最近、テレビ番組では、地球温暖化の問題がよく取り上げられています。一般に地球温暖化などの環境問題や公共財の供給問題など、社会的ジレンマを含む問題が解決できないのは、全体にとって有益であっても、個人にとって不利益な行動は実現しにくいからです。しかし全体社会の中の小集団の支持者や利益を分析することで、政策を社会全体に浸透できる可能性があります。近年、社会的な政策は、個別地域に不利益があっても、全体的な政策支持の傾向があれば、実現可能かもしれないと考えられるようになりました。全体的な政策支持の傾向とは何でしょうか?具体的な数理モデルで考えてみましょう。
が得られます。ここでCovは小集団の人数niで重みづけた共分散です。〈xi 〉平均は小集団の人数niで重みづけた平均です。つまり共分散が正で、利得差を凌駕すれば、全体の政策Aの利得は政策Bより大きくなることが示されます。つまり法律や道徳的圧力がなくても、人々が徐々に政策Aを支持する可能性があります。但し小集団間でxiやuiのばらつきがある程度以上ないと、政策の誘導は難しくなる、というところが面白いですね。
プライス博士(George R. Price)は、無神論者で理論的に利他行動の可能性を追求してきたのですが、晩年はキリスト教に帰依して、ホ-ムレスに自分の財産を分け与えるなど利他行動を実践しました。1970年に進化生物学の基本方程式を発見し、1975年53歳のときにうつ病で自殺をしてしまいます。理由はお金がなくなってホームレスを助けることができなくなったから。追悼式に参列したのは、ビル・ハミルトン博士とジョン・メイナード=スミス博士と数人のホ-ムレスだけでした。オレン・ハ-マン教授が「THE PRICE OF ALTRUISM」(利他主義の対価)というプライス博士の伝記を書いています。最後に公式の証明を書いておきましょう。