虫歯を予防する方法はありますか?

金属はアルカリ性水溶液中では腐食が進行しないことを利用します。食後、重曹水で口内を洗浄し、口内をアルカリ性にするだけで、虫歯は予防できるとのことです。重曹水は500mlに3g程度の重曹粉末を溶かして作ります。酷い歯石は除去した方がいいでしょう。口内がアルカリ性になると、歯の再石灰化が進み、穴が埋まります。Caのブルベイ図があればより明快な説明ができるでしょう。


もし虫歯が金属腐食に起因するのなら、今までの歯科医療の常識は覆されます。虫歯の原因も解らずに対症療法を繰り返してきた従来の歯科医療は何だったのか、ということになりますね。

歯周病にはどのようなリスクがありますか?

健康な歯肉溝では、バイオフィルムの75%が常在菌(グラム陽性好気性球桿菌)であり、歯周病菌はいません。歯周ポケットでは、歯周病菌と思われるグラム陰性嫌気性球桿菌が75%を占めています。歯周ポケットに歯周病菌が繁殖すると、歯周病菌の毒素により、歯茎がはれます。毛細血管から侵入した歯周病菌は血管内でアテロ-ム性プラ-クを形成し、血管を狭くするので、脳卒中、脳梗塞、心筋梗塞を引き起こします。歯茎の炎症により、免疫細胞からサイトカインTNF-αが分泌され、糖代謝を妨げ、糖尿病になるリスクもあります。またプラ-ク自体が気管支炎や誤嚥性肺炎の原因にもなります。妊婦や胎児にも悪影響があります。

歯科用合金にはどんな問題があるでしょうか?

電気化学説が正しいとすると、虫歯治療に歯科用合金を用いると、歯が溶けて虫歯になりやすくなります。北九州の歯科医さんの実験によると、歯と歯科用合金(12%金・銀パラジウム合金)をpH3の塩酸に漬けると、歯に対して、歯科用合金の電位は+0.57Vでした(図1)。歯の電位の方が低いので、歯が溶けだしてしまいます。

図1 歯と歯科用合金(12%金・銀パラジウム合金)の電位差測定の様子


他の歯科医は、歯科用合金には水銀が含まれており、咬合時に水銀が溶出する害を指摘しています。水銀は脳内に入れば、タンパク質の硫黄と結合し、数年間蓄積するようです。水銀の多くは腎臓に蓄積し、その半減期は2か月だそうです。できるだけ歯科用合金は取り外した方がよさそうです。そもそも現在でも歯科用合金を使っている国は、日本だけです。

図2 歯と亜鉛の電位差測定の様子


一方、歯と亜鉛では、歯(エナメル質)に対する亜鉛の電位は-0.33Vでした(図2)。亜鉛は歯に電子を供給するために、歯を守ります。亜鉛を含むアマルガムやリン酸亜鉛セメント、カルボキシレートセメントを使うと虫歯になりにくいというわけです。歯科用合金を亜鉛メッキするのもいい方法かもしれません。

象牙質の虫歯が急速に進行するのは、酸にたいする耐性ではなく、象牙質とエナメル質の自然電位(イオン化傾向)に僅かな違い(2mV)があるからだと考えています。実際に歯を強い酸で溶かすと象牙質よりエナメル質が先に溶けてしまうそうです。結局、歯周病に対しては象牙質が露出しないようにする予防が必要です。

http://mabo400dc.com/dental-treatment/electrochemistry/電気化学的虫歯予防法/

虫歯は歯の腐食現象なのでしょうか?

北九州のある歯科医は、虫歯は微生物によって引き起こされる電気化学的な腐食現象だと考えています。興味深い学説なので紹介したいと思います。従来、虫歯菌が出す酸が歯を溶かすと言われていました。しかし歯はpH2程度の酸でも腐食されません。虫歯菌が出すpH5程度の酸では、歯は溶けないのです。
彼によれば、虫歯は、虫歯菌の付着する面の酸素濃度が低下して、歯から電子が奪われ、歯のカルシウム(Ca)が溶けだす電気化学的な腐食現象だということです。

歯はヒドロキシアパタイト(水酸化リン酸カルシウム;Ca10(PO4)6(OH)2)でできています。歯は金属ではないですが、電気導電性があります。Caのイオン化傾向は高いので、Caはイオン化して水に溶出しやすいミネラル元素なのです。実際、pH4の水溶液中で、抜歯した歯に電流を流すと3時間で歯の大部分は腐食喪失します(図1)。

図1 pH4の水溶液中で抜歯した歯に通電した結果


歯の象牙質の表面を顕微鏡で観察すると、象牙細管が見られます(図2)。象牙細管は直径3μm位の歯髄(神経)まで続く細い管です。この穴の中の酸素濃度は低くなっています。表面積は非常に大きいので、Ca2+が溶出しやすい構造になっています。

     図2 歯の象牙細管の光学顕微鏡像


これに細菌が付着しバイオフィルムを形成すると、細菌の出す酸により歯の近傍がpH5~6程度になり、好気性細菌の呼吸によりさらに酸素濃度が低下し、それによって歯の腐食が加速すると考えられます。細菌により酸素の濃度の差が拡大するために、口内で酸素濃度差電池が形成され、歯が腐食すると考えています。


バイオフィルムとは
唾液成分の糖タンパクが歯の表面に薄い皮膜を作ります。その皮膜の上にくっついたミュータンス菌がショ糖を使ってグリコカリックスという粘性物質を分泌します。そこに他の細菌が侵入して、増殖します。この状態をプラークまたはバイオフィルムと呼んでいます。歯周病菌は、産生する毒素で歯ぐきを腫らし、血や膿を出し、歯の周りの骨を溶かすと言われています。このプラークが唾液や血液の無機質成分を吸って固まったものを、歯石と呼びます。ちなみに一般に細菌が好むpHは7~8程度であり、乳酸菌、あるいはカンジタ菌などのカビや酵母が好むpHは4~6だと言われています。

 

 

金属はアルカリ性水溶液中でも錆びますか?

金属はアルカリ性水溶液中では腐食が進行しにくいです。鉄を酸性溶液につけると水素を発生しながら腐食するのはよく知られています。しかし鉄板の表面の脂汚れをアルカリ溶液で洗浄する時には、鉄は腐食されません。
図1に室温における鉄の電位-pH図を示します。これはプルベイ(Bourbaix)図と呼ばれます。横軸は水素イオン濃度pH、縦軸は溶液の酸化力に相当する酸化還元電位を示しています。電位は水素標準電極の電位を基準にしています。領域Aは金属Feが安定な条件領域です。領域CはFe酸化物が安定な条件領域です。領域Bは鉄イオン(Fe2+、Fe3+)が安定な条件領域、すなわち鉄の腐食領域です。鉄が腐食するpHは限られており、pH9~14のアルカリ性水溶液中では、電位に関わらず鉄は薄い酸化被膜に覆われ、腐食が進行しません。

                                  図1 鉄の電位-pH図 (東北大学HPより)


Feが電子を放出してFe2+イオンになる(酸化反応)には、その電子を受け取る反応が必要です。酸性溶液中では水素イオン2H+が、電子を受け取って水素分子H2になります(還元反応)。中性領域中では、鉄がさびる時には、水に溶けた酸素O2が電子を受け取ります。水溶液がアルカリ性になると、Fe表面が安定な黒錆膜Fe3O4で覆われ、電子を受け取ることができなくなります。
ちなみに図1における2本の破線は水の生成・分解に関わる2つの反応の電位を示しています。それらは電気分解の理論分解電圧、水素-酸素燃料電池の理論起電力に相当します。その差(約1.2V)は、溶液のpHに依存しません。

同種金属の場合でも錆びますか?

同種金属でも、電解液の銅の濃度が違ったり、溶存酸素濃度が違ったりすると腐植電池が形成されます。例えば食塩水を塩橋で隔て、一方に空気を吹き入れ、もう一方に窒素を吹き入れると、酸素濃度に差ができます。そのため「通気差腐食」とも言われます。この場合は、酸素濃度の小さい方の電極が錆びます。正極から負極に流れる水酸基イオン4HOは、電子が奪われる負極側にドリフト拡散し、逆反応
・ 4OH → 2H2O+O2+4e
によって、酸素濃度の低い負極側に酸素を供給します。つまり両極近傍の酸素濃度を均一にするために電極間に電位差が生じていると考えられます。

窒素を吹き入れた方は、酸素濃度Paが低いので、負極となり、正極との間に電位差
・ ΔE[V] =(RT/2F)・ln(Pa/Pb)  ネルンストの公式
が生じます。ここでFはファラデー定数(1molの電子の電荷量)、Rは気体定数、Tは絶対温度、lnは自然対数です。濃度が100倍異なれば、電位差は4.6倍(=ln(100))となります。電位差を見積もると
・RT/2F=8.314[J/Kmol]×300K/2・96485[C/mol]=0.012925[J/C]=12.9mV
・ΔE=12.9[mV]*ln(100)=12.9×4.6=59.3≒60mV
となります。


水道管の錆の場合
一般に水道管の錆は酸素濃度差で生じます。水道管に錆こぶができると、錆こぶの下の鋼材への酸素の供給が少なくなります。錆こぶの下を負極、水道管表面を正極とする腐食電池が形成され、負極の腐食が進行します。なぜなら負極は電子を正極に奪われるので、負極からFe2+イオンが生じ、やがてFe2+イオンは2OHと反応して錆となるからです。負極面積は正極面積より小さいので、負極の腐植は速く進行します。
腐食の原因は水中に溶けている酸素ですが、腐食が進行するのは酸素濃度が小さい所なのです。なぜなら腐食する部分はFe2+と電子を出し、電子を受け取った酸素はOHイオン電流となるからです。

腐食とはどんな現象でしょうか?

腐食とは金属が溶け出して酸化する現象です。ここでは湿式腐食の話をしましょう。湿式腐食には全面腐食と局部腐食があります。全面腐食には均一腐食と不均一腐食があります。局部腐食には、孔食、隙間腐食、異種金属接触腐食、応力腐食割れなどがあります。日本の腐食対策費は毎年少なくとも5兆円を超えており、腐食・防食に関する正しい知識を持つことは、安全性向上と経費削減につながります。
異種金属接触腐食の場合
例えば水中に鉄板と銅板を入れて、電線で結ぶと、鉄板が腐食します。鉄は銅よりイオン化しやすいから(あるいは鉄のフェルミ面が銅より高いから)、電子が鉄から銅に流れます。電位差は100mV程度です。電子を失った鉄はFe2+イオンとなって溶出します。陰極では
・2Fe → 2Fe2++4e
となり、陽極では
・2H2O+O2+4e→ 4OH
なる反応が生じます。OH-イオン電流は陽極から陰極に流れ、
・ 2Fe2++4OH→ Fe(OH)2
水酸化鉄の錆(さび)が形成されます。さらに酸化されると Fe(OH)3を経て、赤錆Fe2O3になります。酸素が足りなければ黒錆Fe3O4になります。鉄よりイオン化傾向の高いアルミを銅の代わりに用いると、鉄板を防食できます。