どうしてクジラにはヒゲクジラと歯クジラがあるのでしょうか?

3400万年前のACEイベントに合わせて、原始クジラの一部は大量のオキアミが採れる「ヒゲ」を発達させたことが古クジラの化石研究から分かってきました。このころ数100万年で急速に進化し、完全なヒゲクジラが出現しました。このときにヒゲをもたないプロトケタスは絶滅しました。一方で水中でのエコロケ-ション(反響定位)能力を獲得したマッコウクジラなどのハクジラが出現し、ハクジラも形を変えて生き延びました。

1500万年前にクジラの故郷が消滅

2500万年前~1500万年前は中間的な気候で海水面は現在より100m高かったと言われています。中新世が始まる2300万年前に南極収束線が完成します。南極収束線は、南極を取り巻く潮の境界のことです。ここで南極大陸に沿って輸送される冷たい海水とその外側の亜南極の比較的暖かい海水が出会います。中新世中期1500万年前にテチス海が閉じ、クジラの故郷が消滅しました。クジラはグロ-バルな海生動物になることで、生き延びました。

850万年前の珪藻増大イベントPACE1(=PAcific Chaetoceros Explosion)

1500万年前~1000万年前にヒマラヤ山脈は標高5000mに達し、地球は再び寒冷化します。1500万年前以降には南極に氷床が現れます。この間に多くの種類のクジラが絶滅しました。850万年前には太平洋でキ-トケロス珪藻の産出増大が見つかっており、PACE1イベントと呼ばれています。寒冷化による湧昇の活性化が生じた証拠だと考えられています。PACE1イベントに合わせて、オキアミの種類が増大し、現生14種類のヒゲクジラが出現しました。このころクジラの頭骨化石のサイズが2倍になりました。餌が豊富になったために、イルカ、セイウチ、ペンギン、カワウソやイタチの種類も増加しています。

250万年前の珪藻増大イベントPACE2

270万年前に中央アメリカ海峡が閉鎖されました。温暖なメキシコ湾流が太平洋に抜けられなくなり、大西洋北部に流れ込み、北米に大量の雪を降らせました。それ以降、北半球にも氷床が現れます。250万年前にも太平洋でキ-トケロス珪藻の産出増大が見つかっており、PACE2イベントと呼ばれています。クジラの頭骨化石のサイズが6倍になりました。餌が豊富になったために、アザラシやオットセイの種類も増加しています。

ヒゲクジラ

鯨のヒゲは人間の爪と同じケラチンでできています。クロミンク鯨には長さ50cmの300枚のヒゲ板があります。口を開けて泳ぎ、海水からオキアミやカイアシなどの餌を漉しとって食べます。ヒゲクジラの餌の採り方には3種類あります。漉し採り型のセミクジラ、飲み込み型のナガスクジラ、掘り起し型のコクジラの順番に進化しました。湧昇の活発化により海水が濁り、視界が悪くなったために、ヒゲクジラは漉し採り型で小魚やオキアミを捕獲するようになったのではないかと考えられます。飲み込み型クジラは大量の海水を飲み込むためにアコ-ディオン状の畝(うね)をもっています。掘り起し型クジラは、海表面での競争を避けて、海底に棲む生物を食べるクジラです。巨大なクジラは水族館では見られません。私も巨大クジラはテレビでしか見たことがありません。

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