6.植物は栄養素をどのように摂取するのでしょうか?

植物は根、茎、葉からできています。根は植物を支えるとともに、水と養分を吸い上げ、茎を通り、葉に供給されます。葉は日光を受け、大気中のCO2を取り入れ、水とCO2から糖やセルロ-スなどの炭水化物を生成します。
炭水化物C6H12O6=(H-C-OH)6は鎖状に結合した6個のCの各々に水すなわちHとOHが結合しています。糖は1番目のCと5番目のCの水酸基のOが結合した環状構造です。隣接するCのOH基は近接を避け交互に配置しています。糖は6印環の1つがOなので、極性を持ち、水に溶けます。糖は水溶性なので師管内を容易に輸送できるのです。
日中、葉から水蒸気と酸素が大気に放出されます。光合成では、H2Oを酸素とH+に分解し、酸素を捨ててNADPHを生産し、分解して取り出したH+を使ってATPを合成します。植物は、NADPHとATPのエネルギを用いて、葉緑体にあるカルビン回路でCO2からブドウ糖を合成します。光エネルギがない夜間は、植物は葉から酸素を吸入して、ブドウ糖を消費して、ATPエネルギを得ます。酸素呼吸とは酸素を消費して水に変え、代謝反応に必要なATPエネルギを生産することです。
 葉で生成された糖の20%は根に送られます。根の表面あるいは内部には真菌や菌根菌が共生しています。植物はこれらの親根細菌に糖分を与え、親根細菌は他の病原性細菌から根を保護しています。菌根菌は土壌の栄養素を植物に与えてもいます。根の細胞には葉緑体はありませんが、ミトコンドリアはあります。つまり根も成長するための代謝反応を行ためにATPが必要で、ミトコンドリアで酸素呼吸をすることでATPを生産しています。呼吸のATP生産に用いられるのがクエン酸回路です。クエン酸回路は10段階の有機酸の合成反応のル-プです。そこでは酵素タンパク質の触媒作用によって酸化反応や脱炭酸反応や脱水反応が生じます。


植物には筋肉はありませんが、代謝反応を促進する酵素のためにタンパク質を必要とします。植物はタンパク質の元になる20種類のアミノ酸を自力で合成しています。アミノ酸の合成は根と葉で行われます。根は吸収したNO3-をNH4+に還元し、炭水化物と反応させて、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、アスパラギンの4種類のアミノ酸を合成します。これらはさらに他の器官へ輸送され、各種アミノ酸の合成に使われます。葉での細胞基質では、ミトコンドリアのクエン酸回路で生成された有機酸を根から送られて来たNO3-やNH4+と反応させて、アミノ酸を生成します。植物や微生物における20種類のアミノ酸はクエン酸回路(呼吸)で生成される6種類の有機酸に由来して次の6つの群に分けられます。

1)グルコ-ス5リン酸由来のHis(ヒスチジン)
2)3-ホスホグリセリン酸由来のSer(セリン)→Cys(システイン)、 Gly(グリシン)
3)ホスホエノールピルビン酸由来のTrp(トリプトファン)、Tyr(チロシン)、Phe(フェニルアラニン)
4)ピルビン酸由来のAla(アラニン)、Leu(ロイシン)、Val(バリン)
5)α-ケトグルタル酸由来のGlu(グルタミン酸)→Gln(グルタミン)、Pro(プロリン)、Arg(アルギニン)
6)オキサロ酢酸由来のAsp(アスパラギン酸)→Asn(アスパラギン)、Thr(トレオニン)、Ile(イソロイシン)、Met(メチオニン)、Lys(リシン)

ヒトは8種類の必須アミノ酸(Phe、Trp、Val、Leu、Ile、Thr、Met、Lys)を植物から摂ります。これらの必須アミノ酸の合成は植物が2段階か3段階以上の手順をかけているものです。10種類の非必須アミノ酸は次の4つの有機酸中間体から合成されます。
1)3-ホスホグリセリン酸 → Ser, Cys, Gly
2)ピルビン酸 → Ala
3)α-ケトグルタル酸 → Glu, Gln, Pro, Arg
4)オキサロ酢酸 → Asp, Asn

アミノ酸はタンパク質合成の素材としてだけでなく、グルコースの合成、脂肪酸、ケトン体、コレステロールの合成、ヘムやプリン環やピリミジンヌクレオチド合成の原料としても利用されます。

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