爬虫類の分類方法を知っていますか?

爬虫類は頭蓋骨の側頭窓の数で分類します。頭蓋骨には鼻孔や眼窩孔の他に側頭窓 (temporal fenestra)と呼ばれる穴が開いています。無弓類、単弓類、双弓類というのは、片側から見た側頭窓の数がそれぞれゼロ、1個、2個という意味です。弓とは穴によって細くなった骨のことです。恐竜は双弓類なので、恐竜の頭蓋骨には8個の孔が開いています。

ペルム紀に存在していた無弓類のパレイアサウルス科の恐竜12種は、両生類と同様に、頭蓋骨に側頭窓がありません。単弓類である哺乳類型爬虫類は、頭蓋骨の両側に1対の側頭窓があります。横から見ると、眼窩孔の後ろに1つ側頭窓が開いています。ヒトは単弓類ですが、無弓化しています。双弓類は魚竜を含めた竜類です。トカゲ、ワニ、カメ、恐竜、鳥類は双弓類です。双弓類は頭蓋骨の両側に2対の側頭窓があります。しかしカメは後の進化で単弓化しています。

側頭窓は顎の筋肉が収まる孔です。側頭窓が開くことによって、顎を大きく開けることができ、また下顎内転筋の付着面が広くなり、噛む力が増大します。ヒトの咬合力は500N(女性平均)~700N(男性平均)です。爬虫類の噛む力は、ヒトの10倍~100倍もあります。

恐竜の系統樹に大きな変更あり

恐竜は、骨盤の形状から、竜盤類と鳥盤類に分けられており、肉食恐竜である獣脚類は、草食恐竜である竜脚類と並んで竜盤類に分類されていました。しかしM.Baron氏の2017年のNatureの論文で、他の多くの特徴の比較から、獣脚類は鳥盤類に近いことが分かりました。彼は74種類の恐竜を調査し、457の特徴を比較し、類似点と差異を詳細に研究しました。その結果、恐竜は竜盤類とオルニトスケリダ類に分けられ、獣脚類は鳥盤類と並んでオルニトスケリダ類に分類されたのです。その結果、恐竜の系統樹はより難しいものになりました。これは130年ぶりの大変革でした。これまでネコだと思っていた動物の半分はイヌだったと分かったようなものだからです。

恐竜博2019に展示されていた恐竜の種類は?

恐竜博2019では、デイノケイルス、タルボサウルス、カムイサウルスなどの骨格標本が展示されていました。これらはどんな恐竜なのでしょうか? デイノケイルスはコエルロサウルス類のオルニトミモサウルス類の陸生の魚食恐竜です。タルボサウルスはコエルロサウルス類のティラノサウルス類の肉食恐竜です。カムイサウルスはイグアノドンと同じ鳥脚類のハドロサウルス科の草食恐竜です。これは北海道のむかわ町で発掘されたのでむかわ竜とも言われています。これまで恐竜だけで1000種類ぐらい発見されています。恐竜の分類はかなり複雑です。恐竜が生きていた中生代は2億年近くあり、恐竜は1.6億年の長い歴史があります。化石になったのは一部ですから、実際、恐竜は10万種以上いたのかもしれません。

現生鳥類は、恐竜のオルニトミモサウルス類からマニラプトル類などを経て現在の姿に進化しました。6600万年前の白亜紀末に殆どの恐竜は絶滅しますが、恐竜の末裔である鳥類は飛べたので、大絶滅を生き延びたのでしょう。

恐竜の見分け方を知っていますか?

どんな恐竜を知っていますか?

誰でも小さい頃、恐竜の図鑑を見たことがあるでしょう。恐竜図鑑には、ティラノサウルス、トリケラトプス、ブラキオサウルス、イグアノドン、ステゴサウルス、プテラノドン、イクチオサウルス、プレシオサウルス、ディメトロドン、アンティオサウルス、シレサウルス、モササウルス、パレイアサウルスなどが描かれています。しかしその中には厳密には恐竜ではないものも含まれています。

恐竜とはどんな動物?

恐竜とは直立歩行をする爬虫類です。直立歩行とは脚が関節で曲がらず直立している歩行です。ワニのように這いつくばって歩く生物は肘が曲がっているので、直立歩行をしていません。ネコやイヌは直立歩行をしています。ちなみに爬虫類というのは正式な分類ではなく、爬虫類は正式には竜弓類といいます。

恐竜と恐竜でないものを見分けられるでしょうか?

恐竜名の多くには語尾に「サウルス」がついています。しかし「サウルス」というのはオオトカゲを意味するのもので、必ずしも恐竜であるとは限りません。ティラノサウルスは獣脚類のコエルロサウルス類、トリケラトプスは鳥盤類の周飾頭類、ブラキオサウルスは竜脚類、イグアノドンは鳥盤類の鳥脚類、ステゴサウルスは鳥盤類の装盾類の剣竜類の動物で、これらはすべて恐竜です。しかし先ほど挙げたプテラノドン以下の古生物は厳密には恐竜ではありません。

プテラノドンは翼竜類、イクチオサウルスは魚竜類、プレシオサウルスは首長竜、ディメトロドンは盤竜類、アンティオサウルスは獣弓類、シレサウルスは主竜類、モササウルスは有鱗類、パレイアサウルスは無弓類の動物で、これらはすべて直立歩行しないので恐竜ではありません。これらの古代生物がどんな親戚関係であるのかは系統樹で分かります。しかし多くの古代生物のDNAは分からないので、系統樹は形態学的な推定で作られています。

 

プライス博士の進化の方程式

私たちが持続的に生活していくには、様々な生物資源の管理と生態系の保護が必要です。生態系を豊かにしたのは、永い生物の進化の歴史です。生態系を理解するには進化の理解が欠かせません。ところで進化とは、どんなプロセスでしょうか?

進化は、変異、遺伝、選択の3つの過程によって成立しています。生物は、限られた食料と配偶者をめぐって生存競争をしています。遺伝子の突然変異によって、生存と繁殖に有利になり、適応力を高めた固体は、生存競争に勝って、多くの子孫を残します。その子孫は親の遺伝子を受け継ぎ、適応力の高い固体となります。

進化とは、適応力の高い固体に生じた遺伝子の変異が蓄積して、新たな種を生成することです。自然環境が適応力の高い生物の生存率や繁殖率を高めること自然選択といいます。生物が新しい形質を獲得していく機構を表したのが進化の方程式です。形質と言うのは、体長、眼の色、骨格、葉の形など、生物の色々な特徴のことです。

進化の方程式には色々ありますが、その中で有名なプライスの共分散方程式を紹介します。ジョ-ジ・プライス博士は生物群の世代交代による形質zの変化に関する共分散方程式

を発見しました。ここでE(w)は平均適応度、∆E(z)は形質の平均的な変化量、Cov(w,z)は適応度と形質の共分散、E(w∆z)は遺伝する形質変化を表しています。zは形質を何らかの形で数値化した変数です。この式は、形質の変化は形質に働く選択項と形質変化の遺伝項の和で書けることを示しています。変異は一定の割合で生じると仮定されています。以下に記号の定義を記します。

ここでwiは固体iの適応度、ziは固体iの形質zの値、piは固体iが形質ziを取る確率を示しています。さてプライスの共分散方程式を導出しましょう。形質の平均的な変化量∆E(z)は

と書けます。適応度は子孫を残せる率に係る数値ですから、個体iの次世代の形質z’iを持つ確率p’i

と考えられます。なぜならそれは前の世代の形質zを持つ確率piが適応度wiだけ増えるからです。E(w)で除することでp’iの確率保存

が成り立っています。p’iを上式に代入すると、 E(z)=0 として、

が得られます。Cov(w,z)は世代交代による適応度の変化による選択的な形質変化量、E(w∆z)は形質変化Δzが適応度wによって受け継がれる遺伝的な形質変化量を表しています。
上式の第二項を無視し、z=wとすると、

となり、平均適応度の変化∆E(w)は常に正となることが分かります。これは自然選択の第一法則と呼ばれています。そのためプライス方程式の第一項は自然選択項と呼ばれています。プライス方程式は、進化の基本方程式と呼ばれ、自然選択説に遺伝の効果を取り入れた特徴があります。この法則は進化学や生態学だけでなく生物資源管理にも適用できそうです。

 ダーウィンは自然選択による進化論(1859年)の提唱者ですが、進化を論じる際に遺伝のことは全く考えていませんでした。遺伝学の祖メンデルは、30歳で物理化学を学ぶためにウィ-ンに留学し、気体反応の法則で有名なゲイリュサックや分子説で有名なアボガドロに会っています。そこで彼は、酸素ガスは2つの酸素原子が結合した分子であることなどを学びました。メンデルの法則(1865年)はAbといった2つの遺伝的要素で一つの形質を表現しています。このように遺伝学は分子説の影響を受けたと考えられています。