16世紀のイタリアでは、負の数は認められていませんでした。まして虚数は全く無意味な数だと考えられていました。しかし三次方程式の実数解を得るには、虚数を認めなければなりませんでした。
簡単のために三次方程式
- x3-px=0 p>0
について考えます。これは元の方程式においてq=0でpが-pに置き換わった方程式です。
- x(x-√p) (x+√p)=0
より、3つの実数解をもつことが分かります。
三次方程式の判別式は、q=0のとき
- D3=(q/2)2+(-p/3)3=-(p/3)3<0
となります。これを用いると、虚数をi=√-1と書くと、
- u3=-q/2+√D3=i√(p/3)3
- v3=-q/2-√D3=-i√(p/3)3
となります。uとvは虚数になってしまいます。しかし虚数を認めれば
- x0=u+v=0
- x1=ωu+ω2v=(ω-ω2)u=(2ω+1)u=√3i・i√(p/3)=-√p
- x2=ω2u+ωv=(ω2-ω)u=-(2ω+1)u=-√3i・i√(p/3) =√p
となり、3つの実数解を再現することができます。
一般にモニック三次方程式(三次の係数が1)
・ f(x)=x3+px+q=0
の判別式は、三つの解を用いて
- D3=(q/2)2+(p/3)3=-1/(4・27)・(α-β)2(β-γ) 2 (γ-α) 2 ・・・(1)
と表されます。
- D3=1/4・(極大値)・(極小値)=1/4・f(-√-p/3)・f(√-p/3) (2)
になっています。
- D3<0の場合、3つの実数解が存在します(u、vは虚数)
関数f(x)が極大値から極小値に変化するときにx軸と交わるので、実数解が生じます。
- D3>0の場合、q<0のときには1つの実数解と2つの虚数解
- D3=0の場合、q<0のときには2つの実数解(一方は重根) ・・・(3)
が存在します。
<(3)式の証明>
D3=0の場合、
- u3=-q/2+√D3=-q/2、 v3=-q/2-√D3=-q/2
- u=v=3√(-q/2)
であるから、q<0のとき
- x0=u+v=3√(-4q)
- x1=ωu+ω2v=(ω+ω2)u=-u=-3√(-q/2)
- x2=ω2u+ωv=(ω2+ω)u=-u=-3√(-q/2)(重根)
<(2)式の証明>
- f’(x)=3x2+p=3(x+√-p/3) (x-√-p/3)=0
- 極大値=f(-√-p/3)=(-√-p/3)3+p(-√-p/3)+q=-2p/3√-p/3+q
- 極小値=f(√-p/3)=(√-p/3)3+p(√-p/3)+q=2p/3√-p/3+q
- D3=1/4 (-2p/3√-p/3+q)( 2p/3√-p/3+q)=1/4(q2-(2p/3√-p/3)2)=(q/2)2+(p/3)3
<(1)式の証明>
- x3+px+q=(x-α) (x-β) (x-γ)=x3+ (α+β+γ)x2+(αβ+βγ+γα)x-αβγ
より、解と係数の関係
- α+β+γ=0、αβ+βγ+γα=p、αβγ=-q
- β+γ=-α、βγ=p-α(β+γ)=p+α2
が成り立ちます。
- (α-β)(γ-α)=-α2+(β+γ)α-βγ=-α2+(-α)α-(p+α2)=- (3α2+p)
- (β-γ)(α-β)=- (3β2+p)
- (γ-α)(β-γ)=- (3γ2+p)
となります。これらの積をとると
- D3=-1/(4・27) (α-β)2(β-γ) 2 (γ-α) 2
- =1/4・(α2+p/3)・(β2+p/3)・(γ2+p/3)
- =1/4・{α2β2γ2+(α2β2+β2γ2+γ2α2)p/3+(α2+β2+γ2)(p/3)2+(p/3)3}
ここで
- α2+β2+γ2=(α+β+γ)2-2(αβ+βγ+γα)=-2p
- α2β2+β2γ2+γ2α2=(αβ+βγ+γα)2-2αβγ(α+β+γ)=p2
ですから、
- D3=1/4・{q2+(p2)(p/3) +(-2p) (p/3)2+(p/3)3}
- =1/4{q2+(9-6+1)(p/3)3}=(q/2)2+(p/3)3
が成り立ちます。