酸化ストレスに対する防御システムにはどのようなものがあるでしょうか?

酸化ストレスに対する防御システムは機能別に4種類あります。

1.予防型抗酸化物 (preventive antioxidant)

カタラーゼ、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD) 、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオンSトランスフェーラーなどのタンパク質酵素は、活性酸素やフリーラジカルの生成を抑える機能があるので、予防型抗酸化物と呼ばれています。

2.ラジカル捕捉型抗酸化物(radical-scavenging antioxidant)

ラジカル捕捉型抗酸化物には、ビタミン C、ビタミン E、尿酸などの連鎖開始反応を抑制するタイプと、ビリルビン、アルブミン、カロテノイド、ユビキノール、フラボノイドなどの連鎖成長反応を抑制するタイプのものがあります。即ち、ラジカルの発生を抑えるタイプと、生じたラジカルを早く消滅させるタイプがあります。これらの抗酸化物は生成した活性酸素やフリーラジカルを速やかに消去、捕捉、安定化する機能があるので、ラジカル捕捉型抗酸化物と呼ばれています。

ラジカル捕捉型抗酸化物の多くは、馴染み深いビタミンやポリフェノール、コエンザイム Q などの低分子化合物です。これらの抗酸化物は活性酸素を捕捉するか安定化させて、細胞を防御したり、酸化傷害の拡大を防ぐ役割を担っています。

3.修復再生型抗酸化物 (repair、de novo antioxidant)

リパーゼ、プロテアーゼ、DNA修復酵素、アシル・トランスフェラーゼなどの酵素は、酸化変性物質を修復する機能があるので、修復再生型抗酸化物と呼ばれています。

4.適応機能 (adaptation)

必要に応じて上記の防御機能を誘導して適応する系があります。

脂質の酸化反応はどのように生じるのでしょうか?

酵素によらない酸化反応は、自動酸化とも呼ばれ、開始反応、成長反応、停止反応から成るラジカル連鎖反応です。脂質(LH)は生体中で特に酸化されやすく、酸化されると生体膜流動性が低下し、生体膜の機能が損なわれます。酵素的酸化反応は主にリポキシゲナーゼにより触媒されます。

  1. 開始反応 LH → L・+ H・

開始反応では脂質から水素が引き抜かれて脂質ラジカルL・が生成します。二重結合に隣接した炭素は電子を奪われているので、その炭素上のC-H結合は弱まっており、水素が引き抜かれ易くなっています。二重結合がある不飽和脂肪は酸化されやすいのはそのためです。水素引き抜きにはヒドロキシルラジカル・OHが関与します。生じた不対電子は隣接する二重結合のπ電子と共鳴状態になります。

2.成長反応:

L・+ O2 → LOO・

LOO・+ LH → LOOH + L・

脂質ラジカルL・に酸素が反応して過酸化脂質ラジカルLOO・が生成します。これは脂質ヒドロ・ペルオキシド・ラジカルとも呼ばれます。次にLOO・が脂質LHと反応して、水素を引き抜き、過酸化脂質LOOHと脂質ラジカルL・が生じます。L・は再び酸素と反応して同じことが連鎖的に繰り返されます。図1にこれらの脂質の連鎖的酸化反応を図式的に表します。

3.停止反応: 2L・→L-L 

L・+ LOO・→ LOOL

2LOO・→ LOOL + O2

 連鎖反応を止めるにはラジカル分子どうしの反応を待ちます。抗酸化剤はL・、LOO・ 、LO・を捕捉しお互いに反応させることで、連鎖反応を停止させます。一重項酸素も脂質アシル基(R-CO-)の二重結合と直接反応し、LOOHを生成します。葉緑体のチラコイド膜は脂質の不飽和度が高く、酸素濃度も高いため、脂質酸化を受けやすいです。