TaqManプローブ法とは

新型コロナウイルスのPCR検査には主にTaqManプローブ法による定量RT-PCRが用いられています。TaqManプローブ法は、DNAプローブの5’端に蛍光色素(Reporter)、3’端に消光色素(Quencher)を結合させた蛍光標識されたDNAプロ-ブ(TaqManプロ-ブ)を用いる方法です。一本鎖のDNAの標的配列の3’端側に前方プライマ-、5’端側にTaqManプローブが結合します。アニ-リング段階でPCRプライマ-の伸長反応が進むと、Taqポリメラ-ゼ(DNA合成酵素)が移動して、TaqManプローブに接触します。Taqポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性によりTaqManプローブが加水分解され、塩基がバラバラになります。その後PCRプライマ-の伸長反応が進み、後方プライマまでDNAが合成されます。レポーターとクエンチャーの距離が離れるので蛍光シグナルが発せられます。蛍光強度を検出することで標的配列の複製量を推定できます。プローブの消光作用は双極子-双極子機構によるFRET quenchingです。消光距離は1~10nmで分子同士の接触は必要ありありません。

TaqManプローブ法はプライマー二量体の非特異的な検出がない利点があります。複数のプローブに別の蛍光物質を標識しておけば、マルチプレックス解析を実行できます。

FRETプローブ法

  FRETとは、蛍光共鳴エネルギー転移(Fluorescence Resonance Energy Transfer)のことです。目的mRNAに特異的な2本のオリゴヌクレオチドのうち、一方の3’末端に蛍光物質A、もう一方の5’末端に蛍光物質Bが修飾されているFRETプローブを用いる手法です。  この2本のオリゴヌクレオチドが、PCR産物に同時にハイブリダイズすると蛍光物質Aの蛍光で蛍光物質Bが励起されることで強い蛍光を発すること利用して測定します。

 

ヘアピンプロ-ブ法

ターゲットにハイブリダイズする際に、ステム・ループ構造を有するヘアピン型プローブが引き伸ばされるとクエンチング効果が解け、蛍光を発する測定方法です。蛍光物質はフルオレセイン(6-FAM)、クエンチャーは DABCYL が用いられます。ステム・ループ構造プロ ーブの消光作用は電子交換機構を原理とした 衝突的消光(Collisional quenching)と呼ばれています。有効距離は 0.3~1nm で、これは蛍光物質とクエンチャーの電子軌道が重なる距離です。

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