井田モデルとは?

井田教授が提案した寡占成長モデルは標準理論を発展させた惑星形成モデルです。井田モデルでは、1kmサイズの多数の微惑星が衝突して、地球の1/10サイズの原始惑星が一定の間隔で形成されます。やがて微惑星がなくなると、原始惑星同士の相互作用により、原始惑星が円軌道を保てなくなり、巨大衝突が起きて、地球や金星が誕生します。

井田モデルの問題点は?

井田モデルでは、惑星の岩石部の質量は距離に比例して大きくなっていきます。そうであれば地球の外側にある火星は地球より大きくなくてはなりません。モデルに基づいて計算機シミュレ-ションをすると火星の位置に地球より大きい質量の惑星が誕生します。しかし実際には火星は地球の1/10の質量しかないのです。また火星の外側には、地球より大きな質量の惑星がなければならないのに、そこには小惑星帯しかないのです。
また井田モデルでは、木星がガスにトラップされて、中心星のすぐ近くまで移動してしまう問題や、木星がガスを取り込み始めると僅か10万年で太陽に落下してしまう問題もあります。ガスの集積時間が軌道半径の3乗に比例するため、遠くの惑星ほどガスの集積時間が長くなります。木星がガスを集積する時間がガスの存在時間より長くなってしまう問題も生じます。それでも様々なシナリオのパーツを作っていけば、いつかは矛盾のない組み合わせが見つかると考えています。

ジャイアントインパクト仮説にも疑問点あり
巨大衝突による月の形成に関しても、新たな疑問が出ています。これまでティアと呼ばれる火星サイズの原始惑星が原始地球に衝突して、地球のマントルが飛ばされて、月ができたと考えられてきました。月の研究から、月の大部分は地球のマントルという岩石成分からなっていることが分かっています。計算機シミュレ-ションでも月の形成に成功しています。しかしこの仮説にも疑問が生じています。
宇宙線の作用により個々の惑星の酸素同位体比は異なります。よって原始惑星と地球でも酸素同位体比は異なるはずです。しかし2012年3月30日のNASAの発表では、これまでは月を構成している破片の約40%がティア起源だと考えられてきましたが、シカゴ大学のJunjun Zhang氏らの酸素同位体比の研究によれば、月のほとんどは原始地球の破片からなっていたと報道されています。この結果は衝突で両者が溶けて完全に混ざり合わなければ生じません。

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