[12]素数定理の証明手順のまとめ

[12]素数定理の証明手順のまとめ

[0]関数の定義 P;素数の集合

・リーマンのゼ-タ-関数:ζ(s)=Σ[n=1~∞] 1/ns、Re(s)>1

 (nに関する無限級数)

・ファイ関数:Φ(s)=Σ[p∊P] log(p)/ps、Re(s)>1

 (すべての素数に関する和をとる)

・チェビシェフのシータ関数:θ(x)=Σ[p≦x] log(p)

  (X以下の素数pに関する和をとる)

・素数の個数関数:π(x)=Σ[p≦x]1

[Ⅰ]命題1 Re(s)>1、ζ(s)=Π[p∊P] [1/(1-1/ps)] オイラ-積表示の存在

(1)Re(s)>1でζ(s)のディリクレ級数表示は収束する。

(2)ζ(s)のディリクレ級数表示はオイラ-積表示に一致する。

(3)Re(s)>1でζ(s)のオイラ-積表示は収束する。

(4)ζ(s)は、s>0(s≠1)に拡張することができる。

[Ⅱ] 命題2 ζ(s)-1/(s-1)はRe(s)>0で正則である。

(1)∫[1,∞]1/xs dx=1/(s‐1) for s>1

(2)s∫[n,x] 1/ts+1 dt=1/ns-1/xs

(3)|ts+1|=tRe(s)+1 

(4)ζ(s)-1/(s-1)≦|s|ζ( Re(s)+1)  for s>1 

[Ⅲ] 命題3 Φ(s)-1/(s-1)はRe(s)≧1で正則である。

(1)ζ’(s)/ζ(s) +1/(s-1) はRe(s)≧1で正則である。

(2)Φ(s)‐1/(s‐1)=‐[ζ′(s)/ζ(s)+1/(s‐1)]-Σ[p] log(p)/ps(ps‐1)  を示す。

(3)右辺2項目Σ[p] log(p)/ps(ps‐1)はRe(s)>1/2で正則である。

(4)Re(s)=1でζ(s)=0なる零点が存在しない。

[Ⅳ] 命題4 θ(x)=O(x) i.e. ∃k>0 |θ(x)|≦kx

(1)2nlog2≧θ(2n)-θ(n)

(2)2m+1・log2>θ(2m)

  (3) θ(x) ≦4log2・x

[Ⅴ] 命題5 ∫[1,∞] [θ(x)-x]/x2 dxは収束する。

・[Ⅲ] 、[Ⅳ]、[定理A]を用いて証明する。

(1)Φ(s)=s∫[1,∞] θ(x)/xs+1 dx、Re(s)>1

(2)f(t)=θ(et)e-t-1 (t≧0)は有界、g(z)=∫[0,∞] f(t)exp[-zt] dtが存在する

(3)g(z)=Φ(z+1)/(z+1)-1/z  Re(z)>0

(4)g(z)はRe(z)≧0で正則

(5)g(0)=∫[0,∞] f(t) dt=∫[1,∞] [θ(x)-x]/x2 dx が収束する。

[Ⅵ] 命題6 θ(x)~x i.e. lim[x→∞] θ(x)/x=1

・任意のε>0、∃x>0 1-ε<θ(x)/x<1+εを示す。

・背理法を用いて矛盾を示す。任意の正数xに対して、∃ε>0

(1)1+ε≦θ(x)/x は矛盾を生じるので、θ(x)/x<1+ε by [Ⅴ]

(2)θ(x)/x≦1-ε は矛盾を生じるので、1-ε<θ(x)/x  by [Ⅴ]

[Ⅶ] 素数定理 Lim [x→∞] π(x) logx/x=1

(1)1←θ(x)/x≦π(x)log(x)/x by [Ⅵ]

(2)π(x)log(x)/x≦1/(1-ε)・θ(x)/x+log(x)/xε→1/(1-ε) →1

[定理A] Newmanの解析定理

t≧0で有界かつ可積分な関数f(t)に対して、

g(z)=∫[0,∞] f(t)exp[-zt] dt Re(z)>0

がRe(z)≧0で正則であれば、

 g(0)=∫[0,∞] f(t) dt

が存在する。つまり正則関数

 gT(z)=∫[0,T] f(t)exp[-zt] dt

に対して、

 lim[T→∞]gT(0)=g(0)

が存在する。

[定理A] Newmanの解析定理の証明手順

(1)g(0)-gT(0)=1/2πi・∫C [g(z)-gT(z)]ezT(1+z2/R2)/z dz

(2)A=|g(0)-gT(0)|=|1/2πi・∫C [g(z)-gT(z)]ezT(1+z2/R2)/z dz|

   ≦A++A≦A++A-1+A-2 → 2B/R(T→∞)→ 0 (R→∞)

(3)A+≦B/R、Re(z)>0 

(4)A-1=|1/2πi・∫CgT(z)ezT(1+z2/R2)/z dz|≦B/R 

(5)A-2=|1/2πi・∫Cg(z)ezT(1+z2/R2)/z dz|→ 0

[11][Ⅷ] Newmanの解析定理の証明

[Ⅷ] Newmanの解析定理の証明

(1)g(0)-gT(0)=1/2πi・∫C [g(z)-gT(z)]ezT(1+z2/R2)/z dz を示します。

コ-シ-の積分公式より、領域Dで正則な複素関数f(z)のD内の閉曲線C上の積分に関して、

閉曲線Cで囲まれた領域の点αにおいて

  • f(α)=1/2πi・∫C f(z)/(z-α) dz

が成り立つ。閉曲線Cの半径R>0として、

  • f(z)=[g(z)-gT(z)]ezT(1+z2/R2)

を考えると、f(z)は以下で定義される領域Dで正則であることが分かります。

任意の閉曲線C上のgT(z)の積分は、∫C e-ztdz=0より

  • C gT(z)dz=∫C (∫[0,T]f(t)e-ztdt)dz=∫[0,T] f(t) (∫C e-ztdz)dt=0

です。モレラの定理から、gT(z)は任意の閉曲線C内で正則です。解析定理の前提より、g(z)はRe(z)≧0で正則なので、Re(z)=0上の任意の点z=it(-∞≦t≦∞)でテ-ラ-展開でき、その収束円内のzでも正則です。従って、十分大きなR>0と十分小さなδ>0において、「|z|≦R かつ-δ≦Re(z)」となる領域Dの境界線を閉曲線Cとすると、閉曲線Cの内部領域Dでg(z)とgT(z)は正則です。ezT(1+z2/R2)も正則なので、f(z)は正則関数となり、

コ-シ-の積分公式を適用できます。いまz=0で

  • f(0)=g(0)-gT(0)

です。α=0として、コ-シ-の積分公式を適用すると

  • f(0)=g(0)-gT(0)=1/2πi・∫C [g(z)-gT(z)]ezT(1+z2/R2)/z dz

が成り立ちます。

(2)A=|g(0)-gT(0)|=|1/2πi・∫C [g(z)-gT(z)]ezT(1+z2/R2)/z dz|

   ≦A++A≦A++A-1+A-2 → 2B/R(T→∞)→ 0 (R→∞)

を示します。そのために、積分路を

  • C=C+ (Re(z)>0)+C(Re(z)<0)

に分け、

 A+=|1/2πi・∫C+ [g(z)-gT(z)]ezT(1+z2/R2)/z dz|

 A=|1/2πi・∫C[g(z)-gT(z)] ezT(1+z2/R2)/z dz|≦ A-1+A-2

とします。ここで

 A-1=|1/2πi・∫C-’gT(z)ezT(1+z2/R2)/z dz|

 A-2=|1/2πi・∫Cg(z)ezT(1+z2/R2)/z dz|

とします。これから

 A≦A++A≦A++A-1+A-2 → 2B/R(T→∞)→ 0 (R→∞)

を示します。

 

 

 

 

 

 

 

(3)A+≦B/R、Re(z)>0 を示します。

z=Reiθとおいて積分変数をzからθに変換すると、dz=i Reiθ

  A+≦1/2π|∫C|g(z)-gT(z)|eRe(z)T [1+z2/R2]/z dz|

非積分関数

[1+z2/R2]/z=[1+R2e2iθ/R2]/Reiθ=2[R(eiθ+e-iθ)/2]/R2=2Re(z) /R2

より

  A+≦1/2π∫C|g(z)-gT(z)|eRe(z)T 2Re(z) /R2|dz|

いま、|f(t)|≦B(有界)なので

|g(z)-gT(z)|=|∫[T,∞] f(t)exp[-zt] dt|≦B|∫[T,∞] exp[-Re(z)t] dt|

      =-B/ Re(z)[ exp[-Re(z)t]]t=T,=B/ Re(z)・e-Re(z)T

です。従って、

A+≦1/2π∫CB/ Re(z)・e-Re(z)T・eRe(z)T 2Re(z) /R2|dz|=(B/πR2) ∫C|dz|

となります。∫C|dz|=πRより

  A+≦B/R

が得られます。

(4)A-1=|1/2πi・∫CgT(z)ezT(1+z2/R2)/z dz|≦B/R を示します。

Re(z)<0より、C- ’の積分経路を用いる。|Re(z)|=-Re(z)に注意して

 |gT(z)|=|∫[0,T] f(t)e-zt dt|≦B∫[0,T] e-Re(z)t dt=B/(-Re(z))[e-Re(z)t]t=0,T

     =B/(-Re(z))[e-Re(z)T-1]≦B/(-Re(z))e-Re(z)T

 A-1=|1/2πi・∫C-’gT(z)ezT(1+z2/R2)/z dz|

   ≦1/2π・∫C-’|gT(z)|eRe(z)T|(1+z2/R2)/z||dz|

   ≦1/2π・[B/(-Re(z))e-Re(z)T] eRe(z)T[2Re(z) /R2]・∫C-’|dz|

    =1/2π・B/(-Re(z)) [2|Re(z)|/R2]・πR=B/R

(5)A-2=|1/2πi・∫Cg(z)ezT(1+z2/R2)/z dz|→ 0 as T→∞ を示す。

有界閉集合C-上のTを含まない複素関数の絶対値には最大値があり、

 |g(z) (1+z2/R2)/z|≦M

なる正数Mが存在します。

  A-2≦M/2π・|∫CezT dz|≦M/2π・∫CeRe(z)T|dz|

となる。C-上の積分路を弧AB上と直線BC上の2つに分けて、実行します。

1)弧AB上:z=R eiθ (π/2≦θ≦λ)、cos(λ)=-δ/R |dz|=Rdθ

2)直線BC上:z=-δ+it (0≦t≦√(R2-δ2))  |dz|=dt

実軸に対する対称性から、積分経路をIm(z)≧0に限定して、積分値を2倍します。

A-2≦2・M/2π・[∫AB eRe(z)T|dz|+∫BC eRe(z)T|dz|]

  =M/π・[∫[(π/2θ≦λ] eRcos(θ)T Rdθ -∫[0t√(R2δ2)] e-δT dt ]

t=cos(θ)とおくと、dt=-sin(θ)dθ=-√(1-t2) dθより、t:0→cos(λ)=-δ/R

 =M/π・[-∫[(0tδ/R] eRTt R/√(1-t2) dt -√(R2-δ2)・e-δT ]

 ≦M/π・[-∫[(0tδ/R] eRTt R/√(1-(δ/R)2) dt -√(R2-δ2)・e-δT ]

  =M/π・[-R2/√(R2-δ2)・∫[(0tδ/R] eRTt dt -√(R2-δ2)・e-δT ]

ここで

 ∫[(0tδ/R] eRTt dt=1/RT・[eRTt]t=0, δ/R=1/RT・[e-Tδ-1]

ですから、δ>0より、

A-2≦M/π・[R2/√(R2-δ2)・1/RT・[1-e-Tδ]-√(R2-δ2)・e-δT ] → 0 as T→∞

が得られます。

(3)~(5)より、

  |g(0)-gT(0)|=A≦A++A≦2B/R → 0  as  T→∞, R→∞

が成り立ちます。よって

 lim[T→∞]gT(0)=g(0)

が存在することが証明されました。

 

<コ-シ-の積分公式>

領域Dで正則な複素関数f(z)のD内の閉曲線C上の積分に関して、Cで囲まれた領域の点z=αにおいて

  • f(α)=1/2πi・∫C f(z)/(z-α) dz

が成り立つ。Cの向きは反時計回りを正とする。

証明)z=αの近傍で、正則関数f(z)を

  • f(z)=f(α+z-α)=f(α)+f’(α) (z-α)+1/2・f’’(α) (z-α)2+・・・

と展開すると、正則関数1,z、z2、z3、・・は閉曲線C内に極をもたないので、コーシ-の積分定理よりC上の積分でゼロになります。

C f(z)/(z-α) dz=∫C[f(α)+f’(α) (z-α)+1/2・f’’(α) (z-α)2+・]/(z-α) dz

 =f(α)・∫C 1/(z-α) dz +f’(α)∫C dz+1/2・f’’(α) ∫C (z-α) dz+・・・

 =f(α)・∫C 1/(z-α) dz

となります。z=α+eとおくとdz=iedθ、θ=0~2πより

 ∫C 1/(z-α) dz=∫[0≦θ≦2π]i e/edθ=2πi

従って

 ∫C f(z)/(z-α) dz=2πi f(α)

となります。

 

<モレラの定理>~コ-シ-の積分定理の逆

閉曲線C上の連続関数f(z)の積分に関して、∫C f(z)dz=0 ならば、f(z)は閉曲線C内で正則である。

証明)z0からzまでの積分経路をCとします。

 F(z)=∫C=[z0,z] f(z)dz

zからz+Δzまでの経路Lを、

  • ξ(t)=z+Δz・t (0≦t≦1)

で定義します。

  • dz=ξ’(t)dt=Δzdt

が成り立ち、

 F(z+Δz)=∫C+L f(z)dz

と書けます。以下にF(z)の導関数F’(z)が存在し、F’(z)=f(z)となることを示します。

  |[F(z+Δz)-F(z)]/ Δz-f(z)|=|[∫C+L f(z)dz-∫C f(z)dz] /Δz-f(z)|

 =|(1/Δz)∫[z,z+Δz] f(z)dz-f(z)|=|(1/Δz)∫[0,1] f(ξ(t)) Δzdt-f(z)|

 =|∫[0,1] f(ξ(t)) dt-f(z)|

 ≦∫[0,1]|f(ξ(t))-f(z)|dt ≦∫[0,1]εdt=ε

ここでf(ξ)は連続なので、任意のε>0に対して、|f(ξ)-f(z)|<ε を満たす、|ξ-z|<ΔzなるΔz>0が存在します。ε→0とΔz→0は対応しています。

 Iim[Δz→0]|[F(z+Δz)-F(z)]/ Δz-f(z)|≦Iim[Δz→0]ε(Δz)→0

よって、F(z)の導関数F’(z)が存在し、F’(z)=f(z)となります。F(z)の導関数が存在するから、F(z)は正則です。グルサの定理より、F’(z)も正則になります。F’(z)=f(z)なので、f(z)も正則になります。従って、閉曲線Cに対して、∫C f(z)dz=0 ならば、f(z)はC内で正則であることが示されました。

 

[10][Ⅶ] 素数定理 Lim [x→∞] π(x) logx/x=1 の証明

[Ⅶ] 素数定理 Lim [x→∞] π(x) logx/x=1 の証明

(1)Lim[x→∞]π(x)log(x)/x≧1 を示します。

チェビシェフのシータ関数には

  • θ(x)=Σ[px] log(p)≦{Σ[px]1} log(x)=π(x) logx

なる性質があります。x>0について、[Ⅵ]より

  • π(x) logx/x ≧ θ(x)/x →1 as x→∞

よって、Lim[x→∞]π(x)log(x)/x≧1 となります。

(2)Lim[x→∞] π(x) log(x)/x≦1 を示します。

任意のε>0に対して、十分大きいxをとれば、ε・log(x)を大きくとることができるから、

 log(x)-ε・log(x)≦log(p)≦log(x) → 0<x1-ε≦p≦x 

なる素数pが存在します。

θ(x)=Σ[px] log(p) ≧ Σ[x1-ε<p≦x] log(p) ≧Σ[x1-ε<p≦x] log(x1-ε)

  =(1-ε)log(x)・Σ[x1-ε<p≦x]1=(1-ε)log(x)・(π(x)-π(x1-ε))

よって、

   θ(x) ≧(1-ε)log(x)・(π(x)-π(x1-ε))

   θ(x)/x (1-ε) ≧π(x) log(x)/x-π(x1-ε) log(x)/x

すなわち

  π(x) log(x)/x ≦ 1/(1-ε)・θ(x)/x+π(x1-ε) log(x)/x

                     ≦1/(1-ε)・θ(x)/x+x1-ε・log(x)/x

となる。ここで

    x1-ε・log(x)/x=log(x)/xε=1/ε・log(xε)/xε

より、任意のε>0に対して

  π(x) log(x)/x≦1/(1-ε)・θ(x)/x+1/ε・log(xε)/xε → 1/(1-ε) as x→∞

が成り立つ。極限をとると

    Lim[x→∞] π(x) log(x)/x≦1

となる。

(3)(1)と(2)から、素数定理

  Lim[x→∞] π(x) log(x)/x=1

が証明されました。

 

[定理A] Newmanの解析定理

t≧0で有界かつ可積分な関数f(t)に対して、

g(z)=∫[0,∞] f(t)exp[-zt] dt Re(z)>0

がRe(z)≧0で正則であれば、

 g(0)=∫[0,∞] f(t) dt

が存在する。つまり正則関数

 gT(z)=∫[0,T] f(t)exp[-zt] dt

に対して、

lim[T→∞]gT(0)=g(0)

が存在する。

[9][Ⅵ] θ(x)~x の証明

[Ⅵ] θ(x)~x の証明

 θ(x)~x の定義は、lim[x→∞] θ(x)/x=1 です。これは、任意のε>0、∃x>0に対して、

  1-ε<θ(x)/x<1+εと同値です。あるいは

  • 任意のλ>1に対してθ(x)<λx かつ
  • 任意のλ<1に対してλx<θ(x)

と同値です。この命題を否定して、

  • λ>1に対してθ(x)≧λx かつ
  • λ<1に対してλx≧θ(x)

なるλが存在するとして、矛盾を導きます。

(1)λ>1に対してθ(x)≧λx なるλが存在するとして、矛盾を導きます。

 λ>1のとき、x≦t≦λxなるtに対して、θ(t)≧θ(x)であり

  • θ(t)≧θ(x)≧λx → (θ(t)-t)/t2 ≧(λx-t)/t2

 であるから、

  • [x,λx] [(θ(t)-t)/t2] dt ≧∫[x,λx] [(λx-t)/t2] dt=∫[1,λ] [(λ-s)/s2] ds=δ(λ)>0

 が成り立ちます。ここでt=xsとおいて、積分変数をtからsに変換しました。

(Ⅴ)より積分

  • F(x)=∫[1,x] [(θ(t)-t)/t2] dt → F(∞)as x→∞

は収束するので、x→∞で

  • 0<δ(λ)≦∫[x,λx] [(θ(t)-t)/t2] dt=F(λx)-F(x) → 0 as x→∞

となり、矛盾することが示せました。

(2)λ<1に対してλx≧θ(x)なるλが存在するとして、矛盾を導きます。

 λ<1のとき、λx≦t≦xなるtに対して、θ(t)≦θ(x)であり、

  • θ(t)≦θ(x)≦λx → (θ(t)-t)/t2 ≦(λx-t)/t2

 であるから、

  • [λx, x] [(θ(t)-t)/t2] dt ≦∫[λx, x] [(λx-t)/t2] dt=∫[λ,1] [(λ-s)/s2] ds=δ(λ)<0

 が成り立ちます。ここでt=xsとおいて、積分変数をtからsに変換しました。

 (Ⅴ)より積分

  • F(x)=∫[1,x] [(θ(t)-t)/t2] dt → F(∞)as x→∞

 は収束するので、x→∞で

  • 0>δ(λ)≧∫[λx, x] [(θ(t)-t)/t2] dt=F(x)-F(λx) → 0 as x→∞

 となり、矛盾します。よって背理法より、lim[x→∞] θ(x)/x=1 が示されました。

[8][Ⅴ] ∫[1,∞] [θ(x)-x]/x2 dxは収束する。

[Ⅴ] ∫[1,∞] [θ(x)-x]/x2 dxは収束する。

上記の積分の収束を命題[Ⅲ] 、[Ⅳ]、[定理A]を用いて5段階で証明します。

(1) Φ(s)=s∫[1,∞] θ(x)/xs+1 dx、Re(s)>1 が成り立つことを示します。

s∫[1,∞] θ(x)/xs+1 dx=s∫[1,∞]Σ[p≦x] log(p)/xs+1 dx

=s∫[1,2]0 dx+s∫[2,3] log2/xs+1dx+s∫[3,5](log2+log3)/xs+1 dx+・・・

=-[log2/x]x=2,3-[(log2+log3)/x]x=3,5-[(log2+log3+log5)/x]x=5,7+・・・

=-(log2/3s-log2/2s)-[ (log2+log3)/5s-(log2+log3)/3s) ]

 -[ (log2+log3+log5)/7s-(log2+log3+log5)/5s) ]

 -[ (log2+log3+log5+log7)/11s-(log2+log3+log5+log7)/7s) ]-・・・

=log2/2s+log3/3s+log5/5s+log7/7s+・・・

=Σ[p]logp/ps =Φ(s)

(2)f(t)=θ(et)e-t-1 (t≧0)は有界かつ可積分である、ことを示します。

 (Ⅲ)でx=etとして、あるK>0が存在して、|θ(et)|≦Ket だから

   |f(t)|=|θ(et)e-t-1|≦|θ(et)|e-t+1=Ket e-t+1=K+1 

となり、f(t)は有界な関数である。

(3)g(z)=Φ(z+1)/(z+1)-1/z  Re(z)>0 を示します。

x=etとおいて置換積分を実施する。dx=xdt、t:0→∞、x:1→∞、

e-zt=(et)-z=x-zに注意すると、

 g(z)=∫[0,∞] (θ(et)e-t-1)exp[-zt] dt

  =∫[1,∞] (θ(x)x-1) x-z dx/x-[e-zt/-z]t=0,∞

  =∫[1,∞] (θ(x)/xz+2)dx-1/z

  =Φ(z+1)/(z+1)-1/z

が示されました。

(4)g(z)はRe(z)≧0で正則である、ことを示します。

(Ⅲ)より、Φ(s)-1/(s-1)はRe(s)≧1で正則なので、s=z+1として

  Re(s)=Re(z)+1≧1 → Re(z)≧0 

Φ(z+1)-1/zはRe(z)≧0で正則なので、正則関数h(x)を用いて、

  Φ(z+1)-1/z=h(x) 

と表せます。

 g(z)=Φ(z+1)/(z+1)-1/z

   =(h(x)+1/z)/(z+1)-1/z=

   =h(x)/(z+1)+1/z(z+1)-1/z

   =h(x)/(z+1)+[1-(z+1)]/z(z+1)

   =[h(x)-1]/(z+1)

 g(z)は、z=-1に極をもちますが、Re(z)≧0で正則であることが示されました。

(5)g(0)=∫[0,∞] f(t) dt=∫[1,∞] [θ(x)-x]/x2 dx が収束する、ことを示します。

 (2)より関数f(t)=θ(et)e-t-1はt≧0で有界かつ可積分であり、

 (4)よりg(z)=∫[0,∞] f(t)exp[-zt] dt がRe(z)≧0で正則である

従ってNewmanの解析定理により

  g(0)=∫[0,∞] f(t) dt=∫[0,∞] (θ(et)e-t-1) dt

が存在します。(3)と同様にx=etとおいて置換積分を実施すると、

  g(0)=∫[1,∞] (θ(x)x-1-1) dx/x=∫[1,∞] [θ(x)-x]/x2 dx

が収束することが示されました。

[7][Ⅳ] θ(x)=O(x) の証明

[Ⅳ] θ(x)=O(x) の証明

チェビシェフのシータ関数:θ(x)=Σ[px] log(p) がオーダ-xであること、すなわち

・ ∃k>0 |θ(x)|≦kx          

を3段階で証明します。

(1)2nlog2≧θ(2n)-θ(n) の証明

2項定理より

22n=(1+1)2n=Σ[k12n] 2nC1k12n-k2nCn=2n・(2n-1)・(2n-2)・・(n+2)・(n+1)/n!

2nCnは自然数なので、分母のn!は約分されて1になります。しかしn+1<p≦2nの素数pはn!の中には存在しないので、約分されずに分子に残ります。右辺はn+1<p≦2nの素数pの積Π[n+1p2n] pより大きくなるので、

・ 22n≧Π[n+1p2n] p

が成り立ちます。一方

・ θ(2n)-θ(n)=Σ[p2n] log(p)-Σ[pn] log(p)=Σ[n+1p2n] log(p)

なので、

・ exp[θ(2n)-θ(n)]=exp[Σ[n+1p2n] log(p)]=Π[n+1p2n] p

です。よって

・ 22n≧exp[θ(2n)-θ(n)] → 2n・log2≧θ(2n)-θ(n)

が成り立ちます。

Eg.  16C8=16・15・14・13・12・11・10・9/8・7・6・5・4・3・2・1

    =2・3・13・11 >11・13(8+1≦11,13≦16)

(2)2+1・log2>θ(2m) の証明

 上式にn=2k1を代入すると、2k・log2≧θ(2k)-θ(2k1)が成り立つ。

k=1: 21・log2≧θ(21)-θ(1) 

k=2: 22・log2≧θ(22)-θ(21)

k=3: 23・log2≧θ(23)-θ(22)

・・・   ・・・・

k=m-1:2m1・log2≧θ(2m1)-θ(2m2)

k=m:  2m・log2≧θ(2m)-θ(2m1)

をすべて加えると、θ(1)=0より

  log2・Σ[k1m] 2k ≧θ(2m)

を得ます。ここで

  Σ[k1m] 2k=2m+1-2<2m+1

だから、

  2m+1 log2>θ(2m)

が示されました。

(3) θ(x) ≦4log2・x

x≧1なる整数xに対して、∃m∊N、2m≦x≦2m+1

θ(x)は非減少関数なので、(2)より

  0≦θ(x) ≦θ(2m+1)<2m+2 log2≦4 log2・2m≦4 log2・x

よって、K=4 log2とおくと

  θ(x) ≦Kx、 → θ(x)=O(x)

が示されました。