アゾトバクタの酸素バリアに用いられるアルギン酸はどんな物質でしょうか?

アルギン酸は、マンヌロン酸(M)とグルロン酸(G)という2種類のウロン酸が直鎖重合した構造を持つ多糖類です。アルギン酸の鎖状構造の中で、MとGはランダムに存在し、3種類のブロックを構成しながら共存しています。アルギン酸は、増粘剤、ゲル化剤、乳化剤、安定剤、麺質改良剤など食品の品質を向上する優れた機能を持っています。現在、アイスクリーム、ゼリー、パン、乳酸菌飲料、ドレッシング、即席麺、ビールなどさまざまな食品に利用されています。アルギン酸は、ペットフードや養殖魚の餌などに、結着剤や増粘剤として利用されています。

「落ちない口紅」にもアルギン酸が配合されており、唇の表面に被膜をつくって、口紅が移るのを防いでいます。アルギン酸カリウムは、アルギン酸のカルボキシル基にカリウムイオンが結合したかたちの塩です。その性質はアルギン酸ナトリウムと非常によく似ており、冷水や温水によく溶け、粘性のある水溶液をつくるとともに、Ca2+のような多価カチオンに接触すると瞬時にゲル化します。現在は歯科治療に用いる歯型取り剤(歯科印象剤)のゲル化剤として、国内外で広く利用されています。

窒素固定菌は窒素固定を妨げる酸素をどのように遮断しているのでしょうか?

ニトロゲナーゼは窒素に水素を付加する強力な還元剤ですから、酸素と容易に反応してしまいます。ニトロゲナーゼの金属クラスタは酸素に曝されると秒単位で速やかに分解されます。ニトロゲナーゼが失活しない酸素濃度は5~30 nM(モル濃度:M=mol/L)と非常に低いです。したがって、ニトロゲナーゼを駆動するにはO2を含まない嫌気環境が必要です。しかし生物が利用するATP生産の酸化的リン酸化のためには250 μMの酸素濃度が必要です。そのため窒素固定生物は様々な方法で嫌気環境を実現しています。嫌気性の窒素固定細菌は窒素固定に必要なATPを発酵など,酸素呼吸以外の系路によって生産しています。

根粒菌の場合

根粒菌はダイズの根など、レグヘモグロビンを含む根粒細胞に共生しています。レグヘモグロビンは酸素を強く捉え、酸素濃度に対する緩衝作用を有します。根粒の酸素拡散障壁を介した酸素濃度調節により酸素濃度は60nMとなり、レグヘモグロビンの酸素吸着作用、低酸素濃度での呼吸鎖の電子伝達を可能にする酸素高親和性のバクテロイド・ターミナルオキシダーゼによる酸素消費により、遊離酸素濃度は10nM程度になります。ちなみにヒトの血液の場合、遊離酸素の濃度は1μM程度です。

根粒菌の原形質膜の呼吸系はこの低濃度の遊離酸素を消費してATPを生産しています。そしてアゾトバクタと同様、このATPを利用して遊離酸素のない細胞内部に局在するニトロゲナーゼによって窒素固定を進行させています。この様に小さな細菌ではATP生産と窒素固定を、離れたところで進行させて、両立させています。

アゾトバクタの場合

アゾトバクタは、呼吸保護と呼ばれる細胞内酸素濃度を低く維持するための酸素消費速度の調節機構をもっています。呼吸保護には細胞表層に局在する5つのターミナルオキシダーゼによる酸素消費が大きく寄与します。それとともにアルギン酸が生合成され、細胞が覆われるアルギン酸の殻は細胞内の酸素を低くします。セルロース繊維のネットワ-クに水溶性のアルギン酸が裏打ちされると柔軟で酸素ガスを通さない膜が得られます。

細菌の表面膜の呼吸系で酸素を消費してATPを生産しています。アゾトバクタの細胞膜は酸素バリア膜であるアルギン酸膜で覆われています。外部から拡散してくる酸素は、細胞表面で全部消費されるため、細菌の内部には侵入しません。ニトロゲナーゼは酸素のない細胞の内部に局在し、ここで細胞の表面で生産されたATPを用いて窒素固定を行っています。

図1 アゾトバクタ属ビネランディの細胞の模式図

細胞はアルギン酸のバリア膜(黒)で覆われている。紺色のCydABⅠ、Cco、CydABⅡ、Cox、Cdtは5つのタ-ミナル酸化酵素、水色の4つの膜タンパク質Nuo、Sha、Nqr、NdhはNADHユビキノン酸素還元酵素、灰色のCydR、MucR、AlgUなどは制御タンパク質、赤色はATP合成酵素1とATP合成酵素2、紫色のFeSllとRnf1は呼吸保護に関わるタンパク質、黄緑の四角で囲われたものは、酸素暴露に敏感なタンパク質である。

参考文献:Joao C. Setubal, Virginia Bioinformatics Institute, JOURNAL OF BACTERIOLOGY, July 2009, p. 4534–4545,’Genome Sequence of Azotobacter vinelandii, an Obligate Aerobe Specialized To Support Diverse Anaerobic Metabolic Processes’

窒素固定シアノバクテリアの場合

光合成をするシアノバクテリアにも窒素固定をする種があります。光合成によりO2を発生しながら、酸素に弱いニトロゲナーゼを駆動するのは驚きです。ヘテロシストの膜成分は糖脂質です。細胞隔壁が外部からの気体拡散速度を調節することで細胞内酸素分圧を低減化しています。同時にヒドロゲナーゼ活性を高めることで環境中H2を酸化させて酸素を消費して細胞内酸素分圧を低下させています。糸状性シアノバクテリアは、環境中のC/Nが増加し窒素固定の必要性が高まった場合に、窒素固定専用の細胞(ヘテロシスト)にニトロゲナーゼを局在させ、光合成を行っている細胞からATPと 還元力をもらって、窒素固定を行っています。好気性の窒素固定菌は以上の様にして、酸素が窒素固定を阻害しないようにしています。窒素固定により生成したアンモニアは栄養細胞から供給されるグルタミン酸と反応しグルタミンへと変換され窒素源として栄養細胞に移送されます。

名古屋大学の藤田祐一教授は2018年6月にプレクトネマという窒素固定シアノバクテリアの20.8kbの窒素固定遺伝子のクラスタとCnfRという転写制御タンパク質を見つけ、その発現制御機構を解明しました。これらの遺伝子を、シネコシスティスという窒素固定の能力をもたないシアノバクテリアに導入して、窒素固定能を付与し、脱酸素試薬(ジチオナイト)の添加で、低いが有意なニトロゲナーゼ活性が検出しました。

フランキアの場合

フランキアは球状細胞ベシクルを形成することにより酸素の混入を防ぎ窒素固定を行います。ベシクルはホパノイド脂質の結晶からなる多重膜で覆われています。ベシクルの直径は4~5 μmで、ホパノイド脂質膜の厚さは50nm程度です。ベシクルは植物のミトコンドリアに取り囲まれており、これは酸素分圧を低下させる効果があると考えられています。

ニトロゲナ-ゼの反応中心はどのようなものでしょうか?

ニトロゲナ-ゼの反応中心は、[4Fe-4S]クラスタ、PクラスタとFeMo-coから成ります。Mo型ニトロゲナーゼは、容易に分離する2つのコンポーネントFe タンパク質(NifH二量体)とMoFe タンパク質(NifD-NifKヘテロ4量体)から構成されています。Nifは窒素固定Nitrogen fixationの省略記号です。NifHというのは窒素固定に関わるFeタンパク質をコ-ドしている遺伝子Hの名前です。Fe タンパク質は、ATPを加水分解してエネルギを得て、窒素の還元に必要とされる電子を送り出します。MoFe タンパク質は、Fe タンパク質から送られてきた電子を使って実際に窒素分子の還元を行います。

Fe タンパク質にある[4Fe-4S]クラスタは4つの鉄と4つの硫黄がキュバン(cubane)状(=立方体状)に集合したFe-Sクラスタです。MoFe タンパク質は、[8Fe-7S]構造のPクラスタとFeMo-coと呼ばれる[Mo-7Fe-9S-C-ホモクエン酸]の有機金属クラスタを含み、NifDとNifKの2つのサブユニットによるα2β2というヘテロ4量体構造をしています。[4Fe-4S]クラスタから送られてきた電子は、Pクラスタを経由してFeMo-co(フェモコ)に伝達され、FeMo-co上に結合した窒素分子を還元します。PクラスタからFeMo-coに電子を伝達すると、

  • P cluster(還元型)+FeMo-co(酸化型)→ P cluster(酸化型)+FeMo-co(還元型)

となり、還元型のFeMo-coが得られます。さらに

  • FeMo-co(還元型)+ N2 → FeMo-co(酸化型)+ N2H2

となり、改めて生成されたFeMo-co(還元型)とN2H2が反応し

  • FeMo-co(還元型)+ N2H2 → FeMo-co(酸化型)+ N2H4

さらに改めて生成されたFeMo-co(還元型)とN2H4が反応し

  • FeMo-co(還元型)+ N2H4 → FeMo-co(酸化型)+ 2NH3

によってアンモニアが生成されます。つまり還元型FeMo-coの力を3回使って、窒素からアンモニアが生成されます。

但しこれらの金属クラスタはすべて酸素によって速やかに破壊されてしまいます。また、ニトロゲナーゼの3つの構造遺伝子(NifH、NifD、NifK)に加え、FeMo-coの生合成には8つもの遺伝子が必要です。

窒素固定菌はどうやって窒素をアンモニアに変えるのでしょうか?

窒素固定菌はニトロゲナーゼ(Nitrogenase)という酵素を使って、窒素分子をアンモニアへと変換します。炭化水素のC-H間の結合エネルギは約100 kcal/mol程度であるのに対して、N≡Nの三重結合のエネルギは225 kcal/molと高いので、これを還元的に開裂して2分子のアンモニアに変換することは大変なことです。Hoffman教授はニトロゲナーゼを“Everest of enzyme”と呼んだそうです(2009年)。ニトロゲナーゼは、モリブデンMoを含むMo型、バナジウムVを含むV型それに鉄Feのみを含むFe型の三種類あります。特に、土壌細菌のアゾトバクタ・ヴィネランディ(vinelandii)のMo型ニトロゲナーゼがモデル細菌となっています。ニトロゲナーゼは以下のような反応を触媒します。ここでPiはリン酸を表します。

  • N2 + 8H + 8e +16Mg2+≡ATP + 16H2O ——> 2NH3 + H2 + 16Mg2+≡ADP + 16Pi

電子はフェレドキシンなどの電子供与体から提供されます。ギブスエネルギの変化は

  • ΔG’ = -136 kcal/mol N2

です。標準状態(PH7)にも関わらず大きな発熱を生じます。細胞での酵素反応中にATPは、Mg2+≡ATPの状態を取っています。つまりMg2+はATPの2つのリン酸の酸素イオンOにキレ-ト結合しています。ATPの負電荷を覆うことで、Mg2+≡ATPが酵素反応の活性部位の疎水性の裂け目に結合できます。上記反応ではアンモニアに伴い水素が発生しています。ニトロゲナーゼは、ATPの加水分解と共役したプロトン還元の副反応

  • 2H + 2e + 4ATP + 4H2O ——> H2 + 4ADP + 4Pi

が含まれているからです。実際の生理状態においては16ATPではなく、20~30ATPが必要だとされています。ニトロゲナーゼは、反応特異性が低く、様々な窒素化合物や有機化合物を触媒できます。

窒素固定菌はどれくらいの窒素を固定するのでしょうか?

生物による窒素固定量は年間5300万トンと言われています(植村誠次1977年)。その内、マメ科の根粒菌による窒素固定量は年間1400万トン、ハンノキ型根粒などの非マメ科によるものが500万トンで、全体の36%を占めています。それ以外の66%はアゾトバクタ-やシアノバクテリアなどの単独細菌によるものと考えられます。ちなみに人間が工業的に固定している窒素量は年間3000万トンです。

 化学肥料は1ha当たり60kgの窒素分を投入します。マメ科の植物は68kg/haの窒素を固定し、アゾトバクタ-は50~280kg/haの窒素を固定するようです。アゾトバクタ-を有効利用できれば、窒素肥料は要らなくなりますね。

 高橋英一(1982年)によると、窒素固定量は、ダイズ栽培土壌50~100kg/ha、クローバ栽培土壌100~200kg/ha、サトウキビ根圏土壌~60kg/ha、水田30kg/ha、アカウキクサ栽培池60~120kg/haです。

サトウキビが作物体に貯えた窒素の50%近く、サツマイモでは葉中窒素の40%近くが植物細胞に内生するエンドファイト細菌から供給されていると考えられています(涌井2003年)。すなわち、作物は肥料だけで成長するのではなく、窒素固定菌の働きが想像以上に大きいことが分かります。

窒素固定菌にはどのようなものがあるでしょうか?

窒素固定菌というとマメ科の根粒菌(Rhizobium)が有名ですが、他にも単体で窒素を固定するアゾトバクタ(Azotobacter)、クロストリジウム(Clostridium)、藍藻(diazotrophic cyanobacteria)がいます。またフランキア(Frankia)などの放線菌(Actinomycetales)は多くの樹木と共生し、空気中の窒素をアンモニアに変えて摂取しています。土壌の中のアゾトバクタが十分いれば、作物の幼苗は、窒素肥料を殆ど与えなくても、成長します。窒素肥料を与えてしまうと、アゾトバクタと作物との緩い共生関係は無くなってしまいます。牛糞堆肥などを使う有機農法から無肥料栽培に転換するには、土壌中の窒素成分を減らして、微生物の転換を図らなければなりません。

マメ科の根粒菌

 マメ科植物の多くは根に粒状の根粒を形成し、そのなかに根粒菌が共生しています。根粒菌は植物から糖をもらい、植物に空気中の窒素を分解して得た窒素化合物やホルモンを供給しています。マメ科植物は世界各地に分布しており、現在450属、13,000種ほどが知られています。調査された2,000種のうち、根粒を形成しない種類が約10%ありました。

アルファルファ、クロ-バ、エンドウ豆、インゲン豆、ル-ビン、大豆、カウピ-(落花生)、ミヤコグサ、ダレヤ、イガマメ、ニセアカシア、イタチハギ、タチレンゲソウ、ムレスズメなど約20種類のマメ科の植物は、交互に根粒菌を交換しても根粒が形成されます。根粒菌は、土壌中では鞭毛のある小型の球菌ですが、共生する時は桿状大型化し、不規則な形態のバクテロイドになります。根粒組織中にはレグヘモグロビンという赤色の色素がみられます。根粒の寿命は多くは1年以内であって、結実するころから根粒の内容物は寄主植物に吸収され、根粒内の根粒菌は土中に放出されます。

根粒の形成には、好気的条件が必要です。また窒素肥料が多いと根粒が形成されません。リン酸は根粒形成に不可欠で、根粒形成を促進させます。微量元素の硼素(B)は根粒とバクテロイドの形成に、モリブデン(Mo)は窒素固定に必須の元素です。マメ科作物の種子に根粒菌を接種して根粒を形成させる人工接種の手法が開発されています。人工接種すると、無効菌が先に根に侵入する前に根粒が形成されるので、作物の収穫量と品質が向上するようです。

アゾトバクタ

アゾトとはイタリア語で窒素の意味です。クロオコッカムやビネランジは、シュ-ドモナス科アゾトバクタ属のグラム陰性の好気性細菌です。アゾトバクタ属の細菌は単体で自分のために窒素を空気中から取り入れ固定します。アゾトバクタは1gの炭水化物を消費して5~20mgの窒素を生産します。これは根粒菌の10%程度です。

アゾトバクタは、土壌中に広く分布し、中性付近で窒素固定を行うため、酸性土壌にはあまりいません。植物は根から糖を出し、アゾトバクタはアンモニウムを出して、お互いに緩い共生関係を保っています。特にアゾトバクタは光合成細菌と共生します。アゾトバクタは脂肪酸を提供し、光合成細菌は糖を提供します。そのため光合成細菌を施肥すると窒素固定量が増えます。アゾトバクタは大量の酸素を消費するので、環境が嫌気的になりがちですが、光合成細菌は酸素がなくてもATPを生産できるので、アゾトバクタと共生できるのです。

窒素固定細菌に関しては、アゾトバクター属以外に4属が知られています。

  • アグロモナス属Agromonas 酸素分圧の低いところで窒素固定する。
  • アゾモナス属Azomonas 低いpH(4.6~4.8)域で窒素固定する。
  • ベイゼリンキア属Beijerinckia 37℃で生育、熱帯地方で窒素固定する。
  • デルキシア属Derxia メタンを同化でき、熱帯地方に分布し窒素固定する。

クロストリジウム

クロストリジウムは3~4μmサイズのグラム陽性の嫌気性細菌です。繊毛があり運動します。耐酸性があり、あらゆる土壌に分布しています。但し窒素固定力はアゾトバクタより弱いです。クロストリジウム属細菌は、SODやカタラーゼなどの活性酸素を無毒化する酵素を持たないため、酸素がある通常の環境下では不活化します。酸素存在下では、耐久性の高い芽胞を作って休眠することで、死滅を免れます。ボツリヌス菌や破傷風菌やウエルシュ菌はクロストリジウム属の細菌です。サ-モセラム菌は好熱性で酸素なしにセルロ-スを分解できるため、エタノール生産に利用されています。クロストリジウム属菌はガン細胞を選択的に攻撃することが知られており、その応用が研究されています。

窒素固定シアノバクテリア 

単細胞・糸状体種のシアノバクテリアの半数は窒素固定の能力を持ちます。大部分は単生ですが、真核藻類・地衣類・シダ植物・裸子植物などと共生する種もあります。シアノバクテリアは好気生物でしかも光合成は酸素発生型なので、多くの窒素固定シアノバクテリアでは一部の細胞を、光化学系Ⅱを欠いた窒素固定細胞=ヘテロシスト(heterocysts 異型細胞))に分化させることで光合成系と窒素固定系を空間的に分離し、窒素固定と光合成の起こる時間を分離することで酸素感受性の高いニトロゲナーゼを酸素から保護しています。アナベナ(Anabaena)がその代表例です。しかし、嫌気・微嫌気条件でのみ窒素固定活性を発現するレプトリンビア・ボリアナなどの種も存在します。

ソテツ科の植物は9属90種が知られ、これまでにその約1/3に藍藻類が侵入した根粒の着生が報告されています。ソテツの根粒は地表の近くに形成され、多年生で叉状分岐をしており、10cmもの大きさになるものもあります。最近では、ソテツの根粒は、イヌマキの根粒と同様、微生物と関係のない本来の性質であって、藍藻類などの内生菌は2次的に侵入したものと推定されています。

窒素固定メタン菌

深海熱水環境には窒素固定能をもつ好熱性メタン菌が棲息しています。35億年前の深海熱水性の石英脈に保存された窒素分子と(最古のメタン菌由来と考えられている)有機物の窒素同位体組成の関係を調べたところ、当時の深海熱水環境に生息したメタン菌が窒素固定して増殖していた可能性が高いと考えられています。窒素固定遺伝子の大規模な伝播は地球初期の深海熱水環境で起き、生命の共通祖先もしくはメタン菌(当時の深海熱水環境に生息していた)から光合成細菌の祖先に伝播したと考えられています(2014西澤学)。

フランキア菌

フランキアは放線菌門に属するグラム陽性細菌です。フランキアは1886年Brunchorstにより非マメ科植物の根粒中に見出され、その名は彼の師であるスイスの微生物学者A. B. Frankに由来します。フランキアは、多細胞性の菌糸、ベシクル、胞子の3つのタイプの細胞に分化します。通常は、一般的な放線菌と同様に菌糸として生育します。培地中の窒素源が欠乏すると、ベシクルと呼ばれる球状の細胞を分化させ、そこで窒素固定反応を行います。フランキアはベシクルを形成することにより自分自身で酸素防御を行うため、このような好気状態でも窒素固定を行えます。

フランキアが共生する植物は世界で8科14属、総計158種あります。日本ではハンノキ属16、グミ属13、ヤマモモ属3、ドクウツギ属1の計33種について根粒の形成が報告されています。オランダのグルチノザハンノキを主体とした森林では、毎年60~130kg/haの窒素の蓄積が見られます。アメリカのカリホルニア湖では、湖畔に面してハンノキ林が密生していて、湖畔周囲の土壌及び湖水の水が富栄養化し、プランクトンが旺盛に発育しています。ヤマモモは、瀬戸内の石英粗面岩地帯における粘土質土壌の改良に用いられています。マツと混植後12年間に、毎年80kg/haの窒素増加がみられています。

窒素固定エンドファイト(Diazotrophic endophytes)

サトウキビやサツマイモの内部にはエンドファイト細菌が共生しています。エンド(endo)は体内、ファイト(phyte)は植物の意味です。野生イネから分離されたHerbaspirillumはイネの細胞間隙に生息して、窒素固定をします。サツマイモ体内には、窒素固定活性を持つBradyrhizobium属、Pseudomonas属、Paenibacillus属のエンドファイトが生息しています。これらの菌は、土壌にアミノ酸などの有機体窒素があるときに植物体内に入り込みます。化学肥料では入りません。これらの窒素固定エンドファイトは宿主特異性が低く、広範な作物の窒素栄養の改善に利用できます。窒素固定エンドファイトはススキにもあります。

細菌の増殖能力はどれくらいあるのでしょうか?

大腸菌は20分以内に一回分裂すると言われています。ヒトの皮膚や肝臓の細胞が入れ替わるのには1ヶ月かかります。大腸菌の方が圧倒的に活動的なのです。

20分に一回分裂すると24時間で72回分裂します。10^X倍に増殖するときの指数Xは

  • X=72・log2=72・0.30=21.6 

すなわち理論上10^21個以上に増殖します。実際は栄養がなくなって増殖は止まります。仮に栄養が供給され続けると、大腸菌の重量は700fg(=7×10^-13g/個)ですから、1個の細菌は24時間後には、

  • 7×10^-13g/個×10^21個/日×10^-6(ton/g)=700(ton/日)

700トンという途方もない重量になります。細菌には環境を変える力が備わっています。

土壌中の菌体の栄養分はどれくらいでしょうか?

菌体には、カビと細菌を平均して炭素100gに対し、窒素15g、リン11.6g、カリウム9.8g、カルシウム1.4gが含まれています。つまり菌体にはN:P:K=3:2:2の割合で栄養素が含まれています。菌体のC/N比は6.7です。

糸状菌は炭素100gに対して、窒素5g(4.5g~7.5g)程度含んでいます。糸状菌の場合、

  • C/N比=100g/5g=20

となります。堆肥作製時のC/N比を20とするのはそのためです。堆肥はC/N比10程度まで分解すると、林の匂いがなくなって施用可能になります。ちなみに好気性菌では0.75g~1.5gの窒素を含んでいます。細菌の場合

  • C/N比=100g/1.5g=66

となります。細菌に必要なのは炭素であることが分かります。

畑10a当たり、700kgの菌体がいると考えられています。乾燥菌体量は、約100kg(=700kg×14.3%)になります。内訳は炭素70kg、窒素11kg、リン8kg、カリ7kg、カルシウム1kgとなります。10aの施肥量は、窒素10kg、P2O5が10kg、K2Oが10kgですから、リンは4.4kg、カリウムが8.3kgとなります。つまり、乾燥菌体のミネラルと施肥量はほぼ等しいといいうことになります。土壌中の菌体が死んで肥料として供給されれば、無肥料でも植物は育つことになります。

細菌は摂取エネルギの何%を菌体合成に使っているでしょうか?

好気性細菌は摂取エネルギの5~10%、嫌気性細菌は摂取エネルギの2~5%しか菌体合成に使いません。つまり細菌は摂取エネルギの95%以上を生命維持活動に使ってしまいます(西尾道徳1989年)。細菌を増やすには土壌に大量の炭素が必要なのです。施肥した有機体窒素は、細菌に取り込まれずに余り、硝酸態窒素に変化し、植物に吸収されます。

一方、真核生物であるカビは摂取エネルギの30~50%を菌体合成に使っています。糸状菌などは摂取エネルギの半分を菌糸の伸長に費やしています。糸状菌は細菌よりN、P、Kなどのミネラルが1桁多く必要になります。雑草堆肥などを作るためには、米ぬかなどの窒素分を入れます。糸状菌は湿った土壌を好むので、堆肥が乾かないように時々水を追加して、均一になるように切り返します。

細菌とヒトのどちらの呼吸活性がより大きいのでしょうか?

呼吸活性の値の例を挙げると、静止時では

  • 蝶0.6μl、カエル0.15μl、ヒト0.21μl、マウス2.5μl、

です。正確な単位は[μlO2/mg(乾物)/hour]です。マウスの静止時の呼吸活性がヒトより高いのは、マウスは体が小さいために放熱が大きいからでしょう。活動時は上昇し

  • 蝶100μl(飛翔)、ヒト2μl(走行)、マウス20μl(疾走)

となります。蝶は飛翔するのに静止時の166倍のエネルギを使っています。

細菌の呼吸活性はどうでしょうか? 

  • 藍藻1~10μl、カビ10~50μl、酵母50~100μl、
  • 大腸菌100~300μl、酢酸菌1000μl、窒素固定菌3000μl

大腸菌の呼吸活性はヒトより100倍以上大きいことが分かります。窒素固定菌に至っては1000倍以上です。細菌を増やすには土壌に大量の有機物が必要になりそうです。

ヒトのエネルギ消費量と酸素消費量の間にはどんな関係があるのでしょうか?

体重65kgの18才男子の基礎代謝量は

  • 1640[kca1/day]/65[kg]=25.2[kcal/kg/day]

です。1分当たりに換算すると、1日は1440分(=24×60)なので

  • 25.2×1000[cal/kg/day]/1440[min]=17.5[cal/kg/min]

となります。安静時の酸素消費量は約230[ml/min]です。1kg当たりの酸素消費量は

  • 230[ml/min]/65[kg]≒3.5[ml/kg/min]=1 METS

となります。METSはスポ-ツ生理学で用いられている運動強度の単位です。つまりエネルギ消費量と酸素消費量の比は

  • 17.5[cal/kg/min]/3.5[ml/kg/min]=5[cal/ml]

です。つまり酸素消費量1[ml]当たり5[cal]のエネルギを生み出しています。

従って、エネルギ消費量Xと酸素消費量Yの間には

  • X[cal/kg/min]=5[cal/ml]・Y[ml/kg/min]

の関係が成り立っています。1 METSの消費エネルギは

  • 1 METS=5[cal/ml]・3.5[ml/kg/min]=17.5[cal/kg/min]

です。

ヒトの呼吸活性はどれくらいでしょうか?

呼吸活性とは、1時間に重量1mg当たりの酸素消費量(μl:マイクロ・リットル)のことです。呼吸活性が大きいほど生命活動が活発だと言えます。

ヒトの安静時の酸素消費量は約230[ml/min]です。1kg当たりの酸素消費量は

  • 230[ml/min]/65[kg]≒3.5[ml/kg/min]

となります。

  • 3.5[ml/kg/min]=3.5×1000×10^-6×60[μl/mg/hour]=0.21[μl/mg/hour]

歩行時には5倍、走行時には10倍の酸素消費量になるので、

  • 歩行時 1[μl/mg/hour]、走行時 2[μl/mg/hour]

となります。

ヒトの細胞の呼吸活性は細胞によって異なり

  • 皮膚0.8μl、心臓5μl、肝臓12μl、網膜31[μl/mg/hour]

となっています(1980年柳田)。全体の酸素消費量0.21に比べて、上記の器官は活発に活動していることが分かります。

Alは植物にどんな問題を引き起こしているのでしょうか?

Alは土壌中の希少なリン酸とキレ-ト結合して[Al≡PO3]の非可給態にします。つまりAlはリン酸基O=P(OH)2の2つのOH基の酸素に挟まれて結合します。あるいは種子に含まれるフィチン酸は、6つのリン酸を含みますが、そのうち4つのリン酸がAlとキレ-ト結合し、難分解性の不溶態[4Al≡フィチン酸]を形成します。糸状菌は、フィタ-ゼという酵素でフィチン酸を分解し、植物にPを供給する手助けをします。しかし糸状菌は[Al≡フィチン酸]を分解することはできません。つまりAlはキレ-ト結合してAl≡PO3を形成し、植物がPを吸収するのを妨げているのです。植物は根からクエン酸などを放出して、リン酸を得ます。

  • [Al≡H2PO4] + クエン酸 → [Al≡クエン酸] + H2PO4

リン酸の拡散係数は小さく、同じ土壌において硝酸イオンが1日に3mm拡散するのに対して、リン酸は0.13mmしか拡散しません。従って植物の根の周りはPが欠乏しています。菌体は植物よりP濃度が25倍高いです。植物は根から糖を分泌し、根の周囲に菌体を引き付け、菌遺体のPを吸収します。

植物はどのようにして難分解性の腐植を分解するのでしょうか?

植物の根の細胞壁はAlと結合することができます。例えば

  • [Al≡有機物] + 根細胞壁 → Al≡根細胞壁 + 有機物

といった反応により、有機物が遊離します。細菌やカビには有機物を摂取する口がありません。細菌は外部に酵素を分泌して、有機物を分解して、吸収します。Alと結合した根細胞は脱落し、根の先端のムシゲルに堆積します。これはやがて細菌のエサになります。

根の細胞壁がAlと結合する理由

植物の細胞壁にはヘミセルロ-スが含まれており、多糖類鎖にはフェノ-ル基を有するフェルラ酸などがあり、フェルラ酸同士の結合により多糖類鎖同士が結合しています。隣接するフェルラ酸の2つのフェノ-ル基はAlをキレ-ト結合します。植物の細胞壁に含まれるポリ・ペクチン酸にはカルボキシル基があり、これもAlとキレ-ト結合します。

難溶性の腐植から有機物を遊離させるもう一つの方法は有機酸を使う方法です。植物の根からは有機酸が分泌されています。例えば

  • [Al≡有機物] + クエン酸 → [Al≡クエン酸] + 有機物

といった反応により、有機物が遊離します。遊離した有機物は細菌によって分解されて、植物の養分になります。植物の根から分泌されるクエン酸やシュウ酸やリンゴ酸もAlとキレ-ト結合をします。

植物はどうやって[Fe3+≡リン酸]からFeやリン酸を吸収しているのでしょうか?

野菜は被子植物です。被子植物には双子葉植物と単子葉植物があります。進化的には単子葉植物の方が新しいです。単子葉植物は、草食動物に対抗するために、成長点が低く、種子に養分を集中させています。単子葉は、養分が少なく、ガラス質で消化され難い特徴があります。

双子葉植物には、細胞壁の内側の細胞膜にFe3+をFe2+に還元する膜タンパク質酵素があります。

[Fe3+≡リン酸] + 膜タンパク質酵素 → Fe2+膜タンパク質酵素+ リン酸

となり、還元されたFe2+は根の表皮細胞の膜輸送タンパク質で細胞内部に輸送されます。

Feの還元力は、リン酸があり、鉄欠乏の条件で発揮されます。

単子葉植物の場合は、根からネムギ酸などの有機酸を放出して、水溶性の[Fe3+≡ムギネ酸]の形にして細胞内に吸収します。

但しマメ科のル-ピンは、クエン酸を使って、Feを吸収します(1983年ガ-トナ-)。双子葉のキマメ(樹豆)は[Fe3+≡リン酸]を利用し、イネ科のソルガム(雑穀)は[Ca2+≡リン酸]からリン酸を得ます。

土壌中でAlはどんな働きをしているのでしょうか?

アルミニウムイオン(Al3+)は価数が3価と大きいので、植物には有害です。Alは植物を構成するのに必要な元素ではありません。しかしAlは土壌中で重要な働きをしています。

1.Alは粘土に不可欠な元素

岩石の50%~70%は石英(SiO2)、15%はアルミナ(Al2O3)、残りはFe2O3やK2Oです。だから物理風化で細かくなった一次鉱物はSiAlFeKを含みます。さらに植物にKを奪われ、化学風化を受けて結晶化した二次鉱物はSiとAl(あるいはFe)を含んでいます。つまり粘土はAl2O3とSiO2から出来ており、Alは粘土に不可欠な元素なのです。

2.Alは土壌のミネラルを保持する

Alは正8面体のシート、Siは正4面体のシート構造を形成しています。例えば代表的な粘土鉱物であるカオリナイトは、Alシ-トとSiシ-トが1:1、スメクタイトは2:1に積み重なった構造をしています。粘土鉱物のAl3+がMg2+やCa2+に置き換わることで、結晶表面はマイナスに帯電(但し側面はプラスに帯電)します。これによって粘土はK+やMg2+やCa2+などの陽イオンを引き付け、CEC(陽電荷交換容量)を得ます。ちなみにカオリナイトのCECは3~15meq/100gであるのに対し、スメクタイトのCECは80~150meq/100gもあります。ここでmeqはミリ・エクイバレント(当量)と読みます。つまりAlのおかげで土壌は養分を保持できるのです。

3.Alは腐植を作り、土壌の有機物を保持する

私たちがよく目にする黒ぼく土は、火山灰なので、粒子が細かいために、多くのSiとAl(Fe)が溶出しています。ところでイネやススキなどのイネ科の植物の葉の縁はSiO2のガラス質で鋭くなっています。イネ科植物は大量のSiとKを吸収するので、土壌中に多くのAlが遊離します。一方有機物には大量のカルボキシル基が含まれています。2つのカルボキシル基の酸素はAlを挟み込みキレ-ト結合をします。つまり遊離したAlは有機物と強固に結合し、 [Al≡有機物]を形成します。これは難分解性の不溶態で、有機物を分解され難く、隙間が多い三次元構造にします。これが腐植と呼ばれる黒褐色の有機物です。つまりAlは土壌の有機物(腐植)を長期間保持する働きがあるのです。

菌遺体に含まれるたんぱく質には粘着性があり、土壌を団粒化します。一方、糸状菌は菌糸の耐水性を高めるグロマリンという不溶性タンパク質を分泌しています。団粒構造が安定に保持されるのは、糸状菌の遺体が団粒構造に耐水性を与えるためです。

ちなみに腐植のCECは30~280meq/100gと幅が広く大きいです。腐植にはカルボキシル基が多く含まれているため、負に帯電しています。カオリナイト土質の場合は、腐食を含む堆肥を入れると、CECが増大するので、作物の収量増加が期待できそうですね。

持続的な農業を実現するにはどうしたらいいのでしょうか?

持続的な農業

自然界の生物は、捕食者(動物)、生産者(植物)、分解者(菌類)の三者から成ります。菌類は主に土壌に生息し、全ての生物の遺体を食べるために分解し、土壌に養分を与えています。植物は、光合成で糖を作り、根から菌類が生成した養分(NPKなど)を吸い上げて、タンパク質を作ります。植物には筋肉はありませんが、様々な化学物質を細胞内で合成するための酵素(タンパク質)が必要なのです。自然界の持続的活動は、三者の生物がバランスし、物質が循環することで成り立っています。農業を持続的に実施するためには、自然界のバランスや循環を維持しなければなりません。

慣行農法

植物を土に植えて、化学肥料と水をやれば、植物は成長します。しかし化学肥料は石油や鉱物資源により生産されるので持続的ではありません。また土壌には養分が残留しているので、化学肥料を施肥してよい栄養バランスの土壌を実現することは容易ではありません。過剰に施肥すると害虫が発生します。化学肥料だけでは、連作障害が発生しやすいため、様々な除草剤や農薬を使用することになります。化学肥料を用いた慣行農法では健康な土壌ができず、長期的には土壌の劣化や流出を引き起こします。

農業は土作りだと言われます。なぜなら健康な土壌に、健康な作物が育つからです。土壌は、鉱物(粘土と微砂と砂の混合物)と有機物(生物の遺体の分解物)と土壌生物(細菌、カビ、土壌動物)から成ります。健康な土壌には3つの条件が必要だと言われています。

<健康な土壌の3条件>

1.物理的に団粒構造があり、通気性(水はけ)と保湿性が保たれている。

2.化学的に豊富なNPKやミネラルのバランスが取れ、弱酸性である。

3.生物的に細菌やカビや土壌生物の多様性が保たれ、病害が抑制されている。

土壌の団粒構造を実現するには腐植、すなわち糸状菌が放出するグロマリンが必要です。化学肥料では土壌微生物は育たないので、土壌の団粒構造ができません。そうすると乾燥に弱く、流出し易い土壌になってしまいます。土壌が固くなれば、作物の根はりが悪くなり、養分を吸収できる範囲や吸収率が低下して、作物の品質や収量が低下してしまいます。

有機農業

畑から作物を収穫すると、その分養分が減ってしまいます。持続的に収穫するためには、堆肥を施肥して、養分を補給する必要があります。これがいわゆる有機農業です。堆肥には、多くの炭素と少量の窒素やリンや硫黄などの成分が含まれています。堆肥は土壌生物のエサになります。堆肥を用いた方が土壌生物の多様性が保たれるので、病害を抑制しやすいのです。堆肥は有機態窒素を含むので、日照の少ない冬作物用の肥料として優れています。通常、堆肥を施肥するときには、土壌と混ぜて耕起します。耕起を避けて、最小限に施肥する人もいます。

「土・牛・微生物」(原題Growing a Revolution)

本書は地形学者のデビット・モンゴメリ—が、世界各地を飛び回り、不耕起農法で肥沃な土壌を作った農民たちと出会う旅の物語である。本書は324ページで13章からなる。取材時の様子が文学的に描かれている一方で、巻末には約300編の引用論文が記載されており、内容は極めて科学的である。博士は、米国で起こった不耕起栽培農家を取材し、不耕起栽培こそが環境保全型農業を実現することを示し、この農業革命が成功するための三原則を提案した。日本も不耕起栽培を深く学び、慣行農業を大きく転換することが望ましい。

 Dr. David R. Montgomery

農耕の歴史

これまでの農耕の歴史を振り返ると、革命的技術として、第一は犂(すき)と畜力の農耕、第二は輪作と堆肥の利用、第三は機械化と工業化、第四は化学肥料と遺伝子技術の導入が挙げられる。モンゴメリ-博士が提案するのは、第五の農耕革命である「土壌生物と共生する農業」だ。

耕起の弊害

私たちは、農業とは田畑を耕すことだという固定観念を持っている。耕起の主な目的は雑草を除去することである。雑草は作物から光と栄養を奪うからである。しかし耕起は、短期的には作物の養分を増やすが、長期的には土壌を乾燥させ、養分と微生物を失わせてしまう。これまでの文明社会が滅亡した原因は、耕起による土壌流出である。

耕起の発明は土壌の生産と浸食の均衡を根本的に変化させた

土壌流出

私たちは土壌流出や劣化にあまり馴染みがない。日本は雨が多く、本州の土壌は比較的安定しているからである。しかし世界の土壌劣化は著しい。中国は全部、アメリカではフロリダ半島付近以外の土壌は、全て劣化している。慣行農法では1年に1mmの厚さの土壌が失われるので、300年で殆どの斜面から表土は失われる。しかもトラクタ-の発達によって、牛や飼葉や牧草地が要らなくなり、畜糞による肥沃化もなくなった。

不耕起栽培の発端

アメリカで不耕起農法に関心が集まったのは、皮肉なことに1965年にパラコート(paraquat)という除草剤が販売されたからである。除草剤があれば耕起しなくても除草できる。不耕起だと、雨水がよく地面に浸透し、作物が干ばつを乗り切れる耕運機の燃料代が少なくて済む。作物の切り株を残すと、肥料の出費も少なくなることに気づいた。毎年7万台以上売れていた犂は1991年には1500台になった。1970年にモンサント社がラウンドアップ除草剤とグリホサ-ト耐性をもつ作物を開発したことで、不耕起栽培の採用に拍車がかかった。すると農家は残りの二つの原則も受け入れ始めた。そのうち除草剤や農薬がなくても十分な収量が得られることが分かり、不耕起栽培が環境保全型農業として確立した。

不耕起栽培農地の面積

不耕起栽培が実施されていた面積は、1970年には300万haに満たなかったが、2013年には15700万haを超えた。これは世界の耕地の11%である。その42%が南アメリカで34%が北米とカナダである。2013年現在アメリカ国内の耕地面積の21%(3560万ha)が環境保全型農地になっている。他の地域ではまだ数%程度である。

不耕起栽培の三原則

モンゴメリ—博士は、数々の不耕起栽培農場の視察と膨大な科学技術文献から、土壌生物と共生する農業が成功するための三原則、すなわち

1)不耕起、2)被覆作物、3)多様性輪作

を導き出した。被覆作物と輪作を利用する農法は古くから知られていたが、犂で耕起していたために持続可能な農業ではなかった。この三原則すべてに従えば、慣行農業より少ない投資で同程度以上の収量が得られるという。この不耕起栽培は、化学肥料、農薬、燃料の使用を大幅に抑制できるからである。この三原則のどれか一つでも満たさなければ、有機農業といえども、土壌は疲弊し、収量は低下してしまう。

被覆作物

被覆作物には複数のマメ科の植物とそれ以外の植物を用いる。例えばトウモロコシ畑に大豆を混作する。被覆作物は、土壌を守り保湿するマルチング効果だけでなく、菌根菌を通じて土壌に養分を与える効果があるという。土壌の炭素量を高めるためには、上から下への土づくりが欠かせない。菌根菌は植物の根とつながることで、植物は広い範囲から養分を吸収することができる。

多様性輪作

多様性のある輪作は、連作障害や病害虫から作物を守る効果がある。多様な植物で覆われていると安定した自然状態に近づく。トウモロコシと大豆の輪作は、トウモロコシに窒素肥料を大豆に炭素肥料を与える。化学肥料は微生物の餌にはならないが、炭素肥料は植物と共生する微生物の餌になる。輪作作物の残渣は、空気中のCO2の炭素を土に戻すことになる。イネ科植物は、菌根菌の作用によって、大豆にリンを与えている。ソバのような被覆作物の根は、枯れた時に酸を出し、リンの可溶化を助ける。ソバは種を付ける前に刈り取る。

有機物0.5%の灰土と有機物8%の黒土

牛と菌根菌

牛には収穫後のトウモロコシの株や被覆作物を食べさせる。牛の放牧は土地を痩せさせると言われているが、牛を適度に移動させれば、土地を肥やすことができる。植物は、牛などに葉を食べられると、糖を含む根滲出液を菌根菌に与えるからである。その代わりに菌根菌は植物に防虫剤を与えている。被覆作物の根滲出液は土壌の有機物含有量を増やし、他の微生物の栄養となる。菌根菌は植物に無機の微量元素も与えている。土中のリンはアルミと結合し不水溶性塩になっているが、菌根菌やある種の細菌は、糖液と引き換えに、酸でリンを可溶化して、植物に供給する。耕起は菌糸を切り刻むので、植物の根とのつながりを壊してしまう。

グロマリンによる土壌の団粒化

菌根菌は、菌糸の水漏れを防ぐためにグロマリンという物質を放出する。グロマリンは1996年に米国のサラ・ライト博士(女史)によって発見されたタンパク質である。グロマリンは防水性接着剤の性質をもち、土壌の団粒状態を固定する働きがある。菌類は成長するのに団粒構造を必要とする。グロマリンで固定された団粒は水に浸されても崩壊しないため、菌類の生活環境を守る。健康な土壌の物理的構造は生きた生物によって作られることが証明されたため、グロマリンの発見は日本の不耕起栽培家たちにも大きな希望を与えた。

グロマリンの発見者のサラ・ライト博士

化学肥料の問題点

農地を耕起したため、この100年間でアメリカの土壌の有機物量は6%から3%未満に低下した。耕起すると有機物が酸素に触れてCO2に分解するからである。有機物が減ると乾燥と浸食が増え、災害に弱くなる。痩せた土地で作物を作るために、化学肥料を投入した。化学肥料メ-カは独占企業である。コ-ク社(窒素肥料)やモザイク社(リン酸塩)は望み通りの値段を付けて販売している。農民の稼ぎの殆どは、肥料や農業機器メーカの利益になってしまうため、肥料の販売人は麻薬の売人に例えられている。施肥した窒素とリンの半分は湖沼に流れ込み環境破壊をもたらす。化学肥料は土壌を酸性化させ土壌生物が棲めない環境にしてしまう。

熱帯地方の取り組み

熱帯地方は動植物の種類が多く、環境保全が必要である。しかし熱帯地方は、地温が高くなり、有機物の分解速度が速いため、土壌に有機物が蓄積しにくい。バイオ燃料用の穀皮などの農業廃棄物を低酸素条件下で加熱することで作られるバイオ炭は、多孔質なので、土壌に入れることで、pHや土質を改善し、微生物の生息地となる。土壌中の重金属を吸着し、重金属が植物や水源に入らないようにするのに役立つ。

不耕起栽培が普及しない理由

慣行農法で訓練されてきた人は、やり方を変えたくない思いがある。商品作物中心の補助金と価格維持は単一栽培や単純な輪作に有利である。作物保険制度があると、農家は被覆作物を栽培したがらない。一番の問題は慣行農法に対する政府の補助金である。政府は三年間の土づくりの期間、農家を支える政策をとるなどして、作物保険制度と補助金を土壌の健康を増進するように変えることが望ましい。

街を活性化させる不耕起栽培

ブラント氏は1万エ-カ(4000ha)の農地を取得したら、それを小さく分割し、若い農家に経営させたいと述べている。不耕起栽培は、初期投資や維持費用がかからないので、小規模でも利益が出る。小規模農家が復活すれば、アメリカの小さな街が再活性化すると考えている。環境保全型農業の普及には、若者をよく教育し、農場後継者を探している年配農家とつなげるプログラムが必要であるという。日本でも慣行農業は労働時間が長く若者には人気がない。不耕起栽培は労働時間が大幅に削減できるので、若者に人気がでると思う。不耕起栽培が普及すると、慣行農業に資材を売る人が得ていた利益は、農民に還元されるだろう。

平成の時代が終わろうとしています。平成はどういう時代だったのでしょうか?

NHK総合TVの視点・論点で、「社会保険国家から社会サ-ビス国家へ」と題して、日本社会事業大学の神野直彦教授がお話をしました。

私も、平成はまさに工業社会からサービス社会へ移行する時代であった、と思います。

私たちは工業社会の行き詰まりによるバブル崩壊と長期の経済停滞を経験しました。その中で労働市場が正規と非正規に二極化し、格差と貧困の原因となりました。少子高齢化が進み、家族の形態も大きく変化しました。インタ-ネットや人工知能などの新しいサ-ビス産業が発展し、技術的にサービス社会が到来しました。

工業社会では主に男性が働きに出ていましたが、サ-ビス社会では、女性の働く機会が増えてきました。その結果、これまで女性が担ってきた育児や高齢者ケアをする人が必要になってきたのです。

社会保障の国際比較デ-タを見ると、日本は、年金と医療においては他の先進国と同等の保証を実現していますが、福祉教育サ-ビスの保証は見劣りします。福祉教育サ-ビスとは、保育、子ども、老人に対するケアと職業訓練などの再教育のサ-ビスのことです。工業化社会から知識サ-ビス社会へ変化したのだから、再教育サ-ビスを充実させる必要があります。先進国は、サービス社会に合わせて、現金給付だけでなく、サ-ビス給付を保証しているのです。家族だけをケアしていた時代から、コミュニティのケアをする時代になるのでしょう。

平成の改革は、年金、医療、介護の社会保障制度を継続させるための取り組みでした。年金では、平成16年に給付水準を固定して、保険料を引き上げる制度から、保険料を固定して、給付水準を引き下げる制度に変更されました。医療では、自己負担の引き上げと後期高齢者医療制度が創設され、平成12年には介護保険制度が創設されました。

平成の社会保障は、年金保険と医療保険による現金給付型の社会保障でした。令和では、現金給付だけでなく、福祉教育サ-ビスを充実させた社会保障を行うのが課題です。それによって雇用を維持し、持続的な経済を実現できるでしょう。

細菌の細胞壁は植物と異なるのでしょうか?

菌類や細菌の細胞壁はキチンからなります。キチンはN-アセチル・グルコサミンの重合体です。グルコサミン(Glucosamin)は、グルコースの2位の炭素C2に付いているOH基がNH2基に置換されたアミノ糖です。

細菌の細胞壁(murein)は、グリカン鎖という糖鎖を4つのアミノ酸からなるペプチド鎖で架橋した構造になっています。グリカン鎖はN-アセチル・グルコサミンとN-アセチル・ムラミン酸が交互にβ(1→4)結合している糖鎖です。グリカン鎖が平行に並んでおり、N-アセチルムラミン酸に結合しているテトラペプチド同士が互いに結合し合いグリカン鎖に対して垂直方向への強度を高めています。またテトラペプチド鎖は細胞膜側にも結合できるようになっており、これで細胞膜および細胞壁の結合をより強固なものにしています。

セルロ-スやヘミセルロ-スは中性多糖類で、ペクチンは酸性多糖類です。陸上植物と緑藻植物ではペクチンが使われますが、褐藻植物ではアルギン酸、紅藻植物ではキシランやマンナンの硫酸エステル、菌類ではマンナンのリン酸エステル、細菌類ではムラミン酸が用いられます。糸状菌の細胞壁30%のキチンが含まれていますが、酵母の細胞壁はβ-1,6グルカン(~50%)とマンノプロテイン(40%)を主要構成成分としており、キチンは1%にすぎないです。

最もよく知られたセルロース合成細菌は酢酸菌です。ナタ・デ・ココは酢酸菌によって作られたセルロースです。野菜や穀類から摂取されるセルロースはヒトの消化酵素では分解されませんが、整腸作用など様々な働きがあり、腸内細菌により分解されてエネルギーになります。

ペクチンはフル-チェで有名ですね。ペクチンは牛乳のCaと反応してゲル化して固まります。マンナンは、こんにゃくにも含まれているダイエット食品です。人の消化酵素では消化できず、また胃の中で水を吸って何十倍にも膨れるため効果があります。グルコサミンは、関節痛の健康食品として販売されています。グルコサミンは軟骨の成分「ヒアルロン酸」を構成する2種類の糖のうちの1つです。もうひとつはD-グルクロン酸です。軟骨は主柱となるコラーゲンとそれを束ねるヒアルロン酸と水分を保持するコンドロイチン硫酸などの糖鎖で構成されています。一日100gあまりのブドウ糖が生体組織の合成に使われていますが、そこに1gのグルコサミンを摂取しても、関節の軟骨に十分な量は届かないでしょう。プラゼボ効果も報告されていません。

植物の細胞壁の構造はどうなっているのでしょうか?

植物の細胞壁は、セルロ-ス、ペクチン、ヘミセルロ-スなどの繊維が架橋性多糖やタンパク質で絡み合い、リグニンで固化された構造をしています。強固な細胞壁のおかげで植物は起立しています。そのためよくセルロ-スは鉄筋、ペクチンはコンクリ-トに例えられますが、細胞壁は生きた組織です。なぜなら細胞壁の中には様々な酵素タンパク質が含まれており、細胞の中で起こる生命活動に深く関わっているからです。

セルロースやペクチンは糖の鎖です。セルロースとはD-グルコースという糖がβ-1,4-結合で長く結合した高分子です。グルコ-スにはα型とβ型があります。各々の OH 基のグルコ-ス環に対する上下関係で区別します。C1とC4に結合したOH基がグルコ-ス環に対して同じ側に突き出しているのがα型です。αグルコ-スが鎖状に結合すると水素結合のせいでラセン型のアミロ-ス(デンプン)になります。アミロ-スはマルト-ス(麦芽糖)が重合した構造をしています。βグルコ-スが鎖状に結合するとシート型のセルロ-スになります。セルロ-スはラセン型でないので、ヨウ素デンプン反応を示しません。セルロ-スはセルビオ-スが重合した構造をしています。セルビオ-スは2つのβグルコ-スの片方が裏返されて結合しています。面白いですね。

セルロースの構成する細胞壁繊維は微繊維の集合体から成ります。微繊維は結晶性ミセルが数個集まった構造で直径は30nmです。結晶性ミセルはセルロース分子40本が水素結合で束ねられた構造体(直径5nm)です。微繊維間隙幅は10nmで、この空隙にはキシログリカンなどのヘミセルロースが満たされており、微繊維間の構造的強度を高めています。

図1に植物の一次細胞壁の構造モデルを示します。色とりどりの●と■は多糖類を構成する糖残基を示しています。一次細胞壁は、結晶性のセルロース微繊維がヘミセルロースにより架橋された網状構造が骨格となり、その隙間を巨大分子であるペクチンが埋める構造モデルが広く受け入れられています。

セルロース微繊維は、細胞膜上のセルロース合成酵素により合成されます。合成酵素は細胞内の表層微小管に沿って動くため、微繊維の向きは表層微小管により決定されます。ヘミセルロースやペクチンは、ゴルジ体内で多数の膜貫通型の糖転移酵素の働きで合成された後、膜交通を介して細胞壁中に分泌されます。細胞壁中では、それぞれXTH(=Xyloglucan endoTransglucosylase/Hydrolase)やPME(=Pectin Methyl Esterase)などによる修飾を受けながら、細胞壁の高次構造に組み込まれます。

図2にエンド型キシログルカン転移酵素・加水分解酵素(XTH)による細胞壁中のキシログルカン架橋のつなぎ換え反応による細胞壁再編モデルを示します。つなぎ換え反応の際に切断されるキシログルカン鎖(供与鎖)を青色,つながれるキシログルカン鎖(受容鎖)を赤色で表示しています。細胞壁が伸展するのは、XTHによるつなぎ換え反応により、一次細胞壁のセルロースとキシログルカン網状構造の再編が起こるからです。

ペクチンはポリ・ガラクツロン酸の重合体です。ガラクツロン酸(galacturonic acid)はガラクトースが酸化されたウロン酸です。ガラクトースはC2とC5のOH基が同じ方向を向いている糖です。C5にCH2OHがついているのがガラクトースで、C5にCOOHがついているのがウロン酸です。ちょっとした違いですが、糖鎖の化学は立体異性体の区別が難しいです。

図3にペクチン・メチル・エステラーゼ(PME)による脱メチル化を介したホモガラクツロナン(=HG)のカルシウム架橋の形成モデルを示します。

ペクチンの全ドメイン内で最も大きな領域を占めるHGドメインは、ガラクツロン酸がα-(1→4)-グリコシド結合した直鎖状の多糖として細胞内のゴルジ体で合成されると同時に、ガラクツロン酸残基中のカルボキシル基がメチルエステル化され、電荷をもたない状態で細胞壁中へ分泌されます。一方、PMEは不活性な前駆体(Pro-PME)としてゴルジ体を経て分泌される過程で不活性化ドメイン(PMEI)が切り離され、活性型PMEとなります。 メチルエステル化されたMe-HGは細胞壁中に分泌された後、PME酵素により脱メチル化されます。脱メチル化されることで、HGはCaイオンを介して高度な分子間架橋を形成してゲル化し、植物の細胞に強度と柔軟性を与えます。ペクチンのRGIIドメインは側鎖中のアピオース残基のジオール基間で、ホウ素(B)を介して分子間架橋を形成します。つまりCaやBが植物の必須元素である理由のひとつは、細胞壁を形成するのに不可欠な元素だからです。

ヘミセルロースはキシランやマンナンのほか、グルコマンナンやグルクロノ・キシランなどのような複合多糖もあります。ヘミセルロースは結晶性セルロース微繊維同士の凝集を防ぎ、細胞壁の伸展性を高めています。また化学的に安定な結晶性セルロース微繊維の表面を多様な分子種からなるヘミセルロースで覆うことで、化学反応を伴う細胞壁の形質変化を可能にしています。

多くの被子植物の細胞壁はタイプIと呼ばれ、セルロース、ペクチン、キシログルカンが多く含まれています。イネ目の細胞壁はタイプIIと呼ばれ、セルロース、キシラン、βグルカンが多く、ペクチンやキシログルカンが少ないです。タイプIIではタンパク質含量が低く、代わりにフェノール酸の架橋がその役割を果たしています。

参考文献 横山隆亮他、化学と生物53巻No.2 P107-114 (2015)「植物細胞壁: 高次構造の構築と再編」、東北大学大学院生命科学研究科