ヒドロキシフェニルピルビン酸とチロシンから生成される抗酸化物質についてはすでに紹介しました。ここではフェニルアラニンとトリプトファンから生成される抗酸化物質について紹介します。
フェニルアラニンからは、ケルセチン(quercetin)、クマリルアルコール(Coumaryl alcohol)、レスベラトロ-ル(resveratrol)などが誘導されます。これらはポリフェノ-ルであり、最も強力な活性酸素であるOHラジカルを消去する効果があります。
・ケルセチン
ケルセチンは野菜や果物に含まれるポリフェノールの一種であり、フラボノイドに分類されます。 ケルセチンには強力な抗酸化作用をはじめ、動脈硬化の予防や血糖値やコレステロール値を低下させる作用があります。ケルセチンはタマネギやソバをはじめ多くの植物に含まれます。
・クマリルアルコール
クマリルアルコールは、フィトケミカルです。重合すると、リグニンまたはリグナンとなります。クマリルアルコールの誘導体は、食用の抗酸化物質として作用します。
・レスベラトロ-ル
レスベラトロールはポリフェノールの一種です。いくつかの植物でファイトアレキシンとして機能しており、またブドウの果皮などにも含まれる抗酸化物質として知られています。
レスベラトロールは赤ワインに含まれることから、心血管関連疾患の予防効果が期待されています。2006年にNature誌にてレスベラトロールがマウスの寿命を延長させるとの成果が発表され、大きな注目を集めました。
線虫や酵母は、カロリー摂取制限によって、長生きすることが見出されました。サーチュイン遺伝子は、長寿遺伝子または抗老化遺伝子とも呼ばれ、飢餓やカロリー制限、運動によって活性化します。近年、レスベラトロールがサーチュインタンパク質を活性化するという報告がありました。
サーチュイン自体は、ヒストン脱アセチル化酵素です。ヒストンが脱アセチル化されると、ヒストンのアミノ基が増えアルカリ性になり、酸性のDNAとの親和力が高まり、ヒストンとDNAが強く結び付いて、遺伝子の発現が抑制されます。飢餓環境下ではサーチュイン遺伝子が働き、DNAの活動が抑制され、結果的にDNAの損傷防止につながるために、長寿になるという考え方です。