インフルエンザウイルスはどのようにして細胞内に侵入するのでしょうか?

インフルエンザウイルスはヘマグルチニン突起を感染する細胞の表面にある受容体に結合させて細胞内に侵入します。インフルエンザウイルスの場合、シアル酸 (sialic acid)で終端された糖タンパク質が受容体になります。シアル酸 (sialic acid、C11H19NO9) は、ノイラミン酸 (neuraminic acid) の一種で、ピルビン酸とアミノマンノ-ス(単糖)が結合した物質で、細胞の認識機能を担っています。

60年前にシアル酸に修飾された糖タンパクが受容体であることは分かりましたが、どの糖タンパクであるかは分かりませんでした。2018年に北大の大場雄介らが、シアル酸に修飾された電位依存性Ca2チャネルがインフルエンザウイルスの受容体であることを突き止めました。

 インフルエンザウイルスが電位依存性Ca2チャネルに結合すると、細胞内部のCa2濃度が上昇し、細胞表面のpH(水素イオン濃度)が低下します。pHが低下すると、ウイルスと細胞の融合が生じて、エンドサイトーシス機構によりウイルスが細胞内部に取り込まれます。Ca2+チャネル阻害薬(カルシウム拮抗薬)を与えると、後期エンドソームに存在するインフルエンザウイルスが60%減少し、感染マウスの回復も認められています。

問題はカルシウム拮抗薬には低血圧の副作用があること、経口投与では肺や気道に薬剤が供給できないことです。ドラッグデリバリー技術を開発し、チャネル自体の機能は抑制せずにウイルスのHAとチャネルとの結合を阻害する薬剤を開発するのが理想的です。

ウイルスが感染する場合には、ウイルスのヘマグルチニンの先端部がプロテアーゼによって開裂されて、細胞の受容体に結合するという学説があります。ウイルスは周囲にいる細菌が放出するプロテアーゼの助けを借りていることになります。深くうがいをすると細菌とウイルスのマイクロ飛沫が気管支や肺にまで届く可能性があります。うがいをする場合は、歯磨きにより口の中を減菌してから、うがいをした方がいいかもしれません。

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