中学生になると無理数を学びます。無理数は英語で「不合理な数(irrational number)」といいます。1:1:√2の直角三角形の斜辺の長さは無理数です。無理数を発見したのはピタゴラス教団の一人です。ピタゴラスは数の調和を崇拝していたので、分数で書き表せない数を認めませんでした。ピタゴラスは神聖な数を冒涜した罪で無理数を発見した仲間を死刑にしてしまいます。
2乗して2になる性質をもつことは、√2が存在することを保証しません。√2=1.414213562・・・と無限に続きます。√2は、
{1.4、1.41、1.414、1.4142、1.41421、・・・}
と無限に続く(極限で収束する)有理数の数列と同一視されます。つまり無理数は無限の有理数の集合と同一視して創られた数なのです。
数は簡単に作ることができます。例えば整数を3で割った余りが0になる整数の集合を[0]と書くと、整数を{[0]、[1] 、[2]}の3つの集合に分けることができます。これを新たな3つの数と見なし、加減乗除を定義することができます。この場合も数は無限の要素を持つ集合と同一視して創られます。
現代数学では多項式をも数と見なします。整数の世界で成り立つ様々な定理は、多項式の世界の定理として成り立ちます。数学者は真偽が分からない定理(予想)の場合、先に多項式世界で真偽を確かめようとします。
多項式が数になるとはどういうことでしょうか? 例えば多項式をx2-2で割った余りで分類してみましょう。例えばx4+x-4の場合は
- x4+x-4=(x2+2)・(x2-2)+x
- x4-2=(x2+2)・(x2-2)+2
となります。多項式の割り算など何の役に役に立つのか分かりませんでしたが、実は重要な役割を果たしているのです。ここで
- Rx={x2-2で割った余りがxになるすべての多項式}
- R2={x2-2で割った余りが2になるすべての多項式}
なる集合を考えます。x4+x-4はRxに含まれる多項式、x4-2はR2に含まれる多項式の一つであることが分かります。x2をx2-2で割った余りは2だから
- x2=1・(x2-2)+2
- Rx・Rx=R2 ⇔ x・x=2
が成り立ちます。大胆に集合R2を数2だと見なすと、多項式x2-2を法とする世界では、(無限の多項式からなる集合)Rxは√2に相当する数になるのです。
現代数学では、頑張って方程式を解くのではなく、方程式を使って数を創造することで、方程式と解を同時に求めてしまいます。頭の固い人には、神聖なる数を冒涜しているように映るかもしれません。私たちは、柔軟な考えに興味を示すように、子どもたちを育てていかなければなりません。