6-3.理想の土壌とはどのようなものでしょうか?

・塩基バランスがとれた土壌のミネラル含有量
pH6.5でCEC=15meq/100gの土壌でCaO:MgO:K2O=5:2:1(当量比)の理想的な土壌のミネラル含有量を求めてみましょう。pH6.5の塩基飽和度は80%ですから、ミネラル電荷の総量は、土壌100g当たり12meq(=15meq×0.8)となります。
CaO:MgO:K2O=12meq×5/8:12meq×2/8:12meq×1/8=7.5meq:3.0meq:1.5meq
です。合計12meq(=7.5+3.0+1.5)。これを重量比に換算すると
CaO:MgO:K2O=7.5meq×28mg/meq:3.0meq×20mg/meq:1.5meq×47mg/meqより、
CEC=15meq/100gの土壌では、
・ CaO:MgO:K2O=210mg:60mg:70mg=61.8%:17.6%:20.6%(重量比)
となります。当量比(62.5%:25%:12.5%)に比べると、重量比はMgが少し減った分だけKが増えたようにみえます。
もしCEC=30meq/100gの土壌であれば、それぞれ2倍になり
・ CaO:MgO:K2O=420mg:120mg:140mg (合計680mg)
となります。理想的なCaO重量はMgOの3.5倍、K2Oの3.0倍です。
pH6.0の場合は、塩基飽和度は70%ですから、上記の比率を0.875倍(=70%/80%)すれば求まります。CEC=30meq/100gの土壌の場合
・ CaO:MgO:K2O=368mg:105mg:122mg (合計595mg)
となります。pHを6.5から6.0に下げると、85mg(680mg-595mg)のミネラルが減少します。この土質の場合pH1だけ変化させるには、170mg/100gのミネラルが必要です。これは1反当たり170kgの施肥量に相当します。30kg/袋で6袋分のミネラルが必要です。

・不足肥料の計算
 土壌分析の結果に基づいて不足肥料の計算をしてみましょう。例えば土壌分析の結果、CEC=28meq/100gかつ
・ CaO:MgO:K2O=280mg:100mg:94mg (合計480mg)
であったとしましょう。この当量比は
・CaO:MgO:K2O=280mg/28:100mg/20:94mg/47=10meq:5meq:2meq(合計17meq)
となります。飽和塩基度は
・ 17meq/28meq×100=60%
です。土壌pH5.5と酸性になっています。pH6.5にするには、
・ CEC=17meq×80%/60%=23meq
を狙って、23meqを5:2:1に分配します。
CaO:MgO:K2O=23meq×5/8:23meq×2/8:23meq×1/8=14.4:5.8:2.8(合計23)
ですから、電荷比を重量比に換算すると
CaO:MgO:K2O=14.4meq×28(mg/meq):5.8meq×20:2.8meq×47 より
・ CaO:MgO:K2O==403mg:116mg:132mg
となります。不足分は、100g土壌あたり
・ ⊿CaO:⊿MgO:⊿K2O=403mg-280mg:116mg-100mg:132mg-94mg
=123mg:16mg:38mg
となります。これを1反当たりの施肥量に換算します。

・施肥量の計算
まず耕深10cm(ロ-タリ-)、土壌比重1g/cm3を仮定し、1反当たりの施肥重量(kg)を求めます。その後で耕深と土壌比重の計測値から施肥量を補正します。1反は10a(アール)で1000m^2です。肥料を入れる体積は100m^3となります。土壌比重は1g/cm3=1ton/m^3なので、100m^2の土壌重量は100tonになります。CaOを100g当たり123mg投入する場合、100万倍して、1反(100ton)当たり123kg施肥することになります。つまりmgをkgに変更するだけで、1反当たりの施肥量に換算できます。従って施肥量は
・ ⊿CaO:⊿MgO:⊿K2O=123kg:16kg:38kg (10m×100mの面積)
となります。20cm深さの場合は、施肥量を2倍にします。比重1.2の場合は1.2倍します。肥料の種類が異なる場合は換算します。CaCO3ならば、分子量100gなので、CaOの分子量56gに対して、1.78倍(=100/56)の重さの施肥量になります。堆肥のときは、堆肥に含まれる3つのミネラルを分析で求めて、不足分を補うように計算しなければなりません。施肥するときは、もちろん肥料をよく混ぜて、畑に均一に撒いて、深さを一定にして均一に耕さなければなりません。CECの低い土壌は追肥をして収量を上げます。

・収穫量の予想
 収穫量はCECから予想できます。CEC=10meq/100gとします。窒素含有量は20%程度、窒素の原子量は14gなので、土壌100g当たり
・ N量=10meq×0.2×14=28mg/100g
1反の土壌重量は100トンだったので、1反当たり28kgになります。作物は施肥量の70%程度を吸収すると言われているので、
・作物が利用できるN量=20kg/反(=28kg/反×0.7)
です。。肥料の値段は5万円以内でしょう。トウモロコシ1tを作るのに窒素は20kg必要(実に10kg、茎葉に10kg)です。
・ トウモロコシの収穫量=20(kg/反)/20(kg/t)=1.0ton/反
となります。1本400gが200円くらいです。
・ 売上=1000(kg/反)/0.4kg×200円=50万円/反
CEC=30 meq/100gであったとしても、トウモロコシの反収は150万円程度です
一方トマトの場合は、1tを作るのに窒素は5kg必要です。
・ トマトの収穫量=20(kg/反)/5(kg/t)=4.0ton/反
となります。1個200gが200円くらいなので
・ 売上=4000(kg/反)/0.2kg×200円=400万円/反
となります。但しトマトは脇芽の除去など手間がかかります。CEC=15meq/100gで反収600万円なので、生活がなりたちそうです。
それでも息子はトウモロコシ農家になりたいなどと申しております。トウモロコシは6月など早い時期に出荷できれば、9月の3倍の値段で売れます。特別に高価な品種であるとか、お祭りとか娯楽施設など高値で卸せるのであればいいですけど、そうでなければ難しい作物ではないでしょうか。


・塩基バランス
 塩基飽和度とはCECに占めるCa、Mg、Kの合計の割合です。塩基飽和度が80%だとPH=6.5になり、作物の成長に望ましいです。電荷量Eqに換算した比率で「Ca:Mg:K=5:2:1」の割合が理想的な塩基バランスだとされています。この塩基バランスで、作物にあった塩基飽和度のとき、経験的に作物の品質は安定します。
塩基バランスが崩れて苦土が少ないとリン酸が土壌にたくさんあっても吸収できないなどの障害がおこります。塩基バランスを整えると、リン酸の吸収がよくなって病害虫も少なくなり、農薬散布がいらなくなります。また、土壌微生物の環境が改善され有機物の分解と腐植の生成が進み土壌の養分保持力も向上します。塩基バランスや飽和度が崩れた土壌に微生物資材を使っても効果はでません。
 こどもの頃フル-チェというおやつが好きでした。これは果物の糖に牛乳を混ぜてゲル状に固めたものです。ペクチンとCaが反応して固まります。細胞壁はセルロ-ス繊維にペクチンから成っています。Caを摂ると細胞壁が固くなり、病虫害に強くなり日持ちがする野菜ができます。Kは浸透圧を調整しています。Kが多くなると水分が多くなるので果物が膨らんで柔らかくなるイメ-ジです。例えば柔らかいバナナはKが多いです。つまり直観的にはCaは作物を締める働き、Kは作物を緩める働きをします。だからそのバランスをとることが必要です。

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