コロナ回復はいつごろになるのでしょうか? ~自宅待機率と感染率との関係

コロナウイルスの感染が大きな社会問題になっています。感染抑制と経済損失の最小化を両立させるためには、感染率に応じた自宅待機率を実現しなければなりません。自宅待機率と感染率の間にはどのような関係があるのでしょうか?また回復にはどれくらいの時間がかかるのでしょうか?簡単な感染モデルで回復時間を見積もってみました。

 感染者数をN[人] 、平均感染期間をT[時間]とすると、時間⊿tの間に増加する感染者数⊿Nは
・ ⊿N=-⊿t/T・N
となります。これを解くと
・ N=No・exp{-t/T}
となります。これは病院などでは感染者数が平均感染期間Tの間に治癒して減少することを意味しています。
 次に感染者が自分は感染していると知らずに外出し、感染を拡大させる場合を考えます。自宅待機率をp、一人の感染者が単位時間に感染させる平均人数をK[人/人/時間]とすると、感染者数⊿Nは
・ ⊿N=K⊿t(1-p)N-⊿t/T・N
と表すことができます。(1-p)Nは外出している感染者の数で、第一項目は外出感染者が増加させる感染者数、第二項目は平均感染期間Tの間に治癒して減少する感染者数を表しています。これを整理すると
・ ⊿N/⊿t={K T(1-p)-1}・N/T
と書けます。これを解くと
・ N=No・exp[{K T(1-p)-1}t/T]
となります。つまり感染者数を抑制させる条件は、係数が負となる条件すなわち
・ K T(1-p)-1<0 
となります。従って自宅待機率pが満たすべき条件は
・ p>1-1/KT
となります。KTは感染率すなわち一人の感染者が平均感染期間中に感染させる平均人数を表しています。例えば
・ KT=2.5 → p>60%
・ KT=5.0 → p>80%
となります。これまで政府は感染率2.5を想定し60%以上の自宅待機率を目指していましたが、感染率が2倍高ければ、感染抑制のためには80%以上の自宅待機率が必要になります。
 ところで回復にはどれくらいの時間がかかるのでしょうか?感染者数が1/eになる回復時間(=37%に減る時間)は
・ Te=T/{1-K T(1-p)}
となります。平均感染時間Tは2週間程度だと仮定しましょう。下図に感染率KTが2.5(赤丸)、3.5(青ダイヤ)、5.0(緑四角)の場合の回復時間Teの自宅待機率p依存性のグラフを表示します。


例えば感染率KT=2.5の場合(赤丸)はどうでしょうか?
自宅待機率p=61%であれば、
・ Te=T/{1-2.5・(1-0.61)}=T/0.025=40・T=20カ月
となります。自宅待機率が61%であれば、回復に1年8カ月かかることになり、来年の夏にオリンピックを開催することはできません。
自宅待機率p=65%であれば、平均感染時間Tは4カ月になります。つまり2月の時点で緊急事態宣言を発令していれば、6月には収束しているので、オリンピックは開催できたかもしれません。
自宅待機率p=80%であれば、
・ Te=T/{1-2.5・(1-0.80)}=2・T=1カ月
で回復します。政府が十分な休業補償をして、自宅待機率を80%に高めれば、回復時間が1カ月で済むということです。アメリカ政府はこのことをよく知っていたので、早期に莫大な休業補償に踏み切ったと考えられます。日本政府は十分な休業補償をしなかったので、回復時間が長引くことになります。全体の補償金額が増大し、このままでは国民は膨大な赤字国債を抱えることになるでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。