ウォ-キングの物理

ウォ-キングは体への負担が少なく、ダイエットになるので人気があります。それでは5[km/h]速さで歩いたら、一体どれだけの炭水化物が消費されるのでしょうか?簡単な物理で推測してみましょう。

人間が歩いているとき、両足と股がほぼ正三角形となります。つまり足の長さと歩幅はほぼ同じなのです。正三角形だから股の角度は60°です。足の長さが70cmの人は、片足になったときに、体の重心が約10cm上がります。
h=70cm×(1-cos30°)=70cm×(1-0.866)=9.4cm
一歩く仕事は、重心をhだけ上に上げるのに必要な仕事mghで与えられます。重力加速度を約10m/s^2とすると、体重60[kg]の場合、仕事は
W[J/歩]=mgh=60[kg]×10[m/s^2]×0.10[m]=60[J/歩]。
つまり1歩あたり60Jのエネルギを消費します。

次に消費エネルギを求めてみましょう。歩幅をr[m/歩]とすると、1秒間にN歩だけ歩くときの速さは
V[m/s]=r[m/歩]×N[歩/s]
と表されます。足の長さをL[m]とすると、r=2Lsinφ(φ=30°)の関係があるので、
N[歩/s]=V[m/s]/r[m/歩]=V/ 2Lsinφ
となります。一秒間の消費エネルギP[W=J/s]は、
P[W]=W[J/歩]×N[歩/s]=mgL(1-cosφ)×V/ 2Lsinφ
=mgV×2sin(φ/2)^2 / 2 sin(φ/2) cos(φ/2)=mgV×tan(φ/2)
となります。大股で歩くとφが増加してP[W]は増加します。ここで
tan(φ/2)=tan15°=0.268
です。つまり足の長さによらず、歩く時の消費エネルギは、
P[W]=0.268 mgV
となり、体重mと速度Vに正比例します。だから早く歩くほど疲れるのです。早く歩いた方がダイエット効率は高いのですが、長い時間歩けなくなるので、5~6km/hの速さがよいでしょう。遅く歩けば、短時間ではダイエット効果は小さいです。

1時間当たりの歩行の消費カロリは、体重1kgあたり
P[kJ/h]/m[kg]=0.268×10[m/s^2]×5[km/h]=13.4[kJ/kgh]=3.2[kcal/kgh]
となります。ここで1cal=4.2Jを使いました。体重60kgの人の場合、192kcalとなります。つまり、5[km/h]の歩行で1時間あたり炭水化物が最大48g消費されます。成人男子の1日の摂取エネルギは2000kcalですから、その1/10程度が消費されるわけですね。

しかし実際は、膝や足首の滑らかな動きにより重心の上下振動は1/3程度になっているかもしれません。その場合は、5[km/h]の歩行速度での消費エネルギは、1[kcal/kgh]程度なのかもしれません。ダイエットが大変な理由がよくわかります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。