ディリクレ積分からフーリエ変換へ

ペーター・グスタフ・ディリクレ(Peter Gustav Dirichlet, 1805年~1859年)はフランス生まれのドイツ人数学者です。ディリクレは現代的な関数概念(写像)を与えたことで知られています。家族の名前Dirichletは祖父がベルギ-のリシュレの街の出身だったことに由来しています。ペータ-はガウスの「整数論」を持ってフランスへ行き、パリ大学などで、フ-リエ(指導教官)、ラプラス、ルジャンドルらから数論と解析学を学びます。ペータ-は22歳の時にドイツに戻り、10年間ベルリン大学に滞在し、レベッカ・メンデルスゾーンと結婚します。妻のお兄さんは有名な作曲家で、彼の家は絶えず賑やかだったそうです。ディリクレは1855年からガウスの後継として、ゲッティンゲン大学で教授を務めます。友達の数学者にカ-ル・グスタフ・ヤコビがいます。彼の教え子たちにはアイゼンシュタイン、リーマン、クロネッカー、リプシッツがいます。友人の数学者リヒャルト・デ‐デキントが彼の研究結果をまとめて『整数論講義』を出版しました。ディリクレの名前が付けられた定理は、数論や解析学で数多く出てきます。ディリクレの積分定理は師匠のフーリエ変換の数学的基礎づけを行うためのものです。

<ディリクレの積分定理>

区分的に滑らかな関数f(x)に関して

 Lim λ→∞[-a,-a] f(x)sin(λx)/x dx=π/2・[f(+0)+f(-0)]

が成り立つ。ここで

 f(+0)=Lim x→0 f(x)  for x>0

 f(-0)=Lim x→0 f(x)  for x<0

のことです。f(x)がx=0で連続ならば、

 Lim λ→∞[-a,-a] f(x)sin(λx)/x dx=π・f(0)

となります。「区分的に滑らか」とは積分区間で有限個の有限な不連続点があり、その間は1回微分可能であることを意味しています。

[証明]

I(λ)=∫[b,c] f(x)sin(λx) dx

とおくと、

 Lim λ→∞ I(λ)=0  ・・・(1)

が成り立ちます。(1)式は後で証明します。一方

 ∫[0,∞] sin(λx) /x dx=π/2 (λ>0) ・・・(2)

が成り立ちます。この積分をディリクレ積分と呼びます。ディリクレ積分は収束しますが、絶対収束しない積分として有名です。(2)式も後で証明します。

I(λ)において、f(x)→{f(x)-f(+0)}/x と置き換えると、

  f’(0)=Lim x→0{f(x)-f(+0)}/x

は存在しているので、

 ∫[0,a] {f(x)-f(+0)}/x ・sin(λx) dx+∫[-a,0] {f(x)-f(+0)}/x ・sin(λx) dx →0 λ→∞

が成り立ちます。すなわち

 ∫[-a,a] f(x) sin(λx)/x dx=f(+0)∫[0,a] sin(λx)/x dx+f(-0)∫[-a,0] sin(λx)/x dx

x’=-x とおくと

 ∫[-a,0] sin(λx)/x dx=-∫[+a,0] sin(λx’)/x’ dx’=∫[0,a] sin(λx)/x dx

であるから、

 ∫[-a,a] f(x) sin(λx)/x dx=[f(+0)+f(-0)]・∫[0,a] sin(λx)/x dx

となります。a→∞をとると、(2)式より

 ∫[-∞,∞] f(x) sin(λx)/x dx=[f(+0)+f(-0)]・π/2

が得られます。

f(x)=1のとき、x’=λxとおくと

 ∫[-∞,∞] sin(λx)/x dx=∫[-∞,∞] sin(x’)/x’ dx’=π/2

が成り立ちます。

次に(1)式の証明を行います。x=y+π/λ とします。

  Sin(λ(y+π/λ))=sin(λy+π)=-sin(λy)

 I(λ)=-∫[b-π/λ、c-π/λ] f(y+π/λ) sin(λy)dy・・・(3)

となります。

 I(λ)=∫[b,c] f(x)sin(λx) dx・・・(4)

(3)+(4)を行うと、積分区間を

  [b -π/λ、c]=[b-π/λ、b]+[b、c-π/λ]+[c-π/λ、c]

に分割できるので、

 2 I(λ)=-∫[b-π/λ、b] f(x+π/λ)sin(λx) dx+∫[b、c-π/λ] [ f(x)-f(x+π/λ)]sin(λx) dx

     +∫[c-π/λ、c] f(x)sin(λx) dx

となります。ワイエルシュトラスの最大値定理より、閉区間[b、c]において、最大値M>0が存在して

 |f(x) sin(λx)|≦|f(x)|≦M となるので、

 2|I(λ)|≦2Mπ/λ+∫[b、c-π/λ] |f(x)-f(x+π/λ)|dx <2ε

となります。任意のε>0に対して、λ>0が存在して、

  2Mπ/λ<ε  かつ  |f(x)-f(x+π/λ)|<ε/(c-b)

が成り立ちます。従って

  limλ→∞|I(λ)|=0 

が示されました。

<フーリエの積分定理>

区分的に滑らかな関数f(t)に対して

  F(ω)=∫[-∞、∞]f(t)e-iωtdt

が存在し、

  1/2π・∫[-∞、∞] F(ω) e-iωtdω=1/2・[f(t+0)+f(t-0)]

が成り立つ。

証明) ディリクレの積分定理より、区分的に滑らかな関数f(x)に関して

 Limλ→∞[-a,-a] f(τ)sin(λτ)/τ dτ=π/2・[f(+0)+f(-0)]

が成り立ちます。いま、f(τ)をf(τ+t)と置き換え、a→∞とすると

 Limλ→∞[-∞,-∞] f(τ+t)sin(λτ)/τ dτ=π/2・[f(t+0)+f(t-0)]

t’=τ+tと変数変換すると

 左辺=Limλ→∞[-∞,-∞] f(t’)sin(λ(t’-t))/(t’-t) dt’

となります。

 ∫[0,λ] cosω (t’-t)dω=[sin(ω(t’-t))/(t’-t)]ω=0、λ=sin(λ(t’-t))/(t’-t)

ですから、これを代入すると

 左辺=Limλ→∞[-∞,-∞] f(t’) [∫[0,λ] cosω (t’-t)dω] dt’

となる。ここで

 cosω (t’-t)=1/2(eiω (t’-t)+e -iω (t’-t))

です。ω’=-ωと置くと

 ∫[0,∞] eiω (t’-t) dω=-∫[0,-∞] e-iω’ (t’-t) dω’= ∫[-∞,0] e-iω (t’-t)

となります。

左辺=1/2∫[-∞,-∞] f(t’) [∫[0,∞] eiω (t’-t)dω+∫[-∞,0] e-iω (t’-t)dω] dt’

  =1/2∫[-∞,-∞] f(t’) [∫[-∞,∞] e-iω (t’-t)dω] dt’

  =1/2∫[-∞,-∞] [∫[-∞,∞] f(t’) e-iωt’ dt’ ] eiωt

が得られます。よって

 F(ω)=∫[-∞,∞] f(t) e-iωt dt

とおくと、

 1/2π・∫[-∞,-∞] F(ω)eiωt dω =1/2・[f(t+0)+f(t-0)]

が示されました。

ディリクレ積分

  ∫[0,∞] sin(λx) /x dx=π/2 (λ>0) ・・・(2)

は収束しますが、

 ∫[0,∞] |sin(x) /x|dx=Σk=1~∞[(k-1)π、kπ] |sin(x)|/x dx

           ≧Σk=1~∞[(k-1)π、kπ] |sin(x)|/kπ dx

           =1/π・Σk=1~∞1/k∫[0、π] sin(x)dx

           =2/π・Σk=1~∞1/k =∞

によって絶対収束しません。

命題1 

 ∫[0、∞] e-axsin(x) /x dx=π/2-tan-1(a) a>0

が成り立つ。

部分積分をすると、

I(a)=∫[0、∞] e-axsin(x) dx=-[e-axcos(x)]x=0~∞+∫[0、∞] (-a)e-axcos(x) dx=

   =1-a{[e-axsin(x)] x=0~∞-(-a)∫[0、∞] e-axsin(x) dx}

   =1-a2I(a)

 I(a)=1/(1+a2)

となります。

  ∫[∞、a’] I(a)da=∫[∞、a’][0、∞] e-axsin(x) dx da

 =∫[0、∞] [∫[∞、a’] e-ax da] e-ax da sin(x) dx

ここで

  ∫[∞、a’] e-ax da=-1/x・[e-ax]a=∞~a’= -1/x・e-a’x

であるから、

 ∫[0、a’] I(a)da=-∫[0、∞] e-a’x sin(x)/x dx

一方、

[∞、a’] I(a)da=∫[∞、a’] 1/(1+a2)da

a=tanθ-とおくと、1/(1+tan2θ)=cos2θ、da=1/ cos2θdθ

a:∞→a’、 θ:π/2→tan-1(a’) より

[∞、a’] I(a)da=∫[π/2、tan-1(a’)] 1da=tan-1(a’)-π/2=-∫[0、∞] e-a’x sin(x)/x dx

である。従って

 ∫[0、∞] e-ax sin(x)/x dx=π/2-tan-1(a)

が示された。

上式でa=0のとき

 I(0)=∫[0,∞] sin(x) /x dx=π/2 

が成り立ちます。上式は複素積分で示すこともできます。