心理学は苦しみをどう考えるのでしょうか?

 心理学は人間の行動を理解して悩み苦しみを解決するための学問です。心理学では、人間の悩み苦しみは対人関係に起因すると考えます。なぜなら私たちの理想は、家族などの共同体に自分の居場所があることだからです。例えば私たちが死を恐れるのは、自分が親しい人々と永遠に別れたくないと考えるからです。私たちは、理想の居場所を作れないと思い込む劣等感や、理想の居場所を守ろうとする優越感に惑わされ、苦しみます。このように人間の悩み苦しみには劣等感や優越感が関わっています。劣等感は個人的な苦しみ、優越感は対人的な苦しみを生じさせます。

 劣等感とは、現実の自分が理想の自分より劣っているという思いです。劣等感の克服には、自己受容すなわち理想の自分に執着せず、現実のありのままの自分を受け入れることが必要です。自分の現実も理想も自分が意味づけた概念なので、肯定的な表現に変えることができます。現実の自分にも他者に役立つ長所があることなどに注目します。自分が安心していられる居場所を得るためには、他者は信頼できる仲間であり、私は仲間の役に立つ能力があると感じられることが重要です。自分は特別でなくても共同体に所属できると信じる勇気も必要です。
 劣等コンプレックスとは、自分の劣等感を口実にして人生の課題の解決を避けることです。それによって苦しみから抜け出せなくなります。苦しみは課題を避けるために支払う代償であるとも言えます。例えば、引きこもりで苦しむことは登校を避けるための代償だと考えられます。

 対人的には、人間の悩み苦しみには優越感が関わっています。優越感とは、自分が他者より優れているという思いです。優越コンプレックスとは、自分の優越感により他者を支配することです。自分を実際以上に優れた人物であると見せること、相手に見下されないようにすること、自分の弱さを誇示して特別扱いさせることなどは、すべて優越コンプレックスです。人間は誕生時に無力なので優越コンプレックスを使って成長します。だから子供には共同体の一員として貢献する幸福な生き方に感謝を示し、勇気づけなければなりません。育児が適切でないと虚栄心の強い大人になってしまいます。結局、優越コンプレックスは社会的な差別や支配を生じさせ、私たちに苦しみを与えます。

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