シキミ酸経路は、植物や微生物が芳香族化合物を生合成する重要な代謝経路です。チロシンやトリプトファンなどの新しい芳香族アミノ酸は様々の抗酸化物質を作り出します。これらの芳香族アミノ酸はシキミ酸経路(shikimic acid pathway)で合成されます。
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シキミ酸は、ホスホエノールピルビン酸(PEP)とエリトロース-4-リン酸(E4P)の脱リン酸反応と環形成反応により、3-デヒドロキナ酸を生じます。さらに脱水反応により、3-デヒドロシキミ酸となり、最後に水素が付加して、シキミ酸となります。
シキミ酸はリン酸と脱水反応して、3-ホスホシキミ酸となります。3-ホスホシキミ酸はホスホエノールピルビン酸と反応して、3-ホスホエノ-ルピルビルシキミ酸となります。3-ホスホエノ-ルピルビルシキミ酸は脱リン酸反応により、コリスミ酸(chorismic acid)となります。
コリスミ酸経路
コリスミ酸は、植物の代謝過程の中間体として重要な役割を演じる化合物です。コリスミ酸からは、フェニルアラニン、チロシンなどの芳香族アミノ酸やトリプトファンなどのインドール化合物が得られます。コリスミ酸は、植物ホルモンのサリチル酸やアルカロイドなど、様々な生体物質の原料でもあります。
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まずコリスミ酸からはプレフェン酸が生合成されます。プレフェン酸のCOOH基が取れると4-ヒドロキシフェニルピルビン酸が得られます。さらにカルボニル基(=O)がNH2基に置換すると、チロシンが得られます。プレフェン酸からはフェニルアラニンが得られます。フェニルアラニンはチロシンからOH基を除去した芳香族アミノ酸です。ヒドロキシフェニルピルビン酸からは、トコフェロ-ルなどの抗酸化物質が得られます。
コリスミ酸からトリプトファンの合成経路
この経路は6段階の反応からなります。まずコリスミ酸は、アントラニル酸シンターゼの下でグルタミンと反応して、ベンゼン環にNH2基が付加したアントラニル酸を生じます。アントラニル酸はリン酸化合物と何段階か反応し、ベンゼン環にNを含む五員環が結合したインド-ルを生じます。インド-ルは便臭で有名な物質です。インド-ルはセリンと脱水反応してトリプトファンが生じます。反応を触媒する酵素はトリプトファンシンターゼです。
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結局、シキミ酸からコリスミ酸を経てトリプトファン1、コリスミ酸からプレフェン酸を経て、ヒドロキシフェニルピルビン酸2とフェニルアラニン3とチロシン4が生成されます。これら4つ芳香族化合物は抗酸化物質の原料になっています。