DHAとは何でしょうか?

DHAはドコサヘキサエン酸(Docosa-Hexa-enoic Acid)の略語です。ギリシャ語でDocosaは22、Hexaは6を意味します。DHAは6つの二重結合を含む22個の炭素鎖をもつカルボン酸 (22:6)です。

DHA(C12H32O6)はCH3CH2(CH=CHCH2)6CH2COOHという分子構造(328g/mol)をしています。DHAは、COOHから数えて、4、7、10、13、16、19 番目の炭素に全てシス型の二重結合をもちます。一方、生理学者はCH3から数えます。CH3から数えて3番目に二重結合をもつので、ω3脂肪酸に分類されます。

EPAはエイコサペンタエン酸(Eicosa-Penta-enoic Acid) の略語です。ギリシャ語でEicosaは20、Pentaは5を意味します。EPAは5つの二重結合を含む20個の炭素鎖をもつカルボン酸 (20:5)です。

EPA(C20H30O2)は CH3CH2(CH=CHCH2)5(CH2)2COOHという分子構造(302g/mol)をしています。EPAは、COOHから数えて、5、8、11、14、17 番目の炭素に全てシス型の二重結合をもちます。同じくCH3から数えて3番目に二重結合をもつので、ω3脂肪酸に分類されます。

これらの脂肪酸は脳や網膜に多く含まれています。DHAやEPAは、リノレン酸(18:3)系列のω3必須脂肪酸です。さば、まぐろ、さんま、いわしなどの青魚やアザラシの脂に含まれています。

EPAには血小板の凝集作用があるトロンボキサンA3と血小板の凝集抑制作用があるプロスタサイクリンI3を作り出す作用があります。医学的には、抗血栓作用、血中脂質低下作用、血圧降下作用などが認められています。生理活性の強いω6系統と同じ酵素を使うので、免疫や凝血反応、炎症などにおいてω6系統のアラギドン酸が引き起こす過剰な反応を抑える効果があります。DHAやEPAはエパデール(持田製薬)やロトリガ(武田薬品工業)などの高脂血症治療薬などとして用いられています。

科学者でもギリシャ語の10以上の数字を読める人は少ないです。例えば14はtetra-deacaですが、40はtetra-conta、400はtetra-cta、4000はtetra-liaです。ちなみに11はundeca、21はhenicosaといいます。

神経細胞の脂肪酸膜にDHAが用いられている理由

神経細胞は突起を伸ばした複雑な構造をしているので、柔軟な細胞膜が必要です。細胞膜に二重結合が多い脂肪酸が含まれると、脂肪酸間の相互作用が小さくなるので、膜タンパク質の流動性が高まり、細胞膜が柔らかくなります。血中のEPAは脳関門を通過できませんが、DHAは通過できるので、脳細胞にはDHAが含まれます。

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