<ゼ-タ関数の関数等式の証明>
関数等式には、非対称型のオイラ-による関数等式
ζ(1-s)=cos(sπ/2) Γ(s)ζ(s)/2s-1πs ・・・・(1)
と対称型のリ-マンによる関数等式
π-s/2Γ(s/2)ζ(s)=π-(1-s)/2Γ((1-s)/2)ζ(1-s) ・・・・(2)
があります。関数等式はゼ-タ関数の定義域を拡大する場面でよく用いられす。
ここではオイラ-による関数等式を導出し、その後
ガンマ関数の相反公式
Γ(s)Γ(1-s)=π/sin(πs)
においてs→(1-s)/2に置き換えた
Γ((1-s)/2)Γ((1+s)/2)=π/cos(πs/2) ・・・(5)
の式とルジャンドルの2倍公式
Γ(2s)=22s-1/π1/2・Γ(s) Γ(s+1/2)
においてs→s/2に置き換えた
Γ(s)=2s-1/π1/2・Γ(s/2) Γ((s+1)/2) ・・・(6)
式を用いて、リ-マンによる関数等式を導出します。
その前に、ゼ-タ関数の積分表示を求めましょう。
<ゼ-タ関数の積分表示>
ゼ-タ関数:ζ(s)=Σn=1-∞ 1/ns
ガンマ関数:Γ(s)=∫[0、∞] xs-1e-xdx
のとき、s>1に対して
∫[0、∞] xs-1/(ex-1)dx=ζ(s) Γ(s)
が成り立つ。
[証明]
1/(ex-1)=e-x/(1-e-x)=Σn=1-∞ (e-x)n =Σn=1-∞ e-n x
を代入すると、
∫[0、∞] xs-1/(ex+1)dx=∫[0、∞] xs-1Σn=1-∞ e-n x dx
=Σn=1-∞∫[0、∞] xs-1 e-n x dx
ここで、y=nx と変数変換すると
∫[0、∞] xs-1/(ex+1)dx =Σn=1-∞∫[0、∞] (y/n)s-1 e-y dy/n
=Σn=1-∞1/ns∫[0、∞] ys-1 e-y dy
=ζ(s)Γ(s)
が示されました。
<オイラ-による関数等式の導出>
複素積分
I(s)=∫C zs-1/(ez-1)dz
を2つの積分経路で求めて、等値することで(1)式のオイラ-による関数等式を導出します。
1)ハンケル積分経路による積分計算
Cをハンケル積分経路とすると、全複素平面で
∫C zs-1/(ez-1)dz=(e2πsi-1) ζ(s)Γ(s) ・・・・(3)
が成立することを示します。
Cは以下の3つの経路
C1:z=x+iε x=∞→r
C2:z=reiθ θ=0→2π
C3:z=x-iε x=r→∞
から成ります。
I(s)=∫C zs-1/(ez-1)dz
=∫C1 zs-1/(ez-1)dz+∫C2 zs-1/(ez-1)dz+∫C3 zs-1/(ez-1)dz
である。まず経路1での積分はε→0で
I1(s)=∫C1 zs-1/(ez-1)dz=-∫[0、∞] xs-1/(ex-1)dx
となる。経路2の積分はr→0で
|I2(s)|=|∫C2 zs-1/(ez-1)dz|≦∫[0,2π] rs/[(er-1)/r]dθ≦rs・2π→ 0 as r→0 s>0
ゼロになる。経路3では、原点の周りの1回転して位相2πが付加されるので
z s-1=(rei2π) s-1=r s-1ei2πs
より、ei2πsが残る。rをxに置き換えて0から∞まで積分すると、
I3(s)=∫C3 zs-1/(ez-1)dz=ei2πs∫[0、∞] xs-1/(ex-1)dx
従って、ε→0、r→0の極限では、ゼ-タ関数の積分表示を用いて
I(s)=-∫[0、∞] xs-1/(ex-1)dx+ 0 +ei2πs∫[0、∞] xs-1/(ex-1)dx
=(ei2πs-1) ∫[0、∞] xs-1/(ex-1)dx
=(ei2πs-1) ζ(s)Γ(s)
が示されました。
ここでs=1のとき
ei2πs-1=0
なので、s=1は(ei2πs-1)の1位の零点です。ζ(s)=1/(s-1)+F(s)と書け、ζ(s)はs=1で1位の極を持ちます。従って、(ei2πs-1)ζ(s)はs=1で正則になっています。上式は全ての複素数sで成り立っています。
2)D積分経路による積分計算
下図のように積分経路Dを取ります。全複素平面で
∫C zs-1/(ez-1)dz=-∫D zs-1/(ez-1)dz=(2π)s(e3πsi/2-eπsi/2)ζ(1-s) ・・(4)
が成立することを示します。
経路Dは
D=C1+C2+C3+CR
から成ります。経路Dの4つの経路は
C1:z=x-iε x=∞→r
C2:z=reiθ θ=2π→0
C3:z=x+iε x=∞→r
CR:z=Reiθ θ=0→2π
です。分母にezがあるのでCRに関する積分はR→∞でゼロになります。ところで
C1+C2+C3の経路での積分は先ほどのハンケル積分経路と逆向きなので、
∫C zs-1/(ez-1)dz=-∫D zs-1/(ez-1)dz
となります。被積分関数の分母はz=±2nπiでゼロになります。経路Dは、被積分関数の極、z=±2πi、±4πi、±6πi、・・±2nπi(<Ri)を含んでいます。従って経路Cでの積分は、経路D内の積分の留数の和を求めて、全体にマイナス符号をつければ得られます。
z=2nπiでの留数は、n>0のとき偏角はπ/2なので(i=eiπ/2)
I+=lim [z→2nπi] (z-2nπi)・ zs-1/(ez-1)
=lim [z→2nπi]・ zs-1/(ez-e2nπi )/
=lim [z→2nπi]・ z/(ez)’
=(2nπi) s-1
=(2nπ) s-1(eiπ/2) s-1
=-i・(2nπ) s-1・eiπs/2
となります。
z=-2nπiでの留数は、偏角は3π/2なので、(-i=ei3π/2)
I-=(-2nπi) s-1
=(2nπ) s-1(ei3π/2) s-1
=i・(2nπ) s-1・ei3πs/2
となります。R→∞のとき、n=1~∞の全ての留数の和を求めると、
∫D zs-1/(ez-1)dz=Σn 2πi・(I++I-)
=Σn 2πi[-i・(2nπ) s-1・(eiπs/2-ei3πs/2)]
=(2π) s (eiπs/2-ei3πs/2)・Σn 1/n 1-s
=(2π) s (eiπs/2-ei3πs/2)・ζ(1-s)
従って、
∫C zs-1/(ez-1)dz=(2π) s (ei3πs/2-eiπs/2)ζ(1-s)
が示されました。
<オイラ-による関数等式の導出>
2つの積分経路で求めた
I(s)=∫C zs-1/(ez-1)dz
の値を等値することで、オイラ-による関数等式(非対称型)
ζ(1-s)=cos(sπ/2) Γ(s)ζ(s)/2s-1πs ・・・・(1)
を導出します。
2つの積分経路で求めた値は
∫C zs-1/(ez-1)dz=(e2πsi-1) ζ(s)Γ(s) ・・・(3)
∫C zs-1/(ez-1)dz=-∫D zs-1/(ez-1)dz=(2π)s(e3πsi/2-eπsi/2) ζ(1-s) ・・(4)
でした。よって
(e2πsi-1) ζ(s)Γ(s)=(2π)s(e3πsi/2-eπsi/2) ζ(1-s)
が成り立ちます。
(e2πsi-1)/ (e3πsi/2-eπsi/2)=eπsi(eπsi-e-πsi) / eπsi (eπsi/2-e-πsi/2)
=(eπsi/2+e-πsi/2) (eπsi/2-e-πsi/2) / (eπsi/2-e-πsi/2)
=2cos(πs/2)
ですから、
2cos(πs/2)ζ(s)Γ(s)=(2π)sζ(1-s)
よって
ζ(1-s)=2cos(πs/2)Γ(s)/ (2π)s・ζ(s)
=cos(πs/2)Γ(s)/ 2s-1πs・ζ(s)
が得られました。
<2つの関数等式>
オイラ-による関数等式(非対称型)
ζ(1-s)=cos(sπ/2) Γ(s)ζ(s)/2s-1πs ・・・・(1)
から、リ-マンによる関数等式(対称型)
π-s/2Γ(s/2)ζ(s)=π-(1-s)/2Γ((1-s)/2)ζ(1-s) ・・・・(2)
を導出します。
(2)式より
ζ(1-s)=π-s/2Γ(s/2)ζ(s) π(1-s)/2 /Γ((1-s)/2)
=π-s+1/2Γ(s/2) /Γ((1-s)/2)・ζ(s)
より、
cos(sπ/2) Γ(s)/2s-1πs=π-s+1/2Γ(s/2) /Γ((1-s)/2)
すなわち
Γ((1-s)/2) Γ(s) cos(sπ/2)=2s-1π1/2Γ(s/2)
が成り立つことを示します。
ガンマ関数の相反公式
Γ(s)Γ(1-s)=π/sin(πs)
でs→(1-s)/2に置き換えると、1-(1-s)/2=(1+s)/2より
Γ((1-s)/2)Γ((1+s)/2)=π/sin(π(1-s)/2)
Γ((1-s)/2)Γ((1+s)/2)=π/cos(πs/2) ・・・(5)
が成り立ちます。
また、ルジャンドルの2倍公式
Γ(2s)=22s-1/π1/2・Γ(s) Γ(s+1/2)
でs→s/2に置き換えると、
Γ(s)=2s-1/π1/2・Γ(s/2) Γ((s+1)/2) ・・・(6)
が成り立ちます。
(5)、(6)式の辺々を掛け、Γ((s+1)/2)を消去すると
Γ((1-s)/2)・Γ(s)=π/cos(πs/2)・2s-1/π1/2・Γ(s/2)
すなわち
Γ((1-s)/2) Γ(s) cos(sπ/2)=2s-1π1/2Γ(s/2)
が成り立つことが示されました。関数等式はゼ-タ関数の定義域を拡大する場面でよく用いられす。