骨の成長を促すには?

骨の成長を促すには、睡眠、適度な運動、よい食事、愛情のある生活環境が必要です。成長ホルモンは夜間、ぐっすりと熟睡している間に分泌されるために睡眠を十分取ることが重要です。骨は運動などで力がかかるほど成長しますので、適度な運動も必要です。骨や体の材料となるタンパク質やカルシウムなどの豊富な食べ物をバランスよくとることが大切です。私の友人は背を伸ばそうとして、カルシウム剤を飲んでいましたが、効果がなくて止めました。カルシウムは、骨を強くする作用はありますが、骨成長を促進する作用はないそうです。また精神的ストレスが大きいと脳下垂体から成長ホルモンが分泌されにくくなり、睡眠や食欲が低下して、愛情遮断性症候群と呼ばれる低身長体になることがあるそうです。


骨の成長に必要なミネラルとビタミンは?
骨の成長に必要なミネラルとしてはマグネシウム、亜鉛、鉄分などがあります。各種のビタミンも骨の成長には欠かせません。ビタミンB6はアルギニンの合成や、コラーゲンの生成を促します。ビタミンB12は睡眠にかかわるメラトニンを調節し、ビタミンCはコラーゲンの生成を助けます。ビタミンDは小腸でのカルシウムの吸収を高め、ビタミンKは骨幹の形成を調節します。野菜や果物も骨の成長に関わりがあるということですね。

アルギニンはどうなの?
アルギニンというアミノ酸は成長ホルモンの分泌を促進するといわれており、アルギニンのサプリメントが販売されています。骨の成長を専門とするクリニックの見解では、アルギニンを服用して成長ホルモンの分泌が増えたとしても、骨成長が促進したという実例はないそうです。サプリメントで身長を伸ばすことは期待できないそうです。本当に効果があればそれはサプリメントではなく医薬品に認定されるでしょうね。

骨のリモデリングは10年周期

成人の骨は、全部で206本あり、その1つ1つが全部ちがう形をしています。骨代謝によって一定の形と密度を保ちながら、1つ1つの骨が少しずつ新しい骨に入れ替えられています。骨の重さは標準的体重の15%です。体重60kgの人であれば9kgほどになります。その内、骨髄が3kgあるとすると、骨本体は6kg程度になります。骨は1日1.6g程度更新されていので、およそ10年で体中の骨が入れ替わってしまうのです。私の骨は5回目の骨ということになります。大人になった後も、10年サイクルで骨は再生されているなんて、驚きですね。

運動と骨密度の関係
通常、運動選手は骨密度が高いと言われています。特に柔道選手は骨が丈夫だそうです。よく投げ飛ばされるからでしょうか?運動の衝撃によって骨内部に微細な骨折が発生し、それを修復する過程でカルシウムの沈着が促進されて骨密度が増加すると言われています。また骨に圧縮力が加わるとピエゾ電圧が生じるために骨芽細胞の働きが活発になり、Ca2+イオンが負電位の骨に引きつけられ吸着するとも言われています。一方、重力負荷の乏しい自転車競技や水泳競技の選手は骨密度が低いようです。自転車に乗っている時間が長い人は、運動しているのに骨粗鬆症になる場合があります。歩くより走った方が、衝撃があるので若さを保てるという報告も聞いたことがあります。

 

骨代謝に関わる2つの細胞

骨は永久不変ではなく、皮膚と同じように新陳代謝を行っています。つまり毎日、古い骨が壊されて、新しい骨が作られているのです。これを「骨代謝」といいます。具体的には破骨細胞(osteoblast)が古い骨を溶かし、骨芽細胞(osteoclast)が新しい骨を作ります。

破骨細胞は10個程度のマクロファージが融合した多核巨細胞であり、骨の表面を動き回って、酸やタンパク質分解酵素を分泌して、骨を溶かします。溶けたCaは、血液に取り込まれて新しい骨の材料になります。

骨芽細胞はⅠ型コラーゲンやオステオカルシンなどの骨基質タンパク質を合成・分泌して骨の石灰化にかかわります。つまりコラ-ゲンという鉄筋にオステオカルシンという接着剤を塗って、血液中のCaというセメントを付着させると考えればいいでしょう。骨芽細胞は男性ホルモンであるアンドロゲンと女性ホルモンであるエストロゲンの受容体を持っています。アンドロゲンは骨芽細胞の活動を抑制させ、エストロゲンは骨芽細胞の活動を刺激します。閉経後の女性は、エストロゲンの分泌が減少するために、骨芽細胞の活動性が低下し、骨粗鬆症になりやすいというわけです。閉経が起こる理由は、高齢で出産するリスクを避け、孫の世話をするためだと言われています。孫の数が多い女性ほど、寿命が長いという調査結果があります。

BBC放送「人体:成長の秘密」パート2 骨の成長

赤ちゃんは生後1年で体重が3倍、身長は2倍になります。身長が伸びるのは骨が成長するからですが、あの硬い骨がどうやって成長するのでしょうか?

骨は、骨端板が伸びることで成長します。骨端板は、骨端と骨幹の間にある軟骨層です。骨端板は骨端側に伸びる一方、骨幹側の軟骨は次第に骨化して、骨は長く成長します。骨膜の骨化により骨は太くなります。18歳頃になると、骨端線にある軟骨がすべて骨になり、骨端と骨幹が密着します。こうして身長が決まるのです。骨の成長は4つの遺伝子の影響を受けるようですが、二卵性双生児でも生育環境の違いで10cmくらいの身長差が生じることがあるそうです。遺伝がすべてを決めるのではないようです。

骨の成長のメカニズム
脳の下垂体から放出された成長ホルモンが、骨の軟骨細胞の分裂・増殖を促します。成長ホルモンが血流によって肝臓に届くと、肝細胞はソマトメジン-Cあるいはインスリン様成長因子(IGF-1)と呼ばれる物質をつくります。骨に運ばれたソマトメジン-Cが骨端軟骨の細胞を刺激して、急速な分裂を促します。この番組では軟骨細胞が次々と分裂し、骨が成長する様子が見られました。長生きすると驚くべき光景が見られます。

骨は生きている
骨は単なる硬い棒ではありません。骨の内部には細い血管が縦横無尽に張りめぐらされ、骨細胞が活動しています。そのおかげで骨折した骨も元通りに治るのです。神経は骨膜にあり、骨自体にはないようです。骨はよく鉄筋コンクリートに例えられます。コラーゲンが鉄筋、カルシウムがセメントというわけです。コラーゲンを芯にしてカルシウムを沈着させて、新しい骨をつくります。骨には体を支え、運動し、内臓を守る力学的な役割の他に、カルシウムを貯蔵する代謝的な役割があります。カルシウムはあらゆる細胞の機能や神経の伝達などに必要な物質です。