骨のリモデリングは10年周期

成人の骨は、全部で206本あり、その1つ1つが全部ちがう形をしています。骨代謝によって一定の形と密度を保ちながら、1つ1つの骨が少しずつ新しい骨に入れ替えられています。骨の重さは標準的体重の15%です。体重60kgの人であれば9kgほどになります。その内、骨髄が3kgあるとすると、骨本体は6kg程度になります。骨は1日1.6g程度更新されていので、およそ10年で体中の骨が入れ替わってしまうのです。私の骨は5回目の骨ということになります。大人になった後も、10年サイクルで骨は再生されているなんて、驚きですね。

運動と骨密度の関係
通常、運動選手は骨密度が高いと言われています。特に柔道選手は骨が丈夫だそうです。よく投げ飛ばされるからでしょうか?運動の衝撃によって骨内部に微細な骨折が発生し、それを修復する過程でカルシウムの沈着が促進されて骨密度が増加すると言われています。また骨に圧縮力が加わるとピエゾ電圧が生じるために骨芽細胞の働きが活発になり、Ca2+イオンが負電位の骨に引きつけられ吸着するとも言われています。一方、重力負荷の乏しい自転車競技や水泳競技の選手は骨密度が低いようです。自転車に乗っている時間が長い人は、運動しているのに骨粗鬆症になる場合があります。歩くより走った方が、衝撃があるので若さを保てるという報告も聞いたことがあります。

 

骨代謝に関わる2つの細胞

骨は永久不変ではなく、皮膚と同じように新陳代謝を行っています。つまり毎日、古い骨が壊されて、新しい骨が作られているのです。これを「骨代謝」といいます。具体的には破骨細胞(osteoblast)が古い骨を溶かし、骨芽細胞(osteoclast)が新しい骨を作ります。

破骨細胞は10個程度のマクロファージが融合した多核巨細胞であり、骨の表面を動き回って、酸やタンパク質分解酵素を分泌して、骨を溶かします。溶けたCaは、血液に取り込まれて新しい骨の材料になります。

骨芽細胞はⅠ型コラーゲンやオステオカルシンなどの骨基質タンパク質を合成・分泌して骨の石灰化にかかわります。つまりコラ-ゲンという鉄筋にオステオカルシンという接着剤を塗って、血液中のCaというセメントを付着させると考えればいいでしょう。骨芽細胞は男性ホルモンであるアンドロゲンと女性ホルモンであるエストロゲンの受容体を持っています。アンドロゲンは骨芽細胞の活動を抑制させ、エストロゲンは骨芽細胞の活動を刺激します。閉経後の女性は、エストロゲンの分泌が減少するために、骨芽細胞の活動性が低下し、骨粗鬆症になりやすいというわけです。閉経が起こる理由は、高齢で出産するリスクを避け、孫の世話をするためだと言われています。孫の数が多い女性ほど、寿命が長いという調査結果があります。

BBC放送「人体:成長の秘密」パート2 骨の成長

赤ちゃんは生後1年で体重が3倍、身長は2倍になります。身長が伸びるのは骨が成長するからですが、あの硬い骨がどうやって成長するのでしょうか?

骨は、骨端板が伸びることで成長します。骨端板は、骨端と骨幹の間にある軟骨層です。骨端板は骨端側に伸びる一方、骨幹側の軟骨は次第に骨化して、骨は長く成長します。骨膜の骨化により骨は太くなります。18歳頃になると、骨端線にある軟骨がすべて骨になり、骨端と骨幹が密着します。こうして身長が決まるのです。骨の成長は4つの遺伝子の影響を受けるようですが、二卵性双生児でも生育環境の違いで10cmくらいの身長差が生じることがあるそうです。遺伝がすべてを決めるのではないようです。

骨の成長のメカニズム
脳の下垂体から放出された成長ホルモンが、骨の軟骨細胞の分裂・増殖を促します。成長ホルモンが血流によって肝臓に届くと、肝細胞はソマトメジン-Cあるいはインスリン様成長因子(IGF-1)と呼ばれる物質をつくります。骨に運ばれたソマトメジン-Cが骨端軟骨の細胞を刺激して、急速な分裂を促します。この番組では軟骨細胞が次々と分裂し、骨が成長する様子が見られました。長生きすると驚くべき光景が見られます。

骨は生きている
骨は単なる硬い棒ではありません。骨の内部には細い血管が縦横無尽に張りめぐらされ、骨細胞が活動しています。そのおかげで骨折した骨も元通りに治るのです。神経は骨膜にあり、骨自体にはないようです。骨はよく鉄筋コンクリートに例えられます。コラーゲンが鉄筋、カルシウムがセメントというわけです。コラーゲンを芯にしてカルシウムを沈着させて、新しい骨をつくります。骨には体を支え、運動し、内臓を守る力学的な役割の他に、カルシウムを貯蔵する代謝的な役割があります。カルシウムはあらゆる細胞の機能や神経の伝達などに必要な物質です。

ビフィズス菌は善玉菌

ビフィズス菌はグラム陽性の(偏性)嫌気性桿菌で、グルコースから乳酸と酢酸を産生します。それによってPHが下がるので、有害菌の増殖を抑え、大腸内の環境を改善します。オリゴ糖は分解されて短鎖脂肪酸になり、PHが下がることで、Caが吸収されやすくなり、骨の成長に寄与するとも言われています。他にもビフィズス菌は腸管を刺激し、免疫力を高め、感染防御、発ガン抑制、アレルギー症状の改善など様々な効果があると言われています。老人が大腸がんにかかるのは、悪玉菌であるウエルシュ菌(グラム陽性)が増加し、善玉菌であるビフィズス菌が減少するからなのかもしれません。

乳酸菌とビフィズス菌
乳酸菌はグラム陽性の(通性)嫌気性桿菌で、グルコースから乳酸を産生します。乳酸菌は、酸素があっても大丈夫なので、発酵食品や植物、動物の小腸、海洋など、あらゆる場所に生育しています。ビフィズス菌は、酸素があるとダメなので、主に大腸に存在しています。腸内フローラ(細菌叢)を構成する偏性嫌気性菌にはバクテロイデス、ユーバクテリウム、クロストリジウムなどがあります。腸内の通性嫌気性菌には大腸菌、腸球菌などがあります。グラム陽性菌はペプチドグリカンからなる細胞壁が厚い細菌で、病原菌の多くは細胞壁が薄いクラム陰性細菌です。確かクラム陰性細菌の細胞壁の脂質膜が人体に有害だからです。

ビフィズス菌入りヨ-グルト
父親が発酵学を専攻していたので、子どものころはよく家でヨ-グルトを作っていました。脱脂粉乳水を加熱殺菌して、酸素が少ない状態にして、種の乳酸菌を入れて温度を保って作ります。市販のヨ-グルトにはビフィズス菌入りのものをよく見かけます。乳酸菌が発酵することにより、より嫌気状態に近づき、ビフィズス菌の発酵に適した状態になります。容器は酸素の透過性が少ないものが使用されているのでしょう。よくかき混ぜるとビフィズス菌が酸素に触れて死ぬので、静かに食べた方がいいかもしれません。

ヨーグルトは食後がいい
消化液が多い胃や十二指腸では菌数は1万個/g以下ですが、それより下の小腸になると、1000万個/g以上の菌が見つかります。細菌がPHの低い胃を通過して腸に達するのは不思議ですが、恐らく食事をとると酸性度がpH1からPH5に増加するためだと思います。胃を出るとすぐに粘液で中和されるので、細菌は生き残ります。だからヨーグルトは食後すぐに食べた方がいいのかもしれません。

小腸には空気が存在するので、乳酸菌が多く住み着いていますが、大腸になると殆ど無酸素状態になり、酸素の嫌いな偏性嫌気性菌が1000億個/gもいます。大腸には通性嫌気性菌である乳酸捍菌や大腸菌も1000万個/g程度住んでいるようです。有用菌と有害菌、さらに中間的な菌が微妙な関係を持ちながら、個人に特有の腸内フローラを形成しています。

「人体:成長の秘密」

BBC放送(2017年)の「人体:成長の秘密」の日本語版が再放送されました。人間は、他のどの生物より長い幼児期を経て大人へ成長します。そのメカニズムを最新科学と鮮烈な映像で伝えていました。

赤ちゃんは、母親の胎内で78種の臓器を形成します。誕生後の身長は約45cmで、1週間に1cm成長します。成長の源は母乳です。母乳はすべての栄養を含みます。これは母親にとっても大きな負担です。にもかかわらず、母乳には赤ちゃんが消化できない大量のオリゴ糖が含まれていることが古くから知られていました。オリゴ糖とは数個のブドウ糖が結合した多糖です。これは果物や野菜に含まれています。

オリゴ糖の謎を解明
カルフォルニア大学デ-ビス校食品化学研究所のブル-ス・ジャ-マン教授は、オリゴ糖の謎を解明しました。彼はデビット・シルズ博士に、オリゴ糖を食べて増殖する唯一の細菌を突き止めさせたのです。それは、ビフィド・バクテリウム・インファンテスという名前のビフィズス菌の一種でした。赤ちゃんは、母乳に含まれるオリゴ糖により善玉菌であるバクテリウム・インファンテスを腸内で増殖させて、他の病原菌から腸を守っていたのです。赤ちゃんが生み出される環境は、病原菌でいっぱいであることが分かっているのですね。

正しいジョギング

正しいジョギングは「歩く速さで走ること」です。これがスロ-ジョギングです。初心者は、「歩く速さより速く走らなければならない」という先入観が強いので、長時間走れないし、ジョギング習慣が長続きしません。速く走ると辛くなります。それはエネルギ消費が上がるにつれて乳酸の分解が追い付かずに、乳酸が筋肉に蓄積するからだと言われています。しかし歩く速さで走れば、乳酸が筋肉に蓄積しないので、楽に走れるのです。

ダイエットをしたい人は、1日に30分は走った方がいいでしょう。8km/hでは1分間しか走れない人でも、4km/hなら30分間、楽に走れます。疲れが残らないので、ジョギング習慣が長続きします。もちろん少しずつ速度を上げていけば、楽に速く走れるようにもなります。

重要なのは、遅く歩けばダイエット効果は小さいですが、遅く走ってもダイエット効果は変わらないことです。物理法則を思い出してください。歩行時の消費エネルギは速度に依存しますが、ジョギング走行時の消費エネルギは速度に依存しないからです。速くジョギングすると運動した気になりますが、それは乳酸がより多く蓄積するだけの違いでしかないのです。

歩く速さでジョギングすると、自然と足の指の付け根で着地します。いわゆるフォアフット走法になります。踵から着地すると、ウォ-キングになり、走りにくくなるからです。フォアフット走法の方が足にくる衝撃が小さく、ケガをしにくいと言われています。またふくらはぎの筋肉が鍛えられます。慣れないうちは軽いフォアフットにするといいでしょう。たまには学級の一番足の遅い子どもを一番先頭に走らせて、みんなはその後をゆっくり走るのはどうでしょうか?その方が楽しく走れるし、運動効果はそれで十分あるのです。

物理法則を知っているだけでは、役に立ちません。いろんな出来事に応用できないか考えてみることで、日常生活にとても役に立つことが分かりますね。

ジョギングの物理

ジョギングというのは10km/h以下の速さで走ることです。最近スロ-ジョギングがいいね、なんて言われますが、どうしてでしょうか?ウォーキングの場合は速く歩いた方が、消費効率がよかったのに。それにしても一体どれくらいの速さで走ればいいのでしょうか?それはどうしてでしょうか?走るのは歩くのとどう違うのでしょうか?通常はそういうことは何も知らずに闇雲に走っているのですが、少し冷静になって簡単な物理で推測してみましょう。

一秒間の消費エネルギP[W=J/s]は、
P[W]=W[J/歩]×N[歩/s]
で与えられました。

まず1歩あたりの仕事W[J/歩]を考えてみましょう。踵を地面につけたまま、膝を曲げると、どれだけ重心が下がるでしょうか?私の場合は10cmでした。たぶん皆さんも同じくらいでしょう。走る場合は、膝を曲げた状態から蹴って足を入れ替えます。飛び上がったとき、重心の地面からの高さは10cmくらいです。これは基本的に筋肉もバネと同じだからです。つまり膝を曲げた分だけ上に飛び上がれるのです。だから走行時の重心は20cm上下します。歩行時の重心は10cm上下するので、1歩あたりの走行時の仕事は歩行時の2倍になります。随分簡単ですね。

1秒当たりの歩数N[歩/s]はどうでしょうか?ウォ-キングとジョギングで違いはあるでしょうか?ウォ-キングの場合は、早く歩くと1秒間の歩数は増加します。しかしジョギングでは、速さを変えても、8km/h以下の速さならば一定のリズムで走るので、1秒間の歩数は殆ど変わらないのです。ウォ-キングの場合は、早く歩いても歩幅は増加しませんが、ジョギングでは徐々に速く走ると歩幅が増加します。これは、跳躍中は慣性の法則が働き、速度が低下することなく移動するので、速く走ると歩幅が増加するのです。

歩行時の1歩あたりの仕事をWoとすると、走行時の消費エネルギは
Pr[W]=2×Wo[J/歩]×No[歩/s]
となり、速度に依存しません。一方、歩行時の消費エネルギは
Pw[W]=mgV×tan(φ/2)
であり、速度に依存します。私の場合歩行速度Vo=6km/hを超えると、歩くより走った方が楽になります。歩行速度が6km/hを超えると、歩行時の消費エネルギは、摩擦により徐々にVの2乗に比例するようになり、歩くのがつらくなる影響もあります。結局、速度Vo=6km/hで、Pr[W]=Pw[W]つまり
2WoNo=mgVo・tan(φ/2)
が成り立っているのです。8km/hを超えると徐々に走るピッチNoが増加します。跳躍の高さも少しあがります。

がんの免疫療法に道

京都大学の本庶佑(ほんじょ たすく)特別教授(76歳)が、免疫系のT細胞にあるPD1(=Programmed Death1)タンパク質の機能を解明し、悪性腫瘍の免疫療法に道を開いた功績が評価され、ノーベル医学生理学賞を受賞しました。

PD1は1992年に本庶研の石田靖雄氏によって発見され、2002年に本庶氏らがPD1の機能を解明しました。PD1は増殖したT細胞が人体の細胞を攻撃しないように、T細胞の活動を停止するスイッチのひとつでした。実際に遺伝子改変でつくったPD1のないラットは、T細胞の攻撃により心臓に炎症を起こし、心臓が肥大してしまいます。悪性腫瘍は、T細胞の停止スイッチを押して、T細胞の攻撃から逃れていたのです。発見から機能解明まで20年もかかりました。

2014年に本庶氏らはPD1の阻害剤であるニボルマブ(Nivolumab)を開発しました。ニボルマブがPD1と結合することで、悪性腫瘍がT細胞の停止スイッチを押せなくなり、T細胞の攻撃に曝されて縮小します。ニボルマブの商品名はオプジ-ボです。オプジ-ボは皮膚がんに対して長期の抑制効果が認められ、認可されました。

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医療ミスを防ぐために患者の立場からできること

昨年5月に、米国で医療ミスが心疾患とがんに続く3大死因に浮上する可能性があるという研究結果が英医学誌BMJの最新号に発表されました。つまり毎年、25万人米国人が患者の取り違えや投薬ミスといった医療過誤で死亡していたことになります。人口換算すると、日本でも10万件の医療過誤があってもおかしくないことになります。

日本では、昨年3月に、日本医療機能評価機構が、2016年に全国の医療機関から報告があった医療事故は前年比228件増の3882件で、集計を始めた2005年以降、最多を更新したと発表しています。上記の推測が正しければ、医療事故の4%しか公開されていないのかもしれません。

医療ミスは病院内だけでなく、薬局や患者の自宅でも起こります。ミスには、処方薬、手術、診断、設備、検査報告が含まれます。医療ミスを防ぐために、患者の立場からできることを調べて、整理してみました。

まず基本的に
1. 患者自身が治療に参加する自覚を持とう。
2. 自身の状態や治療法について医師によく尋ね、メモしよう。
3. 医者まかせにしないで、自分でも本やWEBサイトでよく調べよう。

検査
1. なぜその検査が必要なのかを遠慮なく聞こう。
2. 検査を受けたら、必ず結果を聞こう。
3. 大きな手術の際には、必ず他院でも検査を受けよう。

処方薬
1. 患者が摂取しているすべてのものを医者に報告しよう。
2. 今までの薬に対するアレルギーや副作用について報告しよう。
3. 薬局で薬をもらう時には、それが自分の医者が処方した薬かどうか尋ねよう。
4. 薬を処方された時と受け取った時には、薬に関して十分に説明してもらおう。
5. 薬のラベルに疑問があったら質問しよう。
6. 薬の副作用について書かれた文書をもらおう。

入院
1. 家族や友達に一緒にいてくれるように、或いは貴方の代理を依頼しておこう。
2. 本人とすべての医者が手術の内容と実施に同意していることを明確にしよう。
3. 退院時には、家での療養方法を医師に説明してもらおう。

手術
1. 誰があなたの主治医なのかを明確にしておこう。
2. 検査データをもらって他院の専門医にも相談して、手術の要否を確認しよう。
3. 自身の受けようとする処置や手術を、より多くこなしている病院を選ぼう。

<医療事故があった場合>
1. 医療専門の弁護士に相談する。
2. 病院所有の全資料(術中動画、カルテ、MRI画像、検査結果)を入手する。
3. 専門医に調査をお願いして、鑑定意見書を書いてもらう。
4. 専門家の目で見てミスがあったかどうか、ご意見を伺う。
5. ミスがあれば、示談交渉を行う。植物状態のときは裁判を行う。