植物はどうやって光合成をするのでしょうか?

植物は葉緑体の細胞膜に埋め込まれた、PSⅡ、シトクロム、PSⅠの膜タンパク質複合体でATPを生産し、ATPと細胞質にあるカルビン回路を使って、光合成をおこないます。太陽光を吸収したクロロフィルaは電子を放出し、その電子を順次伝達していく過程で、H+を汲み上げ、次のカルビン回路に必要なATPとNADPHを合成します。電子を失ったクロロフィルaは、水の分解で生じた電子を補填されます。水の光分解は、葉緑体のチラコイド膜に埋め込まれた光合成系(PSⅡ)で行われます。

下図はチラコイド膜の側面から見たPSⅡ膜タンパク質複合体の構造図です。PSⅡ複合体は、対称軸の両側にCP41・D1・D2・CP47の構造を有するタンパク質の二量体です。反応中心は、チラコイド内腔(ル-メン)とチラコイド膜の境界(下面)にあります。右側は水分子の分布図です。膜は疎水性なので水は少ないです。反応中心でチラコイド・ル-メンの水を分解しています。

植物はPSⅡ複合体に結合したマンガン(Mn)クラスタ-で水を光分解しています。

  • 2H2O + hv → O2 + 4H+ +4e

これによって、チラコイド内腔のH+濃度を高め、H+がATP合成酵素を通過し、ストロマ側でATPが生産されます。発生した酸素は葉の気孔から放出されます。植物が放出する酸素は、CO2ではなく、根から吸収したH2Oの酸素に由来しています。

Mnクラスタで生じた電子は、チロシン基(Tyr)を経由して、光励起時に電子を失ったクロロフィルa(P680)に供給されます。P680とは680nmの波長光を吸収する色素(Pigment)のことです。P680が光励起された後にMnクラスタから電子が供給されることは重要です。もしも逆だと、発生した電子がMnクラスタ近傍に貯まり、酸素と結びついて活性酸素を生じさせてしまうからです。

P680が放出した電子はフェオフィチンPhe(Pheophytin)、QA、QBの順に受け渡されていきます。Pheはクロロフィル分子からMg2+がとれてH原子2つと置き換わったものです。

QBのプラストキノン(PQ)はチラコイド膜中で自由に動くことができます。このPQはストロマ中の2個のH+を取り込んでジヒドロ・プラストキノン(PQH2)、つまりキノ-ルになります。

PSⅡから飛び出したPQH2は、シトクロムb6/f複合体に電子を渡します。この複合体から再び電子はプラストシアニン(PC)へと渡され、チラコイド内腔を拡散し、光合成系Ⅰ(PSⅠ)に入っていきます。このシトクロムb6/f複合体においてPQH2からPCへの電子伝達で0.4eVのエネルギが生じます。このエネルギでストロマからチラコイド内腔にH+をくみ出しています。

光合成系Ⅰ(PSⅠ)

シトクロム複合体によって還元されたPCは、PSⅠの反応中心にあるクロロフィルP700(吸収波長700nm)に電子を渡します。PSⅠ複合体は数十種のサブユニットから構成され、集光性タンパク質複合体LHCⅠ(Light-Harvesting protein Complex)が光を吸収すると、反応中心のP700が励起され電子を放出します。チラコイド膜上で、それぞれの反応中心を取り巻くように多くのLHCが存在し、太陽光を集めて反応中心に供給しています。

電子は、P700→A0(1分子クロロフィル)→Q(フィロキノン)→Fx→FA・FB(Fe-Sタンパク質)という順に伝達され、フェレドキシン(FD)(Fe-Sタンパク質)に渡されます。電子はストロマの補酵素2NADP+(ニコチン酸アミド・アデノシン・ジヌクレオチドリン酸)に移り、FAD(フェレドキシン-NADP+ レダクターゼ)の助けを借りて2NADPH2+が作られます。電子を失ったP700は、PCから再び電子を受け取ります。

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