マッコウクジラの深海適応能力

マッコウクジラは、3000mの深さを2時間潜航できます。クジラの血液密度はヒトの2倍です。筋肉のミオグロビンに保持できる酸素密度はヒトの10倍です。深海の水圧を受けないように、肺を空にしてから潜水します。マッコウクジラの頭には脳油袋があります。脳油は28℃で固化し、33℃で液化します。潜水時には鼻から海水を取り入れて脳油を固化して、比重を高くして潜水します。浮上時には、海水を鼻から吐き出して、血液で脳油を液化して、比重を低くして浮上します。マッコウクジラは北極から南極まで世界規模で分布しています。日本では小笠原諸島近海に雌と子供の群れが定住しており、知床半島近海には雄が見られます。母親は乳を使って、嫌がる子どものマッコウクジラを深海に誘導します。

マッコウクジラの歯は円錐形で下顎に広い間隔を空けて配置されています。1個の歯は1kgもあります。マッコウクジラの肉には蝋が含まれるため、食用の際に油抜きをします。日本では主に大和煮に用いられます。

ハクジラの超能力エコロケ-ションとは

水中は分子の拡散速度が小さいので臭覚はあまり役に立ちません。深い海中は暗いので視力より聴力が役に立ちます。マッコウクジラなどのハクジラは水中でのエコロケ-ション(反響定位)能力があります。反響定位法とは、音波を発して反響音波を感受して周囲の地形や水温、敵の位置や餌の形状などを見分ける方法です。反響定位を使えば、濁った海水中でも小魚を捕食できます。蝙蝠や魚群探知機や潜水艦ソナ-も反響定位法を使っています。水中の音波は空気中より5倍速く(1500m/s)、何百kmも遠くに伝えることができます。ハクジラはパルス状のクリックス音や甲高いホイッスル音を発して仲間と交信して餌をとります。水族館のイルカは音を使って仲間とタイミングを合わせて曲芸をします。

ハクジラはどうやって音波を発するのでしょうか?

ハクジラは鼻の穴が一つしかなく、頭部にメロン体という脂肪の塊を持っています。メロン体は音波のレンズの働きをします。鼻腔で発生させた音波は、メロン体で屈折収束することで、指向性の高い音波になります。鼻腔が一つしかないのは安定な音波を発生させるためでしょう。音波の受信は、眼の後方にある耳孔ではなく下顎骨を用いています。ここから骨伝導で内耳に伝えられます。耳骨は厚く緻密にできています。ハクジラの頭骨にはメロン体を収める窪みがあり、ACEイベントがあった年代にハクジラはすでにエコロケ-ション能力を獲得していたと考えられています。

どうしてクジラにはヒゲクジラと歯クジラがあるのでしょうか?

3400万年前のACEイベントに合わせて、原始クジラの一部は大量のオキアミが採れる「ヒゲ」を発達させたことが古クジラの化石研究から分かってきました。このころ数100万年で急速に進化し、完全なヒゲクジラが出現しました。このときにヒゲをもたないプロトケタスは絶滅しました。一方で水中でのエコロケ-ション(反響定位)能力を獲得したマッコウクジラなどのハクジラが出現し、ハクジラも形を変えて生き延びました。

1500万年前にクジラの故郷が消滅

2500万年前~1500万年前は中間的な気候で海水面は現在より100m高かったと言われています。中新世が始まる2300万年前に南極収束線が完成します。南極収束線は、南極を取り巻く潮の境界のことです。ここで南極大陸に沿って輸送される冷たい海水とその外側の亜南極の比較的暖かい海水が出会います。中新世中期1500万年前にテチス海が閉じ、クジラの故郷が消滅しました。クジラはグロ-バルな海生動物になることで、生き延びました。

850万年前の珪藻増大イベントPACE1(=PAcific Chaetoceros Explosion)

1500万年前~1000万年前にヒマラヤ山脈は標高5000mに達し、地球は再び寒冷化します。1500万年前以降には南極に氷床が現れます。この間に多くの種類のクジラが絶滅しました。850万年前には太平洋でキ-トケロス珪藻の産出増大が見つかっており、PACE1イベントと呼ばれています。寒冷化による湧昇の活性化が生じた証拠だと考えられています。PACE1イベントに合わせて、オキアミの種類が増大し、現生14種類のヒゲクジラが出現しました。このころクジラの頭骨化石のサイズが2倍になりました。餌が豊富になったために、イルカ、セイウチ、ペンギン、カワウソやイタチの種類も増加しています。

250万年前の珪藻増大イベントPACE2

270万年前に中央アメリカ海峡が閉鎖されました。温暖なメキシコ湾流が太平洋に抜けられなくなり、大西洋北部に流れ込み、北米に大量の雪を降らせました。それ以降、北半球にも氷床が現れます。250万年前にも太平洋でキ-トケロス珪藻の産出増大が見つかっており、PACE2イベントと呼ばれています。クジラの頭骨化石のサイズが6倍になりました。餌が豊富になったために、アザラシやオットセイの種類も増加しています。

ヒゲクジラ

鯨のヒゲは人間の爪と同じケラチンでできています。クロミンク鯨には長さ50cmの300枚のヒゲ板があります。口を開けて泳ぎ、海水からオキアミやカイアシなどの餌を漉しとって食べます。ヒゲクジラの餌の採り方には3種類あります。漉し採り型のセミクジラ、飲み込み型のナガスクジラ、掘り起し型のコクジラの順番に進化しました。湧昇の活発化により海水が濁り、視界が悪くなったために、ヒゲクジラは漉し採り型で小魚やオキアミを捕獲するようになったのではないかと考えられます。飲み込み型クジラは大量の海水を飲み込むためにアコ-ディオン状の畝(うね)をもっています。掘り起し型クジラは、海表面での競争を避けて、海底に棲む生物を食べるクジラです。巨大なクジラは水族館では見られません。私も巨大クジラはテレビでしか見たことがありません。

クジラの進化史

・クジラの祖先とその環境

5500万年前の始新世の初期は温暖で、海面は現在より200mも高いものでしたが、それから徐々に寒冷化していきました。そのころにはインド大陸は南極大陸から分離して、北上していました。インド大陸にはクジラの祖先であるアンブロケタスなどのカバに似た4つ足の陸生哺乳動物がいました。

3000万年前にインド大陸はユ-ラシア大陸と衝突し、ヒマラヤ山脈を形成し始めます。ヒマラヤ山脈には海底の堆積物が激しく褶曲した地層があり、多数のアンモナイトの化石が発見されています。ヒマラヤ山脈が形成されると、寒冷・乾燥化し、モンス-ン(季節風)が強化されました。ヒマラヤを流れる河川による風化浸食と風塵により、大量の栄養塩が海洋に供給されたと考えられています。

衝突前にはユ-ラシア大陸とインド大陸(あるいはアフリカ大陸)の間にはテチス海(Tethys Ocean)という浅い大海が広がっていました。テチス海は赤道上にあったので、赤道反流が西から東にテチス海を流れていました。温暖な気候の浅海では植物プランクトンが大繁殖しました。その死骸が海底に降り積もってできたのが現代の中東地区の石油だと考えられています。クジラの祖先は河畔から安全で豊富な餌が得られるテチス海に住むようになりました。体型も水中生活に適応し、プロトケタスという尾ヒレをもつ古代クジラが出現しました。

寒冷な漸新世で植物プランクトンが大量発生

漸新世が始まる3400万年前にオーストラリア大陸が南極大陸から離れ、南極還流が形成されました。低緯度地域で発生した暖流が南極大陸に接近できなくなり、急速に寒冷化が進み、両極には氷床が出現しました。氷床は太陽光を反射するので気温が下がり、氷床は拡大します。沿岸の海面が氷結すると塩分濃度の高い海水が大量に発生し沈み込みます。南極海沿岸は栄養塩濃度の高い深層海水が湧昇し、プランクトンやそれを食するオキアミが大量発生しました。植物プランクトンは光合成するので、温室効果ガスであるCO2が減少し、寒冷化に寄与します。

微化石の研究からACE(=Atlantic Chaetoceros Explosion)と呼ばれるキ-トケロス珪藻の爆発的な増大イベントが生じたことが分かっています。キ-トケロス属は湧昇流が活発な地域に生息する珪藻です。栄養状態が悪くなると、キ-トケロス珪藻は休眠胞子状態になり、海底の泥層に沈みます。湧昇流が起こり、栄養状態がよくなると、休眠胞子は表面層まで巻き上げられ、光を受けて休眠から目覚めます。通常、珪藻のガラス殻は薄く、化石として残らないのですが、キ-トケロス珪藻の休眠胞子状態のガラス殻は厚いために、20μm~50μmサイズの微化石として残ります。

三大植物プランクトンをご存知ですか?

海中の三大植物プランクトンは珪藻と渦鞭毛藻と円石藻です。これらは真核生物です。大きさは珪藻が20~50μm、渦鞭毛藻が50μm、円石藻が10μm程度です。

珪藻は、10万種ありますが、球形の中心類と細長い羽状類があり、いずれも弁当箱のようなガラス質(珪質)の殻をもっています。珪藻は細胞がガラスで囲まれているため、光を効率よく吸収できます。珪藻はガラス殻が重いために表層に自ら留まることはできませんが、渦流がある沿岸域や湧昇域では留まることができます。

珪藻は分裂時に内側に殻を形成するので、分裂するたびに少しずつ小さくなります。限界に達すると、有性生殖に切り替わり、増大胞子をつくりサイズを回復させます。沿岸湧昇域に生息するキートケロス属の珪藻は、低栄養塩濃度になると休眠胞子となり、海底に沈み、湧昇が活発になると、浮上してきます。

渦鞭毛藻は、2000種ありますが、半数は動物的なプランクトンです。鞭毛は、栄養塩濃度が低下した周囲の層を攪拌することで、周囲の栄養塩濃度を回復するのに役立ちます。あるいは鞭毛を使って、夜間に栄養塩濃度の高い深層に移動することもできます。単相で分裂して増えますが、栄養状態が悪くなると、複相(DNA2組)で接合繁殖します。休眠シスト状態にもなれます。渦鞭毛藻は赤潮の原因になります。

円石藻は、200種ありますが、すべて海産性です。コッコリスという石灰質円板の鱗片をもつ球形プランクトンです。天然のチョ-クは円石藻が沈殿してできたものです。円石藻が死ぬと沈降しますが、海底に到達する前に溶解してしまいます。円石が堆積するためには、動物プランクトンなどに捕食されて糞ペレット(fecal pellet)になる必要があります。

円石藻は微化石として大量に出土する為、現生種の何倍もの化石種が記載されており、示準化石として利用されています。円石藻の多くは貧栄養の外洋を好みます。Caイオンと炭酸水素イオンからCaCO3を形成する際にCO2を発生させますが、光合成によるCO2消費の方が多いようです。円石の役割には集光、CO2貯蔵、沈降防止、捕食防御など諸説あります。円石藻は白潮の原因になります。

円石藻はジメチル硫黄(DMS)を大気中に放出します。DMSは光化学反応して、SOxに変わります。こうした硫黄化合物は雲の核となり、雲形成を促進し、温室効果や地球の反射率を高める影響があります。

植物プランクトンはなぜ小さいのか?

植物プランクトンは光合成のために明るい表層に浮遊しなければなりません。また栄養塩の少ない表層で効率よく栄養塩を摂取するために、表面積が大きくなければなりません。しかし細胞原形質は海水より密度が高いのです。従って植物プランクトンは数十ミクロンの小さな大きさを保っています。動物プランクトンは、浮遊して小さい植物プランクトンを効率よく食べるために、小さくなっています。

植物プランクトンの生産性

植物プランクトンの寿命は6日程度です。1週間すると1回分裂し、その半数は死んで沈降するか他の動物プランクトンに捕食されます。こうした海洋生物は世代交代が非常に速く生産性が高いのが特徴です。実際、海中生物量は3Pg(炭素換算1012kg)ですが、陸上生物量300Pgの1%に過ぎません。しかし海中生物の炭素移動量は陸上生物の80%を占めています。海洋と陸上の平均的P(年間生産量)/B(生物量)比は

・ P/B(海洋)=152[g/m2/年]/10[g/m2]=15.2 [1/年]

・ P/B(陸上)=721[g/m2/年]/12300[g/m2]=0.059 [1/年]

です。大陸棚のP/B比は36となり、海洋平均値15.2の2倍以上になります。海洋は陸上より生産性が260倍(=15.2/0.059)も高いことになります。生産量の観点からすると海洋は陸上より時間が2桁以上速く流れているのです。

レッドフィールド比(Redfield、1890~1983)について

Redfield博士はアメリカ東海岸沖の深層海水中の炭素と窒素とリンの比率は

・ C:N:P=106:16:1

でほぼ一定であることを見出し、海性植物プランクトンのN/P比も深層水中のN/Pに等しいと考えました(1958)。表層のN/P比はばらつきがありますが、16より小さいです。現在500m以深の海水中の硝酸塩とリン酸塩比の平均値は、大西洋で15.0、太平洋で14.8、インド洋で14.3であると報告されています(Falkowski, 2007)。資源競争条件での化学量論モデルによれば、微細藻類の最適N/P比は、対数増殖期で8.2です(Klausmeier、2004)。近年の調査では、プランクトンの栄養含有比はプランクトンが棲息する緯度によって変わり、栄養が少ない赤道では195:28:1、栄養が豊富な極地方では78:13:1と明らかな違いが見られています(Adam Martiny、2013)。 

クジラはどのように進化してきたのでしょうか?

近年クジラの進化史が解明されつつあります。プレ-トテクトニクスによる大陸移動は、海峡封鎖や造山運動を引き起こし、海流を変化させ、気候を寒冷化させてきました。寒冷化による海底栄養塩の湧昇は、プランクトンやオキアミの大発生を引き起こし、クジラの餌を豊富に供給したのです。クジラヒゲはオキアミを効率よく捕獲できるので、クジラが巨大化しました。

1か月前に名古屋大学の須藤斎(いつき)准教授が書かれた「海と陸をつなぐ進化論」(Blue Bucks)を参考にして、クジラとプランクトンの共進化の歴史を紹介しましょう。ちなみに須藤准教授は珪藻という植物プランクトンの専門家です。須藤氏は珪藻が大発生した3つのイベントと海洋生物の進化の関係を研究されています。

大昔の海水温度を推定する酸素同位体比

酸素には3 種類の同位体が存在ますが、海水の酸素は16O(軽い水)と少量の18O(重い水)で構成されています。海水が蒸発し、積雪によって氷床に取り込まれ易いのは軽い水なので、軽い水が氷床に取り込まれます。そのため、氷床が拡大する氷期の海水は相対的に重い水が多くなり、逆に間氷期の海水は軽い水が多くなります。海水中を漂う石灰質有孔虫は海水を使って石灰質の殻を作ります。この殻には水温が低いほど、重い海水が多いほど多くの18O が取り込まれるので、酸素同位体比18O/16O は水温が低い氷期に大きくなります。

クジラ肉にはどんな利点があるのでしょうか?

クジラ肉は栄養があり、上手に調理すると大変美味しいと言われています。クジラの赤身肉は魚肉よりは牛肉に近い触感です。

・クジラ肉の利点1 ~ バレニン

鯨肉は、鶏ささみと同等の熱量で、その脂肪分は鶏ささみの半分です。だから鯨肉は筋トレやダイエットに理想的なタンパク源になります。ヒゲ鯨の肉には、抗疲労機能をもつバレニンが大量に含まれています。ニワトリや牛には100g当たり2~5mgしか含まれていませんが、ミンククジラ(ヒゲクジラ)の赤肉100gには1,900mgのバレニンが含まれています。但しマッコウクジラ(歯クジラ)には3mgしか含まれていません。

 ヒゲクジラは、春から夏にかけて栄養塩が湧昇する高緯度地方で餌を取りたっぷり脂肪を蓄えます。秋になると大移動し、低緯度地方で餌を食べずに生殖と子育てをします。低緯度地方の海は、暖かく透明なので、皮下脂肪が不十分な子クジラを育て守るために適しているのです。大海原を泳ぎ続けるヒゲ鯨のスタミナは、バレニンに秘密があると言われています。

バレニン(Balenine)とは

バレニンはイミダゾール・ジペプチドの一種で、メチル化ヒスチジンとβアラニンという2つのアミノ酸が結合した物質です。ヒスチジンはイミダゾール基を有する必須アミノ酸で、イミダゾール基は窒素を2つ含む五員環です。ヒトの生体内では、乳酸の分解促進に関わり、疲労回復に効果があります。バレニンは、消化吸収時に2つのアミノ酸に分解されますが、体中で再合成されます。ヒトの場合、脳細胞、筋肉などの消耗の著しい部位に、イミダペプチド合成酵素が豊富に存在するために、酸素消費が多く発生する部位で、バレニンが再合成されやすく、抗酸化作用が発現しやすいと言われています。

・クジラ肉の利点2 ~ ヘム鉄とDPA(ドコサペンタエン酸)

クジラの赤肉には吸収されやすいヘム鉄が含有され、貧血の予防に役立ちます。鯨肉は安全で栄養価の高い動物性タンパク源であり、アレルギー患者が安心して食べられる代替タンパク源です。クジラ肉には血液の流れをよくするDPAが含まれています。

・クジラ肉の利点3 ~ コラーゲン

クジラのベーコンにはコラーゲンが多く、その原料となる畝須(うねす)には28%ものコラーゲンが含まれています。畝須とは、クジラの下あごから腹部にかけての畝状の部分です。上部の脂身をウネ、肉部をスノコ と呼ぶので、「うねす」という名前になったそうです。クジラのベーコンは畝須を塩漬けにしてから燻製にしたものです。

世界の漁獲高

世界の漁獲高は、養殖も含めて、2.0億トンです。上位12位までを紹介すると、中国8152万トン(1位)、インドネシア2320万トン、インド1078万トン、ベトナム642万トン、米国537万トン、ロシア495万トン、日本434万トン(7位)、フィリピン423万トン、ペル-391万トン、バングラディッシュ388万トン、ノルウェ-353万トン、韓国325万トン(12位)です。中国が圧倒的1位で、日本は第7位です。中国は日本の10倍の人口ですが、漁獲高は日本の19倍です。世界の漁獲量が頭打ちとなる中で、1990年代以降には、主に中国が養殖生産量を急拡大し、世界の水産物需要の増大を支えています。

・マッコウクジラの漁獲高

マッコウクジラの餌消費量は9000万トン~2億トンと推定されています。マッコウクジラは10万匹いますが、13億人の中国人より魚を食べています。但しマッコウクジラは、人類が捕獲できない深海に生息するイカやサメを主食としています。

日本の魚の国内消費

日本は魚が足りない状況です。日本は供給魚の50%を海外から輸入しています。養殖は10%、漁獲量は40%です。日本の魚の95%は国内で消費されます。輸出されるのは5%だけです。ノルウェ-の場合は、輸入が28%、養殖が15%、漁獲量が58%です。国内消費は45%で、輸出が55%です。日本よりバランスがとれており、余裕があります。

何故日本は国際捕鯨委員会(IWC)から脱退したのでしょうか?

IWCの本来の目的は「鯨類資源の保存と有効利用」と「捕鯨産業の秩序ある発展」の2つでした。しかし1980年代に反捕鯨を唱える非捕鯨国の加盟が急増し、1982年に商業捕鯨の一時停止が採択されました。 そうした状況の中、ノルウェ-は1993年から、アイスランドは2006年から商業捕鯨を再開し、ついに日本も商業捕鯨を再開する方針を固めました。

日本人は縄文時代からクジラ類を食してきた習慣があります。日本にとって鯨類資源は重要な食料資源です。日本は、30年間科学的調査を行い、鯨類資源が持続的に利用可能であることを実証してきました。しかし非捕鯨国は捕鯨国が持続的に商業捕鯨をする必要性を認めようとしませんでした。日本政府は、IWCは本来の目的を実現できないと判断し、2018年12月26日にIWCを脱退しました。今後日本はIWCにオブザーバとして参加し、科学的知見に基づく鯨類の資源管理に貢献します。立場を共有する国々と連携し、IWCの機能回復を目指すとのことです。

実際にクジラを持続的に利用できるのでしょうか? 

クジラの種類によって持続的に利用可能な捕獲数が異なります。例えばクロミンククジラは十分な資源量が確認されているので、持続的利用が可能です。水産庁によると、クロミンククジラの推定数は51.5万匹で、毎年0.2%(1000匹)捕獲しても数量を維持できるとのことです。日本は調査のため毎年850匹を捕獲しています。希少なクジラを保護しながら、数量の多いクジラを計画的に捕獲することは、漁獲量の向上にもつながります。クジラ肉は栄養があり、上手に調理すると大変美味しいと言われています。

日本は2019年7月から30年ぶりに商業捕鯨を再開する予定です。商業捕鯨は、日本の領海及び排他的経済水域に限定され、南半球では捕獲を行いません。捕鯨はIWCの捕獲枠の範囲内で行われます。