新型コロナ肺炎はインフルエンザとどこが似ているのでしょうか?

これら2つのウイルスはエンベロ-プをもつRNA型ウイルスです。エンベロープは、ウイルスのRNAを覆うカプシドを覆う脂質膜です。ウイルスが細胞外に出る際に細胞膜を被ったまま出芽することで獲得したものです。エンベロープには、ウイルス遺伝子がつくるエンベロープ・タンパク質が発現しています。エンベロープタンパク質は細胞側が持つレセプターに結合して、ウイルスが宿主細胞に吸着・侵入する役割を果たします。エンベロープは脂質から成るため、これらのウイルスはエタノールや石けんなどで処理すると容易に破壊できます。コロナ、インフルエンザの他に、風疹、日本脳炎、C型肝炎はエンベロ-プを持つRNA型ウイルスです。

天然痘や帯状疱疹やB型肝炎のウイルスはエンベロ-プを持つDNA型ウイルスです。帯状疱疹ウイルスは、水痘(Varicella)と帯状疱疹(Zoster)を引き起こすウイルスです。初感染時に水痘を引き起こし、治癒後に神経細胞周囲の外套細胞に潜伏しており、免疫力が低下するとウイルスが再び活性化して、皮膚に特徴のある帯状疱疹を引き起こします。ヘルペス用の抗ウイルス薬があります。

エンベロ-プを持たないDNAウイルスにアデノウイルスがあります。エンベロ-プを持たないRNAウイルスには、ノロウイルス、ロタウイルス、A型肝炎ウイルスがあります。エンベロ-プを持たないために、消毒が大変です。

アデノウイルスは直径80nmの正20面体のカプシドとそれに覆われた線状二本鎖DNAからなるウイルスです。アデノウイルスは感染性胃腸炎や風邪症候群を起こします。感染した場合、アデノウイルスは扁桃腺やリンパ節の中で増殖します。プール熱(咽頭結膜熱)とよばれ、高熱と微熱を繰り返す期間が4〜5日ほど続き、扁桃腺が腫れ、のどが痛みます。主要症状がなくなった後、2日間登校禁止となります。80%エタノールによる不活化時間は2分です。リネン類は、85℃10分間以上の洗濯、または水洗後に次亜塩素酸ナトリウム0.1%での消毒をします。

ノロウイルスによる集団感染は学校や養護施設などで散発的に発生しています。ノロウイルスは直径30-38nmの正二十面体のカプシドとそれに覆われたRNAからなるウイルスです。ノロウイルスは乾燥した状態でも、20℃で4週間以上感染力を保ちます。1968年、アメリカ合衆国オハイオ州ノーウォークの小学校において集団発生した急性胃腸炎患者の糞便から初めて検出されたので、ノーウォーク・ウイルスと命名され、ノロウイルスと呼ばれるようになりました。感染は経口感染で、腸から感染して増殖し、新しく複製されたウイルス粒子が腸管内に放出されます。10から100個程度の少数のウイルスが侵入しただけでも感染・発病が成立します。ノロウイルスはエタノールでは消毒できません。

パルスオキシメーターの測定原理

「パルスオキシメーター」は1974年に日本光電工業の青柳卓雄らによって発明された医療機器です。パルスオキシメ-タ-は手術中の酸欠死を激減させた他、酸素過多による未熟児網膜症の防止や救急現場での救命率の向上に貢献しました。1977年にミノルタカメラ社の山西昭夫らによって世界初の指先測定タイプのパルスオキシメータが商品化されました。登山者の高度順化の目安、睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング診断にも利用されます。

このセンサは指先の動脈を透過する赤色光と赤外光のパルス強度比を測定します。パルスとは脈動のことです。脈動するのは動脈血管だけなので、透過光のパルス振幅が動脈血の情報を含んでいます。比率を測定するのは、皮膚組織厚や血管の太さや血球密度などHbの酸素濃度以外に透過光強度に与える影響を除去するためです。酸素と結合したHbO2は波長660nmの赤色光を殆ど透過しますが、酸素のないHbは赤色光をよく吸収します。赤外光はどちらも同程度透過します。従って赤色光の透過光強度が減少すると、HbO2が減少したことが分かります。予め血液を採取して別の方法で酸素飽和度を測定し、パルス透過光の強度比変動と対応づけて公正係数を求めておきます。測定したパルス透過光の強度比変動に公正係数をかけることで、動脈血の酸素飽和度を求めることができます。この装置の原理上、一酸化炭素中毒は検出できません。毎日体温・血圧と共に酸素濃度も計っておくといいかもしれません。発明者の青柳卓雄氏は2020年4月18日に84歳で老衰で亡くなられました。

新型コロナ肺炎はサイレント肺炎

新型コロナウイルスは肺胞に感染し、自覚症状がないままに、徐々に肺炎を進行させます。1週間の潜伏期間の後、急に発熱し呼吸困難になる特徴があります。糖尿病や腎臓病などの血管系の疾患がある人は、微熱が2日継続したら甘く見ないで、保健所などに連絡して検査を受けた方がいいでしょう。検査で陽性判定がでたら、公共交通機関を避けて入院するなど、適切に行動する責任があります。肺炎が重篤化したら、人工呼吸や人工心肺装置をつけて酸素呼吸を確保します。自分の免疫反応によりウイルスを抑制していくしかありません。
呼吸困難の目安としてパルスオキシメーターが用いられます。パルスオキシメーターは血中酸素飽和度(SpO2)を手軽に測定する装置です。5,000円~30,000円で入手できます。50gと軽量で携帯できます。血液を採取することなく、リアルタイムにモニタリングできるため肺炎による低酸素血症の早期発見や呼吸管理に役立ちます。
測定方法は、安静な状態で指先を暖めて血流を良くして、測定器に指先を差し込んで、動脈血中の酸化ヘモグロビン(HbO2)と還元ヘモグロビン(Hb)の密度比を測定します。正常値は97%から100%です。呼吸不全はSpO2= 90%に相当します。SはSaturation(飽和度)、pはpercutaneous(経皮的)を意味しています。

インフルエンザと新型コロナウイルスはどこが異なるのでしょうか?

インフルエンザは風邪より高熱が出て、関節痛などが生じる伝染病です。日本では毎年、新型インフルエンザが流行しており、ここ5年間は増加傾向にあります。日本のインフルエンザの感染者数は年間1000万人程度で、毎年3000人程度が死亡しています。つまり致死率は0.1%以下です。感染者の70%は未成年者であり、死亡者の殆どは免疫力の低い70歳以上の老人です。

日本の病院は1000万人のインフルエンザ患者に対応できるのだから、1.5万人の新型コロナ患者を受け入れるのはたやすいことだと考え、日本政府はコロナ感染拡大を誇張して報道させているのではないかと疑っている人がいます。しかし実際はそうではありません。

インフルエンザで入院する患者数は多い年で1万人近くになります。1週間経過後は徐々に回復して退院する人もでてくるので、ピーク時の在院者数は8000人(=9500人×0.85)程度だと推測できます。日本には感染者用の病床が12500床あるので、ピーク時の2月ごろは、毎年病床の40~65%がインフルエンザの患者さんで埋まることになります。これは決して余裕のある数字ではありません。実際は、病院数を削減しているので、高齢化社会になって増加するインフルエンザ患者を受け入れることは深刻な問題なのです。しかしインフルエンザの場合、学級閉鎖はあっても、サラリーマンに在宅勤務や主婦に外出制限をかけることはありませんでした。

社会がインフルエンザを許容しているのはいくつか理由があります。例えばインフルエンザの場合、
1) 重篤化率が1%、致死率が0.1%以下と低い。
2) 感染者の殆どが若者で、1週間程度で回復する。
3) 簡易検査薬や抗ウイルス薬があり、早期対応と症状軽減ができる。
4) 多くは季節性のもので、必ず収束する。
5) 感染後に獲得した免疫が持続するので、同じものには感染しなくなる。
6) 多くの人が免疫を獲得するので、感染が広がりにくくなる。
といった理由があるからです。インフルエンザは毎年流行するタイプが異なるので、完全に適合するワクチンが製造できません。完全に適合するワクチンを所有している人は、その新型インフルエンザウイルスを製造した人でしょう。そうなると流行は自然現象でなくなります。

それでは新型コロナ肺炎(COVID-19)はどうして社会的に許容されないのでしょうか? それは
1) 重篤化率が20%、致死率が4%以下と高い。
2)感染者の多くが高齢者や疾患保持者であり、重症化しやすい。
3)簡易検査薬や抗ウイルス薬が利用できず、早期対応と症状軽減ができない。
4)季節性がなく、潜伏期間が長く、感染が収束する保証がない。
5)感染後に獲得した免疫が持続するか不明である。
6)多くの人に免疫を獲得させられないので、感染が広がりやすい。
といった理由です。免疫の持続性が保証できれば、集団免疫獲得戦略を採用し、医者と病床数を確保できれば、社会的に許容する方向に進むかもしれません。しかし日本は医者の収入を守るために、医師数を厳しく制限しています。

 現在の感染状況を見てみましょう。5月9日現在、東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイト(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)によると、東京都の陽性者は4846人で、死亡者180人、退院者2152人、入院中2514人です。入院中の内訳は、軽症・中等症者2431人、重症者83人です。東京都の病床数は2000床なので、400人余りはホテルに隔離滞在していると思われます。陽性者の致死率は3.7%です。
ダイヤモンドプリンセス号の場合、3711人の乗客乗員のうち、712人が感染し、13人が死亡しました。感染率は19.2%、陽性者の致死率は1.8%でした。これは中国起因の感染で、現在東京都で感染しているウイルスは欧州起因のものだと考えられています。欧州起因のウイルスの致死率の方が2倍高いのかもしれません。

日本人がコロナ自粛から学ぶべきもの

コロナ自粛の継続は、経済的な痛手ではありますが、日本企業にとって社員の健康管理や在宅勤務を取り入れた働き方を推進する良い機会になると思います。長距離通勤は、健康とエネルギと時間の浪費でした。行政を書面処理からオンライン処理に切り替えることで感染を避け、人員を削減できます。教育機関も遠隔教育を取り入れることで幅広い受講生を獲得できるでしょう。機械の身体を得て火星に移住する必要はありません。そんなことを学ぶために受験競争をするのはバカげています。勉強してマスクの一枚も満足に配れない総理大臣になっても仕方がないのです。教育内容は、専門バカを量産する教育から、豊かな生活と健康につながる教養教育に変化するでしょう。

豊かな生活は子どもに恵まれた生活です。産科医療を改革すれば、痛みなく障害のない健康な子どもを産んで育てられ、少子化問題が解決します。遠隔ワ-クにより自然環境のよい場所で子育てすることが可能になります。在宅ワ-クが中心になれば、地域社会に関わる機会が増え、高齢者になっても健康な生活が送れます。残業後にストレス解消にお酒を飲みすぎて体を悪くすることもなくなるでしょう。会社通勤や営業移動のストレスがなくなれば、健康に暮らせるのです。健康ならインフルエンザにかかっても、重篤化しません。早く治そうとして風邪薬を飲むこともなくなります。無駄な移動を無くせば、燃料の節約になり、交通渋滞や事故が減少し、大気汚染も防げるのです。コロナ自粛が日本の社会を改善するよい契機になることを願っています。

社会はウイルス感染症をどの程度許容するべきでしょうか?

これから早急に答えを出していかなければならない難しい問題です。毎年日本では季節性のインフルエンザが流行し、多くの人が感染し、亡くなっています。しかし政府はインフルエンザの感染拡大防止のために外出自粛を要請することはありませんでした。その理由は、多くのインフルエンザの流行は自然現象であり、流行期間は集団免疫の獲得により3カ月程度で終了し、死亡者は老人が多く、社会に対する影響が限られているからです。
 新型コロナ肺炎の場合、政府は7割~8割の接触削減を実現する外出自粛を要請しました。その理由は、国民の生命と生活を守るためです。具体的には
1) 新型コロナ肺炎の致死率が高く、放置すれば多くの死者が発生する。
2) 獲得免疫の持続期間が短ければ、流行が慢性化する。
3) 医療体制が崩壊すると、他疾患の患者が死亡する。
4) 長期の外出禁止政策により失業者が増大し、生活が困窮し治安が悪化する。
などの可能性があり、国民の生命と生活に与える影響が大きいからです。特に糖尿病や高血圧症や心疾患や腎疾患を有する人が新型ウイルスに感染すると重篤化します。

今後このような新型ウイルス感染症が発生するたびに国民の生命と生活が打撃を受けることになるでしょう。この問題が困難なのは、生命を守れば、生活が守れないというジレンマがあるからです。私たちはウイルス感染の拡大を早期に検出分析し、どの程度行動制限をかけるか、どの程度生活補償をするかを迅速に判断できる透明な体制を整えなければなりません。医療介護、小売り、清掃、配達員などの社会基盤維持に不可欠な労働者の生活健康保障も重要です。健康弱者の保護、健康格差の是正にも取り組むべきでしょう。
地震や津波などの自然災害とウイルス感染の流行が重なったら、避難や復興のために人が集まることで感染が拡大してしまします。こうした緊急事態に備え、対処していくことも課題になります。例えば隔離病床に使用できるホテル設計や遠隔医療は重要です。これからの日本の成功は、防災需要で経済を活性化させる仕組みづくりにかかっています。

新型コロナウイルスについて

日本政府は、4月7日に新型コロナウイルスの感染拡大を受け、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく初の「緊急事態宣言」を発令しました。期間は1か月、対象地域は東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡の7都府県でした。4月17日に対象地区は7都府県から全都道府県に拡大されました。政府は感染拡大抑制のために、マスクの着用だけでなく、教育機関の授業中止、飲食店の営業自粛、観光客の観光自粛、公共交通の利用自粛、スポ-ツや文化活動の自粛など、全国規模の外出自粛を要請してきました。しかし医療機関は感染患者の受け入れのため病床数を拡大していますが、保健所による感染検査施設の設置は進まず、いくつかの病院では院内感染が発生しています。医療崩壊や介護崩壊を防止するために、日本国民はこれまで政府の自粛要請によく協力してきました。幸い5月6日の時点で感染者数は減少傾向を見せており、一部の地域の外出制限は解除されました。しかし東京都、北海道、石川県での非常事態は継続されており、国民の不安はまだ続いています。集団免疫が獲得できていないため、第二、第三の流行の可能性があるからです。

日中自宅で過ごしていると、新型コロナ関連のネット情報やテレビ番組が数多く報道されています。しかしウイルス感染症に対する科学的な理解を深める番組は殆どありません。マスコミは連日感染者数を報道していますが、具体的な治療内容は報道されていません。自粛要請で仕事を解雇されて、食費を減らさなければならない人も多く発生しています。多くの人は連休中に帰省することさえできなくなっています。地方自治体はすべての公園の駐車場を閉鎖したために、公園を自動車で利用する人は、健康のために公園で散歩することもできなくなりました。
このような社会的・経済的な停滞が長期化すると、国民の生活、健康、教育が疲弊していきます。政府は、この緊急事態にマスコミや支援給付金を利用して権力を強化し、国民を一方的に監視・管理する法律を成立させることもできます。そうなればたとえ感染者が減少しても一度成立した法律は元に戻らず、民主的社会が崩壊する恐れもあります。国家が新型ウイルスを合成し、ウイルス兵器と解毒剤を開発している可能性もあります。
私たちは、
1) 感染症を科学的に理解し、感染症を回避する。
2) 発熱した場合には、適切に行動する。
3)適切な食事や会話や運動をして、心身の健康維持に努める。
4)政府や自治体に合理的な政策を求め、私たちの自由と生活を守る。
5)ウイルスと共存してゆける社会を構築する。
といった新たな課題を実行していかなければなりません。この5つの課題について考えていきたいと思います。