質問です。やる気のある人とない人が世の中にはいます。これが互いに迷惑を掛け合っている原因ですか?何故、同じ人間なのに分かれてるのでしょうか?(ayaさんより2020/4/5)
大変よい質問です。やる気のある人とない人がどういう割合で世の中にいるのか分かっています。パレ-トの法則をご存じでしょうか?パレートの法則とは、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート氏が発見した冪乗則のことです。
例えば全世界の富の80%は20%の金持ちが所有している、会社の売上の8割は従業員の2割が生み出している、あるいは仕事の成果の8割は、費やした時間の2割の時間が生み出している、といった法則です。聞いたことはありませんか?
横軸に所有財産、縦軸に人数をとり、所有財産の分布図を書くことができます。金持ちになるほど人数は減っていきます。xを所有財産とすると、金持ちの人数は1/x^αに比例して減少します。べき指数αは問題によって変わりますが一定の値です。α=log45 ≈ 1.16とすると、80%-20%の法則が得られます。
つまり大部分の人は貧乏で、金持ちは一部の人なのです。金持ちだけ取り出しても、その中の20%の人はすごくお金持ちなのです。やる気は会社の売り上げだと考えればいいのです。横軸にやる気、縦軸に人数をとり、やる気の分布図を書くと同様のパレ-ト分布が得られます。やる気のある人は20%しかいないのです。
何故パレ-ト分布になるかは、今でも研究されています。一説には、全員がやる気をだすと、環境が激変したときに、社会が崩壊するかもしれないからです。例えばコロナウイルスが流行した環境下では、全員がやる気を出してお客さんに接触すると、全員が感染して、会社は崩壊します。実際は20%のやる気のある人が感染して退去しても、80%のやる気のない人が自宅で仕事を継続するので、会社は生き残れるのです。
一見やる気のない人がやる気のある人に迷惑をかけているように見えるのですが、緊急事態では、体力を温存していたやる気のない人たちが活躍するのです。といっても活躍するのはその中の20%の人だけです。迷惑をかけあっているのではなく、長期的に見て、助け合っているのです。やる気のない人が発生するのは、今の環境条件が決めているのです。人間に限らず、やる気のある働きアリも20%しかいません。つまり80%の人がやる気のない社会が、進化論的に生き残りやすいのです。だからやる気が出なくても自分や他人を無理に責める必要はないのです。
実は割れた窓ガラスの破片の大きさの分布や地震の頻度分布はきれいなパレ-ト分布になることが知られています。大きな地震は発生頻度が少ないのです。ガラスの破片を顕微鏡で拡大してみても、その分布は変わらないのです。そういう現象はスケ-ルフリ-現象と言われます。つまり現象の分布が拡大スケ-ルに依存しないということです。地震も岩盤という窓ガラスの崩壊現象だから、窓ガラスと同じ法則に従うのでしょう。所得や崩壊の分布がパレ-ト分布になるのは、両者が保存する富やエネルギの分配に関わるからなのかもしれません。
学校の入学試験の点数の分布は左右対称のガウス分布をしています。そうなるようにテストを作っているのです。しかし世の中の重要な分布は、ガウス分布ではなく、パレ-ト分布なのです。中央値は順位が中央の人の点数値です。ガウス分布では中央値は平均値と一致しますが、パレ-ト分布では中央値は平均値のずっと下です。順位が真ん中だからといって喜んではいられないということです。
将来の地震の規模や貧富の差は、ガウス分布で考えるより、ずっと大きいのです。貧乏人はそれに気づかないので、大災害に備えず、金持ちは妬まれずに安心しているのです。80%の人たちがどんな現象もガウス分布だと甘く見ているのは、パレ-トの法則なのかもしれません。