理想気体の状態方程式は
・ PV=RT
で表されます。ここでRは気体定数
・ R=8.314[J/Kmol]
でした。Rは1モルの気体を1K上げるのに必要な熱量です。乾燥空気の分子量はMair=29g/molですから、気象学では乾燥空気の気体定数として
・ Rd=8.314[J/Kmol]/0.0029[kg/mol]=287[J/KKg]
を用います。同様に、水蒸気の気体定数は、Mwater=18g/molなので
・ Rv=8.314[J/Kmol]/0.0018[kg/mol]=461[J/KKg]
となります。両者の比は
・ ε=Rd/Rv=287/461=0.622
となります。
(T,V)表示の熱力学第一法則
熱力学の第一法則は「外部から加えられた熱量d’Qは、内部エネルギの増加量dUと外部にする仕事dWの和で与えられる」と表現されます。
・ d’Q(熱量)=dU(内部エネルギ)+dW(仕事)
理想気体の内部エネルギは、気体の分子間相互作用を無視するために体積に依らないので
・ dU=(dU/dT)v dT+(dU/dV)T dV ≒ (dU/dT)v dT
と書けます。定積比熱
・ Cv=(d’Q/dT)v=(dU/dT)v
を用いると、(T,V)系の熱力学第一法則は
・ d’Q=CvdT+PdV
と表せます。外部から加えた熱は、気体の内部エネルギの上昇と体積膨張によって気体が外部にする仕事の和に等しいことを表しています。ちなみにd’Qのプライムは完全微分ではないことを示すものです。
(T,P)表示の熱力学第一法則
内部エネルギU(T,V,P)は3変数の関数ですが、PV=RTの状態方程式があるので、独立な変数は2つです。先ほどの式は第一法則を2つの独立変数(T,V)で表したものですが、(T,P)を用いて表すこともできます。PV=RTから、
・ RdT =d(PV)=PdV+VdP
が成り立つので、dVをdPとdTで表すことができます。
・ d’Q=CvdT+PdV=(Cv+R)dT-VdP
より、第一法則は(T,P)表示で
・ d’Q=CpdT-VdP
とも書き表せます。ここで定圧比熱
・ Cp≡(d’Q/dT)p=Cv+R (Mayer’s relation)
を導入しました。乾燥空気の定圧比熱は
・ Cp=(7/2)・8.314[J/Kmol]/0.0029[kg/mol]=(7/2)・287[J/KKg]=1004[J/KKg]
です。あるいはエンタルピH=U+PVなる量を用いて、(T,P)表示の第一法則
・ d’Q=dU+PdV=d(U+PV)-VdP=dH-VdP=(dH/dT)pdT-VdP=CpdT-VdP
を導くこともできます。少し分かりにくい形になってしまいますが、圧力と温度は計測や制御がしやすいので、化学系の研究室では、(T,P)表示がよく用いられます。