5.食生活で気を付けることはあるでしょうか?

日本人はCa不足
Caは健康に重要な多量必須元素ですが、日本の国土の多くはCa含有量が少ない火山灰地なので、飲み水や野菜にもCaが少ないと言われています。厚生労働省の調査によると18~29歳のCa摂取推奨量が男性で1日あたり800 mg、女性で650mgのところ、実際の摂取量は男性約450 mg、女性約400mgだということです。Caの不足分は男性約350 mg、女性約250 mgにものぼります。ちなみにCa摂取量の上限は、1日あたり2500mgです。日本人のCa摂取量は米国人の1/3と言われています。特に更年期の女性は、女性ホルモンが減少し、骨粗鬆症になりやすいので、食事と運動に注意が必要です。病院に行くと膝や腰や首の具合が悪い人が大勢います。Caを見ていると日本人の様々な問題点が浮かび上がります。

Caの入出力バランス
長期的にCa摂取量が600mg/日を下回ると、骨粗鬆症を引き起こします。600mgのうち小腸で吸収されるのは200mg程度です。逆に消化管から100mg弱のCaが腸に排出されるので、正味100mg強のCaが吸収されます。骨は500mg/日程度のCaを排出し、同量を吸収しているので、100mg強のCaは尿中に排出されます。
 Caの99%は骨に、0.9%は細胞に、0.1%が血液にあります。血清Caの45%はアルブミン蛋白と結合し、10%がCa塩、残りの45%がCa2+イオンとして存在しています。血液中のCa濃度は副甲状腺ホルモン(PTH)や活性型ビタミンD(1,25(OH)2D)などのCa調節ホルモンによって、8,5~10,2mg/dlの範囲に維持されています。

Ca不足が引き起こす疾病
摂取されるCa量が600mg/日を下回ると、血中Ca濃度を一定に保つために、PTHホルモンが分泌されて、不足分以上のCaが骨から放出されます。つまり逆にCa不足により血中Ca濃度が上がる傾向があるのです。それが腎臓結石や高血圧症や動脈硬化を引き起こします。というのは、PTHホルモンは、Caを細胞内に取り込む働きもするので、過剰なCaが血管壁細胞に入り、血管を収縮させ、高血圧を引き起こすからです。

Ca不足は、骨粗鬆症や高血圧だけでなく、痴呆症、細胞の免疫力の低下によるがん細胞の発生、情緒の不安定、アレルギ-疾患、歯質劣化なども引き起こします。細胞膜のCa透過性が低いために、細胞内のCa濃度は10^-8モル台、血中のCa濃度は10^-3モルに維持されています。Ca濃度が高くなると、瞼の痙攣、手足がつる、物忘れ、イライラなどの症状が生じます。これらの症状があればCa摂取不足が疑われます。細胞のNaチャネルの周りにはCaが存在し、Naが細胞内に入るのを妨げています。細胞内の電位は細胞外より70mV低くなっています。Caが不足するとNa陽イオンが細胞内に入り、電位が上昇して、神経が興奮したり、筋肉が収縮したりするのです。成長期の子どもは、骨を成長させるために、よりCaが必要なのですから、Ca不足による学習障害が現われやすいと考えられます。

Ca不足の原因は食生活の欧米化
Caを含む食品には乳製品、小魚、豆類、緑黄色野菜などがあります。小魚としてはシシャモ、小アジの南蛮漬け、しらす干し、サバの水煮缶詰があります。和食はCaを豊富に含む理想的な食事でした。日本人のCa不足を招いている主な原因は、食生活の欧米化にあると言われています。食生活の欧米化により、
1)Caを多く含む食品群を摂らず、
2)Pを含む肉や加工食品や添加物を多く摂る、
3)塩分やPを含むスナック菓子などを多く摂る
ことがCa不足を招いているのです。

過剰なPはCaの吸収を妨げる
肉や加工食品には多量のPが含まれています。Pは食品添加物として、インスタント食品や清涼飲料水などにも多く含まれています。PとCaは骨の代謝に密接に関わり、その比率はP:Ca=1:1~2が理想とされています。Pは骨へのCaの沈着を助ける働きをしますが、Pを摂り過ぎるとCaは体外へ排出されます。腸内でCaPO4結晶ができ、吸収できずに排出されるのです。アルコールは腸でのCaの吸収を妨げます。

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