石灰肥料について

Caには作物の葉の茂りや根張りを良くする効果があります。畑の土質を作物が成長しやすい弱アルカリ性にするために石灰肥料が混ぜられます。石灰肥料にも色々あります。生石灰(きせっかい)はCaOで、石灰岩CaCO3を加熱して、CO2を飛ばしたものです。
・ CaCO3 → CaO + CO2
生石灰はアルカリ性が最も強いです。消石灰はCa(OH)2で、CaOに水を加えて作ります。
・ CaO+H2O → Ca(OH)2
白い水蒸気を上げて発熱反応する様は、まるで生きているみたいだから生石灰というのでしょう。消石灰は水に溶けやすく即効性があります。

苦土石灰はMgを含む石灰でドロマイトを加熱して粉末化したものです。有機石灰はカキやホタテなどの貝殻を焼いて砕いたものです。炭酸カルシウムや苦土石灰や有機石灰は遅効性の肥料なので、施肥後すぐに定植可能です。
遅効性の石灰肥料は重要です。Caは水に溶けたCa2+イオンとして根から吸い上げられ葉に届きます。一度細胞壁に取り込まれたCaはもう移動しません。だからCa供給が成長途中で途切れると、下葉にはCaがあるが、上葉や実にはCaがなくなり病気になります。苺の実はCa量が減ると柔らかくなり過ぎて日持ちが悪くなります。ミカンは果皮と果肉の間に隙間を生じてしまいます。遅効性の石灰はCa供給を途切れさせない効果があるのです。Ca欠乏症が生じてしまったら、塩化Caや炭酸Ca水溶液を葉面散布する方法があります。

即効性のある石灰肥料は、窒素肥料と同時に土に混ぜ込むと化学反応を起こして有害なアンモニアガス(NH3)を発生させます。
・ (NH2)2CO(尿素)+Ca(OH)2 → CaCO3+2NH3
・ (NH2)2SO4(硫安)+Ca(OH)2 → CaSO4+2H2O+2NH3
・ 2NH4Cl(塩化アンモニウム)+Ca(OH)2 → CaCl2+2H2O+2NH3
NH3ガスを含んだ土壌に作物を植え付けると枯れてしまいます。そのため、先に石灰肥料を土に混ぜ込んでおき、1週間程度時間をおいて土にならしてから元肥を混ぜ込む必要があります。水に溶けたCaイオンが粘土に吸着され、余分なNが土壌からNH3として抜けるまで待つのです。

地殻の構成元素はO(47%)、Si(28%)、Al(8%)、Fe(6%)、Ca(4%)、Na(3%)、K(3%)です。土にはSiとAlが多く、粘土はSiの4面体とAlの8面体とで構成されています。SiがAlと置換する、あるいはAlがMgに置換するので、通常粘土はマイナスに帯電しています。あるいは水和鉱物はOH端からH+が取れて、O-端になることでマイナスに帯電します。石灰肥料が土になれるというのは、石灰肥料が水に溶けて放出したCa2+イオンが負に帯電した粘土に吸着されるからです。

土壌に石灰を投入しても、土の状態が悪ければ、植物はCaを吸収できません。微生物を増やす、土を団粒構造にする、水はけをよくする、肥料の入れ過ぎや入れる時期に注意する、といったことを守るのは、植物にCaを効率よく多量に吸収させるためなのです。過剰な窒素肥料はCaを消費するし、NH3ガスも出るので、入れ過ぎないようにしましょう。

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