になります。すなわち雄性不稔種の遺伝型はS-rrと書けます。

結局、歴史的に見ると、雄性不稔種にはミトコンドリアの異常があるという言い方は正しくありません。なぜなら元の野生種にはすでに雄性不稔遺伝子が含まれていたからです。むしろ野生種が突然変異して栽培種が出現したことが異常なことだったのです。栽培種と野生種から生まれた可稔株同士の交配によって、必然的に雄性不稔株が生じます。

雄性不稔種と同じ遺伝型をもつ栽培種の花粉を用いることで、
・ S-rr(雄性不稔種)× F-rr(栽培種の花粉)→ S-rr(雄性不稔種)
により雄性不稔種を増殖できます。種苗企業はこのようにしてF1種を生産していると思われます。稔性回復種F-RRを用いれば、
・ S-rr(雄性不稔種)× F-RR(稔性回復種の花粉)→ S-Rr(可稔種)
により、F1種子の可稔性を回復することもできます。つまり優性な花粉形成回復遺伝子Rが雄性不稔遺伝子Sを抑制するので、S-Rrは可稔種になります。

 

ミトコンドリアに雄性不稔の遺伝子が存在するのは何故でしょうか? 

自分の花粉であろうと他の花粉であろうと、種さえできればミトコンドリアの遺伝子は確実に種に受け継がれていきます。雄蕊(おしべ)がなくても他の植物の花粉が雌蕊(めしべ)に付着すれば種はできます。ATPを生産するミトコンドリアには雄蕊をつくることは大きな負荷なのです。それより種子を多くつくる方がミトコンドリアの遺伝子を多く残せます。ミトコンドリアは元来別の生物であり、増殖する意思が強いため、ミトコンドリアは雄性不稔の遺伝子を作り上げたと考えられます。雄性不稔の遺伝子は、ATP合成の遺伝子に隣接しており、雄蕊をつくるときに、ATP合成を阻害するので、雄蕊が正常にできなくなります。
ところが他から花粉が得られない場合には、雄性不稔種は絶滅してしまいます。植物は核内の花粉形成の回復遺伝子によって我儘なミトコンドリアの雄性不稔の遺伝子が働かないように抑制しているのです。

雄性不稔性とはどういう性質なのでしょうか?

雄性不稔性(ゆうせいふねんせい)とは、突然変異によって、本来ひとつの花の中に雄蕊(おしべ)も雌蕊(めしべ)もある種類の野菜なのに、雄蕊がなかったり、雄蕊があっても花粉ができなかったりする性質のことです。

1925年に米国で初めて雄性不稔性の赤タマネギが1個だけ発見されました。通常の黄色い玉ねぎの雄性不稔性品種を得るために、雄性不稔性の赤タマネギに通常の黄色玉ねぎの花粉をつけ続けると、雄性不稔性の黄色玉ねぎの割合が増えていき、6世代後には殆ど完全な雄性不稔性の黄色玉ねぎが得られます。これを戻し交配(バッククロス)と言います。1944年にはF1玉ねぎが販売されるようになりました。一度この雄性不稔株を見つけると、これに正常な株の花粉を受粉して、いくつもの品種の雄性不稔系統が育成できます。


 ある品種の雄性不稔系統の株と別の品種の正常な株とを並べて植えると、雄性不稔系統の株から交配種のタネが採れます。昆虫が花粉を運んでくれるので受粉に人手が要りません。種採りの能率を上げるために、花粉を提供する品種よりも雄性不稔の品種の株を多く植えます。雄性不稔系統の次の代を作るには、同じ品種の正常な系統の遺伝性を調べ、次世代の全部の株が雄性不稔となる花粉親を選んで受粉します。雄性不稔性利用によるF1種の作りは、タマネギから始まり、大根、ニンジンやトウモロコシでも実用化されています。


日本人は野生のハマダイコンから雄性不稔性をもつ舞鶴大根を作りだしていました。あるフランス人が欧州で舞鶴大根と菜種を交配させ、雄性不稔の菜種を開発し特許を取得しました。葉緑体は大根由来だったので、細胞融合で葉緑体を菜種由来に改良したそうです。同じアブラナ科のキャベツやブロッコリ-にも雄性不稔種が得られるようになりました。

F1種をつくるにはどうしたらいいのでしょうか?

F1種に限らず、一般に交配種をつくる方法には、人工受粉、自家不和合性、雌雄異株(いしゅ)、雄性不稔性を利用する4つの方法があります。ヒット品種は何十年も利益を約束してくれますから、種苗企業はあらゆる作物を交配種にするための努力を重ねています。

人工受粉
人工受粉は1927年にナスビで行われました。ナスビの実からは1000個以上の種が得られます。1935年に福寿1号というトマトの交配種が得られました。ナス科の果菜類は一つの花に雌蕊と雄蕊がある両性花なので、開花前に雄蕊を取り除く除雄作業が必要になります。交配には、除雄、袋掛け、花粉集め、受粉などの作業が必要です。ウリ科の場合は、雄花と雌花が別なので、一方の品種の雌花の開花前に袋掛けをして、開花日にもうひとつの品種の雄花の花粉を受粉して人工受粉します。

自家不和合性(じかふわごうせい)
 自家不和合性とは、自分の花粉(あるいは自分と同じ品種の花粉)で雌蕊が受精しない性質のことです。そのメカニズムには様々のものがあります。例えば雌蕊の柱頭に付着した花粉が花粉管を伸ばしても、柱頭の1/3程度で停止してしまいます。花粉の雌性決定要素であるリボヌクレアーゼ(S-RNase)が、雌蕊が同種であることを認識して、花粉管内のリボソームRNAを分解し、花粉管の伸長を阻害します。
例えば、自家受精しなくなったカブと小松菜を一緒に栽培すれば、ミツバチによってカブの雌蕊に小松菜の花粉がかかれば、根がカブで葉が小松菜の新しい交配種「小松菜カブ」が得られます。もちろん根が小松菜で葉がカブのものは破棄します。
カブも小松菜もアブラナ科です。偶然の交雑でできた「小松菜カブ」から採れた種をまき、みやま小カブと、純系の小松菜の株を選び、隔離して育てます。それぞれの菜の花が開花する前に人為的に蕾を開き、自家受粉をくり返します。何年か自家受粉をくり返されたカブと小松菜には、自家不和合性が生まれます。自家不和合性をもつ純系の親を増やすには、温室の空気に3~6%の二酸化炭素を含ませることで、自家不和合性を解除することができます(中西、日向1975年)。1949年にはキャベツ、1950年には白菜に関して、自家不和合性を利用したF1種が完成しました。一般に両親を特定することは経費がかかります。交配ミスを確認するために試作すると種の寿命が1年縮小します。
 
雌雄異株(しゆういしゅ)
この方法はもっぱらホウレンソウで実用化しています。ホウレンソウにはメス株とオス株の区別があります。葉を見てもわかりませんが、春先になると、オス株のほうが早くとう立ちします。まず掛け合わせたい二つの品種を並べて栽培します。一方の品種のオス株を花の咲く前に全部抜き取り、メス株だけにします。その品種のメス株は、隣の他品種のオス株からの花粉を受粉して、交配種の種ができます。

F1種にはどのような問題があるでしょうか?

F1種には3つの大きな問題があります。

第一の問題は、F1種は、気候変動や病害虫の発生により、全滅する危険性が高いことです。年々強くなる病害虫に対応するために、農薬の使用量が増える傾向があります。これに引替え在来種は多様性があり、気候変動や病害虫に強い種が必ずあります。在来種の多様性が失われると、全滅の危険性はさらに高まります。


第二の問題は、交配二代目以降は形も大きさも不揃いになるので、農家は毎年F1種の種を買わなくてはならず、その結果、作物の種子の多様性が失われることです。これまで農家は栽培した一部の作物から自家採種してきました。しかし自家採種には専用の畑が必要で、種の採取や管理に手間がかかります。農家がF1種の種を購入するようになって、自家採種する農家は激減しました。つまりF1種の出現により、農家がこれまで栽培してきた在来種の種類が激減することが危惧されています。種は保管期間が長くなると発芽率が低下します。種を維持するには3年以内に更新しなければなりません。農家が自家採種しないと、気候変動や病害虫に強い在来種は消滅してしまうのです。


第三の問題は、安全な野菜が食べられなくなる可能性があることです。日本にはサカタとタキイの2大種苗会社がありますが、世界全体の2%程度の市場占有率しかありません。モンサントなど上位3社の巨大多国籍企業は60%以上のシェアを持っています。交配種時代になって、採種事業が大手企業の独壇場になったのは、品種集めと試験交配という初期投資に、大金が必要だからです。種を制する者は世界を制するため、巨大多国籍企業は小さな種苗会社を次々に買収しています。そうした巨大多国籍企業は、F1作物だけでなく、遺伝子組替えやゲノム編集技術を用いた安全性が不確かな作物を開発しています。除草剤グリホサ-トのように有害物質の濃度基準値が100倍以上に改正されることもあります。あるいは植物自体に組み込まれた殺虫剤成分などの有毒物質は外来性の農薬ではないので、規制基準値すら存在しません。日本の種苗企業が買収された場合には、日本の安全な野菜が食べられなくなる可能性があります。

F1種とはどんな種でしょうか?

子の形質が両親と同じ形質をもつ品種は、固定品種あるいは固定種と呼ばれています。F1種とは、第一雑種世代(First Filial generation)の略語、すなわち異なる固定品種の両親から得られた第一代目の交配品種のことです。交配はメス親の雌蕊(めしべ)にオス親の雄蕊の花粉を付着・受精させて行います。


雑種強勢の遺伝法則により、F1種は、親品種に比べて、早く大きく育ち、両親の優れた形質を受け継ぎます。雑種強勢の原因はまだよく分かっていません。例えば甘いトマトと日持ちのするトマトを交配させると、そのF1種は甘くて日持ちのするトマトになります。またF1種は、形や大きさ、収穫時期が揃うため、効率的な生産、流通、販売が実現できます。そのため現在小売店で販売されている野菜の殆どが外国産のF1種です。日本の種子自給率は数%と言われています。外国産の種子は、日持ちするように赤や青に着色された殺菌剤が種子に塗布されているので、あまり素手で触らない方がいいです。


現在流通している小松菜は、在来種の小松菜と中国産のタアサイやチンゲンサイと交配したもので、茎が太くて固くて袋に詰めやすく、病気に強くて収穫量も多くなりました。こうした特徴は生産者と流通には都合がよいのです。


近年、自分で料理する人は減っています。多くの会社員は外食で済ませています。現在、流通している野菜のうち、家庭で調理されている野菜は30%弱です。今や種苗企業は、個々の消費者よりも、外食産業、食品加工企業、大手流通業者向けの種を生産しています。つまり、外食産業や食品加工会社では、味付けや加工のしやすい、均質かつ味の薄い野菜を求めています。安くス-パ-に卸されている野菜の多くは、外食・加工産業で余った野菜だと言われています。

虫歯を予防する方法はありますか?

金属はアルカリ性水溶液中では腐食が進行しないことを利用します。食後、重曹水で口内を洗浄し、口内をアルカリ性にするだけで、虫歯は予防できるとのことです。重曹水は500mlに3g程度の重曹粉末を溶かして作ります。酷い歯石は除去した方がいいでしょう。口内がアルカリ性になると、歯の再石灰化が進み、穴が埋まります。Caのブルベイ図があればより明快な説明ができるでしょう。


もし虫歯が金属腐食に起因するのなら、今までの歯科医療の常識は覆されます。虫歯の原因も解らずに対症療法を繰り返してきた従来の歯科医療は何だったのか、ということになりますね。

歯周病にはどのようなリスクがありますか?

健康な歯肉溝では、バイオフィルムの75%が常在菌(グラム陽性好気性球桿菌)であり、歯周病菌はいません。歯周ポケットでは、歯周病菌と思われるグラム陰性嫌気性球桿菌が75%を占めています。歯周ポケットに歯周病菌が繁殖すると、歯周病菌の毒素により、歯茎がはれます。毛細血管から侵入した歯周病菌は血管内でアテロ-ム性プラ-クを形成し、血管を狭くするので、脳卒中、脳梗塞、心筋梗塞を引き起こします。歯茎の炎症により、免疫細胞からサイトカインTNF-αが分泌され、糖代謝を妨げ、糖尿病になるリスクもあります。またプラ-ク自体が気管支炎や誤嚥性肺炎の原因にもなります。妊婦や胎児にも悪影響があります。

歯科用合金にはどんな問題があるでしょうか?

電気化学説が正しいとすると、虫歯治療に歯科用合金を用いると、歯が溶けて虫歯になりやすくなります。北九州の歯科医さんの実験によると、歯と歯科用合金(12%金・銀パラジウム合金)をpH3の塩酸に漬けると、歯に対して、歯科用合金の電位は+0.57Vでした(図1)。歯の電位の方が低いので、歯が溶けだしてしまいます。

図1 歯と歯科用合金(12%金・銀パラジウム合金)の電位差測定の様子


他の歯科医は、歯科用合金には水銀が含まれており、咬合時に水銀が溶出する害を指摘しています。水銀は脳内に入れば、タンパク質の硫黄と結合し、数年間蓄積するようです。水銀の多くは腎臓に蓄積し、その半減期は2か月だそうです。できるだけ歯科用合金は取り外した方がよさそうです。そもそも現在でも歯科用合金を使っている国は、日本だけです。

図2 歯と亜鉛の電位差測定の様子


一方、歯と亜鉛では、歯(エナメル質)に対する亜鉛の電位は-0.33Vでした(図2)。亜鉛は歯に電子を供給するために、歯を守ります。亜鉛を含むアマルガムやリン酸亜鉛セメント、カルボキシレートセメントを使うと虫歯になりにくいというわけです。歯科用合金を亜鉛メッキするのもいい方法かもしれません。

象牙質の虫歯が急速に進行するのは、酸にたいする耐性ではなく、象牙質とエナメル質の自然電位(イオン化傾向)に僅かな違い(2mV)があるからだと考えています。実際に歯を強い酸で溶かすと象牙質よりエナメル質が先に溶けてしまうそうです。結局、歯周病に対しては象牙質が露出しないようにする予防が必要です。

http://mabo400dc.com/dental-treatment/electrochemistry/電気化学的虫歯予防法/

虫歯は歯の腐食現象なのでしょうか?

北九州のある歯科医は、虫歯は微生物によって引き起こされる電気化学的な腐食現象だと考えています。興味深い学説なので紹介したいと思います。従来、虫歯菌が出す酸が歯を溶かすと言われていました。しかし歯はpH2程度の酸でも腐食されません。虫歯菌が出すpH5程度の酸では、歯は溶けないのです。
彼によれば、虫歯は、虫歯菌の付着する面の酸素濃度が低下して、歯から電子が奪われ、歯のカルシウム(Ca)が溶けだす電気化学的な腐食現象だということです。

歯はヒドロキシアパタイト(水酸化リン酸カルシウム;Ca10(PO4)6(OH)2)でできています。歯は金属ではないですが、電気導電性があります。Caのイオン化傾向は高いので、Caはイオン化して水に溶出しやすいミネラル元素なのです。実際、pH4の水溶液中で、抜歯した歯に電流を流すと3時間で歯の大部分は腐食喪失します(図1)。

図1 pH4の水溶液中で抜歯した歯に通電した結果


歯の象牙質の表面を顕微鏡で観察すると、象牙細管が見られます(図2)。象牙細管は直径3μm位の歯髄(神経)まで続く細い管です。この穴の中の酸素濃度は低くなっています。表面積は非常に大きいので、Ca2+が溶出しやすい構造になっています。

     図2 歯の象牙細管の光学顕微鏡像


これに細菌が付着しバイオフィルムを形成すると、細菌の出す酸により歯の近傍がpH5~6程度になり、好気性細菌の呼吸によりさらに酸素濃度が低下し、それによって歯の腐食が加速すると考えられます。細菌により酸素の濃度の差が拡大するために、口内で酸素濃度差電池が形成され、歯が腐食すると考えています。


バイオフィルムとは
唾液成分の糖タンパクが歯の表面に薄い皮膜を作ります。その皮膜の上にくっついたミュータンス菌がショ糖を使ってグリコカリックスという粘性物質を分泌します。そこに他の細菌が侵入して、増殖します。この状態をプラークまたはバイオフィルムと呼んでいます。歯周病菌は、産生する毒素で歯ぐきを腫らし、血や膿を出し、歯の周りの骨を溶かすと言われています。このプラークが唾液や血液の無機質成分を吸って固まったものを、歯石と呼びます。ちなみに一般に細菌が好むpHは7~8程度であり、乳酸菌、あるいはカンジタ菌などのカビや酵母が好むpHは4~6だと言われています。

 

 

金属はアルカリ性水溶液中でも錆びますか?

金属はアルカリ性水溶液中では腐食が進行しにくいです。鉄を酸性溶液につけると水素を発生しながら腐食するのはよく知られています。しかし鉄板の表面の脂汚れをアルカリ溶液で洗浄する時には、鉄は腐食されません。
図1に室温における鉄の電位-pH図を示します。これはプルベイ(Bourbaix)図と呼ばれます。横軸は水素イオン濃度pH、縦軸は溶液の酸化力に相当する酸化還元電位を示しています。電位は水素標準電極の電位を基準にしています。領域Aは金属Feが安定な条件領域です。領域CはFe酸化物が安定な条件領域です。領域Bは鉄イオン(Fe2+、Fe3+)が安定な条件領域、すなわち鉄の腐食領域です。鉄が腐食するpHは限られており、pH9~14のアルカリ性水溶液中では、電位に関わらず鉄は薄い酸化被膜に覆われ、腐食が進行しません。

                                  図1 鉄の電位-pH図 (東北大学HPより)


Feが電子を放出してFe2+イオンになる(酸化反応)には、その電子を受け取る反応が必要です。酸性溶液中では水素イオン2H+が、電子を受け取って水素分子H2になります(還元反応)。中性領域中では、鉄がさびる時には、水に溶けた酸素O2が電子を受け取ります。水溶液がアルカリ性になると、Fe表面が安定な黒錆膜Fe3O4で覆われ、電子を受け取ることができなくなります。
ちなみに図1における2本の破線は水の生成・分解に関わる2つの反応の電位を示しています。それらは電気分解の理論分解電圧、水素-酸素燃料電池の理論起電力に相当します。その差(約1.2V)は、溶液のpHに依存しません。

同種金属の場合でも錆びますか?

同種金属でも、電解液の銅の濃度が違ったり、溶存酸素濃度が違ったりすると腐植電池が形成されます。例えば食塩水を塩橋で隔て、一方に空気を吹き入れ、もう一方に窒素を吹き入れると、酸素濃度に差ができます。そのため「通気差腐食」とも言われます。この場合は、酸素濃度の小さい方の電極が錆びます。正極から負極に流れる水酸基イオン4HOは、電子が奪われる負極側にドリフト拡散し、逆反応
・ 4OH → 2H2O+O2+4e
によって、酸素濃度の低い負極側に酸素を供給します。つまり両極近傍の酸素濃度を均一にするために電極間に電位差が生じていると考えられます。

窒素を吹き入れた方は、酸素濃度Paが低いので、負極となり、正極との間に電位差
・ ΔE[V] =(RT/2F)・ln(Pa/Pb)  ネルンストの公式
が生じます。ここでFはファラデー定数(1molの電子の電荷量)、Rは気体定数、Tは絶対温度、lnは自然対数です。濃度が100倍異なれば、電位差は4.6倍(=ln(100))となります。電位差を見積もると
・RT/2F=8.314[J/Kmol]×300K/2・96485[C/mol]=0.012925[J/C]=12.9mV
・ΔE=12.9[mV]*ln(100)=12.9×4.6=59.3≒60mV
となります。


水道管の錆の場合
一般に水道管の錆は酸素濃度差で生じます。水道管に錆こぶができると、錆こぶの下の鋼材への酸素の供給が少なくなります。錆こぶの下を負極、水道管表面を正極とする腐食電池が形成され、負極の腐食が進行します。なぜなら負極は電子を正極に奪われるので、負極からFe2+イオンが生じ、やがてFe2+イオンは2OHと反応して錆となるからです。負極面積は正極面積より小さいので、負極の腐植は速く進行します。
腐食の原因は水中に溶けている酸素ですが、腐食が進行するのは酸素濃度が小さい所なのです。なぜなら腐食する部分はFe2+と電子を出し、電子を受け取った酸素はOHイオン電流となるからです。

腐食とはどんな現象でしょうか?

腐食とは金属が溶け出して酸化する現象です。ここでは湿式腐食の話をしましょう。湿式腐食には全面腐食と局部腐食があります。全面腐食には均一腐食と不均一腐食があります。局部腐食には、孔食、隙間腐食、異種金属接触腐食、応力腐食割れなどがあります。日本の腐食対策費は毎年少なくとも5兆円を超えており、腐食・防食に関する正しい知識を持つことは、安全性向上と経費削減につながります。
異種金属接触腐食の場合
例えば水中に鉄板と銅板を入れて、電線で結ぶと、鉄板が腐食します。鉄は銅よりイオン化しやすいから(あるいは鉄のフェルミ面が銅より高いから)、電子が鉄から銅に流れます。電位差は100mV程度です。電子を失った鉄はFe2+イオンとなって溶出します。陰極では
・2Fe → 2Fe2++4e
となり、陽極では
・2H2O+O2+4e→ 4OH
なる反応が生じます。OH-イオン電流は陽極から陰極に流れ、
・ 2Fe2++4OH→ Fe(OH)2
水酸化鉄の錆(さび)が形成されます。さらに酸化されると Fe(OH)3を経て、赤錆Fe2O3になります。酸素が足りなければ黒錆Fe3O4になります。鉄よりイオン化傾向の高いアルミを銅の代わりに用いると、鉄板を防食できます。