乾燥断熱減率と湿潤断熱減率の導出

乾燥断熱減率の導出
断熱過程と静力学平衡の式は比熱比をγ、空気分子1個の質量をMairとすると、
・ dT/T=(γ-1)/γ・dP/P (断熱過程)
・ dP=-(MairP/RT)gdz  (静力学平衡)
と表せました。この式からdPを消去すると
・ dT/T=-(γ-1)/γ・(Mair・g/RT)dz
つまり乾燥断熱減率を表す式
・ dT/dz=-(γ-1)/γ・Mair・g/R
が得られます。空気1モルの重さMは0.029(Kg/mol)ですから
・ dT/dz=-2/7・0.029(Kg/mol)・9.8(m/ss)/ 8.3(J/Kmol)=-9.8℃/km
が得られます。実は空気の定圧比熱は
・ Cp=γ/(γ-1)・R/Mair=(7/2)・287[J/KKg]=1004[J/KKg]
なので、乾燥断熱減率は
・ dT/dz=-g/Cp=-9.8(m/ss)/ 1004[J/KKg]=-9.8℃/km
と表されます。これはおよそ1℃/100mの温度勾配を意味しています。つまり山の斜面で空気塊が押上げらえると、水蒸気が水滴になるまで、100mにつき1℃の割合で空気塊の温度が減少することを示しています。

湿潤断熱減率の導出
乾燥断熱減率はg/Cpであることが分かりました。水滴を含む空気の湿潤断熱減率を求めましょう。湿潤断熱減率を求めるためには、飽和混合比を用います。水蒸気の質量をmv、乾燥空気の質量をmdとすると、飽和混合比qsは
・ qs=mv/md
によって定義されます。qsは圧力と温度に依存しています。乾燥空気と水蒸気の状態方程式はそれぞれ
・ PdV=(md/Mair)RT
・ PvV=(mv/Mwater)RT
で表されます。Pv/P≒3%なので
・ qs=(Mwater/Mair)Pv/Pd=(18/29)Pv/(P-Pv)≒0.622・Pv/P
と表されます。この関係式が重要です。飽和混合比qsは水蒸気圧Pvと全圧力Pの比になっています。両辺の対数を取って微分すると
・ dqs/qs=dPv/Pv-dP/P
となります。後で示しますがPv=Pv(T)、つまりPvは温度だけに依存します。飽和混合比の変化量は
・ dqs=(qs /Pv) (dPv/dT)dT-(qs/P)dP=(0.622 /P) (dPv/dT)dT-(qs/P)dP
と変形できます。湿った空気塊が上昇すると冷えて水滴が発生し、水蒸気圧が低下します。
水蒸気は水滴になるときに凝縮熱QL[J/Kg]を出します。発熱量は
・ d’Q=-QL・dqs=-QL・{(0.622 /P) (dPv/dT)dT-(qs/P)dP}
で与えられます。一方、第一法則は、気体の質量m当たりのエネルギの保存を考えると
・ d’Q=CpdT-(V/m)dP
ですから、両式のd’Qを消去し、dzで両辺を割ると、
・ -QL (0.622 /P) (dPv/dT)(dT/dz)+QL(qs/P)(dP/dz)=Cp(dT/dz)-(V/m)(dP/dz)
・ -Cp{1+(0.622 QL /CpP) (dPv/dT)} (dT/dz)=-{V/m+QL(qs/P)}(dP/dz)
となります。静力学平衡の式
・ dP/dz=-g(m/V)
を代入すると、右辺は
右辺=-{V/m+QL(qs/P)} g(m/V)=g{1+QL(qsm/PV) }=-g{1+QL(qsMair/RT) }
となります。ここでPV=(m/Mair)RTを用いました。乾燥空気の状態方程式を用いるのはよい近似となります。従って湿潤断熱減率は
・ dT/dz=-g/Cp{1+QL(qsMair/RT)}/{1+(0.622 QL /CpP) (dPv/dT)}
と表されます。g/Cpは乾燥空気の断熱減率でした。ここで分母にある(dPv/dT)の値は、飽和水蒸気圧の温度依存性デ-タから求めることができますが、次のように理論的に求めることもできます。

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