なぜヒトの成長スピードは遅いのでしょうか?

動物の子供はすぐに成長します。犬は1年半で、チンパンジは10歳で大人になります。ヒトはチンパンジより10年も成長が遅いのです。ヒトの成長スピードはなぜ遅いのでしょうか?1995年に文化人類学者のLeslie Aiell博士は「高価な器官仮説」を提案しました。これは、「脳はエネルギ消費が高いので、脳の発達とともに身体の成長速度が低下する」という考え方です。

2014年にノースウェスタン大学の研究者らが、身体は4歳頃から急速に成長速度が低下し、それに代わり脳で消費されるブドウ糖の量が急速に増加することをMRI(脳体積)とPETスキャン測定で確かめました。5歳児の場合、摂取エネルギの40%が脳で消費されていたのです。

体重60kgの成人の脳の重量は1.2㎏程度です。脳の重さは体重の2%ほどに過ぎませんが、成人場合は、摂取エネルギの20%が脳で消費されます。ちなみに肝臓や骨格筋は脳と同程度のエネルギを使い、心臓や腎臓は脳の半分程度のエネルギを消費します。

誕生直後には頭が一番大きいので、これまで脳の消費量も誕生直後が一番大きいと考えられてきました。実際はシナプス(脳細胞同士の接続)の接続と刈り込みが急増する4~5歳頃に脳のエネルギ消費量が増大することが分かったのです。人間の子ども時代が長いのは、脳の発達に時間がかかるからなのです。
レベッカ・イネス君は天才ドラマ-です。6歳で大人顔負けの演奏をします。子どものころは神経細胞のシナプス結合が多いのですが、ミクログリア細胞が使われないシナプス結合を刈り込み除去するために、6歳頃にその人独自の脳が出来上がっていきます。幼児期の環境や学習が脳の成長に重要であることが分かります。神経細胞の成長と刈り込みの複雑なパタ-ンによって我々は唯一無二の存在になっていくのです。

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