ヒドロキシフェニルピルビン酸から合成される抗酸化物質にはどのようなものがあるでしょうか?

ヒドロキシフェニルピルビン酸(HPピルビン酸)はチロシンYのアミノ基を酸素で置換した芳香族化合物です。前回説明したようにHPピルビン酸(hydroxy-phenyl-pyruvate)は、シキミ酸(shikimate)、コリスミ酸(chorismate)、プレフェン酸(prephenate)を経て生合成されます。シキミ酸はベンゼン環に3つのOHと1つのCOOHが付加したか化合物です。HPピルビン酸からチロシンYが合成されますが、逆にチロシントランスアミナーゼによって、チロシンYからHPピルビン酸を合成することもできます。

HPピルビン酸から合成される抗酸化物質は、トコフェロ-ル(=ビタミンE)、トコトリエノ-ル、プラストキノ-ル、ユビキノ-ルなどがあります。これらの脂溶性ビタミン類には、クロマン(Chromane)またはベンゾ・ジヒドロ・ピラン(benzo-dihydro-pyran)と呼ばれる酸素を含む複素ベンゼン環を有する特徴があります。

トコフェロ-ル(tocopherol)のtocosはギリシャ語で「子供を産む」、pheroは「力を与える」、olは「OH基をもつ」という意味です。トコフェロ-ルが不足するとネズミが不妊症や流産が生じることが知られていました。トコフェロ-ルは強力でしかも安全な酸化防止剤として知られています。トコフェロールは植物に多く含まれています。特に小麦胚芽油、大豆油、トウモロコシ油、綿実油に豊富に含まれています。ビタミンEの生理活性に関しては、赤血球の抗溶血活性がよく用いられます。赤血球膜は酸化的ストレスにより溶血しますが、それをどの程度抑制するかによって評価するものです。

トコトリエノールはトコフェロールの約40~60倍もの抗酸化力を持つことから、米国では「スーパービタミンE」とも呼ばれています。トコフェロールは様々な植物油から抽出できるのに対して、トコトリエノールはパーム油やココナッツ油、米ぬか油などの特定の植物油にごく少量しか含まれていません。

プラストキノール(PQ)は葉緑体の膜貫通タンパク質複合体の一つです。プラストキノールは光化学系IIから得た電子をシトクロムb6/f複合体(cytochrome b6/f complex)に伝達したり、プロトン(H+)を葉緑体の膜の内外(つまりストロマとチラコイドルーメン)間で輸送することでATPを合成するための電気化学的なプロトン勾配を作り出しています。

  • プラストキノン + H2O → プラストキノ-ル+ 1/2・O2 + 2H+

ユビキノ-ル(UQ)にはメトキシ基(-OCH3)が2つあります。イソプレンの長い側鎖はユビキノ-ルを生体膜中に保持する役目を果たしています。ユビキノールの2つの水酸基(-OH)をカルボニル基(=O)に置き換えたのがユビキノンです。ユビキノンは2電子還元を受けユビキノールになります。ユビキノンはミトコンドリア内膜の電子伝達に関与しています。特に電子伝達系、呼吸鎖複合体I(NADH脱水素酵素複合体)から呼吸鎖複合体III(シトクロムbc1複合体)への電子伝達に寄与しています。

呼吸鎖複合体Iでは、

  • NADH + ユビキノン(UQox) → NAD+ + ユビキノール (UQred)

呼吸鎖複合体IIIでは

  • ユビキノール + シトクロムc (Cytox, Fe3+) → ユビキノン + Cytred(Fe2+)

という反応が生じています。

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