イタリアの数学者タルタリア(1500年~1557年)

弾道学の祖と言われるタルタリアは本名をニコロ・フォンタナといいます。ニコロは1500年にプレシアの貧しい家に生まれました。1512年にカンブレー同盟戦争でフランス軍がブレシアに侵攻し、4.5万人のイタリア人を虐殺する事件が起こりました。そのとき12歳のニコロは顎を切り落とされ、普通に話せなくなったので、タルタリア(吃音)と呼ばれるようになったのです。タルタリアは、三角錐の辺の長さを用いて体積を表すタルタリアの公式を考案したことでも知られています。

16世紀のイタリアでは方程式の公開試合が流行していました。お互いに方程式を30問出し合い、30日で回答するというものです。タルタリアは1535年ごろ独学で三次方程式の解法を発見し、出版しないことを条件にカルダノに解を教えたと言われています。カルダノは、1526年に死んだデル・フェロの遺稿から彼が三次方程式の代数的解法を得たことを知り、タルタリアとの約束を無効としました。1545年にカルダノは『アルス・マグナ』(Ars Magna偉大な解法) を出版し、様々な形の三次方程式の解法を公表しました。以来、三次方程式の解法はカルダノの方法と呼ばれています。

<三次方程式の代数的解法>

三次方程式の二次の係数a2は、xをx-a2/2と置き換えると、消去できるので、一般に

  • x3+px+q=0   ・・・(A)

という形に書き表せます。一般に

  • x3 + y3 + z3 − 3 x y z= (x + y + z) (x2 + y2 + z2 − z x − x y − y z) 

という恒等式が成り立ちます。これをxの3次式とみて、y=-u、z=-vと置くと

  • x3 +(‐3uv)x-(u3+v3)=(x‐u‐v){ x2+ (u +v)x+(u2 +v2− uv)} ・・(B)

と書けます。つまり、

  • p=‐3uv
  • q=-(u3+v3)

なるu、vに対して、三次方程式(A)は

  • x=u+v

なる解を有していることが分かります。(B)式の右辺は、対称性から

  • x2 + (u+v)x+(u2 +v2− uv)= (x-au-bv)・(x-av-bu)

と因数分解されたと考えて、係数a、bの満たすべき条件を求めます。

  • x2 + (u+v)x+(u2 +v2− uv)=x2-(a+b)(u+v)x+ab(u2 +v2)+(a2 +b2)uv

よって

  • a+b=-1 かつ ab=1

が成り立ちます。これはa、bが、2次方程式

  • (t-a)(t-b)=t2-(a+b)t+ab=t2+t+1=0

の2つの実数解であることを示しています。 よって

  • a=ω、b=ω2 、ω3=1

となります。従って、

  • x3 +(‐3uv)x-(u3+v3)=(x‐u‐v) (x‐ωu‐ω2v)(x‐ω2u‐ωv)

と因数分解できます。ここで

・           u3+v3=‐q

  •   u3・v3=‐(p/3)3

より、u3、v3は、2次方程式

  •   t2+qt‐(p/3)3=0

の解となります。つまり

  •   u3=‐q/2+√(q/2)2+(p/3)3
  •   v3=‐q/2-√(q/2)2+(p/3)3

です。従って、3つの解は、上記のu、vを用いて、

  • α=u+v、 β=ωu+ω2v、γ=ω2u+ωv

あるいは

  • x=ωk u+ω3-k v (k=0,1,2)

と表されます。この解の表示方法はラグランジェが用いたとされています。三次方程式の解には二乗根と三乗根が用いられます。

<解の巡回変換Kの存在>

  •  K(α)=β

なる解の置換変換Kを考えます。

  •  K(u+v)=ωu+ω2v、 K(u+v)=K(u)+K(v)

なる性質を満たすために

  •  K(u)=ωu、K(v)=ω2v

と定義すると、uv=-p/3を保存すること

  •  K(uv)=K(u)K(v)=ωu・ω2v=uv=-p/3

が成り立ちます。また

  •  K(β)=K(ωu+ω2v)=ωK(u)+ ω2 K(v)=ω2 u+ωv=γ
  •  K(γ)=K(ω2u+ωv)=ω2K(u)+ ωK(v)=ω2 ωu+ωω2v=u+v=α

が成り立つので、Kは解の巡回変換になります。

  • x2 + (u+v)x+(u2 +v2− uv)=0

を解の公式から直接もとめることもできます。

・ x=-(u+v)/2±(1/2)√D2

・ D2=(u+v)2-4(u2 +v2− uv)=-3(u2 +v2− 2uv)=-3(u-v)2

u>vとして、

  • x1=-(u+v)/2+(1/2)√3i (u-v)=(-1+√3i)/2・u+(-1-√3i)/2・v
  • x2=-(u+v)/2-(1/2)√3i (u-v)=(-1-√3i)/2・u+(-1+√3i)/2・v

いま

  • ω=(-1+√3i)/2、ω2=(-1-√3i)/2、ω2+ω+1=0

ですから、

  • x1=ωu+ω2v、x2=ω2u+ωv

となります。

 

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