最初に陸に上がった魚は何でしょうか?

それはイクチオステガ(Ichthyostega)だと言われています。イクチオステガは、約3.7億万年前(デボン紀最末期)に生息していた原始的四肢を持った魚です。Stegosは肋骨の覆いの意味です。脊椎動物が上陸するためには強い肋骨が必要だったのです。イクチオステガの化石はグリーンランドで発見されました。但し当時のグリーンランドは、赤道直下付近に位置していました。

体長は約1~1.5m。イクチオステガは四肢を使って移動し、尾でバランスを取っていました。少なくとも頭部を水の外に出すための強い前肢を持ち、頑丈な胸郭と背骨は日光浴の助けとなりました。幼魚時代には、優れた運動性により、水中の捕食者から陸上に逃れることができたと思われます。頑丈さゆえに体が重すぎること、尾に肉鰭類のような鰭を持っていること、後肢の先端には7本もの指があることなどから、殆どの時間を水中で過ごしていたと考えられています。3.5億年前の石炭紀前期に生息していたペデルペスが陸上を自由に移動できた最古の四肢動物だと言われています。

スクレロケファルスは、最初に海から陸に上がった開拓者「イクチオステガ」の直系の子孫にあたる両生類の仲間です。短足ですが、大きな体を十分支えることのできる足を持っていました。体長は1.5m程度あります。化石はドイツ(古生代 ペルム紀)で見つかったものです。

最初に肺をもった魚は何でしょうか?

それはユ-ステノ・プテロン(Eusthenopteron:力強い鰭(ひれ)の意)だと言われています。ユーステノプテノンは3.7億年前(デボン紀)に現れた肺魚です。ユーステノプテノンはヒレの中に骨を持ち、肺で酸素呼吸をしていたので、湖沼のある湿地帯で生息することができました。食性は肉食性で、他の魚類を捕食していました。

1981年にアメリカのDonn Eric Rosen(1929―1986)らは、ユ-ステノ・プテロンは総鰭類よりも肺魚に近いと主張しました。ユ-ステノ・プテロンは植物の繁茂する河床に棲息していたため、密生した植物を対鰭でかき分けながら泳いでいたものと考えられています。体長は約30~120cm。体型はやや長い紡錘形で、上下に対称な幅広の尾ヒレがあります。

生息していた場所は海浜の潟湖などの気水域だったと推定されています。こうした場所は潮の満ち引きなどで環境の変化が著しく、水の流れが滞って酸欠状態に陥ることがあったと思われます。このことから、彼らは現在の肺魚と同じように肺呼吸をしていたと考えられます。さらには、鰭内部の骨や背骨、頭骨の構造が最古の両生類に近い特徴を示しています。

最初に背骨をもった魚は何でしょうか?

それはケイロレピス(Cheirolepis)だと言われています。ケイロレピスは3.9億年前(デボン紀初期)に現れた最初に背骨をもった魚です。ケイロレピスには2枚の胸ヒレと2枚の腹ヒレがあります。ケイロレピスの体長は約55cmです。ケイロレピスには顎(あご)と鋭い歯があり、自分の体長の2/3もの大きさの他の魚を食べられます。顎は、鰓(えら)を支える骨が稼働できる様に変化したものだと考えられています。ケイロレピスは背骨を持つことにより強い筋肉を発達させ、すばやく力強い泳ぎができたと考えられます。

淡水中のCa濃度は海水中の1~10%しかありません。ケイロレピスは体内に必要なCaなどのミネラルを骨に蓄積することで、川や湖などの淡水域で生息することができました。カルシウムは、神経の働きや心臓や筋肉が動くために必要です。骨にはMg、P、S、Znさらには鉄など、生命にとって必要なミネラルが海水と同程度の割合で含まれています。

軟骨とはどのようなものでしょうか?

軟骨は軟骨基質と軟骨細胞から成ります。軟骨基質の主成分は、コンドロイチン硫酸などのプロテオ・グリカンです。コンドロイチン硫酸は水和したNaを引き付けるので、軟骨は豊富な水分を含んでいます。軟骨細胞は、軟骨基質の中の軟骨小腔と呼ばれる穴の中に入っています。血管は軟骨の中には侵入せず、軟骨細胞は、組織液を介した拡散によって酸素や養分を受け取り、不要物を排出しています。

軟骨は、軟骨基質の成分によって硝子軟骨、線維軟骨、弾性軟骨の3種類に分けられます。

硝子軟骨は、最も一般的に見られる軟骨で、関節面を覆う関節軟骨、気管を囲っている気管軟骨、胸郭の肋軟骨などがあります。均質、半透明で永久軟骨と呼ばれます。一方、哺乳動物の胎児は、全身の骨格が硝子軟骨として現れ、これが骨に置換されていきます。このような様式を軟骨性骨化といいます。

線維軟骨は、椎間板や関節半月などに見られます。軟骨基質にコラーゲンを多く含むのが特徴です。このため、軟骨としては固く、強い圧力に耐えることができます。靱帯や腱には軟骨成分は見られません。

弾性軟骨には、耳介軟骨や喉頭蓋の軟骨などに見られます。軟骨基質は、弾性線維を多く含むため、硝子軟骨や線維軟骨と比べ、柔軟でかつ弾力があります。

最古のサメは何でしょうか?

最古のサメは4.9億万年前のドリオドゥス(Doliodus problematicus)だと言われています。2017年にサメのような顎(あご)と胸鰭(むなびれ)の化石が見つかっています。サメの体は、殆ど軟骨でできているので、化石になり難いのです。

3.7億万年前(古生代デボン紀後期)の海にはクラドセラケ (Cladoselache) が生息していました。全長は約1.8メートルです。口は体の下側ではなく先端に位置していました。顎はあまり頑丈ではありません。体形が流線形であることから高速で遊泳していたと思われます。ちなみにサメの軟骨組織中には血管、神経、リンパ管はありません。

サメには腎臓がないのでしょうか?

サメには腎臓がないと誤解している人が多いですが、サメやエイにも腎臓があります。サメの腎臓は、尿素を保持するために、尿素を再吸収します。そのためサメの腎臓は複雑な構造をしています。ヒトの腎臓は、尿を濃縮するために、水を再吸収します。水の再吸収時に尿素の浸透圧を利用しています。

初期の硬骨魚は弱者で、塩水域から淡水域に追いやられ、なんとか淡水に適応して生き延びました。現在の海の硬骨魚は、川から海に戻ってきたもので、海水を飲んで水を得ています。サメは海水を飲まずに海水から自然に水を得ています。サメは基本的には海水に適応していますが、ノコギリエイやオオメジロザメは、広塩性種と呼ばれ、海水と淡水の両環境に適応できます。

最初に腎臓をもった魚は何でしょうか?

それはプテラスピス(Pteraspis)だと言われています。プテラスピス属は4.0億年前のシルル紀末に現れた腎臓をもった魚です。プテラスピスの体長は25cmほどです。プテラスピスには顎(あご)がありません。頭部は平たい三角形の外骨格で覆われ、三角形の左右の端と背中に棘が1本ずつ生えています。

海水に適用した魚が淡水に入ると体が膨れて破れてしまします。ステラスピスは体内に入り込んでくる水分を腎臓で体外に排出できたので、淡水域に生息することができました。恐らくこれによってプテラスピスは淡水域が苦手なオウムガイやサメから逃げることができたのでしょう。

サメの尿素はどこで合成されているのでしょうか?

尿素はサメの肝臓で合成されます。肝臓では尿素回路によりアンモニアから尿素を合成して補給します。尿素回路の律速酵素はカルバミルリン酸合成酵素です。尿素濃度が上昇すると、酵素活性が低下して、尿素の合成が止まります。サメの死後には尿素が分解されアンモニアになるので、臭います。しかし防腐効果があるので、内陸ではサメの肉が食されていました。サメの肝臓には肝油があり、肝油の浮力で、サメは遊泳しています。

鰓(えら)には、酸素を取り入れるために、大量の血液が流れています。海水と血液の間には僅かな細胞層で隔離されているため、サメは尿素を失いやすいのです。しかしサメの鰓の細胞膜はコレステロール含量が高いので、尿素の拡散透過性が小さくなっています。

尿素はタンパク質の変性剤として働くので、このままでは酵素活性が失われます。サメは、尿素とトリメチル・アミン・オキシド(TMAO)を2:1の割合に保つことで細胞内の酵素活性を正常に維持しています。サメの代謝系は尿素を前提として働いているので、淡水域のサメでもいくらか尿素を保持しています。

魚はどのようにして体内の浸透圧を調整しているのでしょうか?

外界より体内塩分濃度が高いと、体内が脱水されてしまいます。魚の体内浸透圧の調整方法には3種類あります。クラゲや円口類のヌタウナギなどは、浸透圧順応型動物と呼ばれ、細胞内にグリシンやアラニンなどの中性アミノ酸を蓄積し、体内の浸透圧を外界と等しく保っています。

真骨魚は、浸透圧調節型動物と呼ばれ、過剰なNaCl はおもに鰓(えら)の塩類細胞から、Mg2+やCa2+、SO42-イオンは腎臓から少量の尿として排出されます。

サメやエイなどの軟骨魚やシーラカンスは、尿素浸透圧性動物と呼ばれ、体内に多量の尿素を蓄積することで、体内の浸透圧を外界と等しく保っています。サメの血漿(けっしょう)中のNaClは250~300mM(ミリモル/リットル)、尿素は400~450mMで、合わせて海水濃度700mMとなります。サメは鰓や直腸線からNaClを排出しています。Naは、ATPを使ってKと交換して、細胞外に排出されます。Clは濃度勾配や電荷反発を駆動力として排出されます。

最古の魚は何でしょうか?

最古の魚はアランダスピス(Arandaspis)だと言われています。アランダスピス属は4.6億年前、古生代オルドビス紀中期に出現しました。アランダスピスは体長15cm程度、頭は硬質で、鰭(ひれ)と顎(あご)はありませんでした。1959年にオーストラリアのアリススプリングスにて発見され、原住民のアボリジニのアランダ族から命名されました。

アランダスピスは海底付近をゆっくり泳いで藻類やプランクトンを泥ごと捕食していたようです。早く泳ぐ事が出来なかったため、巨大なオウムガイから逃げるように生活していたと考えられます。鰭がない魚がいたのですね。

同時期に生きていた似たような魚にアストラスピス(Astraspis)がいます。体長20cmで、名前は星の魚の意味です。体側にヤツメウナギのような8つのエラ穴が空いており、頭部の覆いが小さな五角形(星形)の骨片からできています。