細菌の増殖能力はどれくらいあるのでしょうか?

大腸菌は20分以内に一回分裂すると言われています。ヒトの皮膚や肝臓の細胞が入れ替わるのには1ヶ月かかります。大腸菌の方が圧倒的に活動的なのです。

20分に一回分裂すると24時間で72回分裂します。10^X倍に増殖するときの指数Xは

  • X=72・log2=72・0.30=21.6 

すなわち理論上10^21個以上に増殖します。実際は栄養がなくなって増殖は止まります。仮に栄養が供給され続けると、大腸菌の重量は700fg(=7×10^-13g/個)ですから、1個の細菌は24時間後には、

  • 7×10^-13g/個×10^21個/日×10^-6(ton/g)=700(ton/日)

700トンという途方もない重量になります。細菌には環境を変える力が備わっています。

土壌中の菌体の栄養分はどれくらいでしょうか?

菌体には、カビと細菌を平均して炭素100gに対し、窒素15g、リン11.6g、カリウム9.8g、カルシウム1.4gが含まれています。つまり菌体にはN:P:K=3:2:2の割合で栄養素が含まれています。菌体のC/N比は6.7です。

糸状菌は炭素100gに対して、窒素5g(4.5g~7.5g)程度含んでいます。糸状菌の場合、

  • C/N比=100g/5g=20

となります。堆肥作製時のC/N比を20とするのはそのためです。堆肥はC/N比10程度まで分解すると、林の匂いがなくなって施用可能になります。ちなみに好気性菌では0.75g~1.5gの窒素を含んでいます。細菌の場合

  • C/N比=100g/1.5g=66

となります。細菌に必要なのは炭素であることが分かります。

畑10a当たり、700kgの菌体がいると考えられています。乾燥菌体量は、約100kg(=700kg×14.3%)になります。内訳は炭素70kg、窒素11kg、リン8kg、カリ7kg、カルシウム1kgとなります。10aの施肥量は、窒素10kg、P2O5が10kg、K2Oが10kgですから、リンは4.4kg、カリウムが8.3kgとなります。つまり、乾燥菌体のミネラルと施肥量はほぼ等しいといいうことになります。土壌中の菌体が死んで肥料として供給されれば、無肥料でも植物は育つことになります。

細菌は摂取エネルギの何%を菌体合成に使っているでしょうか?

好気性細菌は摂取エネルギの5~10%、嫌気性細菌は摂取エネルギの2~5%しか菌体合成に使いません。つまり細菌は摂取エネルギの95%以上を生命維持活動に使ってしまいます(西尾道徳1989年)。細菌を増やすには土壌に大量の炭素が必要なのです。施肥した有機体窒素は、細菌に取り込まれずに余り、硝酸態窒素に変化し、植物に吸収されます。

一方、真核生物であるカビは摂取エネルギの30~50%を菌体合成に使っています。糸状菌などは摂取エネルギの半分を菌糸の伸長に費やしています。糸状菌は細菌よりN、P、Kなどのミネラルが1桁多く必要になります。雑草堆肥などを作るためには、米ぬかなどの窒素分を入れます。糸状菌は湿った土壌を好むので、堆肥が乾かないように時々水を追加して、均一になるように切り返します。

細菌とヒトのどちらの呼吸活性がより大きいのでしょうか?

呼吸活性の値の例を挙げると、静止時では

  • 蝶0.6μl、カエル0.15μl、ヒト0.21μl、マウス2.5μl、

です。正確な単位は[μlO2/mg(乾物)/hour]です。マウスの静止時の呼吸活性がヒトより高いのは、マウスは体が小さいために放熱が大きいからでしょう。活動時は上昇し

  • 蝶100μl(飛翔)、ヒト2μl(走行)、マウス20μl(疾走)

となります。蝶は飛翔するのに静止時の166倍のエネルギを使っています。

細菌の呼吸活性はどうでしょうか? 

  • 藍藻1~10μl、カビ10~50μl、酵母50~100μl、
  • 大腸菌100~300μl、酢酸菌1000μl、窒素固定菌3000μl

大腸菌の呼吸活性はヒトより100倍以上大きいことが分かります。窒素固定菌に至っては1000倍以上です。細菌を増やすには土壌に大量の有機物が必要になりそうです。

ヒトのエネルギ消費量と酸素消費量の間にはどんな関係があるのでしょうか?

体重65kgの18才男子の基礎代謝量は

  • 1640[kca1/day]/65[kg]=25.2[kcal/kg/day]

です。1分当たりに換算すると、1日は1440分(=24×60)なので

  • 25.2×1000[cal/kg/day]/1440[min]=17.5[cal/kg/min]

となります。安静時の酸素消費量は約230[ml/min]です。1kg当たりの酸素消費量は

  • 230[ml/min]/65[kg]≒3.5[ml/kg/min]=1 METS

となります。METSはスポ-ツ生理学で用いられている運動強度の単位です。つまりエネルギ消費量と酸素消費量の比は

  • 17.5[cal/kg/min]/3.5[ml/kg/min]=5[cal/ml]

です。つまり酸素消費量1[ml]当たり5[cal]のエネルギを生み出しています。

従って、エネルギ消費量Xと酸素消費量Yの間には

  • X[cal/kg/min]=5[cal/ml]・Y[ml/kg/min]

の関係が成り立っています。1 METSの消費エネルギは

  • 1 METS=5[cal/ml]・3.5[ml/kg/min]=17.5[cal/kg/min]

です。

ヒトの呼吸活性はどれくらいでしょうか?

呼吸活性とは、1時間に重量1mg当たりの酸素消費量(μl:マイクロ・リットル)のことです。呼吸活性が大きいほど生命活動が活発だと言えます。

ヒトの安静時の酸素消費量は約230[ml/min]です。1kg当たりの酸素消費量は

  • 230[ml/min]/65[kg]≒3.5[ml/kg/min]

となります。

  • 3.5[ml/kg/min]=3.5×1000×10^-6×60[μl/mg/hour]=0.21[μl/mg/hour]

歩行時には5倍、走行時には10倍の酸素消費量になるので、

  • 歩行時 1[μl/mg/hour]、走行時 2[μl/mg/hour]

となります。

ヒトの細胞の呼吸活性は細胞によって異なり

  • 皮膚0.8μl、心臓5μl、肝臓12μl、網膜31[μl/mg/hour]

となっています(1980年柳田)。全体の酸素消費量0.21に比べて、上記の器官は活発に活動していることが分かります。