白内障の手術

先日、家族が白内障の手術を受けたので、帰省し、病院への送迎と付き添いをしました。白内障とは、眼の水晶体が白濁し、視力が低下する病気です。原因は水晶体を構成するクリスタリンというたんぱく質が会合(結晶化)して、システィン結合で固定されるからです。

白内障(cataract)には加齢の他に色々な原因があり、糖尿病もその一つです。糖尿病患者はインスリンの働きが悪いため、水晶体内に取り込まれたブドウ糖がソルビトールに変質し、水分量の部分的増加やクリスタリンの会合によって、白濁するために白内障になると言われています。濁ると光が散乱してまぶしく感じるので、サングラスをすることがあります。


糖尿病患者は、可能なうちに白内障の手術をしておかないと、眼底が見えないので、糖尿病網膜症の発見が遅れ、失明するリスクがあります。網膜は酸素やブドウ糖が必要なので、出血を放置すると失明します。糖尿病患者は血管が詰まりやすいので、網膜は新生血管を生み出して、酸素や栄養の不足を補おうとしますが、この新生血管は脆いので出血しやすいのです。傷口のかさぶたが網膜を引っ張り、網膜を剥離させる恐れもあります。インシュリンを投与しながら、糖質制限を行うと、血糖値が低い状態が持続し、網膜が低酸素障害を受けて、ある日突然失明することも起こります。

水晶体の中身は交換・補充が利かないので、手術では白濁した部分を除去し、人工レンズを挿入します。20分くらいで終わる簡単な手術です。手術後は、眼を汚さないように注意して、毎日4回ほど点眼をして回復を待ちます。

<白内障手術の手順>
1)細いメスで黒目(角膜)と白目(結膜)の境目に3mm弱の創口を作ります。
2)眼内をジェル状の物質で満たし、作業が安全に行えるようにします。
3)水晶体を覆っている水晶体嚢(袋)前面を剥がして作業用の窓を作ります。
4)水晶体嚢の窓から、超音波棒を入れて水晶体を細かく砕き、吸い取ります。
5)切開創から小さく折り畳んだ人工のレンズ(眼内レンズ)を挿入します。
6)眼内からジェル状物質を抜き、代わりに水を満たし切開創を閉鎖させます。

白内障手術は長い歴史があります。1949年にイギリスのリドレー医師が人工水晶体(=眼内レンズ)を発明しました。更に、アメリカのケルマン医師が超音波乳化吸引装置を発明しました。現在では水晶体も切開可能なフェムトセカンドレーザーが登場しています。レーザ白内障手術は2008年にヨーロッパで最初の手術が行われ、既に世界の最先端医療機関では50カ国以上で導入されています。

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