[Ⅷ] Newmanの解析定理の証明
(1)g(0)-gT(0)=1/2πi・∫C [g(z)-gT(z)]ezT(1+z2/R2)/z dz を示します。
コ-シ-の積分公式より、領域Dで正則な複素関数f(z)のD内の閉曲線C上の積分に関して、
閉曲線Cで囲まれた領域の点αにおいて
- f(α)=1/2πi・∫C f(z)/(z-α) dz
が成り立つ。閉曲線Cの半径R>0として、
- f(z)=[g(z)-gT(z)]ezT(1+z2/R2)
を考えると、f(z)は以下で定義される領域Dで正則であることが分かります。
任意の閉曲線C上のgT(z)の積分は、∫C e-ztdz=0より
- ∫C gT(z)dz=∫C (∫[0,T]f(t)e-ztdt)dz=∫[0,T] f(t) (∫C e-ztdz)dt=0
です。モレラの定理から、gT(z)は任意の閉曲線C内で正則です。解析定理の前提より、g(z)はRe(z)≧0で正則なので、Re(z)=0上の任意の点z=it(-∞≦t≦∞)でテ-ラ-展開でき、その収束円内のzでも正則です。従って、十分大きなR>0と十分小さなδ>0において、「|z|≦R かつ-δ≦Re(z)」となる領域Dの境界線を閉曲線Cとすると、閉曲線Cの内部領域Dでg(z)とgT(z)は正則です。ezT(1+z2/R2)も正則なので、f(z)は正則関数となり、
コ-シ-の積分公式を適用できます。いまz=0で
です。α=0として、コ-シ-の積分公式を適用すると
- f(0)=g(0)-gT(0)=1/2πi・∫C [g(z)-gT(z)]ezT(1+z2/R2)/z dz
が成り立ちます。
(2)A=|g(0)-gT(0)|=|1/2πi・∫C [g(z)-gT(z)]ezT(1+z2/R2)/z dz|
≦A++A-≦A++A-1+A-2 → 2B/R(T→∞)→ 0 (R→∞)
を示します。そのために、積分路を
- C=C+ (Re(z)>0)+C-(Re(z)<0)
に分け、
A+=|1/2πi・∫C+ [g(z)-gT(z)]ezT(1+z2/R2)/z dz|
A-=|1/2πi・∫C-[g(z)-gT(z)] ezT(1+z2/R2)/z dz|≦ A-1+A-2
とします。ここで
A-1=|1/2πi・∫C-’gT(z)ezT(1+z2/R2)/z dz|
A-2=|1/2πi・∫C-g(z)ezT(1+z2/R2)/z dz|
とします。これから
A≦A++A-≦A++A-1+A-2 → 2B/R(T→∞)→ 0 (R→∞)
を示します。
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(3)A+≦B/R、Re(z)>0 を示します。
z=Reiθとおいて積分変数をzからθに変換すると、dz=i Reiθdθ
A+≦1/2π|∫C+|g(z)-gT(z)|eRe(z)T [1+z2/R2]/z dz|
非積分関数
[1+z2/R2]/z=[1+R2e2iθ/R2]/Reiθ=2[R(eiθ+e-iθ)/2]/R2=2Re(z) /R2
より
A+≦1/2π∫C+|g(z)-gT(z)|eRe(z)T 2Re(z) /R2|dz|
いま、|f(t)|≦B(有界)なので
|g(z)-gT(z)|=|∫[T,∞] f(t)exp[-zt] dt|≦B|∫[T,∞] exp[-Re(z)t] dt|
=-B/ Re(z)[ exp[-Re(z)t]]t=T,∞=B/ Re(z)・e-Re(z)T
です。従って、
A+≦1/2π∫C+B/ Re(z)・e-Re(z)T・eRe(z)T 2Re(z) /R2|dz|=(B/πR2) ∫C+|dz|
となります。∫C+|dz|=πRより
A+≦B/R
が得られます。
(4)A-1=|1/2πi・∫C-gT(z)ezT(1+z2/R2)/z dz|≦B/R を示します。
Re(z)<0より、C- ’の積分経路を用いる。|Re(z)|=-Re(z)に注意して
|gT(z)|=|∫[0,T] f(t)e-zt dt|≦B∫[0,T] e-Re(z)t dt=B/(-Re(z))[e-Re(z)t]t=0,T
=B/(-Re(z))[e-Re(z)T-1]≦B/(-Re(z))e-Re(z)T
A-1=|1/2πi・∫C-’gT(z)ezT(1+z2/R2)/z dz|
≦1/2π・∫C-’|gT(z)|eRe(z)T|(1+z2/R2)/z||dz|
≦1/2π・[B/(-Re(z))e-Re(z)T] eRe(z)T[2Re(z) /R2]・∫C-’|dz|
=1/2π・B/(-Re(z)) [2|Re(z)|/R2]・πR=B/R
(5)A-2=|1/2πi・∫C-g(z)ezT(1+z2/R2)/z dz|→ 0 as T→∞ を示す。
有界閉集合C-上のTを含まない複素関数の絶対値には最大値があり、
|g(z) (1+z2/R2)/z|≦M
なる正数Mが存在します。
A-2≦M/2π・|∫C-ezT dz|≦M/2π・∫C-eRe(z)T|dz|
となる。C-上の積分路を弧AB上と直線BC上の2つに分けて、実行します。
1)弧AB上:z=R eiθ (π/2≦θ≦λ)、cos(λ)=-δ/R |dz|=Rdθ
2)直線BC上:z=-δ+it (0≦t≦√(R2-δ2)) |dz|=dt
実軸に対する対称性から、積分経路をIm(z)≧0に限定して、積分値を2倍します。
A-2≦2・M/2π・[∫AB eRe(z)T|dz|+∫BC eRe(z)T|dz|]
=M/π・[∫[(π/2≦θ≦λ] eRcos(θ)T Rdθ -∫[0≦t≦√(R2-δ2)] e-δT dt ]
t=cos(θ)とおくと、dt=-sin(θ)dθ=-√(1-t2) dθより、t:0→cos(λ)=-δ/R
=M/π・[-∫[(0≦t≦-δ/R] eRTt R/√(1-t2) dt -√(R2-δ2)・e-δT ]
≦M/π・[-∫[(0≦t≦-δ/R] eRTt R/√(1-(δ/R)2) dt -√(R2-δ2)・e-δT ]
=M/π・[-R2/√(R2-δ2)・∫[(0≦t≦-δ/R] eRTt dt -√(R2-δ2)・e-δT ]
ここで
∫[(0≦t≦-δ/R] eRTt dt=1/RT・[eRTt]t=0, -δ/R=1/RT・[e-Tδ-1]
ですから、δ>0より、
A-2≦M/π・[R2/√(R2-δ2)・1/RT・[1-e-Tδ]-√(R2-δ2)・e-δT ] → 0 as T→∞
が得られます。
(3)~(5)より、
|g(0)-gT(0)|=A≦A++A-≦2B/R → 0 as T→∞, R→∞
が成り立ちます。よって
lim[T→∞]gT(0)=g(0)
が存在することが証明されました。
<コ-シ-の積分公式>
領域Dで正則な複素関数f(z)のD内の閉曲線C上の積分に関して、Cで囲まれた領域の点z=αにおいて
- f(α)=1/2πi・∫C f(z)/(z-α) dz
が成り立つ。Cの向きは反時計回りを正とする。
証明)z=αの近傍で、正則関数f(z)を
- f(z)=f(α+z-α)=f(α)+f’(α) (z-α)+1/2・f’’(α) (z-α)2+・・・
と展開すると、正則関数1,z、z2、z3、・・は閉曲線C内に極をもたないので、コーシ-の積分定理よりC上の積分でゼロになります。
∫C f(z)/(z-α) dz=∫C[f(α)+f’(α) (z-α)+1/2・f’’(α) (z-α)2+・]/(z-α) dz
=f(α)・∫C 1/(z-α) dz +f’(α)∫C dz+1/2・f’’(α) ∫C (z-α) dz+・・・
=f(α)・∫C 1/(z-α) dz
となります。z=α+eiθとおくとdz=ieiθdθ、θ=0~2πより
∫C 1/(z-α) dz=∫[0≦θ≦2π]i eiθ/eiθdθ=2πi
従って
∫C f(z)/(z-α) dz=2πi f(α)
となります。
<モレラの定理>~コ-シ-の積分定理の逆
閉曲線C上の連続関数f(z)の積分に関して、∫C f(z)dz=0 ならば、f(z)は閉曲線C内で正則である。
証明)z0からzまでの積分経路をCとします。
F(z)=∫C=[z0,z] f(z)dz
zからz+Δzまでの経路Lを、
で定義します。
が成り立ち、
F(z+Δz)=∫C+L f(z)dz
と書けます。以下にF(z)の導関数F’(z)が存在し、F’(z)=f(z)となることを示します。
|[F(z+Δz)-F(z)]/ Δz-f(z)|=|[∫C+L f(z)dz-∫C f(z)dz] /Δz-f(z)|
=|(1/Δz)∫[z,z+Δz] f(z)dz-f(z)|=|(1/Δz)∫[0,1] f(ξ(t)) Δzdt-f(z)|
=|∫[0,1] f(ξ(t)) dt-f(z)|
≦∫[0,1]|f(ξ(t))-f(z)|dt ≦∫[0,1]εdt=ε
ここでf(ξ)は連続なので、任意のε>0に対して、|f(ξ)-f(z)|<ε を満たす、|ξ-z|<ΔzなるΔz>0が存在します。ε→0とΔz→0は対応しています。
Iim[Δz→0]|[F(z+Δz)-F(z)]/ Δz-f(z)|≦Iim[Δz→0]ε(Δz)→0
よって、F(z)の導関数F’(z)が存在し、F’(z)=f(z)となります。F(z)の導関数が存在するから、F(z)は正則です。グルサの定理より、F’(z)も正則になります。F’(z)=f(z)なので、f(z)も正則になります。従って、閉曲線Cに対して、∫C f(z)dz=0 ならば、f(z)はC内で正則であることが示されました。