窒素固定菌はどうやって窒素をアンモニアに変えるのでしょうか?

窒素固定菌はニトロゲナーゼ(Nitrogenase)という酵素を使って、窒素分子をアンモニアへと変換します。炭化水素のC-H間の結合エネルギは約100 kcal/mol程度であるのに対して、N≡Nの三重結合のエネルギは225 kcal/molと高いので、これを還元的に開裂して2分子のアンモニアに変換することは大変なことです。Hoffman教授はニトロゲナーゼを“Everest of enzyme”と呼んだそうです(2009年)。ニトロゲナーゼは、モリブデンMoを含むMo型、バナジウムVを含むV型それに鉄Feのみを含むFe型の三種類あります。特に、土壌細菌のアゾトバクタ・ヴィネランディ(vinelandii)のMo型ニトロゲナーゼがモデル細菌となっています。ニトロゲナーゼは以下のような反応を触媒します。ここでPiはリン酸を表します。

  • N2 + 8H + 8e +16Mg2+≡ATP + 16H2O ——> 2NH3 + H2 + 16Mg2+≡ADP + 16Pi

電子はフェレドキシンなどの電子供与体から提供されます。ギブスエネルギの変化は

  • ΔG’ = -136 kcal/mol N2

です。標準状態(PH7)にも関わらず大きな発熱を生じます。細胞での酵素反応中にATPは、Mg2+≡ATPの状態を取っています。つまりMg2+はATPの2つのリン酸の酸素イオンOにキレ-ト結合しています。ATPの負電荷を覆うことで、Mg2+≡ATPが酵素反応の活性部位の疎水性の裂け目に結合できます。上記反応ではアンモニアに伴い水素が発生しています。ニトロゲナーゼは、ATPの加水分解と共役したプロトン還元の副反応

  • 2H + 2e + 4ATP + 4H2O ——> H2 + 4ADP + 4Pi

が含まれているからです。実際の生理状態においては16ATPではなく、20~30ATPが必要だとされています。ニトロゲナーゼは、反応特異性が低く、様々な窒素化合物や有機化合物を触媒できます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。