ζ’(0)の計算方法

<ζ’(0)の計算>

ここでは

 ζ’(0)=-1/2・log(2π)

を示します。

複素数sに対して、イ-タ関数

 η(s)=1-1/2s+1/3s-1/4s+・・・

はRe(s)>0で収束し、この範囲で正則です。

イ-タ関数は

 |η(s)|=|1-1/2s+1/3s-1/4s+・・|≦1+1/2s+1/3s+1/4s+・・=ζ(s)

よりRe(s)>1で収束することは明らかです。

イ-タ関数とゼ-タ関数には

 η(s)=(1-21-s)ζ(s)

なる関係がありました。

 Lim[s→1] η(s)=Lim[s→1] (1-21-s)/(s-1)・(s-1)ζ(s)

     =Lim[t→0] (20-2-t)/t・Lim[s→1] (s-1)ζ(s)

     =-Lim[t→0] (20-2-t)/(0-t)・1

     =Lim[t→0] (-2-t)’

     =log2

ここで

 (-2-t)’= (-e-tlog2)’ = log2 (e-tlog2)=log2・2-t

を用いました。つまりs=1はη(s)の除去可能な特異点であり、η(s)はs=1で正則です。

ここでイ-タ関数の部分和

 ηN(s)=Σn=1~N (-1)n-1/ns

を考えると 

 η2η4η6<・・<η2Nη2N+2η2N+1η2N-1<・・<η5η3η1

なので、Re(s)>0ならば

 Lim[N→∞]2N-η2N-1)=-Lim[N→∞]1/(2N)S=0

だから

 Lim[N→∞] η2N=Lim[N→∞]η2N-1=η(s)

となります。イ-タ関数η(s)はRe(s)>0で収束し、この範囲で正則です。

先ほどの関係式

 η(s)=(1-21-s)ζ(s)

の両辺を微分すると

 η’(s)=log2・21-sζ(s)+(1-21-s)ζ’(s)

となります。s=0を代入すると

η’(0)=log2・21-0ζ(0)+(1-21-0)

   =log2・2・(-1/2)-ζ’(0)

   =-log2-ζ’(0)

が得られます。η’(0)を求めるために、η(s)を変形すると

η(s)=1-1/2s+1/3s-1/4s+・・・

  =1/2[1+1-1/2s-1/2s+1/3s+1/3s-1/4s-1/4s+・・・]

  =1/2+1/2 [(1-1/2s)-(1/2s-1/3s)+(1/3s-1/4s)-(1/4s-1/5s)+・・・]

η(s)は全複素平面で正則なため、両辺を微分すると

 η’(s)=1/2 [(0+log2/2s)-(-log2/2s+log 3/3s)+(-log 3/3s+log4/4s)-(-log4/4s+log5/5s)+・・・]

となります。この右辺はRe(s)>0の範囲で広義一様収束していることから、s→+0の極限をとると、

 η’(0)=1/2 [log2-(-log2+log 3)+(-log 3+log4)-(-log4+log5)+・・・]

   =1/2・log(2/1・2/3・4/3・4/5・・・)

   =1/2・log(π/2)

となります。ここでウォリスの公式を用いました。従って

   ζ’(0)=-η’(0) -log2

      =-1/2・log(π/2) -1/2・log4

      =-1/2・log(2π)

が得られます。

  η(0)=(1-21-0)ζ(0)=-1(-1/2)=1/2

ですから、まとめると

 ζ(0)=-1/2、ζ’(0)=-1/2・log(2π)

 η(0)=+1/2、η’(0)=+1/2・log(π/2)

が成り立ちます。

ガンマ関数の解析接続

<ガンマ関数の解析接続>

Γ関数は

 Γ(s)=∫[0、∞] ts-1e-tdt

で定義されています。sを複素数に拡張した場合に、区間[0、∞]での積分は収束するか調べて見ましょう。

s=x+iyとして、0<x0<x1なる任意の実数を用いて、0<x0<x<x1とすれば、

   Γ(s)=∫[0、1] ts-1e-tdt+∫[1、∞] ts-1e-tdt

 |Γ(s)|≦ ∫[0、1] |ts-1|e-tdt + ∫[1、∞] |ts-1|e-tdt

であり、

 (1/2)x<(1/2)x0 、2x<(2)x1

に注意すると、

[0、1] |ts-1|e-tdt=∫[0、1] t x-1e-tdt≦∫[0、1] t x0-1e-tdt≦∫[0、∞] t x0-1e-tdt=Γ(x0)

[1、∞] |ts-1|e-tdt=∫[1、∞] t x-1e-tdt≦∫[1、∞] t x1-1e-tdt≦∫[0、∞] t x1-1e-tdt=Γ(x1)

ですから、

|Γ(s)|≦Γ(x0)+Γ(x1)

が成り立ちます。従って0<x0<Re(s)<x1において、ε→0のとき

 Γε(s)=∫、1/ε] ts-1e-tdt → Γ(s)=∫[0、∞] ts-1e-tdt 

となり、Γε(s)はΓ(s)に一様収束します。Γε(s)は有限区間での積分だから、sの正則関数です。

一様収束極限であるΓ(s)もx0<Re(s)<x1における正則関数です。x0、x1は任意だから、

Γ(s)はRe(s)>0におけるsの正則関数になっています。nを任意の自然数とすれば、

 Γ(s)=Γ(s+n)/s(s+1) (s+2)・・ (s+n-2) (s+n-1)

が成り立ちます。Γ(s)はRe(s)+n>0における有理型関数で、s=0,-1,-2,・・・-n+1でを1位の極とする以外は、正則になっています。nは任意なので、Γ(s)は複素数全体で正則な有理型関数で、s=0,-1,-2,・・・で1位の極をもっています。Γ(1-s)は、s=0,1,2,・・・で1位の極をもっています。さらに整数でない実数sに対して

 Γ(s)Γ(1-s)=π/sin(πs)

が成り立ちます。複素関数論の一致の定理より、整数でない複素数に関して、この等式は成り立っています。この等式から、ガンマ関するΓ(s)は零点を持たない有理型関数であることが分かります。よって1/Γ(s)は複素数全体で正則な関数になっています。

リ-マン関数等式からオイラ-関数等式の導出

<リ-マン関数等式からオイラ-関数等式の導出>

関数等式には、非対称型のオイラ-による関数等式

 ζ(1-s)=cos(sπ/2) Γ(s)ζ(s)/2s-1πs      ・・・・(1)

と対称型のリ-マンによる関数等式

 πs/2Γ(s/2)ζ(s)=π(1-s)/2Γ((1-s)/2)ζ(1-s) ・・・・(2)

がありました。これまでオイラ-による関数等式からリ-マンによる関数等式を導出しました。今度は逆にリ-マンによる関数等式からオイラ-による関数等式を導出します。

(2)の両辺に(-s)Γ(-s/2)を掛けると、

 πs/2(-s)Γ(-s/2)Γ(s/2)ζ(s)=π(1-s)/2(-s)Γ(-s/2)Γ((1-s)/2)ζ(1-s)

左辺の係数は

 πs/2 2(-s/2)Γ(-s/2)Γ(s/2)=2πs/2Γ(1-s/2)Γ(s/2)=πs/2 2π/ sin(πs/2)

となります。ここで、ガンマ関数の相反公式:Γ(s/2)Γ(1-s/2)=π/sin(πs/2)を用いました。ルジャンドルの2倍公式

 Γ(2s)=22s-11/2・Γ(s) Γ(s+1/2)

でs→-s/2に置き換えた

 Γ(-s)2s+1π1/2=Γ(-s/2) Γ((1-s)/2)

を用いると、右辺の係数は

 π(1-s)/2 (-s)Γ(-s/2)Γ((1-s)/2)=π(1-s)/2 (-s)Γ(-s) 2s+1π1/2

  =2s+1πs/2Γ(1-s)

となります。従って、左辺=右辺は

 πs/22π/ sin(πs/2)ζ(s)=2s+1πs/2Γ(1-s)ζ(1-s)

となります。

 ζ(s)=2sπs-1Γ(1-s)ζ(1-s) sin(πs/2) ・・・・(*)

が得られます。s→1-sに置き換えると

 sin(π(1-s) /2)=sin(π/2)cos(-πs/2)=cos(πs/2)

より

 ζ(1-s)=Γ(s)ζ(s) cos(πs/2)/2s-1πs ・・・・(1)

が得られます。

<ゼ-タ関数の自明な零点はs=-2k>

 ζ(s)=2sπs-1Γ(1-s)ζ(1-s) sin(πs/2) ・・・・(*)

ζ(1-s)は1-s>1、すなわち、s<0で定義されています。

 sin(πs/2)=0 → s=-2、-4、-6、・・-2k、・・・

なる負の偶数では

 ζ(-2k)=0 for k=1、2、3・・・

が成り立ちます。これをζ(s) の自明な零点と言います。

また、この公式からζ(0)の値が得られます。

lim[s→1] (s-1)ζ(s)=1 → lim[s→0] ((1-s)-1)ζ(1-s)=1

に注意すると

ζ(0)=lim[s→0] 2sπs-1Γ(1-s)ζ(1-s) sin(πs/2)

   =-1/2・Γ(1) lim[s→0] sin(πs/2)/(πs/2)・(1-s-1)ζ(1-s)

   =-1/2

となります。